人事がPDF資料をAIで要約する方法
この記事の要点
就業規則・採用媒体資料・労働基準法通達などPDF形式の文書を、AIツールを使って目的別に要約する具体的な手順。アップロード機能と貼り付け方式それぞれの使い分けも解説する。
結論:PDF形式の文書もAIで処理できる。ツール選択と目的指定が鍵になる
人事の日常業務には、就業規則の改定案、採用媒体からの提案書、厚生労働省の法改正通達、社会保険労務士からの指摘書など、PDFで届く文書が多い。これまでは印刷して読み込むか、パソコン画面でスクロールしながら確認するしかなかった。
AIの文書処理機能を使うと、PDFをアップロードするだけで「管理職向けに変更点を3点で抜き出す」「新しい採用媒体の特徴と料金をライバル媒体と比較する」といった処理ができる。ただし、ツールによってPDFの読み込み方法とできることが異なるため、用途に合わせた選択が必要だ。
使うAIツールとPDF対応の違い
| ツール | PDF対応 | 複数ファイル | 適した用途 |
|---|---|---|---|
| Claude Pro | ファイルアップロード | Project機能で複数 | 長文の構造化された要約 |
| ChatGPT Plus | ファイルアップロード | 1会話内で複数 | 汎用的な質問・要約 |
| NotebookLM | ファイルアップロード | 最大50ファイル | 複数資料の横断分析 |
| Gemini Advanced | ファイルアップロード | 複数対応 | Google Workspace連携 |
テキストとして保存されたPDFはほとんどのツールで直接読み込めるが、スキャン画像を文字認識処理していないPDFはテキストとして扱えない場合がある。スキャンPDFは、Adobe AcrobatのOCR機能やMicrosoft Lensで文字起こしてからAIに渡す。
手順:PDFをAIで要約する流れ
ステップ1:PDFの性質を確認する
PDFを開き、テキストが選択できるかどうかを確かめる。テキストが選択できれば、AIに直接アップロードするか、全文テキストをコピーして貼り付けられる。選択できなければスキャン画像PDFなので、先にOCR処理が必要だ。
次に、文書の機密レベルを確認する。就業規則や給与規程は機密性が高く、社外のAIツールへのアップロードには注意が必要だ。採用媒体の提案書や厚生労働省の通達は公開情報なので、扱いやすい。
ステップ2:アップロードまたはテキスト貼り付けを選ぶ
PDFが50ページ以内で機密性が低い場合は、AIツールの添付ファイル機能から直接アップロードする。ページ数が多い場合や、コピペで処理したい場合は、PDFをテキスト形式でコピーして貼り付ける方が安定することがある。
社内情報を含む文書の場合、Microsoft 365に統合されたMicrosoft Copilotやセキュリティポリシーに準拠したエンタープライズ版を使う。入力データが学習に使われない設定になっているかを事前に確認する。
ステップ3:目的別のプロンプトで処理する
PDFをアップロードした後のプロンプトで精度が決まる。以下は人事業務の場面に合わせたプロンプト例だ。
就業規則の改定差分を確認するプロンプト
アップロードした就業規則の改定案を読んで、以下の形式でまとめてください。
1. 変更のあった条項(条番号と変更内容を箇条書き)
2. 今回の改定で従業員の義務・権利が変わる部分
3. 管理職として部下に周知が必要な事項
4. 実務で対応が必要な手続きや期限(あれば)
条件や例外がある場合は省略せずに記載してください。
採用媒体の提案書を評価するプロンプト
アップロードした採用媒体の提案書を読んで、以下の項目で整理してください。
1. 媒体の特徴と強み(求職者層・掲載期間・露出の仕組み)
2. 費用(掲載料、オプション費用、成果報酬の有無)
3. 過去の採用実績データ(記載があれば)
4. 当社の[エンジニア職]採用において有利な点・注意点
競合他社との比較や評価意見は求めていません。まず事実を整理してください。
ステップ4:出力の確認と補正
要約が出力されたら、数値・条件・固有名詞を原文と照合する。特に注意が必要なのは次の3点だ。
- 金額・日数・パーセンテージが省略されていないか
- 「〜の場合は除く」などの例外条件が反映されているか
- 対応期限・施行日が正しく抜き出されているか
照合で抜けが見つかったら「この要約では〜の部分が省略されています。原文のXページの内容も含めて補足してください」と追加プロンプトを送る。
人事業務での具体的な使い場面
場面1:社会保険労務士からの指摘書の確認
採用・労務案件で社労士から届く指摘書は、法律の条文を引きながら詳細に書かれており、どの指摘が優先度が高いかを判断するだけでも時間がかかる。
このPDFをAIにアップロードして「指摘事項を優先度別に整理してください。早急に対応が必要な事項と、中長期で検討すればよい事項に分けてください」と投げると、議題設定に使える下書きが10分以内に出る。
最終的な判断は必ず社労士と連携して確認するが、AIによる整理は社内での優先度調整や経営層への報告準備を大幅に早める。
場面2:複数年の就業規則変遷の比較
5年分の就業規則PDFをNotebookLMにアップロードして「2021年から2026年にかけて、育児・介護関連の条項がどのように変わったか時系列で整理してください」と聞くと、改定履歴のサマリーが手に入る。これは法改正対応の履歴管理や、次の改定方針の検討資料として使える。
通常この作業は複数の文書を並べて手作業で比較する必要があり、2〜3時間かかることも珍しくない。AIで処理すると下書き作成が30分以内に終わり、確認作業に集中できる。
採用面接の設計や評価基準の作成にAIを活用する方法は人事の面接設計にAIを活用する方法を参照してほしい。
うまくいかない場合のポイント
PDFが読み込めない
スキャンPDFまたは画像ベースのPDFは、テキストデータがないためAIがそのまま読めない。Adobe Acrobat、Google ドキュメントへのインポート、またはMicrosoft Lensでテキスト変換してから使う。
要約の質が低い
「要約して」だけでなく、「誰向けに」「どんな形式で」「どの情報を中心に」を明示する。構造化された出力(番号付きリスト、表形式など)を指定すると、後工程で使いやすい形になる。
長いPDFで後半の情報が薄くなる
文書が100ページを超える場合は、章ごとにPDFを分割するか、テキストをコピーして分けて処理する。各部分の要約を作ったあとで「以下のチャプター要約を統合し、全体のポイントを整理してください」と統合プロンプトを使う。
数値や条件が省略される
プロンプトに「数値・金額・日付・条件は省略しないでください」と追記する。または要約後に「この要約に数値・期限・例外条件が抜けている箇所があれば、原文から補足してください」と確認プロンプトを送る。
長文テキストの要約テクニック全般については人事が長い資料をAIで要約するコツも参照してほしい。
PDFの種類別・プロンプト方針まとめ
| PDF種類 | 主な目的 | プロンプトの重点 |
|---|---|---|
| 就業規則・社内規程 | 変更点の把握・周知準備 | 変更前後の差分、対応必要事項 |
| 法令・通達 | 法改正対応の確認 | 対応期限・対象者・必要手続き |
| 採用媒体提案書 | 媒体選定の比較検討 | 費用・対象求職者層・実績 |
| 社労士指摘書 | 対応優先度の整理 | 緊急度・対応手順・期限 |
| 研修テキスト | 受講者向け要点集作成 | 重要概念・実践ポイント |
PDFを扱う際は「機密レベルの確認」と「目的の明示」この2点を習慣にすれば、ミスを防ぎながら処理を速められる。
研修資料の作成や要約配布については人事の研修準備をAIで効率化する方法も確認してほしい。
PDFの種類別に使えるプロンプトのバリエーション
改定前後の比較が必要な場合
2つのバージョンのPDFを同時にアップロードして比較する方法がある。
添付した2つのファイルを使って、就業規則の変更点を比較してください。
ファイル1:2024年版就業規則(旧)
ファイル2:2026年版就業規則(新)
出力形式:
| 条項番号 | 旧規程の内容(要点) | 新規程の内容(要点) | 変更の区分 |
の表形式で出してください。
変更の区分は「追加」「削除」「修正」のいずれかで記入してください。
変更のない条項は含めないでください。
2つのバージョンを手作業で見比べると30分以上かかる作業が、5〜10分に短縮できる。
調査報告書から数値を抜き出す場合
採用媒体から届く効果測定レポートや、エンゲージメントサーベイの集計結果など、数値が散らばっているPDFから必要な指標だけを取り出したい場合がある。
アップロードしたレポートから、以下の数値データを抜き出してください。
必要な数値:
1. 全設問の平均スコア(5点満点)
2. 部署別スコアの一覧(部署名と平均スコア)
3. 前回調査との比較(差分の値)
4. 最もスコアが低かった設問と最も高かった設問
数値が記載されていない項目は「記載なし」と書いてください。
推測や補完はしないでください。
要約結果を次の作業に活かす
PDFを要約した後、その出力を次の業務ドキュメントに組み込む流れを作ると効率が上がる。
例えば、就業規則改定のPDFを要約した後で「上記の要約をもとに、全社員向けのお知らせメール文(件名付き、400字以内)を作成してください」と続けて指示すると、要約→通知文作成が一連の流れで完了する。
採用媒体の提案書を要約した後は「上記の内容をもとに、採用会議で比較検討するための資料の骨格を作成してください。重点的に確認すべき質問点も3つ加えてください」と続けると、会議準備まで一気に進められる。
セキュリティ観点でのチェックリスト
PDFをAIに渡す前に確認する事項をチェックリスト形式でまとめた。
- 文書に氏名・社員番号・個人の評価などが含まれていないか
- 使用するAIツールが自社のセキュリティポリシーに適合しているか
- 企業向けプランでデータ学習除外の設定がされているか
- 社外秘・機密の指定がある文書でないか
- 処理結果を社外に出力・共有しない設計になっているか
機密性の高いPDFは、社内環境内のAIツールを優先する。Microsoft Copilotがその代表例だ。ツール選定に迷った場合は情報セキュリティ部門に確認するのが確実だ。
PDF要約を継続して活用するための工夫
PDF要約を一度試して終わりにせず、継続的に使いこなすには仕組みを作ることが重要だ。
まず、文書タイプ別にプロンプトのひな形を用意しておく。就業規則用・法改正通達用・採用媒体提案書用など、人事部門でよく扱うPDFの種類ごとにプロンプトを保存する。毎回ゼロから書かず、ひな形の目的欄と出力形式だけを状況に合わせて書き換える形にすると、処理が速くなる。
次に、要約結果の蓄積先を決める。要約したPDFの内容と要約結果を一つのドキュメントに記録しておくと、後日「去年の就業規則改定でどう変わったか」を調べる際に参照できる。法改正対応の履歴管理として使う場合は、要約と一緒に「確認日・参照した公式情報源・対応期限」を記録しておくと実用性が上がる。
最後に、要約の精度を振り返る習慣をつける。AIの要約で抜けていた箇所や、精度が低かった文書タイプを記録しておき、次回のプロンプトに「〜については省略しないでください」という条件を追記する。この改善サイクルを3〜5回回すと、自部署の文書に最適化されたプロンプトが完成する。
長文テキストの要約テクニック全般については人事が長い資料をAIで要約するコツも参照してほしい。
よくある質問
PDFをAIにアップロードする際のセキュリティ上の注意点は何ですか?
給与規程・個人情報を含む評価資料など機密性の高いPDFは、社外のAIサービスに直接アップロードしてよいか、情報セキュリティ部門のガイドラインを確認してから使うこと。公開情報である法令通達や採用媒体の資料は比較的問題になりにくい。
スキャンPDFはAIで読み込めますか?
AIツールによって対応が異なる。テキストデータが埋め込まれたPDFは多くのツールで読み込める。スキャン画像を文字認識していないPDFはテキストとして読み込めない場合があるため、OCR処理が必要になることがある。
複数のPDFをまとめて要約できますか?
Claude ProのProject機能やNotebookLMは複数ファイルを一つのプロジェクトとして管理し、横断的に質問できる。複数年度の就業規則を比較したり、複数の採用媒体資料をまとめて比較分析する使い方に向いている。
PDF要約の精度を上げるにはどうすればよいですか?
ページ数が多い場合は章ごとに分割してアップロードするか、目的とアウトプット形式をプロンプトに明示する。「変更点だけ抜き出す」「箇条書きで出す」「表形式で出す」などの形式指定が精度向上に有効だ。