事業計画書をAIで作る手順
この記事の要点
AIを活用すれば事業計画書のドラフト作成時間を大幅に短縮できる。経営企画担当者が使えるプロンプト設計と、役員承認を通すための仕上げ方を具体的に解説する。
結論
事業計画書のドラフト作成にAIを使うと、構成の検討から本文の初版ができるまでの時間が2〜3日から半日程度に縮まる。AIが担うのは「構造を提示し、文章を埋める」作業であり、数値の根拠付けや経営判断の妥当性確認は人間が行う前提だ。この分担を守れば、精度を落とさずにスピードだけを上げることができる。
使うAIツール
| ツール | 用途 |
|---|---|
| Claude 3.5 Sonnet / 3.7 | 長文生成・構成設計。一度に全体のドラフトを出せる |
| ChatGPT(GPT-4o) | 繰り返し修正のやりとりが得意。プロンプトを細かく調整しながら進めたい場合 |
| Notion AI | Notionで計画書を管理している場合。文書整合性を保ちながら書ける |
数値や財務モデルの計算はExcelやスプレッドシートで別途処理し、AIが出した枠組みに数字を当て込む使い方が正確性を保てる。
事業計画書を作る手順
ステップ1:計画書の目的とターゲットを決める
プロンプトを書く前に、計画書の目的を明確にする。「新規事業の社内承認取得」「既存事業の3カ年計画更新」「外部融資・投資家向けのプレゼン資料」では、強調すべきポイントが大きく違う。
経営企画が最も頻繁に作るのは「社内の事業承認用」の計画書だ。この場合、役員が気にするのは「なぜ今やるのか」「投資対効果はいつ出るか」「リスクは管理できるか」の3点に集約される。
ステップ2:構成のドラフトをAIで出す
最初にAIに計画書の構成を提案させる。この段階でゼロから考えるより、AIが出した構成に自社の事情を足していくほうが早い。
以下の条件で事業計画書の構成案を作成してください。
【計画の概要】
事業名:(例:新規SaaS事業の立ち上げ)
対象:社内経営会議での承認取得
提出先:取締役会(役員5名)
ページ数目安:本体10ページ以内、補足資料別添
【必ず含める項目】
- 事業概要と市場機会
- 競合との差別化
- 3カ年の売上・投資計画(数値は後で埋める)
- リスクと対応策
- 実行体制と KPI
【アウトプット形式】
章立てと各章の説明文(2〜3行)を一覧にする
ステップ3:各セクションの文章をAIで生成する
構成が固まったら、セクションごとに本文をAIで生成する。一度に全体を生成するよりも、セクション単位で指示してフィードバックしながら進めるほうが精度が高い。
事業計画書の「市場機会」セクションを執筆してください。
【与える情報】
- 対象市場:(例:中小企業向け勤怠管理SaaS)
- 市場規模:(例:国内TAMは約800億円、2025年時点)
- 自社の切り口:(例:スマートフォン完結・初期費用ゼロ)
- 現状の課題:(例:紙の出勤簿を使う企業が全体の40%を占める)
【文体・ルール】
- 書き言葉、敬体
- 数値は変えない
- 推測は「〜とみられる」「〜と推計される」と書く
- 600〜800字程度
市場規模・競合情報・自社の強みといった情報は、AIには与えない限り正確に出せない。インプット情報の質がアウトプットの質を決める。
ステップ4:財務計画の枠組みを作る
財務計画はAIに計算させるのではなく、表の枠組みと説明文だけをAIに作らせる。数値はExcelで正確に計算してから表に埋める。
3カ年事業計画の財務計画セクションで使う表の構成を作成してください。
【含める項目】
- 売上高(年度別)
- 原価・粗利率
- 販管費(内訳:人件費・マーケ費・システム費)
- 営業利益
- 投資額(初期・維持)
- 投資回収期間の見通し
【アウトプット】
Markdownの表形式で、数値は「(要入力)」と記載する
ステップ5:役員向けエグゼクティブサマリーを書く
本体が完成したら、最後に役員が最初に読むエグゼクティブサマリーをAIで生成する。このサマリーは本体の内容を参照して作らせるため、本体を先に確定してから処理する。
以下の事業計画書をもとに、役員向けエグゼクティブサマリーを400字以内で作成してください。
【優先して含める情報】
1. 事業の一言説明
2. 参入する市場規模と自社の勝ち筋
3. 3年後の数値目標(売上・投資回収)
4. 主要リスクと対処方針
【ルール】
- 結論から書く
- 数値を必ず1つ以上含める
- 「〜です。〜です。」の繰り返しを避ける
【事業計画書(本体)】
(ここに貼り付ける)
経営企画で実際に起きるシーン
場面1:新規事業の社内承認を急ぎで取る必要がある
事業部から「来週の取締役会に新規事業を通したい」という要件が来た。従来であれば構成の洗い出しから始めて2〜3日かかるが、AIで構成を即時生成し、事業部担当者からヒアリングした情報をセクションごとに流し込んでいくことで、翌日には役員レビューができる状態のドラフトができた。修正は2〜3サイクルで収まり、計画書を3日で仕上げることができた。
場面2:複数事業の中期計画を一括で更新する
中期経営計画の改定で、6事業部の計画書をそれぞれ更新する必要が出た。各事業部に同じ情報入力フォームを渡し、返ってきた情報をプロンプトテンプレートに流し込む形で自動的に初稿を生成した。担当者1名が1事業部あたり半日かかっていた初稿作業を、AIで1時間以内に終わらせた。人間の確認と数値チェックは別に行ったが、トータルの工数は従来の30%程度になった。
うまくいかない場合のポイント
問題:AIが市場規模の数値を捏造する
AIは学習データに基づいて「それらしい数値」を出すことがある。市場規模・競合シェア・成長率などの数値は、省庁の統計・調査会社レポート・業界団体データで自分で確認してから使う。AIに数値を出力させる場合は、プロンプトに「数値はすべて不明なら(要調査)と書く」と指示する。
問題:文章が冗長になる
AIは説明を重ねる傾向がある。「各段落は3文以内にする」「結論を最初の1文で述べる」と明示すると引き締まった文章になる。
問題:役員の好みに合わない構成になる
自社の過去の承認事例をAIに読み込ませて「このフォーマットに合わせる」と指示する方法が効果的だ。過去の計画書のToC構成だけでも渡すと、AIが踏襲した構成を出してくれる。
他の経営企画業務との連携
事業計画書と連動する業務として、中期経営計画資料をAIで作る方法とKPI設計をAIで行う方法がある。計画書で設定した目標数値をKPIに落とし込む作業は、一連のプロセスとして進めると整合性が保ちやすい。取締役会に提出する前の資料整備については取締役会資料をAIで作る方法も合わせて参照してほしい。
まとめ
事業計画書のAI活用で最も効果が出るのは「構成の立案」と「本文の初稿生成」の2点だ。数値根拠の調査・役員への説明責任・リスク判断は人間が担い、AIは文章化と構造化に専念させる。この役割分担を意識したプロンプト設計が、精度と速度を両立するカギになる。
よくある質問
事業計画書のどこまでをAIに作らせてもよいですか?
市場規模の推定・競合整理・財務モデルの枠組みはAIが得意。ただし数値の根拠は自社データや公的統計で補完し、AIが出した推計をそのまま使うのは避けるべき。
事業計画書のドラフト作成にどのくらい時間短縮できますか?
構成決めからドラフト完成まで従来2〜3日かかっていた作業が、プロンプト設計を整えれば半日程度に収まるケースが多い。確認・数値入れ替えの時間は別途必要。
役員向けの事業計画書と通常のものに違いはありますか?
役員向けは結論・リスク・財務インパクトを前に出す構成が好まれる。詳細な根拠は補足資料に回し、本体はA4換算で5〜10ページ以内に収めると読まれやすい。