法務の用語集をAIで作る方法
この記事の要点
法務担当者が事業部門向けや社内研修用の法務用語集をAIで効率的に作る手順を解説。プロンプト例と精度向上のコツも紹介します。
結論
法務用語集を作る場面は2つある。1つは事業部門が契約書を読む際に参照できる入門用の用語集、もう1つは法務研修や規程整備で使う専門用語の解説集だ。どちらもAIを使えば、用語の選定と説明文の下書きを短時間で用意できる。20〜30語の用語集を手作業で作ると3〜4時間かかるが、AIを使えば30分で叩き台が完成する。法律の定義・条文の確認は担当者が行う。
どの業務で使うか
法務担当者が用語集を作成する主な場面を挙げる。
- 新入社員・異動者向けの法務研修:法務の基本用語を平易な言葉で説明した一覧
- 事業部門が契約書を読む際のリファレンス:契約条項でよく使われる用語の解説
- コンプライアンス規程の展開時:規程内で使う用語の定義集
- 新しい法律・規制の社内説明:改正法のキーワードを整理した解説集
- 取引先や顧客向けの説明資料:難しい法務用語をかみ砕いた説明
用語集は一度作ると繰り返し使えるリソースになる。AIで効率よく作り、専門家がレビューする体制を整えると、品質を保ちながら更新できる。
使うAIツール
Claude(Sonnet以上)は長文の一覧を整理して出力する精度が高く、用語集の作成に向いている。ChatGPT(GPT-4o)も同等に使える。
出力をWordやExcelに貼り付けて使う場合、表形式で出力させると作業が楽になる。Notionで用語集を管理している場合はMarkdown形式が扱いやすい。
手順1:事業部門向けの契約用語集を作る
事業部門の担当者が契約書を読む際に困る用語を中心に、わかりやすい説明文をAIで作る手順だ。
プロンプト例
あなたは法務担当者です。事業部門の営業担当者が契約書を読む際に参照できる用語集を作成してください。
【対象読者】
営業担当者(法律の知識なし。契約書を自分で確認する機会が増えている)
【収録する用語】
以下の用語を含めてください。
・瑕疵担保責任
・表明保証
・準委任契約と請負契約の違い
・帰責事由
・不可抗力条項
・損害賠償の予定
・秘密保持義務の存続
・専属的合意管轄
・反社会的勢力排除条項
・著作権の帰属
【説明の形式】
各用語について以下の形式で書いてください。
・用語名
・一行説明(15字以内で言い換えた説明)
・詳細説明(100〜150字で営業担当者が理解できる言葉で。法律用語を使う場合は平易な説明を本文に加える)
・契約書でよく出る場面(1〜2文の例)
・注意点(該当する場合のみ)
括弧書きの英語併記はしないでください。
出力の確認ポイント
- 法律の定義として正確かどうか(特に「瑕疵担保責任」は民法改正後の表現との整合性)
- 営業担当者に伝わる言葉になっているか
- 誤解を招く説明がないか
- 例が実際の契約場面に合っているか
手順2:コンプライアンス規程の用語定義集を作る
規程の中で使う用語を定義する「用語の定義」セクションをAIで作る方法だ。規程内の用語の定義があいまいだと、解釈の違いによる運用ミスが起きる。
以下の条件で、個人情報管理規程に含める「用語の定義」セクションを作成してください。
【規程の概要】
自社の個人情報の取扱いに関する社内規程。対象は全従業員。
【定義が必要な用語】
・個人情報
・要配慮個人情報
・個人データ
・保有個人データ
・個人情報データベース等
・取扱事業者(本規程における定義)
・委託先
・第三者提供
【各定義の形式】
・用語名
・定義(法律上の定義を基に、自社規程内での意味として明確に記述)
・具体例(社内で実際に該当するものを1〜2例)
個人情報保護法に基づく定義を使用してください。法改正により定義が変わっている可能性があるため、条文番号は参考として示し、最終確認を促す注記を各定義に添えてください。
手順3:法改正対応の解説用語集を作る
新しい法律や法改正の対応を社内展開する際、社員が理解しやすいキーワード解説集を作る例だ。
以下はフリーランス保護新法への対応時に作る用語集の例だ。
フリーランス・事業者間取引適正化等に関する法律(フリーランス保護新法)について、担当者が理解すべき主要キーワードを解説した用語集を作成してください。
【対象読者】
外部のフリーランスに業務委託をしている自社の人事・業務委託担当者。法律の知識なし。
【収録するキーワード】
・フリーランス(本法における定義)
・特定受託事業者
・業務委託事業者
・書面交付義務
・報酬支払期日の規制
・ハラスメント対策義務
・中途解除の予告
【形式】
各キーワードについて。
・キーワード名
・平易な言葉での説明(80〜100字。専門用語は使わない)
・自社の業務委託でどう関係するか(具体的に)
・やるべきこと・やってはいけないこと(箇条書きで1〜3点)
法改正の内容については最新の施行令・ガイドラインが公表されていることがあるため、公式情報の確認を促す文を末尾に加えてください。
用語集の品質を上げる方法
既存の用語集を参考に精度を上げる
既存の社内用語集や外部の参考資料をプロンプトに貼り付け、「このスタイルに合わせて新しい用語を追加してください」と指定する。出力の統一感が高まる。
事業部門にレビューを依頼する
完成した用語集を事業部門の担当者(法務以外)に読んでもらい、「この説明でわかるか」を確認する。法務担当者には「当然の知識」でも、事業部門にとっては難解な表現が残ることがある。
定期更新の仕組みを作る
法改正があった場合に用語集を更新するために、「この用語集のうち民法改正の影響を受ける用語を教えてください」とAIに確認させる方法が使える。ただし、AIの学習データの更新時期には限りがあるため、最新の改正内容は公式情報を確認する。
うまくいかないときの対処法
説明が長すぎる場合
「各用語の説明は100字以内に収めてください」と文字数上限を指定する。
法律用語が多くて読みにくい場合
「小学校高学年が読んでもわかる言葉で書いてください」「法律の条文番号は使わずに内容だけを平易に書いてください」と言葉のレベルを指定する。
用語の選択が自社の実態に合わない場合
「当社は製造業で、主に製品供給の基本契約を扱います」など自社の業種・業務内容をプロンプトに追記する。
定義が曖昧になっている場合
「この定義を使って、〇〇という状況が対象に含まれるかどうかを判定できますか?」と確認し、境界線があいまいな場合は定義文を修正する。
用語集と他の法務業務の連携
法務の社内メモをAIで素早く作る方法で作ったメモに、用語集で定義した言葉を統一して使うことで、社内文書全体の表現が一致する。
法務の想定問答をAIで作る方法で準備した問答にも、用語集の表現を取り込むと、事業部門との認識のずれを減らせる。
法務用語集の活用で注意すること
AIが作った用語集には、法律の定義と実務上の慣行が混在していることがある。たとえば「秘密情報」の定義は法律上の一般的な解釈と、契約書で個別に定義されたものが異なる。用語集に「この定義は〇〇法に基づく一般的な解説です。自社契約では別途定義されている場合があります」などの注記を加えると混乱を防げる。
また、条文番号を引用する場合は改正で番号が変わることがある。法務担当者が最新の条文で確認し、引用する場合は「〇〇法〇条(2026年○月現在)」のように時点を明記する運用が安全だ。
まとめ
法務用語集をAIで作るとき、説明の深さと読み手の法律知識レベルを合わせることが品質の鍵だ。「事業部門の担当者向け」と「規程の用語定義」では、同じ用語でも説明の書き方を変える必要がある。AIへの指示にこの違いを明確に入れることで、実際に使われる用語集が作れる。法律の定義に関わる部分は必ず人間が確認し、更新の仕組みも整えておくと資料の信頼性が保てる。
よくある質問
法務用語集をAIで作るとき、どんな情報を入力すればいいですか?
用語集の目的・対象読者・収録したい用語のリストまたは分野・説明の深さを指定してください。読者のレベルに合わせた説明文が生成されます。
AIが作った用語の説明は正確ですか?
法律の定義や条文に関わる説明は必ず担当者が確認してください。特に法改正が絡む用語は最新の法令を原文で確認する必要があります。
用語集を定期的に更新するにはどうすればいいですか?
更新のたびにプロンプトで「既存の用語集に以下の用語を追加してください」と差分更新する方法が効率的です。バージョン管理には日付を記録してください。
事業部門専門の用語(業界用語)も含めた用語集を作れますか?
「営業部門向け」「製造業向け」など対象分野を明示し、業界特有の用語と法務用語を組み合わせるよう指定することで対応できます。