カスタマーサポートの文章リライトをAIで行う方法
この記事の要点
AIを使えば硬すぎる・冷たい印象の返信文を顧客に寄り添ったトーンに書き直せる。プロンプト手順と具体的なリライト例をカスタマーサポート向けに解説する。
結論
AIを使えば、テンプレートっぽい定型文や硬い事務的な返信を、顧客に寄り添ったトーンに書き直せる。リライト指示と元文を渡すだけで30秒ほどで出力が出る。重要なのは「どんなトーンに直すか」をプロンプトで具体的に指定することだ。
リライトが必要になる場面
カスタマーサポートの返信には2種類の問題がある。誤字・敬語ミスのような「正しさ」の問題と、文章の印象・トーンの問題だ。後者は校正では解消できない。
典型的なケースは3つある。
1件目は、社内フォーマットからコピペした返信が機械的に聞こえる場合だ。情報は正確でも「読んでもらっている感がない」という顧客の不満につながる。特にサービスの利用手順を説明する返信は、マニュアルの文章をそのままコピーしたような印象になりやすい。
2件目は、担当者が焦って書いた返信が素っ気なく見える場合だ。クレーム案件への返信で、事実の説明だけになってしまい、謝罪の気持ちが伝わらないケースがある。謝罪の言葉はあっても、文章全体の温度感が低いと顧客には「形式的な謝罪」と受け取られる。
3件目は、ベテランが書いた返信と新人が書いた返信のトーンがバラバラな場合だ。顧客から見ると担当者によって会社の印象が変わる。問い合わせの度に文章の印象が変わると、「担当者によって対応が違う」という不信感につながる。
AIリライトは、これら3つすべてに対応できる。
使うAIツール
リライトには文脈理解の精度が問われるため、以下のツールが向いている。
| ツール | 向いているケース |
|---|---|
| Claude(Anthropic) | 長文・複雑な敬語のリライト |
| ChatGPT(GPT-4o) | 素早い短文リライト・トーン調整 |
| Gemini | Google Workspace上での作業が多い場合 |
どのツールでも基本的な用途は満たせる。チームで統一してプロンプトを共有できる環境を選ぶことを優先してほしい。
リライトの品質はプロンプトの指定精度に大きく依存する。ツールより「どう指示するか」の方がアウトプットの差に直結する。
手順:AIで返信文をリライトする
ステップ1 リライトの目的を決める
まずリライト後に何を達成したいかを明確にする。目的によってプロンプトの指示が変わる。
- 硬い文章を柔らかくする
- テンプレート感を消して個人対応の印象を出す
- クレーム対応の謝罪トーンを強化する
- 長すぎる文章を簡潔にする
- 冷たく見える事実説明に共感の表現を加える
複数を混ぜるより、1回のリライトで1つの目的に絞ると精度が上がる。目的が2つ以上ある場合は、2回に分けてリライトする方がきれいな出力になる。
ステップ2 リライトプロンプトを作る
あなたはカスタマーサポートの文章リライト専門家です。
以下の返信文を、指定したトーンに書き直してください。
【リライトの目的】
(例:硬い文章を柔らかく、顧客に寄り添った印象にする)
【変えてよいこと】
- 表現・語彙・文体
【変えてはいけないこと】
- 事実・情報・内容
- 顧客名・商品名・注文番号などの固有名詞
- 謝罪の有無(謝っている内容は謝罪のまま維持)
- 元の文にない情報を追加しないこと
【元の返信文】
(ここにリライトしたいテキストを貼り付ける)
リライト後の文章のみを出力してください。
ステップ3 出力を確認して送信する
AIの出力を確認する際のチェック項目は以下のとおりだ。
- 元の情報(日付・金額・手順)が変わっていないか
- 顧客名・商品名の表記が正確か
- 謝罪が必要な件で謝罪文が消えていないか
- AIが元文にない情報・約束を追加していないか
- リライト後の文章が自社のトーンガイドラインに合っているか
確認後、問題がなければそのまま送信する。一部だけ修正したい場合は、その箇所だけを手動で直す。
具体例:3種類のリライト
例1 硬い定型文を柔らかくする
サービス利用方法の問い合わせへの返信が、マニュアルのコピペになっている場合。
リライト前
佐藤様
お問い合わせありがとうございます。
ご質問の件につきましては、以下の手順でご対応ください。
1. マイページにログインする
2. 設定メニューから「通知」を選択する
3. 通知設定を変更して保存する
ご不明点があれば、再度お問い合わせください。
プロンプト指示
【リライトの目的】
マニュアルのコピペに見える事務的な文章を、顧客に向けて書いたような自然な返信に変える。
手順の内容は変えないが、説明の言葉を人間が書いたように調整する。
リライト後(AI出力例)
佐藤様
お問い合わせいただきありがとうございます。
通知の設定変更は、マイページからすぐに行えます。
まずマイページにログインいただき、設定メニューの「通知」を開いてください。
そこで通知のオン・オフや頻度を変更し、保存すると反映されます。
もし設定画面が見つからない場合や、保存後も変わらない場合はお気軽にご連絡ください。
同じ情報だが、読んだときの印象がかなり変わる。手順が自然な文章の中に組み込まれているため、「説明してもらった」という感覚が生まれる。
例2 クレーム返信の謝罪トーンを強化する
商品の不具合に関するクレームへの返信が、説明に終始している場合。
リライト前
鈴木様
ご連絡ありがとうございます。
ご指摘の商品につきましては、製造上の問題が確認されました。
交換対応を行います。
返送先住所を後ほどご案内いたします。
プロンプト指示
【リライトの目的】
事実説明に終始している返信を、謝罪の気持ちが伝わる返信に書き直す。
謝罪の言葉と共感の言葉を自然に加える。
事実の内容は変えない。
元文にない補償・約束は追加しないこと。
リライト後(AI出力例)
鈴木様
この度は商品の不具合によりご不便をおかけし、誠に申し訳ございません。
ご連絡いただいたにもかかわらず、対応が遅れたことも重ねてお詫び申し上げます。
ご指摘の商品については製造上の問題が確認されましたので、交換対応をさせていただきます。
返送先の住所は改めてご案内いたします。
大切なお買い物にご不便をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。
クレーム対応のさらに詳しい手順はカスタマーサポートのクレーム対応をAIで行う方法にまとめている。
例3 テンプレートを個別対応風に書き直す
お詫び文のテンプレートに顧客の状況を加えてリライトする。
プロンプト
あなたはカスタマーサポートの文章リライト専門家です。
以下のお詫び文テンプレートに、顧客固有の状況を自然に組み込んでリライトしてください。
【顧客固有の状況】
- 顧客名:田中様
- 問題の内容:注文した商品が3日遅れて届いた
- 顧客が受けた影響:イベント当日に間に合わなかった
【テンプレート】
この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
原因を調査し、再発防止に努めます。
今後ともよろしくお願いいたします。
【変えてはいけないこと】
- 顧客名・固有名詞
- 謝罪の意図
- テンプレートにない補償・約束は追加しない
リライト後の文章のみを出力してください。
リライトの品質を上げる追加テクニック
トーンのサンプルを渡す
「自社の理想のサポートトーン」に近い過去の返信文があれば、それをプロンプトに渡す。「このような文体・トーンでリライトしてください」という参照として使えるため、抽象的な「柔らかく」「丁寧に」という指示よりも精度が高い出力になる。
【参照する文体サンプル】
(自社の良い返信例を貼り付ける)
上記のサンプルと同じ文体・温度感でリライトしてください。
読者層を指定する
顧客層が異なればトーンも変わる。20〜30代向けのサービスと60代以上向けのサービスでは、同じ「丁寧な返信」でも適切な言葉が変わる。
【読者層】
40〜60代の個人顧客。丁寧な敬語を使い、わかりやすい表現を心がける。
IT用語や略語は避ける。
段落数を指定する
AIはリライト時に段落を増やしがちだ。「元の段落数と同じにする」か「全体を◯段落にまとめる」という指定を加えると、読みやすい長さに制御できる。
うまくいかない場合
AIが情報を付け加える
AIが気を利かせて、元文にない情報(「返金対応が可能です」など)を追加することがある。プロンプトに「元の文にない情報は絶対に追加しないこと」と明記する。
【厳守事項】
元の返信文にない情報・事実・約束は追加しないこと。
情報の付け加えは絶対に行わないこと。
トーンが顧客層と合わない
若年層向けサービスと高齢者向けサービスでは、適切な敬語の丁寧度が異なる。プロンプトに「読者層」を明示する。
【読者層】
50代以上のシニア層。丁寧な敬語を使い、親しみやすさより信頼感を優先する。
文章が長くなりすぎる
AIは元文より長い出力を好む傾向がある。プロンプトに「元の文章より長くしないこと」か「全体を◯文字以内にすること」を加える。
チームへの展開方法
リライトプロンプトをチームで統一する際の手順は以下のとおりだ。
- 上記の基本プロンプトをベースに、自社のトーンガイドラインを反映する
- 「変えてよいこと」「変えてはいけないこと」を自社ルールに合わせて調整する
- 共有ドキュメント(Notion・Confluence・Googleドキュメントなど)に登録する
- 新人研修にリライトプロンプトの使い方を組み込む
月に1回、チームで「AIリライトの課題事例」を持ち寄り、プロンプトを改善するサイクルを回すと品質が上がる。
具体的な運用ルールは「どんな案件にリライトを使うか」を明文化することから始める。クレーム対応・VIP顧客・長期対応になっている案件を必須としてリライト対象に指定し、通常の短い問い合わせには校正だけ行う、という使い分けが現実的だ。
問い合わせへの返信テンプレートの整備はカスタマーサポートのFAQをAIで作る方法も参照してほしい。文章の誤字・敬語チェックはカスタマーサポートの文章校正をAIで行う方法で解説している。
返信品質の均質化に向けて
リライトをAIで標準化する最大の効果は、担当者によって変わっていた文章品質が一定の基準に収まることだ。熟練者の返信をモデルケースとして収集し、そのトーンをプロンプトで再現することで、チーム全体の水準を底上げできる。
新人担当者のトレーニングにもリライトプロンプトが使える。新人が書いた下書きをAIでリライトしてもらい、ベテランの返信と比較することで「どこが違うか」を目で見て学べる。
ただし、AIは顧客の感情状態を完全には読めない。怒りが強いクレーム、複数回のやり取りがある長期対応、VIP顧客への返信は、AIのリライトを参考にしつつ、最終的な判断は必ず担当者が行う。
お詫び文の作成についてはカスタマーサポートのお詫び・謝罪文をAIで作る方法で詳しく解説している。返信後の顧客フォローメールはカスタマーサポートのお礼メールをAIで作る方法を参照してほしい。
よくある質問
AIにリライトさせると、どのくらい文章が変わりますか?
プロンプトでトーンや変更範囲を指定することで調整できます。「丁寧さを上げる」だけにとどめるか、「全体的に顧客に寄り添った表現に変える」かで出力の変化幅が変わります。
リライト後の文章は送信前に確認が必要ですか?
必須です。AIは文脈や顧客の感情状態を完全には把握できないため、送信前に担当者が内容・事実関係・固有名詞を確認することが大前提です。
テンプレート返信を人間らしく書き直すのにも使えますか?
はい。定型文のテンプレートをAIに渡し、個別案件の内容を加えた上でリライトするよう指示すると、テンプレート感が薄れた自然な返信になります。
リライトと校正はどちらを先にやるべきですか?
リライトを先にしてから校正するのが効率的です。リライトで文章全体のトーンを整え、その後に誤字・敬語の確認を行うと、二度手間が減ります。