コンサルタントの1枚サマリー資料をAIで作る方法
この記事の要点
コンサルタントが複雑な分析や提案を1枚に凝縮したサマリー資料をAIで作成する手順を解説。構成の骨格から文言の圧縮まで、作成時間を3時間から1時間以内に短縮できます。
結論
複雑な分析や提案を1枚のサマリー資料に凝縮するには、「何を伝えるか」の優先順位付けが最も時間がかかります。AIを使うと、この優先順位付けと文言の圧縮を短時間でたたき台にできるため、3時間かかっていた作業が1時間以内に収まることが多いです。
AIが担うのは構成の骨格生成と文言の圧縮です。最終的なメッセージの優先順位とビジュアルへの落とし込みは人間が判断します。
使うAIツール
| ツール | 向いている用途 |
|---|---|
| Claude(claude.ai) | 長い提案書・報告書の要点抽出と構成骨格の生成 |
| ChatGPT(GPT-4o) | 箇条書きを読みやすい文言に整える・文章の圧縮 |
| Gemini Advanced | Google SlidesやDocsと連携したサマリー生成 |
クライアント名・案件名・財務数値などの機密情報は入力前に匿名化または抽象化してください。「A社」「20〜30%のコスト削減が見込まれる施策」のように置き換えて使います。
手順:1枚サマリー資料をAIで作る
ステップ1:伝えたいメッセージを1文で決める
AIに丸投げする前に、「この1枚で伝えたいことを1文で言うと何か」を自分で言語化します。この1文が曖昧なままAIに渡すと、情報を均等に並べただけのサマリーが生成されます。
例:「競合との価格差が拡大しており、来期中にコスト構造改革に着手しないと利益率が2桁を切るリスクがある」
この1文を決めてからAIに渡すことで、AIはこのメッセージを支える情報を選ぶ基準を持てます。
ステップ2:素材を渡して骨格を生成する
以下の内容を基に、経営層向けの1枚サマリー資料の構成を作成してください。
【伝えたいコアメッセージ】
競合との価格差が拡大しており、来期中にコスト構造改革に着手しないと利益率が2桁を切るリスクがある。
【元資料の要点(箇条書き)】
- 自社の製品価格は競合比で平均12%高い
- 価格差は3年前から拡大傾向にあり、現在が最大
- 主要顧客3社で価格を理由とした離反が確認されている
- 原価の内訳では調達コストが競合比で18%高い
- 直近3期の粗利率は低下傾向(35%→32%→29%)
- コスト改善の余地は調達集約と生産ライン見直しの2軸
【資料の読者】取締役会(財務・営業・製造の3役員が出席)
【スライド枚数制限】1枚
【使えるセクション数】最大4セクション
出力内容:
1. スライドのタイトル(メッセージ型、20字以内)
2. 4セクションの見出しと各セクションに含める情報(箇条書き2〜3点ずつ)
3. 最も目立たせるべき数値・事実
4. 意思決定ポイントとなる問い(スライド末尾に入れる想定)
このプロンプトでスライドの骨格が出力されます。出力された骨格を見て、「この数値は前面に出すべきでない」「このセクションは不要」といった判断を加えてから実際の資料に落とし込みます。
ステップ3:文言を圧縮する
骨格が決まったら、各セクションの文言をAIで圧縮します。コンサルタントが書く文章は情報密度が高い半面、1枚資料では1セクション15〜25字程度に収める必要があります。
以下のテキストを1枚スライド用に圧縮してください。
元文:「当社の製品価格は競合他社と比較して平均12%高い水準にあり、この価格差は過去3年間にわたって拡大傾向にあります。特に主要顧客3社において価格競争力の低下を理由とした離反が実際に確認されており、売上への影響が現実的なリスクとなっています。」
制約:
- 30字以内に圧縮
- 数値(12%)は必ず残す
- 「離反リスク」が伝わること
圧縮後の文言は短くなる分、ニュアンスが失われやすいため、意味が変わっていないか確認してください。
ステップ4:読者に合わせて調整する
スライドの読者が変わる場合、同じ骨格をベースに観点を調整します。
上記の1枚サマリーを、以下の読者向けに観点を調整してください。
【元の読者】取締役会
【新しい読者】営業部門の課長クラス(現場で顧客交渉を担当)
変更する観点:
- 意思決定ポイントではなく「現場で今すぐできるアクション」を追加
- 財務指標より顧客反応の具体事例を前面に出す
- 「来期中に判断が必要」から「今月の商談で使える対応策」に視点を下げる
コンサル固有の具体例
例1:3フェーズのプロジェクト提案を1枚に凝縮
IT戦略コンサルのプロジェクトで、3フェーズ・18ヶ月のロードマップ提案を役員会向けに1枚で見せる必要がありました。各フェーズの詳細が詰まった30ページの提案書から、役員会が見たい「投資判断に必要な情報だけ」を抽出する作業です。
AIに「投資判断に必要な最低限の情報に絞ってください。役員が知りたいのは投資額・期待効果・リスク・意思決定タイミングの4点です」と渡したところ、各フェーズの詳細説明がすべて削ぎ落とされ、4点に絞った骨格が出力されました。
「フェーズ1完了時の中間判断ポイント」という表現がAIから出てきたのが有用で、役員会でも「次の判断は6ヶ月後」という時間軸が伝わり、投資への心理的ハードルが下がりました。
例2:ヒアリング結果のサマリーを1枚で共有
10名のステークホルダーにインタビューした結果を、クライアントの事業部長に共有するための1枚メモです。バラバラの意見を「課題認識の一致度が高い領域」「意見が割れている領域」「まだ認識されていない領域」の3軸で整理する必要がありました。
AIにインタビューの要点を渡して「3軸で分類し、経営判断に影響しそうな意見を優先して抽出してください」と指示したところ、10名分の意見が3軸に整理されました。「意見が割れている領域」の整理が特に価値が高く、クライアントが把握していなかった社内対立が可視化され、次のファシリテーション設計に直接活かせました。
課題整理の方法については課題整理をAIで進める手順も参照してください。ヒアリング結果の構造化と1枚サマリーの作成は連動します。
うまくいかない場合
情報が多すぎて1枚に収まらない
「この情報をすべて1枚に入れること」をAIに求めると無理が出ます。「1枚で伝えられる量を超えている情報を捨てる判断をしてください」とAIに任せると、重要度の低い情報を自動で落とした構成案が出ます。捨てられた情報の中に重要なものが入っていないかだけ確認してください。
メッセージが「情報の羅列」になる
「なぜこの情報が重要か」が伝わらない構成になっているケースです。AIへのプロンプトに「各セクションが『だからこそ〇〇が必要』という結論につながるように構成してください」と追加すると、情報の羅列からストーリー型の構成に切り替わります。
スライドのレイアウトとテキスト量が合わない
AIはテキストの量と視覚的なレイアウトの相性を判断できません。「1セクション25字以内で箇条書き3点」のような制約をプロンプトに明示することで、実際のスライドに乗せやすい分量のテキストが出力されます。
数値が間違っている
AIは入力された数値を計算・変換するときに誤ることがあります。「12%高い」が「88%の水準」に言い換えられる際に計算ミスが入るようなケースです。数値を含む文言は必ず元資料と照合してください。
1枚サマリーの品質を上げるチェックリスト
AIで骨格を作ったあと、配布前に確認する5点です。
- コアメッセージが15秒で読み取れるか
- 読者が「次に何をすべきか」を1枚から判断できるか
- 数値に誤りがないか
- 「検討中」の事項と「決定済み」の事項が区別されているか
- 読者が知らない略語・専門用語が含まれていないか
提案書の作成をAIで進める方法と組み合わせると、提案書から1枚サマリーまで一貫した情報の流れで資料を作れます。
成果物作成をAIで効率化する方法では、さまざまな成果物の品質管理についてまとめています。1枚サマリーの作り方もそこで触れている成果物品質の考え方に基づいています。
まとめ
1枚サマリー資料の作成でAIが最も効くのは、情報の取捨選択と文言の圧縮です。「コアメッセージを1文で決める」→「素材を渡して骨格を生成させる」→「文言を圧縮する」→「読者に合わせて調整する」の4ステップが実用的な手順です。
数値の正確さと「決定・検討中の区別」は人間が確認する最後の砦です。AIの出力を叩き台にして、この2点を確認してから配布することで、資料の品質と作成速度の両立ができます。
よくある質問
1枚サマリーの作成でAIが最も役立つのはどの部分ですか?
文字数の圧縮と構成の骨格作成です。10ページの提案書を1枚に凝縮する際に『何を残して何を捨てるか』の判断をAIに任せることで、情報の取捨選択に費やす時間が大幅に減ります。ただしメッセージの優先順位はビジネス判断が必要なため、最終的には人間が決める必要があります。
AIで作った1枚サマリーはそのまま使えますか?
そのままでは使えません。AIは視覚的なレイアウトや情報の密度を最適化できないため、PowerPointやKeynoteへの落とし込みは人間が行う必要があります。また、数値・固有名詞の正確さは必ず確認してください。AIの出力はあくまでテキスト構成の骨格です。
1枚に収まらないほど情報量が多い場合はどうしますか?
AIに『1枚で伝えられる情報量の上限は何か』を逆算させるのが有効です。『この内容を1枚のスライドで伝えるとしたら、最も優先すべきメッセージ3点に絞ってください』と指示すると、捨てるべき情報を特定する作業が加速します。
経営層向けと実務担当者向けで1枚サマリーの内容は変えるべきですか?
変えるべきです。経営層向けは結論・インパクト・意思決定ポイントの3点に絞り、実務担当者向けは手順・担当・期日・リスクを含めた実行よりの構成にします。AIにプロンプトで『読者:取締役会』または『読者:現場プロジェクトチーム』と明示するだけで出力の観点が変わります。