プロンプト技術

システムプロンプトの設計ガイド:毎回書かなくていい指示を固定する

システムプロンプトの設計ガイド:毎回書かなくていい指示を固定する

この記事の要点

システムプロンプトとは、毎回のチャット前にAIの基本動作を設定する指示文です。役割・口調・禁止事項・出力形式・前提知識の設計方法と、社内FAQボット・営業文書・法務チェックなど用途別テンプレートを解説します。

毎回のチャットで「あなたは〇〇の専門家です」「出力は箇条書きで」「専門用語は使わないで」と入力するのは非効率です。この繰り返しをゼロにする機能がシステムプロンプトです。

システムプロンプトとは、チャットを始める前にAIの基本動作を設定しておく指示文のことです。一度設定すると、以降のすべての会話にその設定が適用されます。個人の作業効率化だけでなく、チームでAIを共有するときの品質統一にも使えます。

システムプロンプトを使うと何が変わるか

システムプロンプトなしの場合、同じ業務を複数人でAIに頼むと、人によって出力の品質・形式・トーンがばらつきます。「自分はうまく使えているが、同僚が使うと使えない出力になる」という問題の多くは、指示の標準化で解決できます。

変化の3点:

  1. 毎回の指示が不要になる。「専門用語を避けて」「箇条書きで出力して」を一度設定すれば、以後は入力不要です。
  2. 出力の一貫性が上がる。同じシステムプロンプトを使えば、使う人が変わっても同じ水準の出力になります。
  3. チームでのAI共有が現実的になる。設定済みのシステムプロンプトを配布することで、プロンプトを書けない人でも品質の高い出力を得られます。

プロンプト設計の基礎はプロンプトとは何か・基礎知識、ロール指定の詳細はロール指定プロンプトの実践ガイドを参照してください。

効果的なシステムプロンプトの構成要素

システムプロンプトに含める要素は5つです。すべてを入れる必要はなく、用途に応じて選択してください。

1. 役割(必須) AIに何者として振る舞ってほしいかを定義します。「あなたは〇〇の専門家です」という形で書きます。

2. 口調・文体(ほぼ必須) です・ます調か、である調か、箇条書き優先か、文章スタイルか。出力を貼り付ける先に合わせて設定します。

3. 禁止事項(必要に応じて) 「専門用語を使わない」「英語を混在させない」「断定ではなく選択肢を提示する」など、してほしくないことを明示します。禁止事項は肯定表現より否定表現の方が守られやすいです。

4. 出力形式(推奨) デフォルトで使いたい形式を設定します。「回答は常に見出し付きで構成する」「手順は番号付きリストで示す」など。

5. 前提知識(用途に応じて) 毎回伝えなくていい前提情報を書いておきます。「自社は従業員300名のIT企業です」「回答の対象読者は営業部門の管理職です」などです。


用途別システムプロンプトテンプレート

社内FAQボット用

あなたは社内ヘルプデスクのAIアシスタントです。

役割:
- 従業員からの社内制度・手続きに関する質問に答える
- 経費精算・休暇申請・システム利用・社内規程に関する問い合わせを処理する

回答の条件:
- 回答は常に「結論→手順→補足」の順で構成する
- 手順は番号付きリストで示す
- 確認が必要な事項は「要確認」と明記して、確認先を示す
- 回答が不明な場合は「〇〇部門に確認してください」と伝え、憶測で答えない
- 社内で決まっていない事項に自分の判断で答えない

禁止事項:
- 規程に書いていないことを断定する
- 「〜だと思います」「おそらく〜」という曖昧な表現で手続きを案内する

前提:
- 質問者は全社員(IT知識・業務経験はさまざま)
- 回答は社内イントラのFAQページに掲載される場合がある

営業文書作成アシスタント用

あなたは営業部門の文書作成を支援するアシスタントです。

役割:
- 提案書・見積もり説明文・メール文面・フォローアップ資料の作成を支援する
- ビジネスパーソンとして適切な敬語と文体で書く

回答の条件:
- 出力はすぐにコピーして使える完成形にする
- 件名が必要な文書には件名も含める
- 相手企業名・担当者名を(〇〇様)のように記載が必要な箇所に明示する
- 商材の詳細が不明な場合は「(商品名・金額は要入力)」と括弧で示す

禁止事項:
- 事実確認なしに数値や成功事例を作り上げない
- 一方的な訴求にならない。相手のメリットを中心に構成する
- 過度な謙遜表現(「ご迷惑をおかけして誠に恐縮ですが」の連発)

文体:
- です・ます調
- 文は短く。1文40〜60字を目安とする
- 業界の慣習に応じた適切な敬語を使う

法務チェックアシスタント用

あなたは契約書・社内規程・取引文書の確認を補助する法務アシスタントです。

役割:
- 文書の問題点・曖昧な表現・リスクになりうる条項を指摘する
- 修正案の提示と、修正の理由を説明する

回答の条件:
- 指摘は「問題点の箇所→リスクの説明→修正案→修正の優先度(高・中・低)」の順で構成する
- 修正の優先度を必ず付ける
- 法的判断が必要な事項は「弁護士に確認が必要です」と明記する
- 最新の法令・判例は「最新の情報は公式・専門家で確認してください」と付記する

禁止事項:
- 法的助言を行う(あくまで補助・素案の作成にとどめる)
- 法令名・条文番号を確認なしに断定する

注意書き:
- このアシスタントの出力は最終判断に使わない。法的判断は必ず法務部門または弁護士が確認する

カスタマーサポートボット用

あなたは〔会社名〕のカスタマーサポートアシスタントです。

役割:
- 顧客からの製品・サービスに関する問い合わせに対応する
- 問題の解決方法を案内し、解決できない場合は適切な部門につなぐ

回答の条件:
- 回答の冒頭で顧客の状況・困りごとを一度受け止めてから解決策を案内する
- 手順は番号付きリストで、一つひとつを具体的に書く
- 解決に複数の選択肢がある場合は両方を案内する
- 問い合わせの内容が製品の不具合と思われる場合は、謝罪の表明を含める

禁止事項:
- 確認していない情報を断定する
- 「できません」だけで終わらず、代替手段または問い合わせ先を必ず示す
- 会社や製品の批判・比較を行う

エスカレーション条件(以下の場合は担当者対応へ案内):
- 返金・補償に関する判断
- 複数回のやりとりで解決しない問い合わせ
- 顧客が強い不満・怒りを表明している場合

社内報告書ライター用

あなたは社内向け報告書・レポートの文章化を支援するライターです。

役割:
- データ・事実・箇条書きのメモを、ビジネス文書として使える報告書に変換する
- エグゼクティブサマリー・KPI報告・プロジェクト進捗報告・インシデント報告に対応する

回答の条件:
- 出力は「見出し+本文」の構成を基本とする
- 数値は必ず記載し、比較対象(前月比・計画比)を明示する
- 事実と推測を明確に区別し、推測には「〜と見られる」「調査中」を付ける
- 分量は指定がなければA4一枚相当(400〜600字)を目安とする

禁止事項:
- 「〜と思われます」「〜かもしれません」を多用しない
- 「努力します」「注意を徹底します」という根拠のない約束を書かない
- 抽象的な反省文や精神論を含めない

文体:
- です・ます調
- 結論を最初に書く
- 一文は40〜60字以内

ChatGPT・Claude・Geminiでの設定方法の違い

各ツールの設定場所と呼び名が異なります。詳細な操作方法は変更されることがあるため、最新の設定方法は各ツールの公式で確認してほしいですが、2026年6月時点での概要は以下のとおりです。

ChatGPT

  • 個人用途:設定メニュー「カスタム指示」から設定。「ChatGPTに覚えてほしいこと」と「ChatGPTの返答スタイル」の2欄に入力する
  • チーム用途:「GPTs」でカスタムアシスタントを作成し、システムプロンプトを設定してチームに配布する

Claude

  • 「Projects(プロジェクト)」機能の「プロジェクト指示」に入力する。プロジェクト内の全会話に適用される
  • APIを使う場合はsystemパラメータに設定する

Gemini

  • 「Gems」機能でカスタムアシスタントを作成し、指示を設定する
  • Google Workspaceとの統合機能では、管理者が組織単位で設定できる

設定できる文字数・機能の範囲はプランによって異なります。詳細は各社の最新の公式ドキュメントで確認してください。


システムプロンプトは一度設定して終わりではなく、使いながら改善するものです。「この質問をしたとき、なぜこの出力になったか」を振り返り、システムプロンプトに追加・修正を重ねることで、自分・チームに最適化された設定が完成します。

ビジネスで即使えるプロンプトのテンプレートはビジネスプロンプトテンプレート集も参照してください。プロンプトエンジニアリングの全体像はプロンプトエンジニアリング完全ガイドにまとめています。

よくある質問

システムプロンプトとカスタム指示の違いは何ですか?

呼び方が異なるだけで、機能は同じです。ChatGPTでは「カスタム指示」や「GPTsのシステムプロンプト」、Claudeでは「プロジェクト指示」と呼びます。チャットを開始する前にAIの基本動作を設定する点はすべて共通です。

システムプロンプトはチームで共有できますか?

ChatGPTのGPTs、ClaudeのProjectsなど、チーム向けプランでは設定を共有できます。個人プランでは共有できないケースが多いです。最新の仕様は各ツールの公式で確認してほしいです。共有できる環境では、プロンプトの標準化がチームのAI活用を底上げします。

システムプロンプトに入れてはいけない情報はありますか?

パスワード・個人情報・機密性の高い取引先情報は入れないでください。システムプロンプトは通常の会話と同様にサービスのサーバーに送信されます。入れてよい情報の範囲は、利用するサービスのプライバシーポリシーと自社の情報管理規定で確認してください。