カスタマーサポートの用語集をAIで作る方法
この記事の要点
AIを使えば、サポート現場の専門用語・社内略語・製品固有の言葉を体系的にまとめた用語集を短時間で作れる。新人研修や引き継ぎに役立つ用語集の作り方と手順を解説する。
結論
カスタマーサポートの用語集をAIで作ると、ゼロから書き出すより大幅に速く完成する。業界共通の用語はAIが自動生成できるため、担当者は社内固有の略語や製品特有の言葉の追記に集中できる。完成した用語集は新人研修の時間短縮と、担当者間のコミュニケーション品質の標準化に役立つ。
使うAIツール
用語集の作成に使いやすいツールは以下のとおり。
| ツール | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 用語の定義文生成と整理が得意 | 汎用的な用語集のたたき台 |
| Claude | 長文マニュアルや規約からの用語抽出が得意 | 既存ドキュメントを元にした用語集作成 |
| Notion AI | Notionページとして直接管理できる | チームのNotionに用語集を組み込むとき |
| Gemini | Googleドキュメントとの連携が便利 | Google環境で管理するとき |
用語集を管理するツールと同じ環境のAIを選ぶと、コピー・貼り付けの手間が省けて作業が一気通貫になる。
手順:AIで用語集を作る
ステップ1:収録する用語の範囲を決める
用語集の目的と対象を明確にする。範囲があいまいなまま作ると、後から「これも入れるのか、これは除外するのか」という問題が発生する。
代表的な用語のカテゴリは以下のとおり。
- 業界共通用語:チケット・エスカレーション・SLA・FCR・NPSなど
- 社内略語:部署名の略称・使用ツールの略称・社内プロジェクト名など
- 製品・サービス固有の用語:機能名・プラン名・用語の定義
- 対応フローの用語:受付・トリアージ・クローズ・保留などのステータス
- 顧客属性の用語:法人顧客・個人顧客・プレミアムプランユーザーなど
初めて作る場合は「業界共通用語」と「製品固有の用語」を優先すると、実務に役立つ用語集が早く完成する。
ステップ2:AIに用語のたたき台を生成させる
以下はコピーして使えるプロンプト例。
あなたはカスタマーサポートの専門家です。
以下のサービス・業務の情報をもとに、サポート担当者向けの用語集を作成してください。
【サービス・業務の情報】
[サービス名・業種・主な問い合わせ内容などを記入]
[使っているサポートツール(例:Zendesk、Salesforceなど)を記入]
[対応している顧客の種類(BtoB/BtoC・国内のみ/海外含むなど)を記入]
【収録する用語のカテゴリ】
- サポート業界の基本用語
- チケット管理・対応フローの用語
- 顧客対応の品質指標(KPI)に関する用語
- [自社サービス固有の用語があれば追記]
【出力形式】
各用語について以下を含めてください:
- 用語名
- 読み方(カタカナ・ひらがな)
- 定義(1〜2文)
- 使用例(実際のサポート業務での使い方の例)
- 関連する用語(あれば)
カテゴリ別に整理し、50用語程度を作成してください。
ステップ3:既存ドキュメントから用語を抽出する
すでに社内マニュアル・FAQ・対応フロー資料がある場合は、それをAIに渡して「この資料に出てくる用語を抽出してリスト化してください」と依頼できる。
以下は既存ドキュメントからの用語抽出プロンプト。
以下のドキュメントに含まれる専門用語・業界用語・社内用語を抽出し、
用語集の形式に整理してください。
【ドキュメント】
[社内マニュアルや対応フロー資料の本文をここに貼り付ける]
抽出の条件:
- 新人担当者が意味を知らない可能性がある言葉を優先する
- 一般的すぎる言葉(例:「電話」「顧客」など)は除外する
- 同じ用語が複数の表記で登場する場合は、表記ゆれも記録する
出力形式は「用語名・定義・使用例」の3点セットで作成してください。
ステップ4:社内固有の用語を担当者が追記する
AIが生成した用語集には、以下の情報は含まれないため、担当者が追記する。
- 社内でしか使わない略語(例:「CS」が顧客サービスなのかカスタマーサクセスなのかは会社によって異なる)
- 製品の機能名・プラン名
- 社内システムの名称
- チームのルールや慣習に関する言葉
追記する際に、AIに「以下の用語について、他の用語と同じフォーマットで定義文と使用例を作ってください」と依頼すると、追記する用語の説明文をスムーズに作れる。
ステップ5:定期的に更新するサイクルを作る
用語集は一度作って終わりではなく、定期的な更新が必要。更新のタイミングとしては以下が多い。
- 新製品・新機能のリリース時
- 対応フローの変更時
- 新人からの「この言葉の意味が分からない」というフィードバックが来たとき
- 四半期に1回の定期見直し
更新の際もAIが使える。「この用語集のうち、最新の対応フロー変更に合わせて修正が必要なものを教えてください」とAIに聞いたり、「新しく追加されたこの機能に関連する用語を用語集に追加してください」と依頼したりできる。
具体的な活用例
例1:新人研修の準備時間を短縮したテック系スタートアップ
20名規模のスタートアップのカスタマーサポートチームで、新人のオンボーディング期間が長いことが課題だった。「業界用語を知らないまま対応しているせいで、先輩に毎回確認が必要で手間がかかる」という状況だった。
チームリーダーが社内マニュアルとFAQをAIに渡して用語集のたたき台を作り、ベテラン担当者2名が社内固有の用語を30件追記して完成させた。用語集をNotionに公開してから、新人が先輩に「この言葉はどういう意味ですか?」と聞く回数が明らかに減ったとリーダーは話している。特に、エスカレーションのフロー用語(トリアージ・クローズ条件など)をまとめた部分が、新人から「ここを一番読んだ」と評判がよかった。
例2:カスタマーサクセスと混在していた用語の整理
SaaS企業で、カスタマーサポートとカスタマーサクセスという2つのチームが同じツールを使って業務を行っていた。「顧客」「アカウント」「ユーザー」といった言葉の定義が2つのチームで微妙に異なり、引き継ぎのたびにコミュニケーションのズレが生じていた。
AIに「以下の2チームそれぞれで使っている言葉の定義の違いを比較して、統一すべき用語と、意図的に使い分けるべき用語を整理してください」と依頼した。AIの整理をベースに両チームで話し合い、共通の用語定義を確定させた。その後、FAQ整備でも統一された用語が使われるようになり、顧客向けのドキュメントの一貫性が上がった。
うまくいかない場合
定義が長すぎて実用的でない
「各用語の定義は1文以内にしてください」と明示する。用語集は辞書ではなく実務ツールなので、すぐに理解できるシンプルな説明が適切。詳細な説明が必要な用語だけ「詳細説明」として追記する形にするとよい。
使用例が実態と合わない
「使用例は実際のサポート業務での会話(例:チケット管理システムへのメモやチーム内のSlackメッセージのような自然な文体)で書いてください」と指定する。AIが書く使用例はやや教科書的になりがちなため、リアルな現場の文体に寄せる指示を加える。
特定の業種・製品に関する用語が不足する
プロンプトに「当社は[業種]の企業で、[製品の特徴]を提供しています」という情報を加える。業種固有の用語(医療系であれば診療報酬や電子カルテ関連、不動産系であれば宅地建物取引業法関連など)はプロンプトに業種を明示することで精度が上がる。
表記ゆれが多い
「用語名は半角・全角・かな・漢字の表記を統一してください」と指定する。また「この用語集全体の表記ゆれを一覧にして、統一案を提案してください」と既存の用語集をAIに確認させると、表記ゆれを一気に修正できる。
用語集を他の業務に活かす
用語集が完成したら、以下の業務でも活用できる。
- 問い合わせ対応メールの文章チェックに用語集を使い、表記ゆれをなくす
- FAQ整備で使う言葉を用語集に統一する
- 対応後の社内メモの記録用語を統一する
- 新人のタスク分解で各タスクに使う用語を用語集と揃える
用語集はチームの共通言語を作るツールでもある。担当者全員が同じ言葉を使うことで、対応品質のばらつきが減り、引き継ぎの摩擦も小さくなる。
FAQ
Q. 何用語くらいから用語集を作り始めるのが適切ですか?
最初から網羅的に作ろうとすると挫折しやすい。まず50用語を目標に「新人が最初の1ヶ月で覚えるべき必須用語」に絞ると、実用的な用語集が早く完成する。その後、チームメンバーからのフィードバックを受けながら追加していくと、現場で本当に使われる用語集になる。
Q. 英語・日本語の両方で用語集を作れますか?
作れる。「英語の用語と日本語訳を並べた表形式で作成してください」と指定すると、両言語対応の用語集が生成できる。海外との連携がある場合や、英語の業界資料を社内で使う場合に役立つ。
Q. 用語集の内容が古くなったことに気づく方法はありますか?
新人から「この説明が実際の業務と違う」というフィードバックが来たとき・サービス仕様変更の告知があったとき・対応フローが変わったとき、の3つが主なトリガーになる。Notionや社内Wikiで管理している場合は、各用語に「最終更新日」を記録しておくと、古くなった項目を見つけやすい。
Q. 競合他社の用語集を参考にしてよいですか?
公開されているFAQやヘルプページの表現を参考にすること自体は問題ないが、コピーして使うのは著作権の観点から避ける。AIに「競合他社がこういう表現を使っているが、自社用に言い換えた定義を作ってください」と依頼する形で参考情報として活用するのが適切。
よくある質問
AIだけで用語集は完成しますか?
完成しない。AIは一般的な業界用語は生成できるが、社内略語や製品固有の用語は知らないため、担当者が追記する必要がある。AIはたたき台を作るツールとして使い、実際の運用知識を持つ人間が肉付けして完成させる。
用語集の更新作業にもAIは使えますか?
使える。既存の用語集をAIに渡して「新しく追加すべき用語を提案してください」と依頼したり、「この説明をもっとわかりやすく書き直してください」と個別の説明文を改善させたりできる。更新作業の効率化に有効。
用語数が少ない場合はどうすればよいですか?
プロンプトに「以下のカテゴリで用語が少ない部分を補足してください」と指定することで、抜けている用語をAIが補足してくれる。また「新人が最初に覚えるべき必須用語20個を追加してください」のように目的を絞って追加依頼するのも有効。
用語集はどのツールで管理するのが適していますか?
チームの規模や用途によって異なる。少人数であればGoogleドキュメント・Notion・社内Wikiが使いやすい。検索機能を重視するならConfluenceやGuru、Zendeskのナレッジベース機能も選択肢になる。ツールの選定は既存の社内ツール環境に合わせるのが導入コストが低い。