職種別AI仕事術

商品企画のアイデア出し・壁打ちにAIを使う方法

商品企画のアイデア出し・壁打ちにAIを使う方法

この記事の要点

商品企画担当者がAIを壁打ち相手として使い、新製品アイデアを発散・収束させる手順を解説。企画の初期段階から反論・課題の洗い出しまで、明日の企画業務で再現できるプロンプト例を紹介します。

結論

商品企画のアイデア出し段階でAIを壁打ち相手として使うと、単独でブレストするときに見えない盲点が浮かび上がる。「この企画の弱点を指摘してください」と依頼すれば、開発・営業・経営それぞれの立場から想定される反論を数分で得られる。AIは遠慮なく問題を指摘するため、会議での詰めよりも前に論理の穴を埋める機会になる。


アイデア出しにAIを使う3つの場面

商品企画のアイデアフェーズは大きく「発散」「収束」「検証」に分かれる。AIはそれぞれの場面で違う使い方をする。

フェーズAIの役割使うプロンプトの方向
発散多様な視点からアイデアを出す「〜の制約なしに10案出して」
収束案を評価・絞り込む基準を整理「この5案を○○軸で評価して」
検証弱点・反論・欠けている情報を洗い出す「この企画の問題点を指摘して」

これら3つを1回の会話セッションの中で順番に行うと、企画のブラッシュアップが効率的に進む。


手順1 発散フェーズ——制約を外してアイデアを大量に出す

アイデア出しの初期段階では、実現可能性を考えずに量を出すことが重要である。AIに制約を外して発想させる。

以下の条件で、新製品のアイデアを10案出してください。

対象市場:シニア向けスマートホーム機器
解決したい課題:一人暮らしの高齢者の安否確認と孤立防止

条件:
・実現可能性は問わない
・既存製品と全く異なる切り口を優先する
・各案は「製品コンセプト1行 + ターゲット像 + なぜこれが刺さるか」のセットで出す

「実現可能性は問わない」という一文が発散フェーズでは重要である。これがないと、AIは無難な実現可能なアイデアしか出さない傾向がある。


手順2 異なるフレームワークで同じ課題を見直す

同じ課題でも、使うフレームワークが変わると見え方が変わる。AIに複数のフレームワークを使ってアイデアを出させることで、自分では思いつかない視点が生まれる。

以下の課題に対して、3つの異なるフレームワークでアイデアを出してください。

課題:「共働き夫婦の食材管理と献立決めの手間を減らす製品を企画する」

フレームワーク1:JTBD(ジョブ理論)の視点
 → このユーザーが「雇いたい仕事」は何か
フレームワーク2:逆張りの視点
 → 既存の常識を逆にしたらどうなるか
フレームワーク3:隣接市場からの転用
 → 別の業界で成功しているサービスモデルを転用したらどうなるか

各フレームワークで3〜5案ずつ出してください。

このプロンプトで返ってくるアイデアは、自分のブレストから出てくるアイデアとは異なる切り口を持つことが多い。特にJTBD視点は、機能ではなく「ユーザーが達成したいこと」に焦点が当たるため、商品企画の方向性を整理するのに役立つ。


手順3 収束フェーズ——案を評価軸で比較する

複数のアイデアが揃ったら、評価軸を明示してAIに比較させる。感覚での選定ではなく、評価の根拠を言語化するプロセスが後の稟議に役立つ。

以下の5つのアイデアを評価してください。

[アイデアA〜Eを記載]

評価軸:
1. ユーザーの課題の深さ(どれだけ深刻な問題を解くか):1〜5
2. 市場規模の大きさ(推測でよい):1〜5
3. 技術的実現可能性(現状の技術で3年以内に作れるか):1〜5
4. 競合との差別化の強さ:1〜5
5. 自社の既存リソースとの相性:1〜5

各案を表形式でスコアリングし、合計スコアが高い順に並べてください。
スコアの根拠も1〜2文で書いてください。
AIの知識が不足している場合は「要確認」と書いてください。

評価表が出たら、合計スコアだけで決めるのではなく「どの軸を最重視するか」を自分で判断する材料として使う。AIのスコアはあくまで参考情報であり、最終的な優先順位の判断は企画担当者が行う。


手順4 検証フェーズ——弱点・反論を先に洗い出す

企画をまとめたら、社内提案の前にAIに「鬼の反論役」を演じさせる。

以下の企画案について、批判的な視点から問題点を指摘してください。

企画案:[企画の概要を記載]

以下の立場から、それぞれ3つずつ反論・懸念を挙げてください。

1. 開発部門(技術実現性・工数・メンテナンスコスト)
2. 営業部門(売りやすさ・価格設定・顧客への説明の難しさ)
3. 経営・CFO(投資回収期間・市場規模・競合との戦い方)
4. ユーザー視点(本当に使われるか・使いやすさ・価格感応度)

各反論には「この反論への一次対応案」も添えてください。
反論が特に強くて対応が難しい場合は「★要検討」と付けてください。

この演習をしておくと、実際の社内会議で「★要検討」と付いた問いに詰まることが減る。対応策が弱い部分は企画書に書く前にリサーチし直すか、「リスクとして認識して進める」と明示する判断ができる。


実例1:新カテゴリ参入のアイデアを10日間でブラッシュアップ

ある生活用品メーカーの商品企画担当が、ペット向け製品カテゴリへの参入を検討した際の事例を紹介する。

最初にAIに「犬を飼う30〜40代の共働き世帯が最も困っていることを10個挙げてください」と依頼し、課題リストを作った。次に課題リストをもとに「犬の留守番中の不安を解消する製品」に絞り込んでアイデアを発散させた。

3回のブラッシュアップの後、「AIカメラと連動して、飼い主がスマホから話しかけるとドッグフードが出るスマートフィーダー」というコンセプトが残った。このコンセプトに対して検証フェーズのプロンプトを使い、「電源が必要な場所に設置できない」「Wi-Fiが切れたときの動作が不安」という反論が出た。これらを要件定義に組み込んで開発部門と交渉する材料にした。

要件定義にAIをどう活用するかは商品企画の要件定義をAIで進める方法で詳しく解説している。


実例2:既存製品の改善アイデアを構造化する

既存製品の次バージョンを企画する場面でも、AIは役立つ。ユーザーから集まったフィードバックを整理させ、改善の方向性を絞り込む。

以下は、製品Xのユーザーフィードバック(抜粋)です。

[フィードバック20件を貼り付け]

これらを読んで:
1. 最も多く言及されている不満トップ3を教えてください
2. 「この不満を解決する新機能案」をそれぞれ2〜3つ提案してください
3. 各機能案について「この機能が既存ユーザーを維持するか、新規ユーザーを獲得するか」を判定してください

判定が「不明」の場合は「要ユーザーリサーチ」と書いてください。

フィードバックの構造化と機能案の整理が同時に完了するため、次のロードマップ会議の準備が半日から2時間程度に短縮される。


AIの壁打ちが機能しないパターン

AIが肯定しすぎる

「素晴らしいアイデアです」という反応が続く場合、AIが批判的な役割を担えていない。最初のプロンプトに「肯定的なコメントは不要です。問題点と懸念点だけを答えてください」と明示する。

アイデアが陳腐・当たり前すぎる

「既存製品と差別化できない案は除く」「誰もが思いつくような一般的なアイデアは出さない」と制約を加える。あるいは「このアイデアリストの中で最も意外性があるものはどれか、理由と一緒に教えてください」と問い直す。

議論が発散したまま収束しない

「ここまでの議論を整理してください。検討しているコンセプトと、まだ決まっていない問いを箇条書きにしてください」と会話をリセットする指示を入れる。長い壁打ち会話の途中で一度整理させると、方向性が明確になる。


メールや報告書に企画の結論をまとめる

壁打ちが終わったら、その結果をメールや報告書にまとめる作業もAIに任せられる。

以下は新製品企画のアイデア出し・壁打ちの結論です。

採用するコンセプト:[概要]
主な根拠:[3点]
残っている課題:[2点]

この内容を、次の定例会議で上司に報告するためのメール文(300字以内)に整理してください。
報告のトーンは「方向性が決まった」ではなく「検討中・判断を仰ぎたい」としてください。

企画フェーズのメールや報告書の書き方については商品企画のメール業務をAIで効率化する方法も参照してほしい。


まとめ

AIを壁打ち相手として使う最大の価値は、24時間遠慮なく反論してくれる存在をいつでも呼び出せる点にある。単独で企画を進めていると、自分の思い込みや盲点に気づきにくい。アイデア出しから弱点の洗い出しまでAIを組み込んでいくことで、企画の質と提案の確度が上がる。

情報リサーチ段階でのAI活用については商品企画の情報リサーチをAIで効率化する方法で解説している。

よくある質問

AIとの壁打ちは実際に役立ちますか?

役立ちます。AIは疲れず、遠慮なく反論し、視点の漏れを指摘します。ただし「素晴らしいアイデアです」と肯定しがちな傾向もあるため、批判的な立場を明示して依頼することが重要です。

アイデア出しで最もよく使うAIはどれですか?

Claude.aiが長い文脈を保持しながら壁打ちを続けるのに適しています。ChatGPTは多数のアイデアを素早く出す用途に向いています。目的によって使い分けると効果的です。

AIが出したアイデアをそのまま使っていいですか?

そのまま使うのではなく、起点として使うのが正しい活用法です。AIのアイデアはあくまで発想の引き金であり、具体化・検証・意思決定は人間が行います。

社内での企画通過率は上がりますか?

反論の洗い出しや根拠の整理にAIを使うと、想定外の指摘を受けにくくなります。企画書の論理構造の穴をAIに事前に指摘させてから提出するだけで、質問対応の準備が整います。