情報システムの用語集をAIで作る方法
この記事の要点
情報システム担当者がAIを使ってIT用語集・社内システム用語集・セキュリティ用語集を効率的に作成・整備する具体的な手順を解説。プロンプト例つきで、非IT部門でも理解できる用語集を短時間で作る方法をまとめた。
システム移行の通知文に技術用語が多くて現場が理解できない、ヘルプデスクに「〇〇ってなんですか」という問い合わせが繰り返し来る、新入社員向けのIT研修で用語から説明しなければならない——情報システム担当者がこうした状況に直面するのは珍しくない。AIに用語リストを渡せば、対象者に合わせた用語集が数時間ではなく30〜60分で出来上がる。
結論
AIに「用語リスト」と「読み手の属性」を渡せば、各用語の説明文・関連用語・実際の使われ方の例文がセットで出力される。情報システム担当者が苦労する「技術的に正確だが難しすぎる説明」と「平易だが不正確な説明」のバランスを、読み手のリテラシーに合わせてAIが調整できる。作成後は自社固有の情報を加えて精度を上げる。
どのAIツールを使うか
**ChatGPT(GPT-4o)**は技術用語の平易な説明生成が得意で、「中学生でもわかるように」「ITの知識がない50代の営業担当者に向けて」のような具体的な対象指定にも応える。
Claudeは大量の用語を一括で整理する作業に向く。30〜50の用語リストを渡して「全て同じフォーマットで用語集を作って」という指示に対して、一貫したフォーマットで出力できる。
どちらも用語集作成には十分使える。用語の数が多い場合はClaudeの方が一貫性を保ちやすい。
用語集をAIで作成する手順
ステップ1:用語リストを作成する
まず用語のリストを作る。ゼロから考えなくても、以下の方法で素材が集まる。
- 過去のヘルプデスク問い合わせで「言葉の意味を聞かれた」記録
- 社内通知文やマニュアルで使われている技術用語
- 新システムの操作マニュアルに出てくる用語
- セキュリティ研修の教材に出てくる用語
この収集作業自体もAIを使える。「情報システム部門が全社員向けに説明すべき一般的なIT用語を30個挙げてほしい」と指示すれば、出発点となるリストが出る。
ステップ2:プロンプトを入力する
以下のIT用語について、非IT部門の社員向けの用語集を作成してください。
対象読者:IT知識をほとんど持たない一般社員(営業・経理・人事など)
用途:社内IT利用ガイドの付録として掲載
各用語に以下を含めてください:
1. 用語名
2. 読み(ひらがな)
3. 一言説明(30字以内。専門用語なし)
4. 詳細説明(100字前後。具体的な業務での使い方を含める)
5. 使用例(社内での具体的な場面を1文で)
6. 関連用語(2〜3個)
用語リスト:
- フィッシング
- 多要素認証
- VPN
- クラウドストレージ
- パスワードマネージャー
- エンドポイントセキュリティ
- バックアップ
- アクセス権限
このプロンプトで、1用語あたり6つの情報が揃った用語集エントリが出力される。
ステップ3:自社固有の情報を加える
AIの出力に追加・修正が必要な情報はこれだ。
- 自社のシステム名・製品名(「クラウドストレージ=自社では〇〇というサービスを使用」など)
- 自社の運用ルール(「バックアップは毎日〇時に自動実行」など)
- 問い合わせ先(「不明な場合はヘルプデスク内線〇〇へ」など)
- 自社独自の略称・社内用語(他社では通じない言葉)
この補完作業が用語集の実用性を高める最も重要なステップだ。AIは一般的な知識は持っているが、自社の固有情報は持っていない。
ステップ4:メンテナンスの仕組みを作る
用語集は一度作ったら終わりではない。システム変更・新サービス導入・法改正のたびに更新が必要だ。以下の仕組みを最初から設けておく。
- 用語集を格納するWikiページに「最終更新日」を明記する
- 年1回の定期レビュー日程を決める
- ヘルプデスクで「用語の意味を聞かれた」案件を記録し、用語集の拡充に活かす
AIは更新作業にも使える。「この用語の説明を最新の状況に合わせて書き直してほしい」という指示で、修正案が出る。
情報システム固有の活用シーン
シーン1:セキュリティ施策展開時の用語集
多要素認証・エンドポイント保護・ゼロトラストなどのセキュリティ施策を全社展開する際、用語集の配布が理解度向上と現場の抵抗感軽減につながる。
以下のセキュリティ施策に関連する用語集を、全社員向けに作成してください。
施策:多要素認証(MFA)の全社導入
対象読者:IT知識のない一般社員(「なぜこれが必要か」「自分に何を求めているか」がわかる説明にする)
含める用語:
- 多要素認証
- 認証アプリ(Microsoft AuthenticatorやGoogle Authenticatorなど)
- パスワード
- 不正アクセス
- なりすまし
- フィッシング
各用語に含める内容:
1. 用語名と読み
2. 一言説明(「これは〇〇のこと」)
3. なぜこの用語が今重要か(多要素認証導入との関連)
4. 社員が取るべき行動(あれば)
全体に「難しそうに見えるが、基本的に追加の1ステップだけ」というトーンを維持してください。
施策の背景と用語を合わせて説明することで、単なる言葉の定義より理解が深まる。
シーン2:新規システム導入時の操作マニュアル付録用語集
新システムのマニュアルを作成する際、末尾に用語集を付けることで読み手が都度検索する手間を省ける。
以下の新システムの操作マニュアルに掲載する用語集を作成してください。
システム:クラウド型勤怠管理システム([システム名])
マニュアルの対象者:全社員(IT知識はほとんどない前提)
マニュアルに登場する専門用語を以下から選んで、各用語の説明を作成してください:
- シングルサインオン
- 承認フロー
- ダッシュボード
- データエクスポート
- アクセス権限
- セッション
- キャッシュ
各用語に以下を含める:
1. 用語名
2. 操作マニュアル内での意味(一般的な技術定義でなく、このシステムの文脈で)
3. 操作中に出てくる場面(「〇〇ボタンを押すと出てくる画面で使います」など)
4. 「このシステムでは使いません」という用語があればその旨を記載
条件:
- 説明は1用語あたり50〜80字
- 技術用語は使わない
「このシステムでの意味」に絞ることで、汎用的すぎて現場で役立たない説明を避けられる。
うまくいかない場合の対処
説明が技術的すぎる:「IT知識ゼロの中学生でもわかる言葉に書き直してほしい」という追加指示を出す。AIは指定が具体的なほど読み手に合わせた表現に変える。
説明が抽象的すぎて実感がわかない:「日常業務での具体的な場面(例:メールを送る・ファイルを保存する・ログインする)を使った例文を必ず含めてほしい」と追加する。
用語の説明が長すぎる:「一言説明は20字以内・詳細説明は80字以内」のように字数制限を数値で指定する。「簡潔に」より数値制限の方がAIは確実に守る。
自社固有の略称や社内用語が含まれない:プロンプトに「以下は我が社で使う社内用語なので、これも含めてほしい:社内ポータル=〇〇、IT機器申請システム=〇〇」のように書き添える。
AIが「最新の情報は公式サイトで確認」と言い続ける:用語集は定義を説明するものなので、最新バージョンの機能説明や価格情報は不要と割り切ってよい。「一般的な定義の説明のみ。最新情報への誘導文は不要」と明示する。
出力フォーマットがバラバラになる:「以下のフォーマットを厳守して全用語を出力してほしい」として、具体的なフォーマット例を1つ示してから用語リストを渡す。
作業量の目安
| 用語集の種別 | 従来所要時間 | AI活用後の所要時間 |
|---|---|---|
| 全社向けIT基礎用語集(30用語) | 3〜5時間 | 45〜60分 |
| セキュリティ施策用語集(15用語) | 1.5〜2時間 | 20〜30分 |
| 新システム操作用語集(10用語) | 1〜2時間 | 15〜20分 |
| ヘルプデスク向け技術用語集(50用語) | 1日〜2日 | 2〜3時間 |
大量の用語を整備するほど時間削減の効果が大きい。特にヘルプデスク向けの技術用語集(問い合わせ対応者が使う社内向け)は、AIの出力を叩き台にすることで作業が大幅に効率化する。
他の業務への応用
用語集の整備に慣れたら、情報システムの業務マニュアルをAIで作る方法にも同様のアプローチが使える。マニュアルの本文中に用語の説明を組み込む形でも、末尾に用語集として付録する形でも活用できる。
情報システムのヘルプデスク対応をAIで効率化する方法では、繰り返し問い合わせが来る用語を特定してナレッジベースに追加する方法を解説している。用語集の充実がヘルプデスクの問い合わせ削減につながる。
情報システムの社内メモをAIで素早く作る方法では、用語集更新の際に部門長や全社に向けて「〇〇の用語集を更新しました」という通知メモを素早く作る手順を解説している。
導入の第一歩
直近で使った社内通知文やマニュアルを1本取り出して、その中に出てくるIT用語を10個リストアップし、このプロンプトで用語集を作ってみる。完成した用語集を実際に使っていない部門の同僚1〜2人に見てもらい、「これで理解できるか」を確認することが最初のチェックになる。
よくある質問
情報システム部門が用語集を整備することでどんなメリットがありますか?
ヘルプデスクへの問い合わせの減少、社内研修の理解度向上、マニュアルや通知文の品質統一、部門間のコミュニケーション齟齬の軽減などが期待できます。特にセキュリティ施策の展開時は、用語の共通理解が施策の浸透に直結します。
AIで用語集を作ると説明が不正確にならないですか?
一般的なIT用語の説明はおおむね正確ですが、自社固有のシステム名・独自の運用ルール・社内略称については必ず人間が確認・修正してください。AIは一般的な知識を整理するツールとして使い、最終確認は専門知識を持つ担当者が行ってください。
用語集の説明はどのくらいの難易度に合わせればいいですか?
対象者に合わせて変えます。全社向けなら「IT知識ゼロでも理解できる言葉で」、IT部門内部向けなら「技術的な正確さを優先して」と指定します。同じ用語でも対象者別に説明を用意することも有効です。
用語集はどのツールで管理するのが適していますか?
社内Wikiツール(Confluence、Notionなど)への格納が検索性・更新管理の観点から推奨されます。情報システム部門がこれらのツールを管理していれば、更新通知の仕組みも整えやすいです。