情報システムのデータ集計・分析をAIで行う手順
この記事の要点
情報システム担当者がAIを使ってヘルプデスク対応件数・IT資産台帳・障害ログのデータ集計と分析を効率化する手順とプロンプト例を詳しく解説する。
結論
ヘルプデスクの問い合わせ件数推移、IT資産の棚卸し結果、障害対応の傾向分析など、情報システム部門のデータ集計業務はAIを使うと大幅に効率化できる。Excelのデータを貼り付けるかCSVを渡すだけで、集計・分類・傾向把握の下作業を短時間で済ませられる。
月次の運用レポート作成や経営層への報告資料に使うデータを、毎回Excelで手作業で集計している担当者は多い。同じ構造のデータを毎月処理しているなら、AIを活用することで作業時間を半分以下にできる場合が多い。
使うAIツール
データ集計・分析の目的によってツールを使い分ける。
集計・可視化まで一度に行いたい場合
- ChatGPT(GPT-4o with Code Interpreter):CSVやExcelをアップロードしてPythonで集計・グラフ化まで実行できる。コードを書かなくても自然言語で指示できるのが強み
テキストデータの分類・傾向分析
- Claude.aiまたはChatGPT:ヘルプデスクの問い合わせ内容をカテゴリ分けしたり、障害報告書から傾向を読み取ったりするのに向いている
集計式・マクロの生成
- どのAIツールでもよい。データ構造とやりたいことを説明すればExcel関数やVBAコードを生成してくれる
機密データを含む場合
- 社内承認済みのAIツール(AzureOpenAI Serviceなど)のみを使う。個人情報は必ずマスキングしてから渡す
手順(プロンプト例付き)
ステップ1:データを準備する
Excelデータをそのまま貼り付ける場合は、ヘッダー行も含めてコピーする。ChatGPTのCode Interpreter機能を使う場合はCSVまたはExcelファイルとしてアップロードする。
個人情報や機密情報が含まれる場合は、この段階でマスキングを行う。氏名を「担当者A」「担当者B」に置き換えたり、IPアドレスを「192.168.x.x」形式に変換したりしてからAIに渡す。
ステップ2:集計・分析の目的を明確にする
何を知りたいかを明確にしてからプロンプトを書く。「なんとなく分析して」という指示では使えない出力になりやすい。
- 月別の傾向を見たい
- カテゴリ別に件数を比較したい
- 特定の期間に件数が増えた原因を探りたい
- 上位N件(最も多い問い合わせ種別など)を知りたい
ステップ3:プロンプトを実行する
ヘルプデスク問い合わせデータの集計プロンプト
以下はヘルプデスクの問い合わせログです(1行1件、タブ区切り)。
このデータを集計・分析してください。
【集計・分析内容】
1. 月別の問い合わせ件数の推移
2. カテゴリ別(「ネットワーク」「PC・端末」「アカウント」「アプリ」「その他」)の件数と割合
3. 対応時間(受付から解決まで)の平均・最大・最小
4. 未解決件数と解決率
【出力形式】
- 項目ごとに表形式でまとめる
- 傾向についてのコメントを各表の下に2〜3文で付ける
- 「特に対応が遅い」「件数が突出して多い」項目があれば強調する
---(データをここに貼り付け)---
IT資産台帳の棚卸し集計プロンプト
以下はIT資産台帳のCSVデータです。棚卸し状況を集計してください。
【集計内容】
1. 資産種別(PC、サーバー、ネットワーク機器、ライセンスなど)ごとの台数
2. 設置場所別の台数(本社、支社1、支社2など)
3. 購入年度別の台数(5年以上の老朽化資産を特定)
4. 保守契約の有効期限が6ヶ月以内のもの一覧
【出力形式】
- 1〜3は表形式、4は一覧形式
- 老朽化資産と保守期限切れリスクについて、総括コメントを最後に付ける
---(データをここに貼り付け)---
障害ログの傾向分析プロンプト
以下は過去6ヶ月間のシステム障害ログです。傾向を分析してください。
【分析内容】
1. 月別の障害件数推移
2. 障害種別(ハードウェア故障、ソフトウェアエラー、ネットワーク障害、人的ミスなど)の分類と件数
3. 発生曜日・時間帯の傾向
4. 平均復旧時間(MTTR)の推移
5. 再発している障害パターンの特定
【出力形式】
- 分析結果を表とグラフ用データで整理
- 「重点的に対策が必要な領域」を最後に3点以内でまとめる
---(ログデータをここに貼り付け)---
Excel集計式の生成プロンプト
以下の構造のExcelデータに対して、必要な集計式を作ってください。
【シート構成】
- A列:日付(YYYY/MM/DD形式)
- B列:カテゴリ(ネットワーク/PC/アカウント/アプリ)
- C列:担当者名
- D列:対応時間(分)
- E列:ステータス(解決済み/未解決/エスカレーション)
【作りたい集計】
1. 月別・カテゴリ別の件数(SUMIFS使用)
2. カテゴリ別の平均対応時間(AVERAGEIFS使用)
3. 未解決件数(COUNTIFS使用)
セル参照はA1形式で書いてください。集計結果を別シートに置く想定です。
ステップ4:出力を確認・調整する
集計結果の数値はかならず元データで検算する。特に合計値や平均値は、Excelの集計関数でダブルチェックする。
傾向分析のコメントはそのまま報告書に使えることが多いが、「AIの分析では〜」という前置きはつけず、自分の判断として整理し直して使う。
情報システム固有の活用例
例1:月次運用レポートの自動化
多くの情報システム部門では月次の運用レポートを作成する。ヘルプデスク件数、システム稼働率、セキュリティインシデント件数などのデータを毎月集めて表やグラフにまとめる作業だ。
毎月同じ構造のデータを処理するなら、一度プロンプトテンプレートを作っておけばよい。「先月のデータを貼り付けてプロンプトを実行する」だけで集計・コメントの下書きが完成する形にしておくことで、毎月2〜3時間かかっていた作業が30〜40分に短縮できる。
以下の月次データを使って、情報システム部門の月次運用レポートを作成してください。
【データ】
- ヘルプデスク件数:[月別件数を貼り付け]
- システム稼働率:[稼働率データを貼り付け]
- セキュリティアラート件数:[件数を貼り付け]
【レポート構成】
1. 今月のサマリー(3〜5文)
2. 各項目の前月比較表
3. 注目すべき変化・課題
4. 来月の対応方針(仮)
読者は情報システム部長と経営層です。
例2:IT資産の老朽化リスク可視化
IT資産台帳のデータをAIに渡して「5年以上経過した機器の一覧と、それぞれの保守状況・リスク」を整理させると、老朽化対応の優先度付けに使える表が素早く作れる。ベンダーの保守終了日と現在の日付を与えれば、「保守切れまでの残り期間」を計算させることもできる。
以下のIT資産データを分析してください。
【やりたいこと】
- 購入から5年以上経過している機器を抽出
- 各機器のメーカー保守終了日(EOL)と比較して、保守切れリスクを「高・中・低」で評価
- リスクの高い機器から順に並べた優先対応リストを作成
基準日は2026年6月5日とします。
---(台帳データをここに貼り付け)---
うまくいかない場合
計算結果が合わない AIの計算は完全に信頼できるわけではない。特に大きなデータセットの合計・平均は必ずExcelで検算する。プロンプトに「計算過程を明示してください」と追記すると、どのように集計したかが見えて確認しやすくなる。
データ量が多すぎて処理できない テキスト貼り付けでは数千行のデータを処理しきれないことがある。ChatGPTのCode Interpreterにファイルアップロードすれば、より大きなデータを扱える。それでも処理が止まる場合は、データを月別・カテゴリ別などで分割してから渡す。
分類が意図と違う 「ヘルプデスク問い合わせをカテゴリ分けして」と指示しても、AIが作ったカテゴリが実際の業務分類と合わないことがある。プロンプトにカテゴリの定義を「カテゴリは以下の5種類に限定してください:〜」と明示することで解決できる。
個人情報のマスキングを忘れた AIに渡した後に個人情報が含まれていたことに気づいた場合、そのチャット履歴はすぐに削除する。ChatGPTの場合は会話をアーカイブまたは削除できる。再発防止として、データをAIに渡す前にマスキング確認をチェックリストに入れておく。
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よくある質問
ExcelのデータをAIで分析するにはどうすればよいですか?
Excelデータはコピーしてテキストとして貼り付けるか、CSVに保存してChatGPT・Claude.aiにアップロードする方法が使えます。ChatGPTのデータ分析機能(Code Interpreter)はCSVやExcelをアップロードしてPythonで集計・グラフ化まで行えます。
個人情報が含まれるデータはAIで分析できますか?
個人情報や機密情報が含まれるデータは、社内承認済みのAIツールのみで扱ってください。一般公開のAIサービス(ChatGPT無料版など)にそのまま貼り付けることは社内セキュリティポリシー上問題になる場合があります。個人情報はマスキング(氏名→「担当者A」など)してから分析する方法が安全です。
AIで集計式やVBAマクロを書いてもらえますか?
書いてもらえます。「以下のExcelデータに対して、月別・カテゴリ別に集計するSUMIFS式を作ってください」のように、データ構造と目的を説明すれば、コピー貼り付けで使える式を生成してくれます。VBAマクロも同様に、処理内容を説明すればコードを生成してくれます。
AIの分析結果はどこまで信頼できますか?
AIは計算や傾向分析を行いますが、計算ミスが発生することがあります。特に合計値や率の計算は、AIの出力をExcelや別ツールで検算してから報告に使ってください。傾向の読み取りや考察は参考にしやすいですが、意思決定の根拠にする場合は必ず数値を自分でも確認してください。