職種別AI仕事術

法務の比較表をAIで作る方法

法務の比較表をAIで作る方法

この記事の要点

複数の契約書・規程の条件比較や法律・ガイドラインの横断比較表をAIで作る手順を解説。法務担当者がすぐ使えるプロンプト例と比較表の活用パターンを紹介。

複数の契約書の条件を比較するとき、一つずつ条文を読み返すのは時間がかかる。AIを使えば、複数の文書から特定の情報を一括で抽出し、比較しやすい表形式にまとめる作業を大幅に短縮できる。

結論

法務業務での比較表作成にAIを活用する場合、「何を比較するか(比較軸)」を事前に決めてからプロンプトを作ることが精度を上げるポイントだ。AIはテキストから指定した情報を抽出して表にまとめるのは得意だが、比較軸が曖昧だと重要な条件が抜け落ちることがある。作成した比較表は必ず元の文書と照合してから使用する。

比較表作成に向いているAIツール

ツール特徴
ChatGPT(GPT-4o)Markdown形式の表出力が得意。長文対応
Claude 3.5 Sonnet論理的な比較・長文処理に強い
Microsoft CopilotWord・Excelとの連携で表を直接作成できる

比較表をそのままExcelに取り込む場合は、Markdown形式で出力させてからコピーするか、Microsoft Copilotを使ってExcelに直接出力する方法が効率的だ。

手順1:比較軸を決める

比較表の精度は、比較軸の設計で決まる。AIに「比較してください」と丸投げすると、重要でない項目が並び、肝心な条件が抜けることがある。

法務でよく使う比較軸は以下のとおりだ。

契約書の比較

  • 契約期間・自動更新の有無
  • 対価・支払条件・支払期日
  • 責任限定・損害賠償の上限額
  • 秘密保持義務の範囲と期間
  • 中途解除の条件・解除予告期間
  • 知的財産権の帰属
  • 準拠法・紛争解決方法

法律・規制の比較

  • 規制の対象となる行為・主体
  • 違反した場合の罰則・制裁
  • 届出・申請の要否
  • 施行日・経過措置の有無

比較軸は事前に確定してからプロンプトに含める。後から追加すると、先に作成した項目との整合性が崩れることがある。

手順2:文書を準備する

比較したい文書が複数ある場合、以下の方法で入力する。

方法1:一度にすべて貼り付ける 文書が短い場合(各10ページ以内が目安)、「文書A」「文書B」とラベルを付けて順番に貼り付ける。AIが一度に処理できる量には限界があるため、合計が20ページを超える場合は方法2を使う。

方法2:文書ごとに順番に処理する

  1. 比較軸のリストをAIに渡す
  2. 「以下の比較軸について、文書Aの内容を答えてください」と文書Aを貼り付ける
  3. 同じ操作を文書Bで繰り返す
  4. 「先ほどの文書AとBの回答を比較表にまとめてください」と指示する

手順3:プロンプトで指示する

プロンプト例1:複数契約書の条件比較

以下の2つの業務委託契約書(契約書AとB)を比較して表を作成してください。

比較軸:
1. 契約期間と自動更新の有無
2. 委託料の金額と支払条件
3. 損害賠償の範囲と上限
4. 秘密保持義務の対象と期間
5. 契約解除の条件と予告期間
6. 成果物の知的財産権の帰属
7. 準拠法

出力形式:Markdownの表。各セルには文書からの具体的な数値・条件を記載する。情報がない場合は「記載なし」とする。

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【契約書A】
(ここに契約書Aの本文を貼り付ける)

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【契約書B】
(ここに契約書Bの本文を貼り付ける)

プロンプト例2:法改正前後の比較

以下の「改正前」と「改正後」の条文を比較して表を作成してください。

出力形式:
| 条番号 | 改正前の内容 | 改正後の内容 | 変更の概要 | 実務への主な影響 |

変更がない条は表に含めないでください。内容の変更がなく、条番号のみが変わった条には「条番号変更のみ」と記載してください。

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【改正前】
(ここに改正前の条文を貼り付ける)

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【改正後】
(ここに改正後の条文を貼り付ける)

プロンプト例3:複数法律・ガイドラインの横断比較

以下の3つの規制(個人情報保護法、特定電子メール法、景品表示法)について、マーケティング施策の企画・実施時に確認すべき事項を比較表にまとめてください。

比較軸:
1. 規制の対象となる行為
2. 主体要件(誰が対象か)
3. 義務・禁止事項の具体的な内容
4. 違反した場合の罰則
5. 実務上のチェックポイント

私の会社はBtoCのEコマース事業者です。この観点で実務上重要な事項を特に強調してください。

AIの学習データに含まれない最新の改正は反映されない可能性があるため、重要な規制は公式情報で最新内容を確認するよう記載してください。

具体例1:ベンダー候補3社の契約書比較

IT調達の担当法務が、同じサービスを提供する3社から受け取った業務委託契約書を比較した例を紹介する。

各社の契約書はA社が20条・B社が15条・C社が18条で構成されていた。重点的に確認したのは「損害賠償の上限」「知的財産権の帰属」「解除条件」の3点だった。

プロンプト例1を3社版にアレンジして使い、比較表を作成した。AIが出力した比較表から、B社の契約書には損害賠償の上限額に関する記載がなく、C社は「当社の故意または重大な過失の場合を除き、委託料の3ヶ月分を上限とする」という条件が設けられていることが一目でわかった。

比較表の作成に要した時間は30分程度だった。以前は3つの契約書を行き来しながら手作業で表を作っており、2〜3時間かかっていた。なお、AIの出力は元の3つの契約書と照合し、記載の抜け漏れがないことを担当者が確認してから社内共有した。

具体例2:個人情報保護法改正対応のチェックリスト作成

2022年の個人情報保護法改正対応として、改正前後の条文を比較した変更点リストを作成した例だ。

改正前と改正後の条文を方法2(文書を順番に処理する)で入力し、変更があった条について「条番号・改正前・改正後・変更の概要・自社業務への影響」の5項目からなる比較表を出力した。

AIが出力した表には、オプトアウト規制の強化・保有個人データの開示方法の拡大・域外適用の拡大など主要な変更点が含まれていた。ただし、ガイドラインに基づく解釈や実務上の対応については「最新のガイドラインを個人情報保護委員会の公式サイトで確認してください」という注記をAI自身が加えており、その点は人間が追加確認した。

うまくいかない場合の対処

比較表に情報の抜け落ちがある場合

「この比較表で、○○という条件は各文書にどのように記載されていますか?」と個別に問い直す。または「比較表に記載がない項目でも、元の文書に含まれる重要な条件があれば追記してください」と指示を加える。

AIが文書を誤解して比較する場合

プロンプトの冒頭に「この文書は日本の商取引に関する契約書です」「甲は発注者、乙は受注者です」など基本情報を補足すると精度が上がる。また、「A社の○○条の内容は何ですか?」と個別に確認して誤りを特定してから修正を依頼する。

長すぎる文書で処理が止まる場合

比較軸ごとに抽出するアプローチに切り替える。「以下の文書から、損害賠償に関する条文だけを抜き出してください」と特定の情報だけを取得してから比較する。

比較表の活用パターン

作成した比較表は以下の場面で活用できる。

  • 取締役会・稟議資料への添付: 契約締結前の承認を得るための参考資料
  • 社内FAQ作成の素材: 規程の比較表から社員向けの質問と回答を作成する
  • 相手方との交渉メモ: 自社雛形と相手方の提示条件の差異一覧として交渉に使う
  • 監査対応資料: 規制への対応状況を一覧化して内部監査・外部審査の準備に使う

法務のFAQをAIで作る方法では、比較表を素材にFAQを作る手順も紹介している。契約書のリサーチをAIで行う方法も参考にしてほしい。

まとめ

AIによる比較表作成は、比較軸を先に固め、文書ごとに情報を抽出し、最後に表にまとめる手順を取ることで精度が上がる。複数の契約書比較・法改正前後の対比・複数規制の横断整理など、法務担当者が時間をかけていた作業をAIで大幅に効率化できる。作成した表は必ず元の文書と照合し、意思決定に使う前に人間が確認することが前提だ。

よくある質問

AIで比較表を作るとき、どのくらい正確ですか?

AIは文書から情報を抽出して表にまとめる作業は得意ですが、法的な解釈や重要性の判断は不正確になることがあります。比較表は出発点として使い、重要な意思決定に使う前には必ず担当者が元の文書と照合してください。

比較したい文書が多い場合はどうすればよいですか?

比較軸(比較する項目)を先に確定してから、文書ごとに「この文書についての比較軸の内容を答えてください」と問いかける方法が効果的です。最後に各文書の回答をまとめた表を作成するよう指示します。

法改正前後の比較表を作りたい場合は?

「改正前の条文」と「改正後の条文」を別々に貼り付け、変更点を条ごとに比較する表を作るよう指示します。変更の「有無」だけでなく「変更の内容と実務への影響」も出力するよう指示すると使いやすい表になります。