商品企画のデータ集計・分析をAIで行う手順
この記事の要点
商品企画担当者がアンケートデータや売上データをAIで集計・分析する具体的な手順を解説。ExcelやCSVデータをAIに読み込ませて企画判断に使える洞察を得るプロンプト例を紹介します。
結論
商品企画の業務では、ユーザーアンケートの集計・売上データの傾向分析・競合比較表の整理など、数字を扱う作業が多い。ChatGPTのCode Interpreterやコードが書けるAIを使うと、Excelの複雑な操作なしに「どのセグメントが最も不満を感じているか」「どの機能への評価が低いか」を自然言語で引き出せる。データを入力してから企画判断に使える洞察を得るまでの時間が、慣れれば30分以内に収まる。
使うAIツールの選び方
| ツール | データ分析の特徴 | 向いているデータ規模 |
|---|---|---|
| ChatGPT Code Interpreter | CSVアップロード可・グラフ生成 | 数千行程度まで |
| Claude.ai | CSVテキスト貼り付け・論理的解釈 | 数百行程度まで |
| Google Gemini Advanced | スプレッドシート連携 | Googleスプレッドシート直接参照 |
| Perplexity | ウェブデータ参照 | 外部の統計データ収集 |
アンケートデータの集計・傾向把握にはChatGPTのCode Interpreterが最も実用的である。CSVファイルをそのままアップロードして「年代別・性別に集計して」と指示するだけで、表とグラフを同時に生成できる。
手順1 データをAIに読み込ませる準備
CSVとして書き出す
ExcelデータはCSV形式で書き出してからAIに投入する。「名前を付けて保存」でCSVを選ぶだけでよい。ただし個人情報が含まれる場合は、投入前に以下の処理を行う。
- 氏名・メールアドレス・電話番号の列を削除する
- 必要なら個人IDを通し番号に置き換える
- 社外サービスへの入力が自社ガイドラインで許可されているか確認する
データの先頭部分だけで試す
まず10〜20行だけ貼り付けて「このデータの構造を説明してください」と聞き、AIがデータを正しく理解しているか確認する。全データを投入する前のこの一手で、後から「データの読み方が間違っていた」と気づく失敗が減る。
手順2 集計の基本指示
アンケートデータを集計する典型的なプロンプトを紹介する。
以下はユーザー満足度アンケートのデータです(CSV形式)。
[CSVデータを貼り付け、またはファイルをアップロード]
以下の集計を行ってください:
1. 全体の満足度スコア(1〜5点)の平均・中央値・標準偏差
2. 年代別(20代/30代/40代/50代以上)の満足度平均
3. 最も評価が低い設問はどれか(設問番号と平均スコアを記載)
4. 自由記述欄に「不満」に関するキーワードが何件含まれるか
計算結果は表形式で出力してください。
「表形式で出力」を明示することで、そのままExcelに貼り付けられる形式が返ってきやすくなる。
手順3 傾向を読み解く解釈を依頼する
集計が終わったら、数字の意味を解釈させる。
先ほどの集計結果を踏まえて、以下を教えてください。
1. 最も満足度が低いセグメントはどこか。その数値と特徴を教えてください。
2. 満足度が高いセグメントと低いセグメントの間に、
どんな違いがありそうか(仮説でよい)。
3. この結果を見た商品企画担当者が「次に確認すべきこと」を2〜3点挙げてください。
解釈・仮説を含む箇所には「※仮説」と付記してください。
「仮説には仮説と付記させる」指示がここでも重要である。AIが数値から読み取れる傾向を断定的に書いてくることがあるが、解釈の部分は仮説に過ぎない。商品企画の判断材料として使う際は、AIの解釈を「検証すべき仮説」として扱うのが正しい姿勢である。
手順4 自由記述の分類・タグ付けを自動化する
アンケートの自由記述欄は、量が多いと手作業での分類に時間がかかる。AIに分類軸を定義させてからタグ付けさせると、大量のテキストを短時間で構造化できる。
ステップ1:分類軸を定義する
以下はユーザーアンケートの自由記述データです(50件)。
[自由記述データを貼り付け]
このデータに含まれる意見を分類するための「カテゴリー」を5〜8つ提案してください。
例:操作性への不満 / 価格感 / デザイン評価 / 配送・サポート など
提案するカテゴリーは、商品企画の改善アクションに直結するものにしてください。
ステップ2:各回答にタグを付ける
先ほど定義したカテゴリーを使って、以下の自由記述を1件ずつ分類してください。
出力形式:
回答番号 | 元の回答(最初の30字) | カテゴリー | ポジティブ/ネガティブ/中立
[自由記述データを貼り付け]
50件の自由記述であれば、このやり取りで10〜15分以内に分類が完了する。手作業では1〜2時間かかることもある作業である。
実例1:新機能のβテストアンケートを集計する
スマートフォンアプリの商品企画担当が、β版テストユーザー120人へのアンケートを分析した事例を紹介する。
アンケートには5段階評価の設問12個と自由記述欄があった。CSVをChatGPTにアップロードし、まず以下を依頼した。
このアンケートデータから:
1. 設問ごとの平均スコアを高い順に並べてください
2. スコア3.5未満の設問を「優先改善候補」としてリストアップしてください
3. 自由記述で「分かりにくい」「難しい」という言葉が含まれる件数を教えてください
出力では「通知設定の手順」の平均スコアが2.8で最低であり、自由記述でも「分かりにくい」という言葉が120件中31件に含まれていた。この結果を使って、ロードマップの次スプリントに通知UI改善を優先的に組み込む意思決定ができた。ロードマップ策定のAI活用については商品企画のロードマップ策定をAIで進める方法で解説している。
実例2:売上データから企画機会を発見する
月次の売上データをCSVでAIに投入し、次の企画のヒントを探す方法もある。
以下は過去12ヶ月の製品カテゴリ別売上データです。
[売上データを貼り付け]
以下を分析してください:
1. 前年同月比が最も高いカテゴリーはどれか(上位3つ)
2. 前年同月比が連続して低下しているカテゴリーはあるか
3. 季節変動のパターンが見られるカテゴリーはあるか
分析結果と合わせて、商品企画の観点で「追加調査すべき問い」を2つ提示してください。
「追加調査すべき問いを提示してください」と依頼することで、数値を見るだけでは見えなかった次の調査課題が浮かび上がる。
Excelで集計作業を効率化する
AIに直接データを投入するだけでなく、Excel作業そのものの効率化にもAIが使える。
ExcelでVLOOKUP関数を使って2つのシートのデータを結合したいです。
Sheet1:注文データ(注文ID、商品ID、数量、日付)
Sheet2:商品マスタ(商品ID、商品名、カテゴリー、単価)
Sheet1のB列の商品IDをキーに、Sheet2から商品名とカテゴリーを
Sheet1のE列とF列に引っ張るVLOOKUP式を教えてください。
Excelの関数作成を自然言語で依頼できるため、複雑な関数の構文を調べる時間が省ける。Excelを使ったデータ作業の詳細は商品企画のExcel作業をAIで自動化する方法で解説している。
うまくいかない場合の対処
集計結果の数値が明らかにおかしい
データの形式をAIが誤って解釈している可能性がある。「このCSVの1行目はヘッダー行です。スコアの列はC列で、1〜5の整数です」のようにデータ構造を明示してから再度依頼する。
自由記述の分類が粗すぎる
「もっと細かく分類してください」ではなく「操作性に関する不満を、どの画面の操作かで3〜5つに分けてください」のように具体的な分類軸を与える。抽象的な指示より具体的な軸の方が、実用的な分類が返る。
データ量が多すぎてトークン制限にひっかかる
行数が多い場合は、最初から全データを投入せず、代表サンプル(各セグメント10件程度)をまず分析させる。全体の傾向を把握したうえで、必要な部分を追加投入する方法が効率的である。
まとめ
商品企画のデータ分析でAIを活用する核心は、「集計はAIに任せ、解釈は仮説として受け取り、自分で検証する」という姿勢にある。AIが返した数値の解釈を事実として扱うのではなく、次のアクションを決めるための仮説として活用するサイクルが、意思決定の精度と速度を両立させる。
よくある質問
商品企画がデータ分析にAIを使うとどんなメリットがありますか?
Excelの複雑な関数を書かなくても、自然言語でデータの傾向を聞けます。「年代別に満足度の違いを分析して」のように指示するだけで、集計とコメントを同時に得られます。
AIにデータを読み込ませる方法は?
CSVをテキストとして貼り付ける方法と、ChatGPTのCode Interpreter(Advanced Data Analysis)にファイルをアップロードする方法があります。大量データはアップロード機能が扱いやすいです。
AIのデータ分析結果はどこまで信頼できますか?
集計自体は正確ですが、「なぜそうなのか」の解釈はAIの推測が含まれます。AIが出した洞察を仮説として扱い、根拠となる数値を自分で確認する習慣が重要です。
個人情報を含むアンケートデータをAIに入力してもいいですか?
個人が特定できる情報(氏名・メールアドレス等)は事前に除去してから投入してください。会社のAI利用ガイドラインに従い、社外サービスへの入力が許可されたデータのみを使ってください。