職種別AI仕事術

中期経営計画資料をAIで作る方法

中期経営計画資料をAIで作る方法

この記事の要点

AIを活用すれば中期経営計画資料のドラフト作成と整合確認が効率化できる。経営企画担当者向けに、全体構成の設計から各章の文章化まで具体的なプロンプト手順を解説する。

結論

中期経営計画の資料作成にAIを使うと、最も時間がかかる「各章の初稿生成」と「複数事業部の内容整合確認」を大幅に短縮できる。3年分の全体像を文章で表現する作業は、AIがドラフトを出して人間が修正するサイクルのほうが、ゼロから書くより速くかつ質が安定する。


使うAIツール

ツール用途
Claude 3.7長文生成・複数書類の横断整合確認。事業部資料を複数読み込ませた整合チェックに向く
ChatGPT(GPT-4o)繰り返し修正のやりとり。プロンプトを細かく調整しながら文章を磨く場合
NotebookLM過去の中計資料・各事業部ヒアリング資料を読み込ませ、横断的な整理に使う

中計策定は通常6〜12ヶ月かけて行う組織的なプロセスであり、AIはあくまで資料作成の工数削減に使うツールだ。方向性の決定は経営者と役員が行う。


中期経営計画資料を作る手順

ステップ1:全体構成をAIで設計する

中期経営計画の典型的な構成は業種・企業規模によって異なるが、以下のプロンプトで自社向けの構成案を得ることができる。

以下の条件で中期経営計画資料の目次構成案を作成してください。

【会社概要】
- 業種:(例:製造業、売上高500億円規模)
- 計画期間:3カ年(2026〜2028年度)
- 対象読者:取締役会・機関投資家・社員

【含めるべき要素(例)】
- 経営環境の認識(外部環境・競合動向)
- 自社の現状分析(強み・弱み・課題)
- 3カ年の経営ビジョンと戦略の柱
- 事業別の戦略と投資計画
- 財務目標(売上・利益・ROE等)
- 実行体制とガバナンス

【注意点】
- 株主や社員が読んでわかりやすい章立てにする
- 各章の説明文(2〜3行)も付ける

ステップ2:外部環境分析の初稿を生成する

事業環境の記述は定型化しやすいため、AIで初稿を出すと効率が高い。ただし業界固有のトレンドや最新の規制動向は、自社で収集した情報を与えることが精度を上げるカギだ。

以下の情報をもとに、中期経営計画の「経営環境の認識」章を1200字程度で作成してください。

【与える情報】
- 業界全体のトレンド:(自社で収集した内容を箇条書きで記載)
- 主要な技術変化:(同上)
- 規制・政策の変化:(同上)
- 競合の動向:(同上)

【文体・ルール】
- 書き言葉、敬体
- 結論から書く
- 数値は与えた情報のみを使い、不明な場合は「(要入力)」と記載
- 推測は「〜とみられる」「〜と予想される」と表記する

ステップ3:戦略の柱と打ち手の文章化

経営方針が固まった後、その内容を文章化する作業はAIが速い。経営者の発言メモや社内討議の結果を渡して文章に変換させる使い方が実務では効果的だ。

以下の経営幹部の討議メモをもとに、「3カ年戦略の柱」セクションを文章化してください。

【討議メモ】
(例)
・デジタル事業を収益の第2の柱にする。2028年に全社売上の30%を目指す。
・コスト構造の改善。固定費を現状比10%削減する。
・M&Aを積極活用し、技術・顧客基盤を補完する。

【文体・ルール】
- 書き言葉、敬体
- 各戦略の柱ごとに段落を分ける
- なぜその戦略を選んだかの背景を一言入れる
- 数値はメモのままを使う
- 全体で900〜1100字

ステップ4:財務目標の章を作る

財務目標の数値はすでに決まっているケースが多いため、「数値を表に落とし込む」「数値の意味を文章で説明する」作業にAIを使う。

以下の財務目標数値をもとに、「財務目標」章の本文と表を作成してください。

【数値】
- 売上高:2026年度見込み500億 → 2028年度目標650億
- 営業利益率:現状7% → 目標10%
- ROE:現状8% → 目標12%
- 設備投資:3年合計150億(デジタル・生産設備で折半)

【アウトプット形式】
1. 数値を整理したMarkdown表(年度別)
2. 各指標の目標水準の根拠・背景を説明する本文(600字)

ステップ5:複数事業部の整合確認

各事業部が作成した個別計画書を全社計画に統合する際、数値と方向性の整合確認にAIを使うことができる。

以下の各事業部の計画概要と全社財務目標を読んで、整合が取れていない点を指摘してください。

【全社目標】
(全社の売上・利益目標を記載)

【各事業部計画】
事業A:(概要)
事業B:(概要)
事業C:(概要)

【確認してほしい観点】
- 各事業部の目標を足し上げると全社目標に達するか
- 事業部間で資源配分の矛盾がないか
- 戦略の方向性が全社ビジョンと整合しているか

問題がある場合は箇条書きで指摘し、調整が必要な項目を優先度順に並べる

ステップ6:役員・投資家向けサマリーを作る

計画書の全体が固まったら、説明会や取締役会で使う要約版をAIで生成する。

以下の中期経営計画書(本体)をもとに、投資家説明会向けのエグゼクティブサマリーを作成してください。

【要件】
- 600字以内
- 結論(3カ年の変化の要点)→ 戦略の柱(3点)→ 財務目標 の順に構成する
- 数値を3つ以上含める
- 専門用語は使わず、投資家が初めて聞いても理解できる言葉で書く

【中期経営計画書】
(ここに貼り付ける)

経営企画で実際に起きるシーン

場面1:6事業部の計画を統合して全社中計を策定する

6事業部がそれぞれ作成した計画書を受け取り、全社版に統合する作業が発生した。各事業部の計画書テキストをClaudeに読み込ませ、「全社売上目標との乖離額」「資源配分の重複と空白」「事業間のシナジー・カニバリゼーション」の3点で整合チェックをさせた。問題箇所の洗い出しに通常3日かかっていたが、AIによる初期チェックで翌日には調整すべき項目のリストが揃い、事業部との調整に集中できた。

場面2:中計の社員説明会用資料を短時間で仕上げる

取締役会承認後、社員向けの説明資料を作る必要が生じた。承認済みの役員向け中計資料を入力として与え、「専門用語を使わず社員が理解できる言葉に変換する」「各自の仕事との関連を示す段落を加える」というプロンプトで社員版のスライド原稿を生成した。人事部と内容確認して2サイクルの修正を行い、2日で社員説明会資料が完成した。


うまくいかない場合のポイント

問題:戦略の方向性がぼやけた文章になる

AIは受け取った情報を構造化はするが、戦略の鋭さを自ら加えることはできない。「なぜこの市場を選んだのか」「なぜ競合に勝てると判断したのか」という経営判断の根拠を、プロンプトで明示的に渡す必要がある。渡さなければ、それらしく見えるが当たり障りのない文章になる。

問題:長い計画書を渡すとAIの出力が要約だけになる

長文を入力したとき、AIが要約に留まることがある。「要約ではなく、与えた情報をすべて反映した本文を書く」と明示するか、章ごとに分割して入力するほうが確実だ。

問題:計画書の語調が各章でばらつく

セクションごとに個別に指示を出すと、文体がばらつきやすい。最初に「文体サンプル」として数段落を確認した後、「この文体で統一する」と指示しながら進めると一貫性が保てる。


関連する業務との連携

中期経営計画に記載する市場分析は市場分析をAIで行う方法で効率化できる。計画に紐づくKPI体系の設計はKPI設計をAIで行う方法と一体で進めると整合性が高くなる。中計を取締役会に説明するための資料作成は取締役会資料をAIで作る方法で詳しく解説している。


まとめ

中期経営計画のAI活用で最も効果が高いのは、長文の初稿生成と複数書類の整合確認だ。経営の方向性を決める判断はAIには代替できないが、決まった内容を文章・表・要約に落とし込む作業はAIが速い。「経営判断はアナログ、文章化はAI」という役割分担を徹底することが、品質を維持しながら工数を削減するポイントだ。

よくある質問

中期経営計画の策定にAIはどこまで使えますか?

構成の設計・各章の本文生成・複数事業の整合確認・要約の作成に使える。経営方針の決定や数値目標の設定は経営判断であり、AIは補助ツールとして位置づける。

中計策定の社内ヒアリング結果をAIで整理できますか?

可能。各事業部からの回答テキストをAIに読み込ませ、戦略方向性・課題・必要リソースを横断的に整理させることができる。ただし機密情報の取り扱いは社内ルールに従う。

複数事業部の計画を統合する際にAIはどう役立ちますか?

各事業部の個別計画書をまとめてAIに読み込ませ、全社目標との整合確認や矛盾点の洗い出しができる。整合が取れていない箇所を指摘させることで、調整の優先順位付けに使える。