職種別AI仕事術

商品企画の提案書をAIでつくる進め方

商品企画の提案書をAIでつくる進め方

この記事の要点

商品企画担当者がAIを使って提案書を効率よく作成する実践的な手順を解説。新製品企画や新カテゴリ参入提案を例に、構成設計からプロンプト例、レビューまでを網羅します。

結論

商品企画の提案書をAIで作る核心は「人間が事実を集め、AIが整理して言語化する」という役割分担です。AIに白紙から提案書を書かせると内容が薄くなりますが、市場データ・ユーザーの声・競合分析を用意してからAIに渡すと、整理された構成で説得力のある文章に変換されます。


AIを使う前に揃える「提案書の素材」

提案書をAIで作るには、まず「素材」が必要です。素材がないままAIに「提案書を作って」と指示すると、根拠のない一般論が並んだ文書が出てきます。

商品企画の提案書に必要な素材は次の5種類です。これを揃えることがAI活用の前提です。

素材の種類具体的な内容例
市場の根拠業界レポートの数値・市場規模・成長率
ユーザーの声インタビュー結果・アンケートデータ・行動観察
競合の状況競合製品の特徴・価格帯・シェア・差別化ポイント
自社のリソース技術・ノウハウ・既存チャネル・コスト感
想定するビジネス条件価格設定・利益率・発売時期・販売チャネル

このうち1〜2つしか揃っていない段階でAIに任せても、穴埋め的な推測で補完されます。推測部分は送信前に確認する必要があります。揃えられるものを揃えてからAIに渡すのが時間効率の観点でも優れています。

ユーザーの声を収集する方法については商品企画のユーザーインタビューをAIで効率化する手順を参照してください。


使うAIツール

提案書の作成ステップに応じて使うツールが変わります。

構成設計・本文の言語化:ChatGPT(GPT-4o)・Claude 3.5 Sonnet

どちらも長文のプロンプトと素材を処理するのが得意です。「章ごとに分けて書いてほしい」「エグゼクティブサマリーだけ書いてほしい」という部分的な指示にも対応できます。

スライド形式で出力したい場合:Gamma・Beautiful.ai

文章を渡すとスライドに変換してくれます。PowerPointやGoogleスライドへの書き出しにも対応しています。最新の機能は公式で確認してください。

数値の可視化(グラフ・表):Copilot for Excel・Spreadsheets

市場規模や競合比較の数値を渡すと、グラフとして整理してくれます。


手順:商品企画の提案書をAIで作る5ステップ

ステップ1:提案書の構成を決める

まずAIに「このプロジェクトに適した提案書の構成を提案してほしい」と依頼します。構成だけを先に出力させることで、後のステップで「このセクションだけ書いてほしい」という部分依頼ができます。

商品企画の社内提案書(経営層向け)の構成を提案してください。

【提案の内容】: 【例:30代女性をターゲットにした環境配慮型の日用品シリーズへの新規参入】
【意思決定者】: 【例:事業部長と経営会議(CFO含む)】
【提案のゴール】: 【例:来期予算の確保と開発着手の承認】
【持っている素材】:
- ユーザーインタビュー12件の結果(環境意識・購買動機)
- 競合3社の製品比較データ
- 自社の類似カテゴリの販売実績

構成は6〜8スライド相当で、経営層が10分以内に判断できる情報量にしてください。

このプロンプトで生成された構成案を確認し、自社の状況に合わせて調整します。

ステップ2:各セクションを順番に書く

構成が決まったら、セクションごとにAIに書かせます。一度にすべてを書かせるより、1セクションずつ丁寧に作る方が精度が上がります。

特に重要なのは「エグゼクティブサマリー(1ページ目)」と「なぜ今か・なぜ自社か」のセクションです。

以下の情報をもとに、提案書のエグゼクティブサマリーを作成してください。

【提案の概要】: 【例:環境配慮型日用品シリーズの新規開発(3製品・来年10月発売)】
【主な根拠】:
- 国内エコ意識調査(2025年):30代女性の68%が環境配慮商品に追加コストを許容
- 競合A社の類似シリーズが発売1年で前年比180%成長
- 自社既存チャネルで類似価格帯の商品が月平均2,400個販売中

【提案する投資規模】: 初年度開発費 ○○百万円(正確な金額は社内確認中)
【期待する成果】: 【例:発売2年目で単月黒字化】

読み手は事業部長とCFO。300字以内・箇条書きなし・判断に必要な情報だけ書いてください。

「正確な金額は社内確認中」のような注記をプロンプトに含めておくと、AIは推測で数字を補完しません。

ステップ3:競合比較の表を作る

競合分析の結果を表形式で整理するのはAIが得意とするタスクです。手元の競合データを渡して比較表に変換してもらいます。

以下の競合製品データを、提案書に使える比較表に整理してください。

【比較軸】: 価格帯・ターゲット・環境配慮の訴求・販売チャネル・強み・弱み
【データ】:
- 競合A社:1,800〜2,500円・30代女性・FSCマーク取得・EC主体・ブランド認知高い・価格高め
- 競合B社:1,200〜1,600円・主婦全般・再生プラ使用・量販店主体・価格競争力高い・環境訴求弱い
- 競合C社:2,800〜3,500円・環境意識高い層・カーボンオフセット・D2C・プレミアム感・認知低い
- 自社(計画): 1,500〜2,000円・30代女性・自然素材使用・既存チャネル活用・コスト競争力

表の後に「自社の差別化ポイント」を2〜3文で書いてください。

ステップ4:「なぜ今か・なぜ自社か」のロジックを強化する

提案書で最も審査される箇所が「なぜ今このタイミングか」と「なぜ他社ではなく自社がやるべきか」です。ここはAIが弱い部分でもあるため、自分の考えを箇条書きで入力してAIに言語化させます。

提案書の「なぜ今か・なぜ自社か」のセクションを書いてください。

【なぜ今か(自分の考えのメモ)】:
- 環境規制の強化傾向が続いており、先行する製品カテゴリが有利
- 競合の本命プレイヤーはまだこのカテゴリに参入していない
- 自社の既存サプライチェーンが今期リニューアル予定で、新製品を組み込みやすい

【なぜ自社か(自分の考えのメモ)】:
- 類似価格帯の販売ノウハウと流通チャネルを持っている
- ターゲット層(30代女性)との接点がすでに既存製品であり、新シリーズの認知コストが低い

上記を説得力のある文章にまとめてください。200字以内で。

自分のメモが断片的でも、AIが論理的な文章に変換してくれます。

ステップ5:全体を通して確認・修正する

各セクションが揃ったら、「全体の流れに矛盾がないか」「数字が一貫しているか」を人間が確認します。AIに「この提案書全体の論理的な矛盾を指摘してください」と入力すると、「3ページで述べた市場規模と5ページの試算が整合していない」のような問題を発見してくれることもあります。

ただし最終的な数値・根拠の正確さは人間が確認します。特に財務計画の数字は必ず社内の担当者と確認してください。


具体例:スマートキッチン家電の新製品企画書

調理家電メーカーの商品企画担当が、AI搭載のスマートクッカーの新製品企画を経営会議に提出する場面です。

素材として「ユーザーインタビュー20件のメモ」「競合4社の現行製品比較」「自社工場のスペック資料」を用意しました。

まずステップ1の構成依頼プロンプトで6スライド構成が生成されます。次にステップ2でエグゼクティブサマリーを作り、ステップ3で競合比較表を作り、ステップ4で「なぜ今か」のセクションを仕上げます。

4つのステップで生成された文章を組み合わせると、提案書の草稿ができます。このプロセス全体にかかる時間は1〜2時間です。ゼロから書く場合の3〜5時間と比べて大幅に短縮されます。

草稿完成後は「財務計画の数字を社内確認」「デザインチームにスライドのビジュアルを依頼」「上司に事前共有して意見をもらう」の3ステップで仕上げます。

ロードマップとの整合性については商品企画のロードマップをAIで作る手順も参照してください。


うまくいかない場合

AIが根拠なく数値を補完する

プロンプトに「情報がない部分は〔要確認〕と書いてください。推測で数値を補わないでください」と明記します。この一文を入れるだけで、推測補完の頻度が大幅に減ります。

「経営層が読む文章」のトーンになりにくい

「取締役会で発表する文体」「バイアスなく事実を示す文体」などトーンを具体的に指定します。あるいは「〇〇のような雰囲気で書いてください」と、参考にしたいドキュメントのトーンを説明する方法も使えます。

提案書が長くなりすぎる

「1スライドあたり100字以内」「全体で1,000字以内」など分量の上限を決めてプロンプトに入れます。提案書は短い方が意思決定者に読まれやすいです。AIはデフォルトで長い文章を生成しやすいため、制約を入れることが重要です。

差別化ポイントが競合と似てしまう

競合の情報をより詳しくプロンプトに入れると、AIは差別化の余地を見つけやすくなります。「競合Aがすでに〇〇を訴求しているため、自社は〇〇では勝負しないことにしてください」という制約を入れると的が絞れます。


提案書をAIで作るときの注意点

機密情報の扱い:未発表製品の仕様・価格・取引先名は外部サービスのプロンプトに入れないでください。社内の企業向けAIサービス(Microsoft 365 Copilot Enterpriseなど)を使うか、伏せ字にしてから使います。

「AIが作った」は言わなくていい:提案書の文章にAIが使われているかどうかより、内容の正確さ・根拠の質・判断の妥当性が評価されます。AIは道具であり、最終的な提案の責任は担当者にあります。

数値・固有名詞は必ず確認:市場規模・競合数値・財務計画など、提案書の信頼性に直結する数字は人間が最終確認します。


まとめ

商品企画の提案書をAIで作る手順は「素材を揃える→構成を決める→セクションを順に書く→全体を確認する」の4段階です。

AIは「整理・言語化・フォーマット化」を担います。「何を提案するか・なぜか・根拠は何か」は人間が考えます。この役割分担を守れば、提案書の作成時間を5時間から2時間に短縮しつつ、内容の質は落ちません。

資料・スライドの仕上げについては商品企画の資料・スライドをAIで仕上げる方法で詳しく解説しています。

よくある質問

商品企画の提案書をAIに任せると、内容が薄くなりませんか?

AIは構成の整理・言語化・フォーマット化を担います。市場データ・ユーザーの声・競合分析など事実の部分は人間が用意する必要があります。事実が揃っていれば、AIが整理することで内容は薄くなりません。

AIで作った提案書は経営層に通りますか?

提案書の説得力は構成・事実・根拠の質で決まります。AIは構成と言語化を助けますが、数値の根拠や意思決定者の懸念点への対応は人間が考える必要があります。

提案書作成にどのAIツールが適していますか?

文章の構成・言語化にはChatGPT・Claudeが適しています。スライド形式で出力したい場合はGammaやBeautiful.aiも使えます。最新の機能・料金は各公式サイトで確認してください。

提案書のどの部分をAIに任せればよいですか?

AIが得意なのは「構成設計」「各セクションの言語化・整理」「エグゼクティブサマリーの作成」です。市場データの収集・競合分析・財務計画は人間が担当し、その結果をAIに渡して整理させるのが効率的です。