プレスリリースをAIで書く実践ガイド——30分で完成させる手順とチェックリスト
この記事の要点
広報担当がAIを使ってプレスリリースを30分で仕上げる具体的な手順を解説。構成テンプレート・実例プロンプト・配信前チェックリスト付き。
結論:AIはプレスリリースの「初稿生成」に使う道具だ
AIを使うとプレスリリースの初稿作成にかかる時間が平均60〜75%短縮できる。ただし、AIが出した文章をそのまま配信するのではなく、「情報整理→AI生成→人間によるファクトチェックと修正→承認」という4ステップを守ることが前提になる。本記事では、このプロセスを30〜60分で回すための具体的な手順とプロンプトを示す。
広報担当がAIを使うにあたって最初につまずく点は「何をAIに渡せばいいかわからない」という情報整理の問題だ。AIへのインプットの質が、アウトプットの質を直接決める。まず情報整理のフォーマットを固め、そこから各パートをAIで生成する手順を解説する。
プレスリリースの構成5要素
記者が必要とする情報は構造化されている。以下の5要素を外さなければ、どの媒体にも使えるプレスリリースの骨格になる。
| 要素 | 目的 | 目安の文量 |
|---|---|---|
| 見出し | 記事化の可否を3秒で判断させる | 30〜40字 |
| リード文 | 5W1H(いつ・誰が・何を・どこで・なぜ・どのように)を1段落で | 150〜200字 |
| 本文 | 詳細・背景・数値・引用コメント | 400〜600字 |
| 会社概要 | 媒体が出典として記載する情報 | 100〜150字 |
| 問い合わせ先 | 記者が連絡する宛先 | 担当者名・メール・電話 |
この5要素を「情報整理シート」として事前に埋めることが、AIへの正確な指示につながる。
ステップ1:情報整理シートをAIに渡す前に埋める
AIに曖昧な情報を渡すと、AIは「それらしく見える文章」を作る。数字や固有名詞を埋めるのは人間の仕事だ。以下のシートを先に完成させる。
【情報整理シート】
■ ニュースの核心(1文で):
■ 配信日:
■ 会社名・担当ブランド名:
■ 製品・サービス名(正式表記):
■ 発表内容(数値・事実・変化点):
■ 理由・背景(なぜ今か):
■ 代表者・責任者のコメント(話者名と役職も):
■ 読者に取ってほしい行動(購入・登録・来場等):
■ 問い合わせ先(担当者名・メール・電話):
■ 禁止事項(使ってはいけない言い回し・競合他社への言及等):
このシートに記入した内容をそのままAIへのプロンプトに貼り付ける。シートが完成していれば、AIへの指示は単純で済む。
ステップ2:見出し候補を10案生成させる
見出しはリリースの成否を左右する。記者は1日に数百件のリリースを受け取るため、見出しで記事化の可否を3秒以内に判断する。AIに複数案を生成させ、人間が選ぶ方法が有効だ。
プロンプト例1:見出し生成
以下の情報をもとに、プレスリリースの見出しを10案作成してください。
条件:
- 事実・数値・具体的な変化点を含む
- 30〜40字で収める
- 記者が「読者に伝えたい」と思える表現にする
- 宣伝色の強い形容詞(「画期的」「革命的」「業界初」等)は使わない
【情報整理シートの内容をここに貼る】
生成された10案から3つに絞り、広報責任者に選択を委ねる。候補を並べて判断を仰ぐ形にすることで、承認スピードも上がる。
ステップ3:リード文を生成させる
リード文は「誰が・何を・いつ・なぜ」を1段落に圧縮する。AIはこの構造化が得意だが、主語と数値の正確性は必ず確認する。
プロンプト例2:リード文生成
以下の情報をもとに、プレスリリースのリード文を1段落(150〜200字)で作成してください。
条件:
- 5W1H(いつ・誰が・何を・どこで・なぜ・どのように)を含む
- 最初の文に最も重要な事実を置く
- 受動態を避け、能動的な表現にする
- 敬体(です・ます調)
【情報整理シートの内容をここに貼る】
ステップ4:本文を生成させる
本文には背景・詳細・数値・コメントを盛り込む。AIへの指示には「含めてほしい情報の箇条書き」を添えると出力の精度が上がる。
プロンプト例3:本文生成
以下の情報をもとに、プレスリリースの本文を400〜600字で作成してください。
条件:
- リード文の後に続く段落として書く(リード文は別途作成済み)
- 以下の情報を必ず含める:
1. 製品・サービスの具体的な内容(機能・仕様・価格・発売日等)
2. 開発・導入の背景(市場の課題・数値があれば使う)
3. 代表者のコメント(話者名・役職を明示)
4. 今後の展開・目標
- 「画期的」「業界初」等の根拠のない形容詞は使わない
- 敬体(です・ます調)
【情報整理シートの内容をここに貼る】
業種・用途別のプロンプト変化例
同じ情報整理シートを使っても、業種や目的によってトーンを変える必要がある。以下に代表的な変化点を示す。
スタートアップの新製品発表
追加条件:
- 読者が「なぜ今この会社がこれをやるのか」を理解できる背景を入れる
- 創業者・代表者のコメントに熱量が出るよう、コメントの原文をそのまま使う
- 資金調達や連携先がある場合は具体的な社名・金額を入れる
上場企業の業績・事業計画発表
追加条件:
- 数値は確定値のみ使用し「見通し」と「確定」を明確に区別する
- 法的義務のある開示情報であることを意識し、断定的な将来予測を避ける
- フォーマルなビジネス文体を維持する
イベント・展示会の告知
追加条件:
- 日時・場所・参加方法(URL等)を本文冒頭に配置する
- 参加のメリット(何が得られるか)を具体的に書く
- 問い合わせ先と申込みURLを末尾に明示する
謝罪・訂正リリース(後述のチェックリストと合わせて使う)
追加条件:
- 事実の経緯を時系列で簡潔に述べる
- 当社の責任を明確にした上で、具体的な再発防止策を示す
- 感情的・防衛的な表現を一切使わない
- 法務確認前に出力内容を公開しないこと
危機対応リリースの詳細はSNS炎上・危機対応にAIをどう活かすかで別途解説している。
ステップ5:会社概要と問い合わせ先を付け加える
会社概要と問い合わせ先はテンプレートを持っておくと、毎回AIに生成させる必要がなくなる。ただし担当者名・電話番号・メールアドレスはリリースごとに人間が確認する。
会社概要のテンプレートを持っていない場合は、以下のプロンプトで初版を作れる。
プロンプト例4:会社概要生成
以下の情報をもとに、プレスリリース末尾に掲載する会社概要文を100〜150字で作成してください。
条件:
- 社名・設立年・事業内容・代表者名・所在地を含む
- 過度な自己宣伝を避け、事実情報のみ記述する
会社名:
設立:
事業内容:
代表者名:
本社所在地:
コーポレートサイトURL:
配信前チェックリスト
AIが生成した文章には特定のパターンのミスが起きやすい。配信前に以下を必ず確認する。
数値・固有名詞の確認
- 会社名の正式表記(株式会社・有限会社の位置、英字表記の大文字小文字)
- 製品名・サービス名の正式表記(商標登録済みの場合は™・®マーク)
- 数値の単位・桁(百万円と億円、%と割)
- 日付の表記(2026年6月5日 / 2026/06/05 の統一)
- 担当者名の漢字・読み・役職名
法的・コンプライアンス確認
- 将来予測を含む表現に「見通し」「〜する方針」等の断定回避表現があるか
- 競合他社を直接批判する表現がないか
- 「業界初」「日本初」等の最上級表現に根拠があるか
- 他社の商標を無断で使用していないか
- 個人情報(写真使用許諾含む)に問題がないか
文章品質の確認
- リード文に5W1Hが含まれているか
- 記者が引用できる具体的な数値・事実があるか
- 問い合わせ先が最新の情報になっているか
- 禁止用語・NG表現が入っていないか
承認フロー確認
- 広報責任者の確認
- 法務確認(新製品・事業変更・謝罪リリース等は必須)
- 経営トップの承認(重要度に応じて)
- 配信先リストの確認(対象媒体・担当記者名)
30分で完成させるタイムライン
実際の作業時間の目安は以下のとおりだ。
| 工程 | 担当 | 時間目安 |
|---|---|---|
| 情報整理シートの記入 | 人間 | 10分 |
| 見出し10案生成・選択 | AI→人間 | 3分 |
| リード文生成・修正 | AI→人間 | 3分 |
| 本文生成・修正 | AI→人間 | 5分 |
| チェックリスト確認 | 人間 | 5分 |
| 承認依頼 | 人間 | 随時 |
| 合計(承認待ちを除く) | 26分 |
情報整理シートが完成していることが前提だ。シートが未完成の状態でAIに書かせると、固有名詞の確認工程が増えてかえって時間がかかる。
AIを使うとき・使わないとき
AIが得意なのは「構造が決まっていて、インプット情報が明確な文書の初稿生成」だ。プレスリリースはこの条件を満たしている。一方、以下の判断はAIではなく人間が行う。
- 何を今発表すべきか・すべきでないかの戦略判断
- 記者との個別関係をふまえたトーン調整
- 法的リスクの判断と対応方針
- 最終的な発信責任
広報業務全般でのAI活用についてはAIを使った広報の実務活用ガイドでも解説している。また、個別の広告コピー制作にAIを使う場面についてはAIで広告コピーを作る方法が参考になる。
まとめ
プレスリリース作成にAIを使う場合、「情報整理→AI生成→ファクトチェック→承認」の4ステップを守ることが基本だ。AIは初稿生成を速くする道具であり、数値・固有名詞・法的表現の確認と最終承認は人間の仕事として残る。情報整理シートを事前に完成させることが、AIアウトプットの品質を左右する最大の要因だ。
本記事で示した4本のプロンプトと配信前チェックリストをそのまま使えば、慣れていない担当者でも30〜60分での初稿完成が現実的になる。
よくある質問
AIでプレスリリースを作るとどれくらい速くなりますか?
従来2〜3時間かかっていた初稿作成が30〜60分になるケースが多い。ただしAIの出力には数値・固有名詞・法的表現の確認が必要で、レビュー工程は省略できない。
プレスリリースをAIで書く際の注意点は何ですか?
会社名・製品名・担当者名・数値の正確性は必ず人間が確認する。また社外に出る文書であるため、法務・経営の承認フローを省略してはいけない。AIは初稿を速くする道具であり、最終承認は人間が行う。
プレスリリースのタイトルはAIで作れますか?
複数案を生成させて選ぶ方法が有効。「事実・数字・具体的な変化を含む見出し候補を10案」と指示すると、記者が使いやすいタイトルの候補が出てくる。最終選択は人間が行う。