NDAのたたき台をAIで作る方法
この記事の要点
秘密保持契約のたたき台をAIで作成する手順を解説。自社有利の条件設定からチェックポイント確認まで、コピペ可能なプロンプト例と法務担当者向けの注意点を詳しく説明します。
結論
NDAのたたき台は、AIに自社の立場・開示目的・必要な条件を伝えることで、20分以内に日本語の下書きが完成します。ゼロから条文を書く時間が不要になり、既存のひな型がない場合でも相手への提示や社内確認がすぐに始められます。ただし法的拘束力のある文書として使うには、法務担当者または弁護士による確認が必要です。
どのAIツールを使うか
NDAのたたき台作成には、法律文書の構造を理解した上で条文を生成できるツールを選びます。
| ツール | 特徴 |
|---|---|
| Claude(claude.ai) | 構造化された条文の生成が安定、日本語の法的文体を維持しやすい |
| ChatGPT(GPT-4o) | 複数バリエーションの生成が得意 |
| Gemini Advanced | Google Workspace連携で直接Docsへ出力 |
いずれも無料プランと有料プランで生成品質が異なります。業務利用には有料プランを使うことを推奨します。また、入力した内容がモデルの学習に使われないオプションがあるかどうか、各ツールの利用規約で確認してください。
手順
Step 1:使用目的と条件を整理する
たたき台の品質は、プロンプトで伝える情報の精度に比例します。AIに渡す前に次の点を確認します。
- 自社の立場:開示側か、受領側か、双方向か
- 開示目的:新規取引の検討、PoC、共同研究、採用候補者への開示、など
- 秘密情報の範囲:技術情報・営業情報・財務情報など何が含まれるか
- 義務の存続期間:契約終了後何年間の守秘義務が必要か
- 特別な条件:再委託の禁止、競業避止、残留情報の扱い、など
これらを事前に整理しておくと、プロンプト1回でほぼ使えるたたき台が得られます。
Step 2:たたき台生成プロンプトを使う
一方向NDA(自社が開示側)のプロンプト
日本法に基づく秘密保持契約書(NDA)のたたき台を作成してください。
【条件】
- 当事者:甲(開示側・自社)、乙(受領側・相手方)
- 目的:新規取引検討に伴う事業・技術情報の開示
- 秘密情報の範囲:技術情報、財務情報、顧客情報、営業情報(書面・口頭問わず)
- 守秘義務の期間:契約終了後3年間
- 第三者への開示禁止:原則禁止(乙の役職員への最小限の開示は許可)
- 目的外利用禁止:明示
- 情報の返還・廃棄:契約終了時に要求があれば実施
- 違反時の措置:損害賠償および差止請求を明記
- 準拠法:日本法
- 管轄裁判所:東京地方裁判所(専属的合意管轄)
上記を満たす秘密保持契約書の全文を作成してください。前文・条項番号・署名欄を含め、そのまま使えるフォーマットにしてください。
双方向NDAのプロンプト
日本法に基づく双方向秘密保持契約書(Mutual NDA)のたたき台を作成してください。
【条件】
- 当事者:甲・乙(双方が互いに秘密情報を開示し合う)
- 目的:共同事業の検討
- 秘密情報の定義:「秘密」と明示された書面情報、および口頭開示後5営業日以内に書面確認したもの
- 守秘義務期間:契約終了後2年間
- 例外事由:公知情報・独自開発情報・第三者から適法に取得した情報・法令開示を明記
- 残留情報条項:個人の記憶に残った情報は本契約の対象外とする旨を明記
- 損害賠償:上限を設けない(または双方で合意した上限を設定)
- 準拠法:日本法
上記を満たす双方向秘密保持契約書の全文を作成してください。
Step 3:生成結果を確認・修正する
生成されたたたき台を次の観点で確認します。
秘密情報の定義の確認
定義が曖昧だと、後から「これは秘密情報に該当するか」という争いが発生します。自社が保護したい具体的な情報が定義に含まれているかを確認してください。
例外事由の確認
秘密保持義務の例外(公知情報・法令開示・独立開発等)が適切に規定されているかを確認します。例外が広すぎると保護が弱くなり、狭すぎると実務上の支障が出ます。
義務の非対称性の確認
一方向NDAの場合、乙(受領側)にのみ守秘義務が課されていることを確認します。双方向の場合は、権利義務が対称になっているかを確認します。
契約書レビューをAIで下調べする方法のプロンプトを使って、生成したたたき台自体をチェックする方法も有効です。
Step 4:自社の過去実績と照合する
社内に過去の締結済みNDAがある場合は、「自社の標準NDAと生成したたたき台の差分を比較してください」とAIに依頼し、自社慣行との乖離がないか確認します。
以下の2つの秘密保持契約書を条文ごとに比較し、差分を表形式で出力してください。
変更点について、どちらが開示側に有利かも示してください。
【契約書A(自社標準)】
[ここに貼り付け]
【契約書B(AI生成たたき台)】
[ここに貼り付け]
うまくいかない場合
生成された条文が抽象的すぎる
「損害賠償の上限を「直接損害に限り、過去12ヶ月の支払額を上限とする」と具体的に規定してください」のように、特定の条項の修正を個別に依頼します。プロンプトを一度に完璧にしようとするより、生成→修正依頼を繰り返す方が実用的な結果が得られます。
自社の業界慣行と合わない条項が含まれる
「この契約書はIT・SaaS業界の取引に使います。業界の商慣行に合わせて、残留情報条項と技術情報の開示範囲の定義を修正してください」のように、業界・取引類型を追加指定します。
英文NDAが必要になった
海外取引先との交渉では英文NDAが求められる場合があります。「上記の条件をもとに、New York州法に基づく英文NDAを作成してください」と指定するか、生成した日本語NDAを「この契約書を英文に翻訳してください」と依頼します。英文の場合は必ず英文法務経験のある弁護士に確認を依頼してください。
法務固有の活用場面
場面1:新規取引開始前の迅速な提示
取引候補先から「まずNDAを結びたい」と言われた場合、法務担当者が不在の時間帯でもAIでたたき台を作成し、翌朝に法務確認を経て提示できる体制を作れます。特に新規事業の立ち上げ期は取引先との接触が集中するため、NDA作成のリードタイムを短縮する効果があります。
法務の文字起こしをAIで整形する方法で解説した方法と組み合わせると、締結後の交渉会議の記録も効率的に整備できます。
場面2:スタートアップとの提携交渉
スタートアップとの提携交渉では、相手側に法務リソースが少ない場合があり、自社がたたき台を提示する立場になることがあります。AIで自社有利のたたき台を短時間で作成し、相手の修正希望箇所を契約リスクの洗い出しをAIで行う方法の手順で評価することで、交渉全体を効率化できます。
たたき台の運用と改善
AIで作成したたたき台を複数件の取引で使い続けると、実際の交渉で相手から指摘される箇所のパターンが蓄積されます。指摘を受けた条項とその対応案を記録しておき、半年ごとにプロンプトの条件を更新することで、たたき台の品質が向上します。
また、社内の弁護士や顧問弁護士にたたき台を確認してもらい、「この業界ではこの条項は一般的でない」「この表現は裁判所で問題になりやすい」というフィードバックをプロンプトに反映させると、自社業界の商慣行に即した精度の高いたたき台が蓄積されていきます。
AIが生成した法律文書は、最終的に法務担当者または弁護士が確認することが前提です。たたき台の作成速度が上がる分、確認と修正に時間を使う体制を維持してください。利用規約のチェックをAIで行う方法と合わせて、AIを使った法務文書作成の全体ワークフローを整えることを推奨します。
よくある質問
AIが生成したNDAのたたき台は法的に有効ですか?
AIが生成した文書は下書きであり、そのまま締結することは推奨しません。法務担当者または弁護士が内容を確認・修正したうえで使用してください。日本法に基づく有効性の判断は専門家が行う必要があります。
一方向NDAと双方向NDAはどちらが有利ですか?
開示側にとっては一方向NDA(相手のみに守秘義務)が有利ですが、双方的な開示が想定される取引では双方向NDAが実態に合います。どちらが適切かは取引の性質で判断してください。AIに「一方向か双方向か」を指定すると、それに応じた条項を生成できます。
取引先から受け取ったNDAをAIで評価することはできますか?
できます。取引先のNDAをAIに貼り付けて、自社が開示側・受領側のどちらかを明示し、「問題になりやすい条項を分析してください」と依頼することで、チェックポイントの一覧が得られます。最終判断は担当者が行ってください。
英文のNDAのたたき台もAIで作れますか?
作れます。プロンプトに「英文で作成してください」と追記するか、「New York法準拠の英文NDA」などと準拠法を指定します。英文契約書は日本法と異なる法的概念が使われるため、英文の専門知識がある弁護士の確認を推奨します。