職種別AI仕事術

法務のFAQをAIで作る方法

法務のFAQをAIで作る方法

この記事の要点

契約書・規程・法的手続きに関する社内FAQをAIで作る具体的な手順を解説。社員からの問い合わせ削減に直結する質問の選び方とプロンプト例を法務担当者向けに紹介。

法務部門への問い合わせの多くは、同じ質問の繰り返しだ。「この契約書に印鑑が必要か」「秘密保持契約はどこで入手するか」「取引先から受け取った契約書はどこに提出するか」といった質問が、毎日各部門から届く企業は少なくない。AIを使えば、こうした問い合わせを減らすためのFAQを短時間で作成できる。

結論

法務FAQをAIで作成する場合、「既存の問い合わせ記録や規程文書を素材として渡し、FAQを抽出させる」アプローチが最も効率的だ。ゼロから質問を考えさせるより、実際に届いた問い合わせやメール・既存の規程文書からFAQを生成させる方が、実用的な質問と回答が揃いやすい。

手順1:素材を用意する

AIによるFAQ作成では、素材の質が出力の質を左右する。以下のいずれかを準備する。

素材の種類と特徴

素材向いている用途
過去の問い合わせメール・チャット実際に発生した疑問から作るため実用的。対応履歴があれば回答も流用できる
社内規程・マニュアル規程が複雑で社員が読みこなせない場合に有効
改訂した規程・契約書雛形改訂後に発生が予想される質問を先回りして作成できる
他部門のFAQ・既存資料類似の質問体系を参考にして効率化できる

素材がない場合は、「想定される質問」をAIに生成させることもできるが、実際の問い合わせ記録の方が精度が高い。

手順2:FAQの構成を決める

FAQの構成は公開先と読者によって変える。法務FAQの主な公開先は以下のとおりだ。

  • 全社イントラネット: 全従業員向け。専門用語を避け、業務上の手順と連絡先を明確にする
  • 部門別マニュアル: 営業・調達など特定部門向け。その部門が扱う契約・手続きに絞る
  • 新入社員向け: 契約書の取り扱い・印章の使用など基本的な手続きに絞る
  • 相談対応の参考資料: 法務担当者内部で使うリファレンス。専門的な内容でよい

公開先が決まったら、「1問1答形式にするか」「カテゴリ別にまとめるか」「想定される読者の業務フローに沿った順番にするか」を決める。

手順3:プロンプトで指示する

プロンプト例1:問い合わせ記録からFAQ生成

以下は、当社の法務部門に届いた問い合わせメールの記録です。内容を分析して、FAQを作成してください。

条件:
・類似の質問はまとめて1問にする
・質問は社員が実際に使う言葉で書く(専門用語を避ける)
・回答は「何をどこに・どうすれば」がわかる具体的な手順で書く
・回答の最後には「この内容は法務部門(内線○○)に確認してください」のような問い合わせ先を追加する
・FAQは「Q: ○○」「A: ○○」の形式で出力する
・カテゴリ別に整理する(例:契約書の手続き、印章の使用、個人情報の取り扱い)

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(ここに問い合わせメールを貼り付ける)

プロンプト例2:規程文書からFAQ生成

以下の情報セキュリティポリシーを読んで、一般社員が疑問に思いそな点をFAQ形式でまとめてください。

条件:
・社員の立場で「自分の行動がこのポリシーに違反しないか」という観点で質問を作る
・回答は「○○の場合は可。△△の場合は不可」のようにYes/Noが明確にわかるようにする
・例外や「場合による」回答には、判断基準を具体的に書く
・「詳細は○○担当者に確認する」という案内を含める
・出力は10問以内にまとめる

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(ここにポリシー文書を貼り付ける)

プロンプト例3:改訂規程向けの先行FAQ作成

以下の就業規則改訂案(改正前と改正後)を比較して、改訂後に社員から質問が来やすい事項を予測し、FAQを作成してください。

条件:
・改訂によって社員の日常業務に影響が出る変更点に絞る
・「変更前はどうだったか」「変更後はどうなるか」「自分は何をすればよいか」の3点が回答に含まれるようにする
・施行日を必ず回答に含める
・対応が必要な社員と不要な社員を区別できるようにする

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【改訂前】
(ここに改訂前の条文を貼り付ける)

【改訂後】
(ここに改訂後の条文を貼り付ける)

具体例1:契約書取り扱いFAQの作成

ある企業の法務担当者が、営業部門向けの契約書取り扱いFAQを作成した例を紹介する。

法務部門には月に50件以上の問い合わせが来ていたが、内容を分類すると「契約書の保管場所」「捺印申請の方法」「相手方から受け取った契約書の処理」「電子契約サービスの使い方」の4カテゴリで70%を占めていた。

半年分の問い合わせメールをプロンプト例1に渡し、類似質問をまとめてFAQを生成した。AIが生成した15問を担当者が確認し、回答が不正確な2問と、会社固有の手順が反映されていない3問を修正した。残り10問はほぼそのまま使えた。

作成後3ヶ月で、同じ内容の問い合わせが約40%減少した。特に「捺印申請の方法」に関する問い合わせはFAQの公開後にほぼゼロになった。

具体例2:個人情報取り扱いFAQの更新

個人情報保護法改正への対応として、全社向けFAQを更新した例だ。

改正前後の条文と、改正対応として法務部門がまとめた社内資料を素材として使い、プロンプト例3を応用した。出力されたFAQには「改正前は△△でよかったが、改正後は○○が必要になります。施行は×月×日です」という形式で変更内容と対応方法が整理されていた。

社員から特に質問が多かった「保有個人データの開示請求への対応方法が変わったか」という点についても、AIが予測して質問として含めていた。担当者が内容を確認し、具体的な対応手順と関連部署への連絡先を追記して完成させた。

改訂FAQの作成に要した時間は従来の3分の1程度になった。以前は担当者が全文を読み込んで質問を考えるのに半日かかっていた。

うまくいかない場合の対処

質問が一般的すぎる場合

プロンプトに「当社はBtoB向けのSaaS事業者です。契約相手方は企業のみです」など自社の状況を補足すると、業務に即した質問が出てくる。または「営業担当者が商談中に直面しそな疑問に絞ってください」のように、具体的な読者像を指定する。

回答が長すぎる場合

「各回答を3行以内にまとめてください」と字数制限を加えるか、「詳細な手順が必要な場合は、別の詳細説明ページへリンクする想定で、ここでは概要だけを回答してください」と分割の考え方を指示する。

法的に不正確な回答が含まれる場合

AIが生成したFAQは必ず法務担当者が全問確認してから公開する。特に「○○は義務です」「○○をしても問題ありません」のような断定的な回答は、法的根拠と最新の法改正への対応を確認してから公開する。

質問が重複する場合

「類似の質問はまとめてください」という指示を加えるか、生成後に「このFAQの中で重複している質問があれば統合してください」と続けて指示する。

FAQの品質を上げる3つのポイント

1. 「何をするか」まで回答に含める

「○○の場合は規則に違反します」だけでなく「○○の場合は規則に違反します。事前に法務部門に相談してください(内線○○)」まで書く。読者が次に何をすればよいかがわかる回答にする。

2. 例外を明示する

「原則として○○です。ただし、海外取引先の場合や金額が○万円を超える場合は担当者に相談してください」のように例外条件を含める。例外を省略すると、例外に当てはまる社員がFAQを信じて間違った行動を取るリスクがある。

3. 更新日と問い合わせ先を記載する

法律・規程・社内手続きは変わる。FAQに「最終更新日:○○」と問い合わせ先を記載しておくと、読者が確信を持って使えるようになる。

法務の比較表をAIで作る方法では、比較表を素材にFAQを作る方法も紹介している。法律・規程のリサーチには法務のリサーチをAIで行う方法を参照してほしい。

まとめ

法務FAQのAI活用は、「既存の問い合わせ記録や規程を素材として渡し、AIが質問と回答の草案を作る」という流れで進める。生成した内容は必ず法務担当者が確認し、回答の正確性・自社固有の手順・問い合わせ先の明記を確認してから公開する。適切に整備したFAQは、法務への問い合わせ件数を削減し、担当者がより高度な業務に集中できる時間を作り出す。

よくある質問

AIで作った法務FAQの回答を社員がそのまま使っても大丈夫ですか?

法的な判断を含む回答は、法務担当者が内容を確認してから公開することを推奨します。AIは一般的な情報を整理する力はありますが、自社の状況・契約内容・最新の法改正への対応については人間が確認する必要があります。

社内FAQの更新はどのタイミングで行うべきですか?

規程や契約書の改訂時、法改正の施行時、社員からの問い合わせで新しい疑問点が明らかになったとき、に更新します。年1回以上の定期レビューを行い、回答の内容が現状と合っているか確認することを推奨します。

どの業務の法務FAQから作り始めると効果的ですか?

法務への問い合わせが最も多い業務から作るのが効果的です。多くの企業では、契約書の取り扱い・印章の使用手続き・個人情報の取り扱いに関する問い合わせが多い傾向があります。問い合わせ履歴があれば、件数が多いテーマから着手することを推奨します。