情報システムの文章リライトをAIで行う方法
この記事の要点
障害報告・マニュアル・社内通知など情報システム部門の文書をAIでリライトする手順を解説。読み手別の文体変換や技術用語の平易化まで実践的なプロンプト例付き。
結論
情報システム部門の文書リライトは、「読み手を誰にするか」と「目的(技術詳細の整理なのか平易化なのか)」をAIに明示すれば、15分かかっていた書き直し作業が3分程度で終わります。同じ障害報告書を技術担当向けと経営層向けの2版に変換したり、手順書の文体を統一したりする作業が得意です。本記事では情報システム固有の文書に対応したリライトの手順とプロンプトを解説します。
どのAIツールを使うか
文章リライトには文脈理解と自然な日本語生成が求められます。2026年時点で実績のあるツールは以下の3つです。
| ツール | 特徴 | リライト用途 |
|---|---|---|
| ChatGPT(GPT-4o) | 構成の組み替えが得意 | 障害報告書の2版作成・手順書の整形 |
| Claude(Anthropic) | 文体の一貫性が高い | 長文マニュアル・ユーザー向け通知 |
| Gemini(Google) | Google Docs連携が便利 | 既存ドキュメントの更新作業 |
社内規定に従ってツールを選んでください。最新の料金・機能は各サービスの公式情報で確認してください。
AIで文章リライトを行う手順
ステップ1:リライトの目的と読み手を決める
リライトの品質は、「誰のために」「どんな目的で」書き直すかの指定で決まります。これを曖昧にすると、AIは原文をほぼそのままの表現で返します。
情報システム部門でよく使うリライトのパターンは4種類です。
- 技術担当向け → 経営層向け(専門用語を減らし影響・コストを前に出す)
- 社内担当者向け → エンドユーザー向け(手順を丁寧に、専門語を平易に)
- 箇条書き → 文章形式(報告書・議事録として読みやすくする)
- 文章形式 → 箇条書き(手順書・マニュアルとして使いやすくする)
ステップ2:プロンプトを作る
以下のプロンプトをそのままコピーして使えます。「読み手」「目的」「原文」を差し替えてください。
あなたは情報システム部門の文書作成の専門家です。以下の文章を指定の条件でリライトしてください。
【読み手】
(例:経営層、現場担当者、一般ユーザー など)
【リライトの目的】
(例:専門用語を減らして非IT部門にも分かるようにする、経緯より結論と影響を前に出す など)
【文体・制約】
- 丁寧語(です・ます)で統一する
- 1文は60字以内を目安にする
- 箇条書きを使ってよい箇所は手順・項目列挙のみ
- 情報は削除せず、表現と構成だけ変える
【原文】
(ここにリライトしたい文章を貼り付ける)
ステップ3:2版を並行して作る
同じプロンプトで「読み手」だけを変えると、同一内容から複数の版を効率よく生成できます。大規模障害が発生した際、技術担当向けの詳細報告と経営層向けの要点報告を同時に作る状況がよくあります。このとき、1つの原文から2つのリライト依頼を出すことで、整合性を保ちながら両版を素早く作れます。
ステップ4:事実確認を必ず行う
リライト後の文章は、以下の点を必ず原文と照合します。
- 日時・バージョン番号・台数などの数字が変わっていないか
- 製品名・システム名・部署名が正確か
- 手順の順序が変わっていないか
AIは表現を自然にする過程で、意図せず数字や手順を変えることがあります。これは仕様上の限界で、AIツールが改善されても完全にはなくなりません。事実確認は人間が担う作業です。
情報システム固有のリライト例
例1:障害報告書の2版作成
同じ障害の内容を、技術担当向けと経営層向けに別々に作る場面は情報システム部門で頻繁に発生します。
技術担当向けの原文(一部):
16:23にWebサーバーのCPU使用率が98%に達し、監視アラートが発報。調査の結果、バックアップジョブとバッチ処理が同時実行されたことが原因と判明。バックアップジョブのスケジュールを翌日02:00に変更し、17:04に正常稼働を確認した。
経営層向けリライトのプロンプト:
以下の技術担当向け障害報告書を、経営層向けにリライトしてください。
【読み手】経営層(IT技術の詳細は不要)
【目的】
- 何が起きて、業務にどう影響したかを最初に伝える
- 原因と再発防止策を簡潔に示す
- 技術用語は最小限にし、影響時間・対応完了時刻を明確にする
【原文】
16:23にWebサーバーのCPU使用率が98%に達し、監視アラートが発報。調査の結果、バックアップジョブとバッチ処理が同時実行されたことが原因と判明。バックアップジョブのスケジュールを翌日02:00に変更し、17:04に正常稼働を確認した。
AIの出力例:
6月4日16:23から17:04の約41分間、社内Webシステムへのアクセスが遅延しました。
定期バックアップと別の自動処理が重なったことでサーバーの処理能力が限界に達したのが原因です。
対応チームが即時に対処し、17:04に正常稼働を確認しています。再発防止として、バックアップの実行時間を業務時間外に変更しました。
技術情報は削除せずに、経営層が判断に必要な「影響時間・原因の概要・再発防止策」を前面に出したリライトになっています。
例2:マニュアルのエンドユーザー向け平易化
IT担当者が書いた手順書をエンドユーザー向けに書き直す場面もよくあります。IT知識を前提とした記述を、操作だけ追えば完結する形に変換します。
IT担当者向けの原文(一部):
VPNクライアントを起動し、認証情報を入力後、接続ボタンをクリックしてトンネルを確立してください。接続確立後、社内リソースへのアクセスが可能になります。
エンドユーザー向けリライトのプロンプト:
以下の手順書をIT知識のない一般社員向けにリライトしてください。
【読み手】IT知識のない一般社員
【目的】
- 画面を見ながら操作できる手順にする
- 「VPN」「トンネル」などの専門語は最小限の説明を添える
- 「何をクリックするか」「何が表示されるか」を具体的に書く
【原文】
VPNクライアントを起動し、認証情報を入力後、接続ボタンをクリックしてトンネルを確立してください。接続確立後、社内リソースへのアクセスが可能になります。
AIの出力例:
1. 画面右下のタスクバーにある「VPNソフト」のアイコンをダブルクリックして起動します。
2. ユーザーID(社員番号)とパスワードを入力し、「接続」ボタンをクリックします。
3. 画面に「接続中」と表示され、しばらく待つと「接続完了」に変わります。
4. 接続完了後は、自席から社内サーバーのファイルやシステムを通常どおり利用できます。
※VPNは自宅など社外のネットワークから社内システムに安全につながるための仕組みです。
操作の具体性が大きく上がり、ヘルプデスクへの問い合わせ削減につながります。
うまくいかない場合の対処
出力が原文とほぼ同じになる
「リライト」という指示だけでは変更が小さくなることがあります。「文体を変える」「構成を組み替える」「読み手を〇〇に変える」など、どう変えたいかを具体的に書いてください。
(追記例)
経営層が5分で読めるように、詳細技術情報は末尾の補足にまとめ、冒頭は「何が起きたか・影響・対応完了・再発防止」の4項目だけにしてください。
文章が長くなりすぎる
AIは情報を補足しながらリライトする傾向があります。「原文より短くする」「1段落100字以内」などの制約を明示すると短くなります。
【制約追加】
- 原文の文字数の80%以内に収める
- 補足説明は書かず、事実のみを記述する
固有名詞が変わってしまう
製品名・システム名・部門名など変えてはいけない固有名詞は事前にリストとして渡します。
【変更禁止の固有名詞】
- システム名:「基幹システムXX」(短縮・言い換えをしない)
- 部署名:「情報システム部」(「IT部門」などに変えない)
作業フローのまとめ
AIリライトを情報システム部門の業務に組み込む際の推奨フローは次のとおりです。
- 文書の種類と読み手を確認する(技術担当か経営層かエンドユーザーか)
- リライトの目的を1〜2文で決める
- 変更禁止の固有名詞・表記ルールをリストアップする
- プロンプトに上記を入れて原文を貼り付ける
- 出力と原文を照合し、事実の正確性を確認する
- 必要に応じて追加指示でブラッシュアップする
月に10件以上のリライト作業がある場合、読み手のパターン別にプロンプトテンプレートを保存しておくと、毎回の指示作業を省けます。
ヘルプデスク対応の文書効率化については情報システムのヘルプデスク業務をAIで効率化する方法を参照してください。マニュアル作成のAI活用については情報システムのマニュアル作成をAIで行う方法で詳しく解説しています。
よくある質問
リライトと校正はどう違いますか?
校正は誤りの修正・用語統一が目的で原文の構造を保ちます。リライトは読み手・目的・文体に合わせて文章を書き直すことで、内容の再構成や表現の大幅な変更を伴います。
技術者向けと経営者向けで同じ内容を使い回せますか?
リライトプロンプトに「読み手」を明示すると、同じ原文から複数の版を生成できます。技術者向けには詳細手順、経営者向けには影響・費用・判断事項を中心にした文章に変換できます。
AIリライトで文章の事実が変わることはありますか?
あります。AIは表現を変える際に意図せず数字・手順・固有名詞を変えることがあります。リライト後は必ず原文と照合し、事実の正確性を人間が確認してください。