職種別AI活用

経営企画がAIで仕事を変える方法——市場調査・事業計画・意思決定支援まで実践ガイド

経営企画がAIで仕事を変える方法——市場調査・事業計画・意思決定支援まで実践ガイド

この記事の要点

経営企画担当がAIを使って市場調査・事業計画書作成・競合分析・経営資料作成を効率化する具体的な手順を解説。実例プロンプト付き。

結論

経営企画担当がAIを使うと、市場調査の初期整理が半日から2時間に、事業計画書の構成作成が1日から2〜3時間に短縮できる。ただしAIが出すのはあくまで「土台」であり、数値の正確性・戦略の妥当性は人間が担保する必要がある。


市場調査・情報収集でのAI活用

経営企画の業務で最も時間がかかる工程の一つが、市場調査の情報収集・整理だ。AIを使うと、既存の公開情報をもとにした整理が大幅に速くなる。

市場概要の初期整理

新規事業の検討や中期計画の策定時に、「まずその市場の全体像を把握したい」という場面でAIが役立つ。

以下のテーマについて、事業検討の初期段階で把握すべき市場概要を
整理してください。

【テーマ】
日本の中小企業向けクラウド会計ソフト市場

【含めてほしい内容】
1. 市場規模感(概算・参考情報として、出典明示)
2. 主要プレイヤーと各社の特徴
3. ユーザー(中小企業)のニーズ・課題
4. 市場のトレンドと成長ドライバー
5. 規制・法律面での留意事項

【注意】
数値は参考値であることを明示し、最新情報は一次情報で確認することを前提として。

AIが出した情報は必ず一次情報で確認する。市場規模・シェアの数値は矢野経済研究所・IDCジャパン・業界団体の統計を参照し、AIの数字をそのまま社内資料に使わないことが鉄則だ。

競合分析の初稿作成

競合他社の分析資料を作るとき、各社の公開情報(IR・プレスリリース・採用ページ等)をAIに渡して整理させる使い方が効率的だ。

以下の情報をもとに、競合分析の表を作成してください。

【分析対象】
A社・B社・C社(各社の公式サイト・IR情報を貼り付ける)

【比較軸】
- ビジネスモデル(BtoB/BtoC、課金形態)
- ターゲット顧客層
- 主要製品・サービス
- 強み・差別化ポイント
- 直近の動き(新機能・資金調達・提携など)
- 公開されている財務指標(売上・ARR等)

【形式】
表形式で整理し、各社の概評を100字以内で付ける

この出力を叩き台として、担当者が各社のサイトや記事を実際に読んで補足・修正する。AIは情報の整理を速くするが、情報の正確性は人間が確認する。


事業計画・戦略資料の作成

事業計画書の構成作成

新規事業計画や年次の事業計画書の構成をゼロから作るのは時間がかかる。AIを使うと目次と各章の骨子を短時間で作れる。

以下の条件で、取締役会提出用の新規事業計画書の構成を作成してください。

【事業の概要】
中小企業向けのAI活用コンサルティングサービスの立ち上げ

【想定読者】
社内の取締役会(経営判断が目的)

【資料に含めてほしいセクション】
1. エグゼクティブサマリー(1〜2ページ)
2. 市場・顧客分析
3. 事業コンセプトと提供価値
4. 競合分析とポジショニング
5. 事業モデルと収益構造
6. 3年間の財務計画(概算)
7. 実行計画とマイルストーン
8. リスクと対策
9. 必要なリソース・投資

【各セクションには】
- セクションのねらい(1行)
- 含めるべき主要論点(箇条書き)

この骨格に、自社固有の数値・仮説・戦略的判断を肉付けするのが人間の仕事だ。AIが出す構成は汎用的であるため、自社の状況・強み・制約を加えることで独自の計画書になる。

中期経営計画のシナリオ作成

複数のシナリオを検討する場面でも、AIが初期の論点整理に使える。

以下の前提条件で、中期経営計画(3年)の検討シナリオを作成してください。

【前提】
- 現在の年商: 20億円
- 主力事業: 製造業向け業務システム
- 課題: 既存顧客の更新率低下、新規開拓の停滞

【検討してほしいシナリオ】
1. 現状維持シナリオ(現事業の深耕)
2. 隣接領域展開シナリオ(関連サービスへの拡張)
3. 新規市場参入シナリオ(異業種・新ターゲット)

【各シナリオに含める内容】
- 戦略の概要
- 主要施策(3〜5個)
- 想定される財務インパクトの方向性
- リスクと前提条件

このシナリオをもとに、経営チームで議論するための素材が早く用意できる。重要なのは、このシナリオが「議論の起点」であって「答え」ではないことだ。


役員会・取締役会資料の作成

プレゼン資料の文章整理

スライドの文章作成では「何を言うか」は決まっているが「どう書けばいいか」が詰まることがある。AIは文章の整理と簡潔化に使える。

以下の資料の内容を、役員会向けのプレゼンスライドで使える文章に整理してください。

【スライドのテーマ】
2026年Q1の事業進捗レポート

【伝えたい主な内容】(メモ形式)
- 売上は計画比98%でほぼ想定通り
- 新規顧客獲得数は目標を20%上回った
- 既存顧客の解約率が0.5%上昇(業界平均は1.5%なので許容範囲)
- Q2に向けて大型案件2件が最終交渉段階

【スライドの制約】
- 1スライド1メッセージ
- 箇条書きは3点以内
- 数字は具体的に

【出力形式】
各スライドのタイトルと本文を分けて出力

役員向け資料は数字の正確性が特に重要だ。AIが整理した文章中の数値は、原データと必ず照合してから提出する。

議事録・会議サマリーの作成

役員会・経営会議の議事録は、文字起こし後にAIで整理することで作成時間を大幅に削減できる。

以下は役員会議の文字起こしです。
次の形式で議事録を作成してください。

1. 出席者(記載されていれば)
2. 議題一覧
3. 各議題の討議内容(決定事項・保留事項・担当者・期限)
4. 次回確認事項

【注意】
発言の順番より「決まったこと」「決まらなかったこと」を明確にする。
誰が何を発言したかの記録ではなく、会議の結果と次のアクションを中心に。

[文字起こしを貼り付ける]

経営データの分析・解釈補助

Excelや財務システムからエクスポートした集計データをAIに渡し、傾向の解釈や仮説の提示を補助させる使い方が有効だ。

以下は過去12ヶ月の事業部別売上データです(CSV形式)。
経営企画として月次報告に使う視点で、注目すべきトレンドと
その解釈・仮説を提示してください。

[CSVデータを貼り付ける]

特に分析してほしいこと:
- 事業部別の成長率の差
- 季節性の有無
- 前年同期との比較
- 計画比との乖離が大きい部分

この分析はあくまで「仮説の起点」だ。AIが提示した解釈の背景にある事情(組織変更・市場環境の変化・特定顧客の影響など)は、社内の状況を知る人間が確認する。

個人情報・未公開財務情報の取り扱いには注意が必要だ。詳細は企業のAI情報漏洩対策を参照してほしい。


M&A・アライアンス検討の情報整理

新規事業やアライアンス検討の初期調査フェーズで、公開情報の整理にAIが使える。

以下の企業の公開情報をもとに、アライアンス検討のための情報整理表を作成してください。

【対象企業】
株式会社○○(公式サイト・プレスリリース・IR情報を貼り付ける)

【整理してほしい観点】
- 事業概要と強み
- 顧客基盤の特徴
- 技術・製品の特長
- 財務状況(公開情報の範囲で)
- 自社との補完関係・シナジーの可能性
- リスク・懸念事項

M&A・業務提携の検討は機密情報を扱うため、社外AIへの入力は公開情報のみに限定する。内部の評価・戦略メモは社外サービスに入力しない。


活用する際の注意点

数値の正確性:AIが出す市場規模・統計数値は古いか不正確な場合がある。事業計画や経営資料に使う数値は必ず一次情報で確認する。

機密情報の管理:未公開の戦略・財務計画・M&A情報は社外AIに入れてはいけない。社内で承認されたAIツール・プランのみを使う体制を整える。

戦略の丸投げ禁止:「来期の事業戦略を考えて」とAIに聞いても、自社の文脈を持たない一般論しか返ってこない。AIに渡す情報の質が高いほど、出力の質も上がる。状況と前提をしっかり渡すことが重要だ。

意思決定の最終責任:経営判断はAIではなく人間が行う。AIの出力は分析の素材であり、「AIがそう言った」は意思決定の根拠にならない。


まとめ

経営企画にとってAIは「情報を速く整理する道具」として最も価値を発揮する。市場調査・競合分析・計画書の構成・会議サマリーなど、情報を集めて構造化する工程を速くすることで、戦略的思考と議論に使える時間が増える。

まず試すとすれば、次の競合分析の初稿をAIに作らせることか、直近の役員会議の文字起こしをAIで議事録にまとめることだ。時間の投資対効果が大きい場面から始め、使える場面を広げていくのが現実的な進め方だ。

よくある質問

経営企画の仕事でAIは何に使えますか?

市場調査の情報整理、事業計画書の構成作成、競合分析の初稿整理、役員会プレゼン資料の文章作成、議事録の要約が効率化しやすい。情報収集・整理の工程が半分以下になるケースが多い。

AIに市場規模の数字を聞くと正確ですか?

正確ではない。AIの学習データに含まれる情報は最新とは限らず、市場規模の数字は特に古くなりやすい。AIが出した数字は必ず一次情報(矢野経済研究所・IDC・業界団体の統計等)で確認してから使う。

事業計画書をAIに作ってもらえますか?

構成・目次・各章の骨子まではAIが作れる。ただし数値前提・市場仮説・戦略の方向性は自社の状況と判断が不可欠であり、そこは人間が埋める。AIは叩き台を速く作る道具であり、計画そのものは人間が作る。

機密の事業情報をAIに入れてもいいですか?

未公開の事業計画・M&A情報・財務数値などは社外のAIサービスに入れてはいけない。社内で承認されたAIプランや自社環境のみを使う。詳細は社内のAI利用ポリシーを確認すること。