職種別AI仕事術

法務のデータ集計・分析をAIで行う手順

法務のデータ集計・分析をAIで行う手順

この記事の要点

法務担当者が契約管理台帳・相談件数・リスク分類などのデータ集計と分析をAIで効率化する手順。ExcelデータをAIに読み込ませる方法からレポート作成まで解説する。

結論

法務担当者が行うデータ集計(契約件数の推移・相談対応時間の分析・リスク分類の集計など)は、AIを使うことで「Excelの関数を調べながら集計する」作業から「何を分析するかを考える」作業に重心を移せる。ChatGPTのコードインタープリター機能またはClaude+CSVの組み合わせで、法務データの集計・分類・可視化をスムーズに行える。


使うAIツール

**ChatGPT(コードインタープリター付き)**が最も直感的に法務データを分析できる。ExcelやCSVファイルを直接アップロードし、「部署別の相談件数を集計して」「2025年と2024年を比較して」のように自然言語で指示するだけで、Pythonコードが自動生成されてデータが処理される。グラフの生成・Excelへのエクスポートもできる。

**Claude(テキスト入力)**にはCSV形式でデータを貼り付け、分析・分類・コメントを生成させる使い方が向いている。データ量が少ない場合や、分析の方針を議論したい場合に使いやすい。

**Microsoft Copilot(Excel統合)**はExcelのシート上でAIを呼び出せる。すでにExcelで管理しているデータをそのまま分析できる。


手順

ステップ1:分析の目的を決める

「集計したい」という状態ではなく、「誰に何を伝えるために」を最初に決める。

目的集計内容の例
取締役会報告用レポート四半期の相談件数・リスク別分類・対応中の重大案件数
部門への法務サービス改善部署別の相談傾向・対応時間の長い案件の特徴
契約管理の見直し更新期限が近い契約の一覧・自動更新の多い契約種別
リスク管理レポートリスク高の案件推移・対応未完了案件のエイジング

ステップ2:データをAIに投入する

ChatGPTに直接アップロードする場合

  1. ChatGPT(GPT-4o)でコードインタープリター機能をオンにする
  2. Excelファイルを添付して以下のプロンプトを送る
添付のExcelファイルは法務相談ログです。
以下の分析をお願いします:

1. 部署別の相談件数を集計し、多い順に並べてください
2. 月別の相談件数の推移を表形式で示してください
3. 相談の種別(契約書作成、契約書レビュー、法的リスク確認、その他)ごとの件数と割合を計算してください
4. 平均対応日数を部署別に集計してください

結果は表形式で出力し、最後に全体の傾向を3〜5行でコメントしてください。

CSVをClaudeに貼り付ける場合

以下は法務相談ログのCSVデータです。
このデータを分析し、以下の集計結果を出してください。

1. 「相談部署」列ごとの件数と全体に占める割合
2. 「対応状況」列(完了/進行中/保留)ごとの件数
3. 対応日数(受付日から完了日)の平均・最大・最小

【データ】
受付日,相談部署,相談種別,対応状況,担当者,完了日
2026-01-05,営業部,契約書レビュー,完了,田中,2026-01-08
2026-01-07,開発部,知的財産,進行中,鈴木,
(以下続く)

ステップ3:分析結果のコメントを生成させる

集計結果が出たら、報告書向けのコメントをAIに書かせる。

以下は法務部門の2025年度の相談対応データです。
このデータを見て、経営層に報告する際のポイントを3点にまとめてください。

【データ概要】
- 総相談件数:234件(前年比+18%)
- 最多部署:営業部(87件、37%)
- 対応種別トップ3:契約書レビュー(52%)、法的リスク確認(21%)、契約書作成(17%)
- 平均対応日数:4.2日(前年:5.8日)
- 未完了案件:12件(うち30日以上:3件)

注意点:コメントは「〜と考えられる」「〜が示唆される」の形で断定を避け、
数値の背景として考えられる要因も1〜2点示してください。

ステップ4:可視化のためのグラフを作成する

ChatGPTのコードインタープリターを使う場合。

先ほどの集計結果をもとに以下のグラフを作成してください。

1. 月別相談件数の折れ線グラフ(2024年と2025年の比較)
2. 相談種別の割合を示す円グラフ
3. 部署別相談件数の横棒グラフ(多い順)

グラフのタイトル・軸ラベル・凡例を日本語で設定してください。
作成後、グラフを画像ファイルとしてダウンロードできるようにしてください。

具体的な活用事例

事例1:契約管理台帳の更新期限アラート用リスト作成

契約管理台帳(Excelで管理・約400件)から「3か月以内に更新期限が来る契約」を抽出し、担当部署別に一覧を作る作業があった。

以下の契約管理台帳CSVを分析してください。

【依頼内容】
1. 「更新期限」列から、2026年9月1日〜2026年11月30日の間に期限が来る契約を抽出してください
2. 抽出した契約を「担当部署」別にグループ化してください
3. 各グループについて、「自動更新あり」と「手動更新が必要」の件数を集計してください
4. 以下の列を含む一覧表を作成してください:
   契約番号 | 相手方企業名 | 担当部署 | 更新期限 | 自動更新有無 | 備考

【CSVデータ】
(ここに貼り付け)

Excelの関数(FILTER・COUNTIF等)を組み合わせて手作業でやると30〜40分かかっていた作業が、AIへの投入から5分以内で一覧が出た。

事例2:法務コスト分析レポートの作成支援

外部弁護士費用・翻訳費用・公証費用などを案件別に集計し、CFOへの報告レポートを作る必要があった。

以下の法務コストデータを分析し、CFO報告用のサマリーを作成してください。

【集計内容】
1. 費用種別(外部弁護士・翻訳・公証・その他)ごとの合計と前年比
2. 案件種別(M&A・訴訟・契約・コンプライアンス)ごとの費用配分
3. 四半期別の費用推移
4. コストが突出している案件トップ5(案件名と費用)

【レポート形式】
- CFO向けエグゼクティブサマリー(400字以内)
- 詳細集計表(上記4点)
- 来期への提言(費用削減・効率化の観点で2〜3点)

【データ】
(ここに貼り付け)

うまくいかない場合

AIがExcelの数式エラーを正しく集計する

症状:アップロードしたExcelに#N/Aや#REFなどのエラーが含まれていて、集計が正しくない。

対処:「エラーが含まれている行は除外して集計してください」と追記する、またはExcelで事前にエラーセルを空欄に置換してからアップロードする。

データの件数が多く全件を貼り付けられない

対処:Excelからデータをエクスポートし、CSVファイルとして保存してからChatGPTのファイルアップロード機能でアップロードする。直接貼り付けより大量データを処理できる。

AIの集計結果と手動集計が合わない

対処:差異が出た場合、「第○行のデータを確認してください」と具体的に指定して検証を依頼する。集計ロジックをAIに説明させると、どこで計算の食い違いが起きているかが分かることが多い。


セキュリティ上の確認事項

法務データには相手方企業名・個人名・費用金額・訴訟情報など機密度の高い情報が含まれる。AIツールに投入する前に以下を確認する。

  • 社内のAI利用ポリシーで外部サービスへのデータ送信が許可されているか
  • 契約台帳に含まれる相手方企業との守秘義務条項に抵触しないか
  • 訴訟情報・費用情報など特に機密度の高いデータは仮名化(「A社」「案件001」など)できるか

仮名化後も分析の精度には影響しないケースがほとんどのため、可能であれば仮名化してからAIに投入する運用を推奨する。


まとめ

法務データの集計・分析にAIを使うと、集計の手間を減らして「何が分かるか・何を経営層に伝えるか」を考える時間に集中できる。ChatGPTのコードインタープリターにファイルをアップロードするだけで大半の集計作業が完結する。分析の目的を最初に言語化し、AIに渡すデータの機密区分を確認してから使うことで、法務部門のデータ活用が実用レベルで回り始める。

関連記事:法務のExcel作業をAIで自動化する方法法務の情報リサーチをAIで効率化する方法法務が長い資料をAIで要約するコツ

よくある質問

法務のデータ集計にAIを使うとき、どんなデータが向いていますか?

契約管理台帳(締結日・更新日・契約種別・当事者名など)、法務相談ログ(部署・相談内容・対応時間)、訴訟管理リスト(案件番号・ステータス・費用)といった表形式のデータが最も向いています。

ExcelのデータをAIに分析させるにはどうすればよいですか?

ChatGPTのコードインタープリター機能(Data Analysis)にExcelファイルを直接アップロードする方法が最も手軽です。ClaudeにはCSV形式に変換してテキストとして貼り付ける方法が使えます。

法務データの集計をAIでやる際のセキュリティリスクは?

契約先の社名・個人名・金額が含まれる場合は機密情報に該当します。社内AIポリシーの確認が必要です。AIに投入する前に仮名化(A社、B社など)する対応が有効です。

AIに分析させたデータの正確性はどう確認しますか?

AIに集計をさせた後、サンプルとなる数件を手動で確認することを推奨します。特に合計値・件数・割合などの数値は、Excelで同じ計算をして突き合わせる習慣をつけると安全です。