職種別AI仕事術

取締役会資料をAIで作る方法

取締役会資料をAIで作る方法

この記事の要点

AIを使えば取締役会資料の初稿作成・論点整理・エグゼクティブサマリーの文章化が効率化できる。経営企画担当者向けに、役員が読む資料を短時間で仕上げる具体的な手順を解説する。

結論

取締役会資料の作成でAIを使うと、初稿の文章化・複数資料の論点整理・エグゼクティブサマリーの生成が半分以下の時間で終わる。役員は平均して1資料に10分も時間をかけないため、「結論が先にある」「論点が明快」という構成の資料を短時間で作れることがAI活用の最大のメリットだ。


使うAIツール

ツール用途
Claude 3.7長文の資料を読み込ませてサマリー生成・論点整理に強い。複数資料の横断分析も得意
ChatGPT(GPT-4o)繰り返しの文章修正。プロンプトを少しずつ調整して役員の好みに合わせていく場合
Gemini 1.5 ProGoogle Workspace連携。SlidesやDocsとの往復が少ない

社内ポリシーで外部AIへの機密情報入力が制限されている場合は、社内承認済みのツールのみ使う。まず自社のIT部門またはコンプライアンス担当に確認してほしい。


取締役会資料を作る手順

ステップ1:議案の構造と目的を整理する

取締役会資料は議案ごとに性質が異なる。AIへの指示の精度を上げるために、資料の種類を先に確認する。

議案の種類資料の目的役員に求める行動
事業承認・投資決議判断材料の提示Yes/Noの決議
業績報告・KPI報告現状の共有認識合わせ・質疑
方針策定方向性の討議方向性の承認
リスク報告問題の共有対策の確認・指示

この分類を意識してプロンプトを作ると、AIが出す構成が資料の目的に合ったものになる。

ステップ2:議案資料の構成案をAIで作る

以下の条件で取締役会の議案資料の構成案を作成してください。

【議案の概要】
(例:新規事業への初期投資3億円の承認を求める)

【議案の種類】
承認決議(役員に投資の可否を判断してもらう資料)

【資料の制約】
- スライド8枚以内(本体)+補足資料別添
- 1スライド1メッセージ

【含めるべき情報】
- 投資の目的と背景
- 投資規模と回収見通し
- 主要リスクと対処方針
- 代替案との比較
- 決議を求める事項

【アウトプット】
各スライドのタイトル(メッセージライン)と含める内容(2〜3行)

ステップ3:各スライドの原稿をAIで生成する

構成が固まったら、スライドごとに原稿テキストを生成する。スライドの「ボディコピー」はAIに生成させ、数値の入れ込みと確認は人間が行う。

取締役会資料の「投資の背景と目的」スライドの本文を作成してください。

【このスライドで伝えること】
- 現状の課題:(例:主力事業の市場が成熟し、売上成長率が3%以下に低下している)
- 機会:(例:隣接市場の成長率が年率15%で推移しており、既存顧客基盤を活かして参入できる)
- 投資の必要性:(例:今期に参入しないと競合他社に先行される可能性が高い)

【ルール】
- メッセージライン(スライドタイトル)を1行で先頭に入れる
- 本文は箇条書き3〜4点で、1点は30字以内
- 数値は与えた情報のみ使う。不明なものは「(要入力)」とする
- 推測は「〜の可能性がある」と書く

ステップ4:エグゼクティブサマリーを生成する

取締役会資料の冒頭に置くエグゼクティブサマリーは、役員が最初に読む最も重要なページだ。本体が完成した後にAIで生成する。

以下の取締役会資料をもとに、エグゼクティブサマリーを作成してください。

【要件】
- 200字以内(スライド1枚に収まる量)
- 「何を決議するか」「なぜ必要か」「リスクの要点」「期待する効果」の順に構成
- 数値を2つ以上含める
- 役員が一読して判断できる密度にする

【取締役会資料(本体)】
(ここに貼り付ける)

ステップ5:想定質問と回答を準備する

取締役会では役員から鋭い質問が出ることが多い。AIで想定質問を出させ、回答の骨子を作っておくと当日の準備が整う。

以下の資料をもとに、取締役会で出ると想定される質問を7〜10問生成してください。

【質問の観点】
- 数値の根拠(なぜこの金額か・なぜこの期間か)
- リスクの深掘り
- 代替案の検討状況
- 実行体制の妥当性
- 競合・外部環境の変化

各質問に対して、答えるべきポイントを2〜3行で付けてください。

【資料】
(ここに貼り付ける)

ステップ6:業績報告書類の文章整合確認

定例の業績報告資料では、数値が変わったときに関連する文章の更新漏れが起きやすい。AIでチェックさせることができる。

以下の業績報告資料を読んで、数値と文章の整合が取れていない箇所を指摘してください。

【確認してほしい観点】
- 本文中の数値と表の数値が一致しているか
- 前期比・前年同期比の記述が計算結果と合っているか
- 「好調」「順調」等の評価表現が数値と乖離していないか

問題があれば、該当箇所・現在の記述・修正案を表形式で出力する

【資料】
(ここに貼り付ける)

経営企画で実際に起きるシーン

場面1:投資案件の承認資料を3日で仕上げる

事業部から「今月の取締役会で投資承認を取りたい」という要件が来た。事業部が作成した事業計画のメモを入力として渡し、取締役会向けの構成案をAIで生成した後、スライド原稿を1枚ずつ生成した。CFOと内容の確認を行い、数値の修正・補足の追加を経て3日でスライド原稿が完成した。従来は5〜7日かかっていた作業だった。

役員向け想定質問もAIで20問生成し、事業部担当者と回答を練った結果、取締役会当日の質疑は用意した範囲で9割をカバーできた。

場面2:四半期業績報告の数値整合チェックを自動化する

四半期ごとに作成する業績報告資料は、数十枚のスライドに渡って数値が散在する。数値を更新するたびに関連するコメント文が更新されていないケースが発生していた。最終版の資料テキストをClaudeに読み込ませ、「数値と評価表現の不整合」を確認させるルーティンを作ったところ、リリース前の確認漏れが0件になった。チェックにかかる時間は30分から5分に短縮した。


うまくいかない場合のポイント

問題:役員の語調・好みに合わない文章になる

役員によって、数値重視・ストーリー重視・リスク重視など好みのスタイルが異なる。過去に承認された資料のエグゼクティブサマリーをサンプルとして渡し、「この文体と構成に合わせる」と指示すると精度が上がる。

問題:スライド原稿が長すぎる

AIは情報を盛り込みすぎる傾向がある。「1スライドあたりの文字数を80字以内にする」「箇条書きは3点まで」と明示的に制限を入れる。役員は資料を丁寧に読まないことを前提に、情報密度より読みやすさを優先する。

問題:想定質問が浅い

AIが出す想定質問が表面的になる場合は、「CFOが聞きそうな財務面の質問」「社外取締役が気にしそうなガバナンス面の質問」など、役員のロールを指定して質問を出させると深い質問が出やすい。

問題:数値確認のフローが煩雑になる

AIの出力に「(要入力)」の箇所が多い場合、数値の入れ込みを最後にまとめて行うフローを作ると漏れが減る。AIに「数値が未確定の箇所だけリストアップする」と指示して、入力すべき数値の一覧を先に作ると管理しやすい。


他の業務との連携

取締役会に提出する投資案件の根拠資料は事業計画書をAIで作る手順で効率化できる。業績報告に使うKPI一覧の整備はKPI設計をAIで行う方法と連動する。取締役会での説明に使う中期経営計画の資料については中期経営計画資料をAIで作る方法でまとめている。


まとめ

取締役会資料の作成でAIが最も役立つのは「初稿の構造化」と「サマリーの文章生成」だ。役員が読む資料は「結論が先頭にある」「数値と事実で裏付けられている」「論点と情報が整理されている」の3点が特に重要で、この構造を短時間で作る部分にAIを使うのが現実的な活用法だ。数値の正確性と経営判断の妥当性の確認は、どんなにAIが便利でも人間が担う必要がある。

よくある質問

取締役会資料の作成にAIを使う場合、どこまで任せられますか?

初稿の文章化・論点の構造整理・サマリー生成は任せられる。議案内容の法的適合確認・数値の正確性確認・経営判断の妥当性評価は人間が行う必要がある。

機密性の高い資料をAIに入力してもよいですか?

社内のAI利用ポリシーと情報セキュリティルールを確認することが先決。未公開の経営情報や個人情報が含まれる場合は、外部AIサービスへの入力を制限している企業が多い。

取締役会資料のスライドも作れますか?

AIはMarkdownやテキスト形式での原稿生成が得意。スライドへの変換はPowerPoint・Keynote・Notionスライド等に手作業で流し込む必要があるが、原稿が固まった状態から始めると作業時間が大幅に短くなる。

役員に読んでもらいやすい資料の特徴は何ですか?

結論が先頭にあること、1スライドに1メッセージが入っていること、数値と事実で主張が裏付けられていること、検討を要する論点と不要な論点が明確に分かれていること。