生成AIの基礎

生成AIの安全な使い方 個人が守る基本ルール

生成AIの安全な使い方 個人が守る基本ルール

この記事の要点

生成AIを個人として安全に使うには、入力情報の選別・出力の扱い・アカウント管理・業務利用の切り分けという4つの柱を押さえる必要があります。トラブルを防ぐ具体的な行動指針をまとめました。

結論

生成AIを個人として安全に使うには、4つの基本を守ることが最も重要です。第一に、入力する情報を選別すること。第二に、出力をそのまま使わず確認すること。第三に、アカウントを適切に管理すること。第四に、プライベート利用と業務利用を切り分けることです。

この4点を守れば、生成AIによるトラブルの大半を防げます。各ポイントを具体的に解説します。


入力情報の選別:渡してよい情報・渡してはいけない情報

生成AIに何を入力するかは、最も重要な判断です。渡した情報がどう使われるかは、サービスと利用プランによって変わります。

渡してはいけない情報

次の種類の情報は、生成AIに入力しないことを基本にします。

個人情報:他者の氏名・住所・電話番号・メールアドレス・マイナンバー・クレジットカード番号などは入力しないことが原則です。誤ってサービスのログや学習データに入ることで、意図しない形で外部に出るリスクがあります。

会社の機密情報:製品の未公開仕様・財務情報・契約内容・顧客リストなど、外部に出てはいけない業務情報を無料プランに入力しないでください。競合他社に同じサービスを使う社員がいた場合、学習済みの情報から類似した回答が出る可能性もゼロではありません。

パスワードや認証情報:パスワード・APIキー・トークン・秘密鍵などの認証情報は絶対に入力しないでください。これらは漏洩した場合の影響が特に大きい情報です。

医療・法律に関する個別情報:自分や特定の人物の病歴・診断・法的状況などを詳細に入力することも避けた方が安全です。AIが正確な答えを出せる保証はなく、情報として記録されるリスクもあります。

渡してよい情報の目安

一般に公開されている情報、架空の例、または個人を特定できない形に加工した情報なら安全に扱えます。

たとえば「この文章の誤字を直してください」と自分のメモを渡す場合、固有名詞を「A社」「担当者」に置き換えてから渡す方法があります。少し手間がかかりますが、機密情報を守りながらAIの支援を受けられます。


学習利用の仕組みを理解する

サービスが入力データを学習に使うかどうかは、プランや設定によって異なります。

多くのサービスでは、無料プランや個人向けプランでは入力したデータをサービス改善や学習に使用する場合があります。一方で、法人向けプランや有料プランでは学習に使わない設定になっていることが多いです。

ただしこれは一般的な傾向であり、サービスによって異なります。使うサービスのプライバシーポリシーと利用規約を確認し、「ユーザーのデータをモデルの学習に使用するか」という点を確かめてほしいです。

一部のサービスでは、アカウント設定からデータの学習利用をオフにできます。設定画面の「データの使用に関するプライバシー設定」などを確認してみてください。


出力の確認:生成AIの出力を信頼しすぎない

生成AIは流暢な文章を作れますが、内容の正確さは保証されません。誤った情報を自信たっぷりに書くことがあり、これをハルシネーションと呼びます。

特に注意が必要な情報の種類があります。

情報の種類なぜ注意が必要か
数字・統計学習データから類似した数値を作ることがあり、実際の数値と一致しない場合がある
固有名詞・人名似た名前の別人や、存在しない人物の情報を作ることがある
法律・制度の内容古い情報や不正確な解釈を提示することがある
医療・健康情報誤った情報が具体的な害になるリスクが特に高い
URLやリンク存在しないURLを作成することがある(特に古いモデルで顕著)

AIの出力を社外に出す前、または重要な判断に使う前に、必ず一次情報で裏を取ることが基本です。

出力をそのまま使わない運用を習慣にするには、「AIは下書きを作る係、確認と責任は自分」という役割分担を意識するのが効果的です。

ハルシネーションの詳しい説明はハルシネーションとは?で解説しています。


アカウント管理:不正アクセスを防ぐ

生成AIのアカウントには、会話履歴・カスタム設定・有料プランの情報が蓄積されます。アカウントが乗っ取られると、これらすべてが外部に見られるリスクがあります。

基本的なアカウント保護

強いパスワードを設定する:生成AIサービス専用の、他のサービスと使い回しのないパスワードを設定してください。パスワードマネージャーを使って管理するのが安全です。

二段階認証を有効にする:ほとんどの主要サービスで二段階認証が使えます。設定画面で「セキュリティ」「アカウント保護」などの項目から有効にできます。二段階認証を設定すると、パスワードが流出した場合でも不正ログインを防げます。

不審なブラウザ拡張機能を入れない:生成AIツールを強化するとうたうブラウザ拡張機能の中には、会話履歴を取得する悪意あるものが存在します。信頼性が不明な拡張機能はインストールしないことを勧めます。

ログインセッションを確認する:サービスの設定画面で現在ログイン中のデバイスや場所を確認できる場合があります。心当たりのないセッションがあればすぐに削除してください。

共有デバイスでの利用

会社の共有パソコンや家族と共有するデバイスで生成AIを使う場合は、利用後にログアウトすることを徹底してください。ブラウザの自動ログイン機能が有効な場合、ログアウトしないと次のユーザーが会話履歴を見られる状態になります。


プライベート利用と業務利用の切り分け

個人のアカウントで業務の情報を扱うことには複数のリスクがあります。

データポリシーの問題:会社として許可していないプランで業務情報を扱うことは、就業規則や情報セキュリティポリシーに違反する場合があります。

情報管理の問題:個人アカウントに業務の会話履歴が残ると、退職や異動のときに情報管理が複雑になります。

責任の所在の問題:業務でAIが誤った情報を生成し、それが問題になったとき、個人アカウントを使っていた場合は責任の所在が曖昧になります。

切り分けの実践方法

会社が承認したプランを使う:業務での生成AI利用は、会社が契約・承認した法人プランや企業向けライセンスで行うことを原則にします。会社でまだルールがない場合は、担当部署に確認してから使うことを勧めます。

個人アカウントと会社アカウントを分ける:会社のメールアドレスで登録したアカウントと、個人のメールアドレスで登録したアカウントを分けることで、利用履歴が混在しなくなります。

会社のルールを確認する:生成AIの利用についての社内ルールが存在する場合は、それに従います。ルールが明文化されていない場合でも、機密情報の扱いに関する既存のルールは生成AIにも適用されると考えてください。

会社での生成AI利用における注意点の全般は会社で生成AIを使うときの注意点にまとめています。


デバイスとアプリの安全な設定

公式アプリ・公式サイトを使う

生成AIサービスには公式アプリと公式ウェブサイトがあります。非公式のアプリやサイトの中には、入力した情報を取得する目的で作られたものが存在します。アプリをインストールするときはApp StoreやGoogle Playの公式ストアから入手し、開発元が正規のものかを確認してください。

オフィシャルなAPIキーの管理

自分でAPIを使って生成AIを呼び出す場合、APIキーの管理には特に注意が必要です。APIキーが外部に漏洩すると、不正利用による意図しない課金が発生します。コードにAPIキーを直接書かず、環境変数や秘密管理サービスを使うことが原則です。


セキュリティインシデントが起きたときの対処

万が一、次のような問題が起きたときの対処をあらかじめ把握しておくことを勧めます。

アカウントへの不正アクセスが疑われる場合:パスワードをすぐに変更し、有効なセッションをすべて終了させます。二段階認証を設定していなければ直ちに設定します。

機密情報を誤入力した場合:まず会話履歴を削除します。削除はサービスによっては設定画面から行えます。次に、会社の情報セキュリティ担当または上長に報告します。自己判断で隠すことは状況を悪化させます。

AIの出力に基づいた誤情報を発信した場合:誤情報の拡散範囲と内容を確認し、訂正の発信を行います。社外への誤情報発信は関係部署と連携して対応します。


まとめ

生成AIを個人として安全に使うために守るべき4点を再確認します。

個人情報・機密情報・認証情報は入力しない。AIの出力は下書きとして受け取り、重要な判断に使う前は一次情報で確認する。アカウントには強いパスワードと二段階認証を設定し、共有デバイスでは使用後にログアウトする。業務での利用は会社が承認したプランで行い、個人アカウントと分ける。

この4点は生成AIの機能を制限するものではなく、安全に活用するための最低限の枠組みです。枠組みを守りながら使うことで、リスクを抑えつつ業務での生産性向上につなげられます。

よくある質問

生成AIに入力した情報はどうなりますか

サービスと利用プランによって異なります。無料の個人向けプランではサービス改善のために入力内容を利用する場合があります。個人情報・機密情報の入力は避け、業務での利用は会社が承認したプランを使うことを勧めます。

ChatGPTなどの無料プランに仕事の情報を入力してもいいですか

会社の機密情報・顧客情報・未公開情報は入力しないことを勧めます。無料プランでは入力データが学習に使われる設定が多く、意図せず情報が外に出るリスクがあります。業務利用は会社が契約した法人プランで行うことが原則です。

AIの出力をそのまま使っても問題ありませんか

そのまま使うことは勧めません。事実と異なる情報が含まれる可能性があり、特に数字・固有名詞・法律・医療に関する情報は必ず確認が必要です。AIの出力は下書きや参考として扱い、人間が最終確認してから使うことが基本です。

生成AIのアカウントが乗っ取られるとどんなリスクがありますか

会話履歴が閲覧される・カスタム指示や設定が改ざんされる・有料プランを不正利用されるといったリスクがあります。強いパスワードと二段階認証の設定が対策として有効です。