プロンプト技術

プロンプトでAIの文体・トーンを調整する方法

プロンプトでAIの文体・トーンを調整する方法

この記事の要点

AIのデフォルト出力は均一で無個性になりがち。フォーマル度・感情の温度感・文の長さ・対象読者の4軸でトーンを指定すれば、自社のブランドボイスに合った文章をAIから引き出せる。

結論:4軸を指定すればAIのトーンは制御できる

AIが出す文章がどこか「教科書っぽい」「よそよそしい」と感じるなら、それはトーン指定が不十分なことが原因です。AIはデフォルトで中立・丁寧・均一な文体を選ぶ傾向があります。フォーマル度・感情の温度感・文の長さ・対象読者の年齢層という4つの軸を明示するだけで、出力は大きく変わります。


なぜデフォルトの出力はトーンが均一になるのか

AIは学習データの中から「受け入れられやすい平均的な文体」を選びます。その結果、企業ブランドとは無関係な、どこかで見たような文体が出てきます。ビジネスメールなのに「〜してみませんか?」という柔らかすぎる語尾が出たり、SNS投稿なのに報告書のような文章になったりするのはそのためです。

自社のブランドボイスに合わせるには、プロンプトで「どんな読者に向けて」「どの程度の丁寧さで」「どんな感情トーンで」「どのくらいの文量で」を毎回指定する必要があります。


文体を変える4つの軸

軸①:フォーマル度

文体の丁寧さをコントロールする軸です。「丁寧に」より「敬語を使う」「書き言葉で」「ですます体で」のように具体的に指定します。

【フォーマルにする】
次の内容を、取引先の部長クラスに送るビジネスメールとして敬体で書いてください。
謙譲語・尊敬語を適切に使い、「お世話になっております」で始めてください。

【カジュアルにする】
次の内容を、社内Slackに投稿する短いメッセージとして書いてください。
敬語は不要です。読んでいる全員が状況を知っているという前提で書いてください。

軸②:感情の温度感

温かみ・共感・緊張感など、感情的なニュアンスをコントロールする軸です。

【共感を強調する】
次の文章を、クレームを受けた顧客に向けた謝罪文として書き直してください。
「申し訳ありません」という言葉を冒頭に置き、顧客の感じた不便に共感する一文を加えてください。

【緊張感・重みを出す】
次の内容を、リスク報告書の冒頭として書いてください。
感情的な表現は避け、事実と数字だけで深刻さを伝えてください。

軸③:文の長さ

1文の長さと段落の長さを指定することで、読みやすさと密度を調整できます。

【短く読ませる】
次の文章を書き直してください。条件は以下の通りです。
- 1文は40字以内
- 1段落は3文以内
- 難しい言葉があれば、中学生が読んでも分かる言葉に置き換える

【詳細に書く】
次の内容を、技術仕様書の形式で詳しく説明してください。
根拠・前提条件・例外事項を含め、1,000字程度で記述してください。

軸④:対象読者の年齢層・背景

誰に向けて書くかを明示すると、語彙と構造が変わります。

【経営者向け】
次の内容を、ITに詳しくない50代の経営幹部向けにまとめてください。
専門用語は使わず、「コスト削減額」「時間削減時間」「投資回収期間」の3点を中心に
200字以内にまとめてください。

【現場担当者向け】
次の内容を、毎日PCを使うが特にITの知識はない30代の事務担当者が
すぐに操作できるよう、手順書形式で書いてください。
スクリーンショットの説明箇所には「★画像」と記載してください。

シチュエーション別のトーン指定テンプレート

よく使うシチュエーションで使えるテンプレートをまとめます。「——」の部分に内容を差し込んで使ってください。

営業メール(初回コンタクト)

次の内容をもとに、初対面の見込み客に送る営業メールを書いてください。

条件:
- 敬体(ですます)
- 宣伝・押し付けがましい表現は使わない
- 相手の課題に寄り添う書き方にする
- 本文は300字以内
- 件名も1行で提案してください

内容:——

クレーム対応メール

次の内容をもとに、顧客クレームへの返信メールを書いてください。

条件:
- 冒頭で謝罪と共感を表現する
- 事実関係を正確に説明する
- 再発防止策を1〜2点述べる
- 押しつけがましい「今後ともよろしく」系の定型句は使わない
- 敬体(ですます)で400字以内

クレームの概要:——
対応事実:——

社内通知(全社員向け)

次の情報をもとに、全社員向けの社内通知を書いてください。

条件:
- 件名は「【重要】」で始め、内容が一目で分かるように
- 本文は3点だけ:「何が変わるか」「いつから」「何をすればよいか」
- 200字以内
- 問い合わせ先の行を最後に付ける

情報:——

プレスリリース

次の情報をもとに、プレスリリースの本文を書いてください。

条件:
- 1段落目でWho/What/When/Where/Whyを全部含める
- 語尾は「〜です」「〜ます」「〜しました」に統一
- 数字は必ず含める(量・日付・金額など)
- 過剰な形容詞(「画期的な」「革新的な」)は使わない
- 600字以内

情報:——

SNS投稿(企業アカウント)

次の内容をもとに、企業の公式SNSアカウント向けの投稿を3パターン作ってください。

条件:
- パターンA:情報提供型(数字・事実中心)
- パターンB:共感型(読者の悩みに寄り添う書き出し)
- パターンC:行動促進型(次に何をすればよいかを示す)
- 各パターン140字以内(Twitter/X想定)
- ハッシュタグは付けない

内容:——

経営者コメント(プレスや株主向け)

次の内容をもとに、経営者が語るコメント文を書いてください。

条件:
- 一人称は「私」または「当社」
- 感情的な表現(「嬉しい」「誇らしい」など)は使わない
- 数字と事実で意思決定の根拠を示す
- 200字以内
- 敬体

内容:——

参照文章を与えて文体を真似させる方法

最も精度が高いトーン指定は、参照文章を渡す方法です。自社の過去の優れた文章や、模範にしたい文体の例文を添付して次のように指示します。

以下の参照文章のトーン・文体・語尾のパターンに合わせて、
新しい内容を書いてください。

参照文章:
——(200〜500字程度のサンプルを貼り付ける)

書いてほしい内容:
——

AIは参照文章から文のリズム・接続詞の使い方・語尾のパターン・改行のタイミングを読み取り、近い文体で出力します。200〜500字のサンプルがあれば、かなりの精度で再現します。

注意点は2つあります。1つ目は、著作権のある第三者の文章をそのまま渡すのは適切ではないため、自社が権利を持つ文章か、適切な引用範囲内に収めることです。2つ目は、参照文章の文体をAIが完全再現するわけではなく、あくまで参考にして生成するという点です。


複数バリエーションを生成させて選ぶ方法

1回の指示で1つの出力だけを求めると、判断材料が少なくなります。最初から複数バリエーションを要求して、人間が選ぶ形にすると効率が上がります。

次の内容について、以下の3パターンで書いてください。

パターン1:硬め・フォーマル(取引先の部長への報告)
パターン2:標準(社内の全体連絡)
パターン3:やわらかめ・親しみやすい(従業員向けインナーコミュニケーション)

内容:——

3パターンを並べると、どのトーンが自社に合っているかを視覚的に判断しやすくなります。気に入ったパターンをベースにさらに調整する指示を出せば、1〜2往復でほぼ完成します。

プロンプトの基本的な書き方についてはプロンプトの書き方で整理しています。ビジネスシーン全般で使えるテンプレートはビジネスプロンプトテンプレートも参考にしてください。


よくある失敗パターン

トーン指定でうまくいかない原因の多くは、指示が抽象的すぎることです。「自然な文体で」「わかりやすく」「プロらしく」という指示はAIにとって解釈の幅が広すぎます。

具体的に変えるべきは次の3点です。

語尾を指定する: 「体言止めを多く使う」「〜してください」ではなく「〜します」で締める、のように語尾パターンを明示します。

句読点の使い方を指定する: 「読点を1文に2つ以上使わない」「箇条書きにせず地の文で書く」のような構造的な指示が有効です。

禁止事項を加える: 「「〜でしょう」「〜と思います」は使わない」のように、出てほしくない表現を明示すると大幅に改善します。

失敗しやすいプロンプトのパターンについては失敗するプロンプトのパターンで詳しく解説しています。


まとめ

AIのトーンを制御するには、4軸(フォーマル度・感情の温度感・文の長さ・対象読者)を指定することが出発点です。シチュエーション別のテンプレートを社内で用意しておくと、誰でも一定のブランドボイスを維持した出力を得られます。最初は1パターンではなく3パターンを出させて選ぶ方法が、出力品質と作業効率の両立に効きます。

よくある質問

プロンプトでAIのトーンを指定するにはどう書けばよいですか?

「次の文章を、30代のビジネスパーソンに向けたフォーマルな敬体で書き直してください」のように、対象読者・丁寧さの度合い・文体(敬体/常体)を具体的に指定します。参照文章を与えて「このトーンに合わせて」と指示する方法も有効です。

AIに「やわらかい文体で」と指示しても変わらないのはなぜですか?

「やわらかい」は主観的な言葉でAIが解釈しにくいためです。「1文を40字以内に収める」「読点を多めに使う」「命令形を使わず提案形にする」のように、構造や句読点の使い方を具体的に指示すると出力が変わります。

参照文章を与えてトーンを真似させる方法はどのくらい正確ですか?

200〜500字程度のサンプルを与えると、文のリズム・接続詞の使い方・語尾のパターンをかなり正確に再現します。ただし著作権上、自社が権利を持つ文章か、引用範囲内に収まるサンプルを使ってください。