職種別AI活用

役員会・取締役会資料をAIで作る方法——経営企画の資料作成を半分の時間で

役員会・取締役会資料をAIで作る方法——経営企画の資料作成を半分の時間で

この記事の要点

経営企画担当がAIを使って役員会・取締役会向けの資料(事業進捗・意思決定支援・戦略提案)を効率的に作る方法を解説。構成テンプレートと実例プロンプト付き。

結論

役員会・取締役会向け資料の作成でAIを使うと、データ整理から文章化まで半日かかっていた作業が2〜3時間に短縮できる。AIが担うのはデータの構造化・スライド文章の整理・論点の可視化であり、数値の正確性確認・リスクの明示・最終的な経営判断の根拠設定は人間が行う。役員向け資料は経営意思決定に直結するため、AIの出力をそのまま使うのではなく、人間のレビューと修正を必ず経ることが前提だ。


役員会資料に求められる3つの要素

役員・取締役が役員会資料に求めるのは大きく3点だ。

  1. 結論が明確: 何を決めてほしいか・何が起きているかが冒頭でわかる
  2. 根拠が具体的: 数値・事実・比較情報が含まれる
  3. アクションが明示: 次に何をするか・誰が何をするかが書いてある

AIを使った資料作成でも、この3要素を満たすことを常に目標とする。AIは「構造を整える」のが得意であり、この3要素に沿った構造を素早く作ることができる。


役員会資料の全体構成

エグゼクティブサマリー・本論・付録の設計

役員会資料は「エグゼクティブサマリー(1〜2ページ)→本論→付録(詳細データ)」の三層構造が標準的だ。

パート目的ページ数の目安
エグゼクティブサマリー全体の結論・重要指標・決議事項の一覧1〜2ページ
本論各議題の詳細・根拠・オプション10〜20ページ
付録詳細データ・補足説明・前提条件資料による

AIを使った構成設計のプロンプトを以下に示す。

【依頼】
以下の役員会向けに、資料の全体構成(目次案)を作成してください。

【会議の目的】
2026年度第2四半期業績報告と、新規事業投資の意思決定

【議題】
1. Q2業績報告(売上・利益・KPIの進捗)
2. 下半期の業績見通し修正
3. 新規事業A(投資2億円)の承認

【参加者】
社内取締役5名・社外取締役2名・監査役2名

【制約】
全体90分・説明60分・質疑30分

【出力】
・目次(各議題のスライドタイトル案と枚数)
・各パートの時間配分案

データ整理と数値チェックのフロー

AIに渡す前に数値を確認する

役員会資料で使う数値は、AIに渡す前に人間が確認を完了させておく。AIは数値の計算や整合性チェックを依頼できるが、数値の「正しさ」はAIが判断できない。

実務的なフローは以下だ。

  1. 基幹システム・ExcelからKPIデータをエクスポートする
  2. 前月・前年・計画値との比較数値を人間が計算・確認する
  3. 確認済みの数値をAIに渡し、表形式・グラフ説明文の作成を依頼する
  4. AIが生成した文章を数値と照合し、誤りがないか確認する

この手順を省いてAIに「数値を入れて資料を作って」と依頼すると、数値の読み違い・転記ミスが生じるリスクがある。

月次KPIサマリーのAI生成

確認済みのKPI数値をAIに渡して、月次報告の文章を生成させる。

【依頼】
以下の数値をもとに、役員向け月次業績報告のエグゼクティブサマリー
(3〜5文)を作成してください。

【2026年5月実績】
・売上: 2億3,500万円(計画比+3.2%・前年同月比+8.7%)
・営業利益: 2,800万円(計画比-1.4%・前年同月比+12.5%)
・新規契約件数: 47件(計画比+2件・前年同月比+9件)
・解約件数: 8件(計画比+2件)
・MRR: 1億2,300万円(前月比+2.1%)

【文章の要件】
・最も重要な指標の変化を最初に述べる
・計画対比と前年対比の両方を含める
・懸念事項(計画未達の指標)を率直に含める
・役員の次のアクションに繋がる1文を最後に加える

異常値・課題の明示

AIは「うまくいっていること」を前面に出しがちだ。役員向け資料には課題・リスク・懸念点を明示する責任がある。

【依頼】
以下のKPIデータを分析し、特に注意すべき指標と考えられる原因を整理してください。

【指標一覧】
(確認済みのKPIデータを貼り付ける)

【注目してほしい観点】
・計画を2ヶ月以上連続して下回っている指標
・前年同期比で悪化している指標
・他の指標と矛盾している指標(例: 売上増なのにキャッシュフロー悪化)

【出力形式】
問題のある指標→考えられる原因(2〜3案)→確認すべき事項

スライド文章の整理・簡潔化

「長い文章を短くする」AIの使い方

事業部から受け取った報告文章は長くなりがちだ。AIを使って役員向けに圧縮する。

【依頼】
以下の文章を、役員会スライド(1スライド・3〜4文)向けに圧縮してください。

【元の文章】
(事業部から受け取った長い報告文章をここに貼り付ける)

【圧縮の方針】
・最重要の事実と数値のみ残す
・背景説明は削除(口頭で補足する)
・結論・課題・次のアクションの順で構成する
・主語を明確にする(「弊部門では」ではなく「営業部門が」)

箇条書きから文章への変換

箇条書きでまとめた情報をスライドの文章に変換する用途にもAIが使える。

【依頼】
以下の箇条書き情報を、役員会スライドの本文テキスト(4〜5文)に変換してください。

【箇条書き情報】
・東南アジア展開の調査完了(インドネシア・ベトナム・タイの3カ国)
・インドネシアが最有力候補(市場規模・競合状況・規制の3軸で評価)
・現地パートナー候補3社と非公式協議済み
・2026年Q4の現地法人設立を推奨

【文章の要件】
・判断の根拠(3軸評価)を具体的に述べる
・推奨案とその理由を明確にする
・役員に判断してほしいこと(意思決定事項)を最後に明示する

意思決定支援資料の構成

選択肢・評価軸・推奨案の構造化

取締役会への意思決定支援資料(投資判断・重要施策の承認など)では、「複数の選択肢→評価軸での比較→推奨案と根拠」の構造が基本だ。

【依頼】
以下の意思決定について、取締役会向けの意思決定支援資料の構成を作成してください。

【意思決定の内容】
新規事業(SaaS新製品)への投資判断(総額2億円・3年間)

【選択肢】
A案: 自社開発(期間18ヶ月・コスト2億円・リスク: 開発遅延)
B案: 企業買収(小規模スタートアップ・買収額1.5億円・シナジーリスクあり)
C案: 合弁会社設立(相手企業あり・投資1億円・意思決定スピード低下)

【資料の要件】
1. 各選択肢の概要・メリット・リスクの一覧表
2. 評価軸(財務・速度・リスク・戦略適合)での比較
3. 推奨案と根拠(3〜4文)
4. 懸念事項と前提条件
5. 判断に必要な追加情報の確認依頼

このプロンプトで生成した骨格を人間がレビューし、自社固有の情報・数値・リスク評価を追加する。

リスクの明示と対応策

AIは「推奨案」を提示する際にリスクを軽視した記述になることがある。役員向け資料ではリスクの明示を必ず人間が確認し、必要に応じてAIに追加させる。

【依頼】
以下の推奨案に対して、取締役会で問われる可能性の高いリスクと
それに対する対応策を整理してください。

【推奨案の概要】
(前の手順で作成した推奨案の概要をここに貼り付ける)

【リスク整理の要件】
・財務リスク(想定コスト超過・収益未達の場合の影響)
・実行リスク(人材・スケジュール・技術の課題)
・市場リスク(競合の動向・市場縮小の可能性)
・各リスクの発生確率(高/中/低)と影響度(大/中/小)
・リスク軽減策と「撤退条件」(どうなったら止めるか)

月次・四半期報告のテンプレート化

繰り返し使えるテンプレートを作る

月次・四半期の業績報告資料は毎回似た構成で作られる。一度AIでテンプレートを作り、繰り返し使う仕組みを作ると生産性が大きく上がる。

【依頼】
以下の月次業績報告スライドの「テンプレート文章」を作成してください。
数値部分は[XX]のプレースホルダーにしてください。

【テンプレートが必要なスライド】
1. エグゼクティブサマリー(主要KPIと前月比・計画比の概況)
2. 売上・利益の進捗(計画・前年・実績の三軸比較)
3. 重点施策の進捗(施策名・完了率・課題)
4. 来月の重点アクション

【文章の要件】
・各スライド4〜6文
・プレースホルダーは[売上実績][計画比][前年比]のように具体的な名前をつける
・「懸念事項は〇〇であり、〇〇の対応を実施中」の形で課題を含める

テンプレートが完成したら、毎月の報告作成では「数値を埋めてAIに文章を整えてもらう」フローで標準化できる。


想定質問の準備

役員からの質問をAIで事前予測する

資料作成と並行して、役員・社外取締役から想定される質問を準備しておくと当日の対応が安定する。

【依頼】
以下の役員会資料の概要をもとに、取締役・社外取締役から質問される可能性の
高い事項を10〜15問予測してください。

【資料の概要】
(議題・主要な数値・推奨案の概要を箇条書きで入力する)

【質問の種類】
1. 数値の根拠を問う質問(「この成長率の前提は?」)
2. リスクを問う質問(「最悪のシナリオは?」)
3. 代替案を問う質問(「他の手段は検討したか?」)
4. 社外取締役が聞きやすい一般的な質問(「業界の平均値は?」)
5. 実行可能性を問う質問(「リソースは確保できているか?」)

想定質問ができたら、各質問への回答を自分で準備する。回答の文章化にもAIを使えるが、内容の正確性は自分で確認する。

経営陣との会議準備のより詳しい手順については 役員・経営陣との会議をAIで準備する方法 を参照してほしい。


AIを使う際の承認フローと注意点

数値確認の承認フロー

役員会資料に使う数値は、以下の確認フローを経てから資料に含める。

  1. 基幹システム・Excelの原データから数値を取得する
  2. 計算式・集計方法を確認する(AIへの入力前)
  3. AIに文章生成を依頼する
  4. 生成された文章の数値を原データと照合する
  5. 直属上長または財務担当者にレビューを依頼する
  6. 修正後、最終版を確定する

AIが生成した文章は「数値が合っているように見えても計算が違う」ことがある。特に「前年同月比+〇%」「計画比△%」などの比率計算は必ず確認する。

機密情報の取り扱い

役員会・取締役会資料には未公開の財務情報・M&A情報・重要な経営判断が含まれることが多い。社外の汎用AIサービスへの入力は厳禁だ。

使用できるAI環境の判断基準については 企業のAIデータ管理ポリシー策定ガイド で詳しく解説している。

AIが生成した楽観的表現の修正

AIは推奨案を提示する際に、リスクを軽視した楽観的な表現になることがある。取締役会資料では以下の表現を使ってはいけない。

  • 「〜は確実に達成できます」(不確実な将来を断定している)
  • 「リスクは軽微です」(根拠なくリスクを矮小化している)
  • 「すべての課題は解決できます」(根拠のない楽観論)

AIが生成した文章を役員会資料に使う前に、楽観的すぎる表現がないかをチェックし、リスク・前提条件を明示する文章に修正する。


まとめ: 役員会資料作成のAI活用手順

役員会資料作成でのAI活用を手順としてまとめる。

  1. 会議の目的・議題・参加者を整理し、AIに全体構成の骨格を生成させる
  2. 数値データを人間が確認・計算してからAIに渡す
  3. AIにスライド文章の生成・圧縮・構造化を依頼する
  4. 生成した文章の数値整合・リスク表現・楽観的表現を人間がチェックする
  5. 意思決定支援資料では選択肢比較表をAIで作り、推奨根拠を人間が補強する
  6. 想定質問の予測をAIに依頼し、回答を自分で準備する
  7. 機密情報は社内承認済みのAI環境のみ使用する

AIを使うことで、経営企画担当者が「資料の骨格と文章を作る作業」から「内容の正確性と論理整合を確認する作業」に集中できるようになる。役員会・取締役会の資料品質を維持しながら、作成時間を大幅に短縮することが可能だ。

よくある質問

役員向け資料の作成にAIはどう使えますか?

データの整理・スライドの文章化・論点の構造化にAIが使える。経営陣が知りたい「結論・根拠・アクション」を素早く構造化することが可能だ。数値の正確性確認と最終的な論理整合の確認は人間が行う。

取締役会資料で使ってはいけない表現はありますか?

根拠のない断定表現・過度に楽観的な予測・リスクを隠した表現は避ける。AIは時として楽観的な表現を生成しがちなため、経営判断に使う資料は特にリスク・前提条件の明示を人間が確認する。