購買・調達の比較表をAIで作る方法
この記事の要点
AIを使えば複数サプライヤーの見積・仕様・評価スコアを素早く比較表に整理できる。購買・調達固有のプロンプト例と作成手順を詳しく解説する。
結論
複数サプライヤーから集まった見積書を比較表にまとめる作業は、購買・調達の中でも工数がかかる。AIを使えば、各社のデータをテキストで渡すだけで、評価軸に合わせた比較表の骨格を数分で生成できる。最終的な意思決定の根拠として使えるレベルに仕上げるには、プロンプトで評価軸と出力フォーマットを明示することが鍵になる。
比較表作成でAIが役立つ場面
購買・調達の現場では、比較表が必要になるタイミングが複数ある。
見積比較は最も頻繁なケースだ。3〜5社から受け取った見積書を横並びで整理し、単価・数量・納期・支払条件を一覧化する。各社のフォーマットが異なるため、手動で転記すると時間がかかる上に転記ミスのリスクがある。
サプライヤー評価では、品質・コスト・納期・対応力といった複数軸での評価を一覧にまとめる。数値スコアとコメントを組み合わせた評価シートは、社内稟議の添付資料としても使われる。
仕様比較では、同一用途の複数製品のスペック表を並べて技術的な優劣を整理する。カタログやデータシートから情報を抽出して比較する作業は、AIに渡すと効率化できる。
使うAIツール
ChatGPT(GPT-4o)またはClaude 3.5 Sonnet以降を推奨する。
テキストやMarkdownで渡されたデータを表形式に整理する能力が高い。また、「重み付きスコアを算出してください」「最安値の会社を強調してください」といった追加指示にも対応できる。
大量のデータを扱う場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートのデータをCSV形式でコピーして渡すと、AIが列構造を正確に解釈しやすくなる。
手順:比較表の作り方
ステップ1 比較するデータを整理する
まず、各社から集めた情報を以下のような構造でテキスト化する。PDFや紙の見積書の場合は、主要な数値だけを箇条書きで書き出せば十分だ。
【A社見積データ】
・品番:SU-2201
・単価:¥8,500(税抜)
・ロット:500個単位
・納期:発注から21日
・支払条件:翌月末
・保証:1年間
【B社見積データ】
・品番:B-Model X2
・単価:¥7,900(税抜)
・ロット:1,000個単位
・納期:発注から28日
・支払条件:翌々月末
・保証:6ヶ月
【C社見積データ】
・品番:CX-2200シリーズ
・単価:¥9,200(税抜)
・ロット:100個単位から対応
・納期:発注から14日
・支払条件:翌月末
・保証:2年間
ステップ2 比較表生成プロンプトを使う
あなたは購買・調達部門のアナリストです。
以下の3社の見積データをもとに、比較表を作成してください。
【比較表の要件】
・縦軸:各評価項目(単価、ロット最小単位、納期、支払条件、保証期間)
・横軸:A社・B社・C社
・最も有利な値のセルに「★」を付ける
・各項目の最下段に「コメント」行を設け、選定上の留意点を1文で記載する
・Markdown形式で出力する
【見積データ】
(上記のデータをここに貼り付ける)
出力されるMarkdown表の例:
| 評価項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 単価(税抜) | ¥8,500 | ★ ¥7,900 | ¥9,200 |
| 最小ロット | 500個 | 1,000個 | ★ 100個 |
| 納期 | 21日 | 28日 | ★ 14日 |
| 支払条件 | ★ 翌月末 | 翌々月末 | ★ 翌月末 |
| 保証期間 | 1年 | 6ヶ月 | ★ 2年 |
| コメント | ロット・納期・保証のバランス良好 | 最安値だがロット大きく保証短い | 小口対応・納期最短・保証最長 |
ステップ3 重み付きスコアを追加する
社内で評価軸のウェイトが決まっている場合は、スコア計算を追加できる。
以下のウェイトで5段階評価(5が最高)を付け、重み付き合計スコアを算出してください。
【ウェイト設定】
・単価:40%
・納期:30%
・保証期間:20%
・支払条件:10%
各社の各項目を5段階で採点し、最後に加重平均スコアを「合計スコア」行として追加してください。
採点基準は「最も有利な値を5点とし、最も不利な値を1点とする相対評価」を使用してください。
ステップ4 仕様比較表を作る場合
製品スペックの比較には、データシートや仕様書の主要数値をテキストで渡す。
以下の3製品の仕様データから、技術仕様比較表を作成してください。
【比較の視点】
・弊社の要求仕様(電圧:DC24V、動作温度:-10℃〜70℃、防塵等級:IP65以上)に
合致する項目には「○」、非合致には「×」、要確認には「△」を付けてください
・仕様が弊社要求を大きく上回る場合は「◎」とし、そのコメントを添えてください
【製品データ】
(ここに各製品の仕様を貼り付ける)
購買・調達固有の具体例
具体例1:4社見積の総合評価表
年間契約の部材調達で4社から見積を取得した場面を想定する。単価だけでなく、年間発注量でのコスト試算、支払サイトによるキャッシュフロー影響も含めた比較表を求める場合のプロンプト。
以下の4社の見積データを使って、購買委員会に提出する総合評価表を作成してください。
【追加計算】
・年間発注量は12,000個で固定。各社の年間調達コスト総額を試算してください
・支払サイトの差異によるキャッシュフロー影響を「支払条件コメント」として添えてください
【出力フォーマット】
1. 単純比較表(Markdown)
2. 年間コスト試算表(Markdown)
3. 総合評価コメント(200字以内の箇条書き、1社あたり2〜3点)
【見積データ】
(4社分のデータをここに貼り付ける)
このプロンプトで出てきた出力は、購買委員会の稟議書の添付資料としてそのまま使えるレベルに近いものになる。
具体例2:サプライヤー定期評価の比較表
四半期ごとの取引先評価で、品質(不良品率)・納期遵守率・コスト推移・問い合わせ対応速度の4軸を比較する表。
以下の6社の前四半期実績データから、サプライヤー定期評価比較表を作成してください。
【評価基準】
・不良品率:0.1%未満を5点、0.1〜0.3%を3点、0.3%超を1点
・納期遵守率:98%以上を5点、95〜98%を3点、95%未満を1点
・コスト推移:前期比コスト低減があれば5点、同じなら3点、上昇なら1点
・対応速度:問い合わせ当日返答を5点、翌日を3点、2日以上を1点
各社の合計スコアを算出し、スコア順に並べて出力してください。
【実績データ】
(ここに6社の実績データを貼り付ける)
うまくいかない場合
表の列や行がズレる
Markdown形式で出力させても、AIが列数を間違えることがある。「列数は必ず〇列で固定してください」と明示するか、ヘッダー行だけを先にプロンプトに含めて「このヘッダー構造に合わせて各行を埋めてください」という指定をすると安定する。
数値の計算が合わない
AIは算術計算が苦手な場合がある。複雑な計算(年間コスト試算、加重スコアの合計)は、Excelに貼り付けてから数式で再計算することを前提にする。AIには「構造とラベルを整えること」に専念させ、計算の正確性は別ツールで担保する割り切りが現実的だ。
評価コメントが抽象的になる
「200字以内で具体的なリスクと推奨アクションを含めてください」と指定する。「このサプライヤーの強みと、採用した場合に発生しうるリスクを1点ずつ挙げてください」という形にすると、調達判断に使えるコメントが出やすい。
社内独自の評価軸に対応できない
社内評価マトリクスの定義(例:「対応力スコア=緊急対応率×0.6 + 技術提案回数×0.4」)をプロンプトの冒頭に記載する。独自の算出方法を事前に定義することで、AIがその基準に沿って評価を行える。
比較表作成の所要時間目安
| 作業内容 | 比較社数 | 人間だけ | AI併用 |
|---|---|---|---|
| 単純見積比較 | 3〜5社 | 30〜45分 | 5〜10分 |
| 重み付きスコア付き | 3〜5社 | 60〜90分 | 15〜25分 |
| サプライヤー定期評価 | 6〜10社 | 2〜3時間 | 30〜45分 |
| 年間契約用総合評価 | 4〜6社 | 3〜4時間 | 45〜60分 |
比較表の品質チェックポイント
作成した比較表を社内共有・稟議提出する前に確認すべき点。
- 全社の数値が原本の見積書と一致しているか
- 計算結果(合計・スコア)をExcelで再確認したか
- 評価軸と定義が社内の調達基準と合っているか
- 「★」「◎」などの目印が正しい会社に付いているか
- データの基準日(見積有効期限)が記載されているか
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よくある質問
AIで作った比較表はExcelに貼り付けられますか?
Markdown形式で出力してもらえばExcelやGoogleスプレッドシートに貼り付け可能です。ただし書式は崩れるため、列幅の調整などは手動で行ってください。
10社以上の見積を一度に比較表にできますか?
データを渡せば対応可能ですが、10社を超えると1プロンプトの処理が重くなります。まず5〜6社ずつ比較し、最後に最終候補を絞り込む段階式の手順が安定しています。
比較表に重み付けスコアを組み込めますか?
「品質を40%、コストを35%、納期を25%のウェイトで評価スコアを計算してください」と指示すれば対応できます。スコアの計算式はプロンプト内で指定することを推奨します。
AIが比較表の数字を間違えることはありますか?
あります。特に合計計算や割合の算出は誤りやすいです。最終的な数値の正確性は必ずExcelや電卓で確認してください。