業務活用事例

1on1の準備・記録にAIを使う方法

1on1の準備・記録にAIを使う方法

この記事の要点

前回の記録からアジェンダ案を生成し、面談後のアクション抽出まで行うAI活用サイクルを解説。部下のコンテキストを渡して質問案を生成する具体的なプロンプト例つき。

結論:AIは1on1の「準備」と「記録整理」に使い、対話の質は人間が作る

1on1で多くのマネージャーが時間を取られているのは、毎回のアジェンダを考える準備と、面談後のメモ整理・アクション管理だ。この2つをAIで効率化すると、1on1にかける準備時間が週に20〜30分削減できる。一方、部下との対話の質そのもの、傾聴や問いかけの深さはAIには担えない。AIはあくまで準備と記録の効率化ツールとして使う。

1on1にAIを使うサイクル

AIを使った1on1の運営は、次のサイクルで回る。

  1. 前回記録の読み込みとアジェンダ案生成
  2. 1on1の実施(ここはAIなし)
  3. 面談後の記録整理とアクション抽出
  4. 次回の1on1で前回記録を使って繰り返す

継続性がこのサイクルの肝だ。記録が蓄積されるほど、AIが生成するアジェンダの精度が上がる。

ステップ1:前回記録からアジェンダ案を生成する

1on1の1〜2日前に、前回の記録をAIに渡してアジェンダ案を生成させる。

以下は先月の1on1の記録と、その後の進捗メモです。
今回の1on1のアジェンダ案を作成してください。

【前回のアジェンダと話した内容】
- プロジェクトAの進捗確認:納期は問題なし、ただし●●の課題が発生中
- キャリアの方向性:来期から別チームへの異動を希望しているとのこと

【前回のアクションと進捗】
- アクション:●●の課題を解決するためXXXを試す → 実施済み、効果は限定的
- アクション:異動に向けて上長に相談する → 未実施

【今回の面談で確認したいこと(自分のメモ)】
- 未実施のアクションについて状況確認
- 来月の繁忙期に向けたサポートが必要かどうか

今回のアジェンダ案を3〜5項目で作成してください。
各項目に「何を話す目的か」を1文で添付してください。

前回のアクションが未実施の場合、AIはそれをアジェンダに自動で入れることが多い。アジェンダを自分で追加・修正してから面談に臨む。

部下のコンテキストを渡して質問案を生成する

アジェンダが決まったら、部下の状況に合わせた質問案をAIに生成させる。これは特に、何を聞けばいいか迷いやすい「キャリアの相談」「職場の人間関係」「モチベーションの低下」といったテーマで役立つ。

部下との1on1で「キャリアの方向性」について深掘りしたいです。
以下のコンテキストをふまえて、10〜15分の会話を想定した質問案を5つ作成してください。

【コンテキスト】
- 入社4年目、今の業務に習熟している
- 来期から別チームへの異動を希望しているが、具体的な理由はまだ聞けていない
- 最近やや元気がないように見える

【質問の方針】
- 誘導せず、本人の意向を引き出す
- 「なぜ」より「どのように」「どんな状況で」という聞き方で圧力をかけない
- オープンクエスチョンを中心に

「誘導せず」「オープンクエスチョン中心に」といった指示を加えると、尋問になりにくい質問リストが返ってくる。この質問案をそのまま使う必要はなく、当日の会話の流れで使いたいものを選ぶ。

ステップ2:面談後の記録整理とアクション抽出

面談後、メモをAIに渡して構造化された記録とアクションリストを生成する。

会話中に取ったメモは断片的でも構わない。AIはそれを整理して記録にまとめる。

以下は1on1の会話メモです。
構造化された記録と、次回までのアクションリストを作成してください。

【メモ】
- プロジェクトAは来週リリース見込み、懸念事項は解消
- 異動の件:上長にはまだ話せていない、タイミングを見ている
- 最近元気ないのは私生活の事情で、業務には支障ない
- スキルアップ:Pythonを独学で勉強しているとのこと

出力形式:
1. 今回話した内容の要約(箇条書き、各項目60字以内)
2. 次回までのアクション(担当者と期限つき)
3. 継続して確認すべきテーマ(次回のアジェンダに引き継ぐもの)

「継続して確認すべきテーマ」を出力させると、次回のアジェンダ生成に使える情報が自動で整理される。

記録管理と個人情報の取り扱い

1on1の記録には部下の業務状況、心理的な状態、キャリアの希望など、センシティブな情報が含まれる場合がある。記録の管理方法を事前に決めておく。

保存場所の選択: 社内のシステム(Notion、社内Wiki、HR管理ツールなど)に保存し、閲覧権限をマネージャーと人事に限定する。

AIへの入力範囲: 部下の氏名や個人識別情報は入力しない。「私生活の事情で元気がない」などのプライベートに関わる情報は、記録として残すか慎重に判断する。部下から「記録してほしくない」と言われた内容は記録しない。

保存期間: 異動・退職後の記録の扱いについて、会社のポリシーに従う。

会社で生成AIを使うときの注意点には、業務でのAI利用における情報セキュリティの考え方をまとめている。

アジェンダのない1on1へのAI活用

定期の議題がない「ただの雑談」のような1on1でも、AIを活用できる。

相手の最近の仕事内容や関心事をコンテキストとして渡し、「自然な会話の導入になる話題を3つ提案してください」と指示するだけで、会話の糸口が見つかりやすくなる。チームメンバーの人数が多いマネージャーほど、全員の近況を把握し続けるのが難しくなるため、このような使い方が効果的だ。

継続して使うための仕組みづくり

1on1へのAI活用が定着しない原因の多くは、記録を継続して管理できないことだ。

  • 1on1のたびに新しいドキュメントを作るのではなく、メンバーごとに1つのドキュメントに時系列で追記する
  • AIで生成した記録とアクションを、そのドキュメントに貼り付ける
  • 次回の1on1前に、そのドキュメントの直近の内容をAIに渡す

この習慣がつくと、数か月分の記録が積み上がり、AIが生成するアジェンダと質問案の精度が上がる。

採用・人事業務でのAI活用では、1on1以外の人事業務へのAI活用についても解説している。

まとめ

1on1へのAI活用は、前回記録を使ったアジェンダ生成→面談中はAIなし→面談後の記録整理・アクション抽出というサイクルで進める。記録を蓄積するほど精度が上がる仕組みのため、継続して使える記録管理の仕組みを先に作ることが重要だ。個人情報の取り扱いは社内ポリシーと利用ツールの規約に従う。

よくある質問

部下の情報をAIに入力しても問題ありませんか

氏名や個人識別情報は除外するか仮名にして入力します。業務上の状況(担当プロジェクト、直近の課題など)は必要に応じて入力できますが、社内の情報セキュリティポリシーと利用するAIの規約を事前に確認してください。

AIが生成したアジェンダをそのまま使えますか

叩き台として使えますが、部下の最近の様子や自分が気になっていることは自分で追加します。アジェンダはAIが生成したものをベースに、人間が5〜10分で調整するのが現実的な使い方です。

1on1の記録はどう管理すればよいですか

AIで生成した記録と次回アクションをNotion、GoogleDoc、社内Wikiなどに保存します。次回の1on1前に前回記録を読み返し、アクションの進捗を確認してからAIに渡すと継続性のある面談になります。