職種別AI仕事術

情報システムの提案書をAIでつくる進め方

情報システムの提案書をAIでつくる進め方

この記事の要点

情報システム担当者がAIを使ってIT投資提案書・セキュリティ対策提案書を効率的に作成する手順を解説。課題整理から構成生成・各章執筆まで職種固有のプロンプト例つきで提案書作成を3日から半日に短縮する。

IT投資の予算承認を得るための提案書、セキュリティインシデントを機に経営層へ対策を提案する資料——情報システム担当者が書く提案書は、技術的な正確さと経営目線の両立が求められる。ゼロから書くと3日以上かかることも珍しくない。AIを使えば、構成から各章の初稿まで半日以内に出る。

結論

AIは提案書の「構成設計」「各章の初稿生成」「表現の整形」を担う。課題の本質・費用対効果の数字・意思決定者への訴求点は担当者が考えることになるが、文章化と整形の部分はAIに任せることで作業時間を70〜80%削減できる。3日かかっていた提案書が半日で初稿完成まで到達する。

どのAIツールを使うか

**ChatGPT(GPT-4o)**は長い文書構造の生成が得意で、提案書の全体像を設計してから章ごとに深掘りする使い方に向いている。

Claudeは複数の条件や制約を一度に処理する精度が高く、「予算〇円以内・スケジュール〇ヶ月以内・対象システムは〇〇」のような制約が複数ある提案書を書くのに使いやすい。

Microsoft Copilot for Microsoft 365はWordやPowerPointに直接統合されており、生成した文章をそのまま提案書ファイルに反映できる。ファイル操作の手間を省きたい場合に有効だ。

提案書をAIで作成する手順

ステップ1:課題と解決策を箇条書きで整理する

AIへのインプットの質が提案書の質を決める。最初に以下の項目を自分で整理する。

  • 解決したい課題(何が問題か、影響範囲はどこか)
  • 現状の数値(障害件数・対応工数・コスト・ダウンタイムなど)
  • 解決策の方向性(何を導入・変更するか)
  • 期待される効果(定量的に言えるものを優先)
  • 予算規模と期間のめど
  • 意思決定者が承認に必要な情報

この整理は30〜60分で行い、AIに渡す骨子を作る。

ステップ2:提案書の構成を生成する

以下の情報をもとに、IT投資提案書の目次構成を作成してください。

条件:
- 経営層向けの予算承認を得るための提案書
- 課題・解決策・費用対効果・スケジュール・リスクを必ず含む
- 全体5〜7章構成
- 各章にサブ項目を2〜3個つける
- 読み手が技術者ではなく経営層であることを意識した見出し表現にする

提案内容の骨子:
- 課題:老朽化したファイルサーバが障害リスクを抱えており、過去1年で3回の障害が発生
- 障害1件あたりの影響:全社業務停止、復旧工数平均8時間
- 解決策:クラウドストレージへの移行
- 期待効果:障害リスクの低減、保守コストの削減(現行年間[XX万円]→[XX万円])
- 予算:[XX万円](初期)+月額[XX万円]
- スケジュール:[XX]ヶ月での移行完了を想定

ステップ3:各章の本文を生成する

構成が確定したら、章ごとに内容を生成する。一度に全文を生成しようとするより、章ごとに渡すほうが出力の精度が高い。

上記の提案書構成の「第2章:現状の課題と影響」を書いてください。

条件:
- 1,200字以内
- 数値は[XX]のプレースホルダを使う
- 技術的な説明は最小限にし、業務影響を中心に書く
- 経営層が「なぜ今取り組まなければならないか」を理解できる内容にする
- 箇条書きと地の文を組み合わせて読みやすくする

同様に第3章(解決策)・第4章(費用対効果)・第5章(スケジュール)と順番に生成し、各章の数値と固有情報を人間が補完する。

ステップ4:数値を補完して事実確認する

AIが生成した初稿に対して必ず実施するのは以下の4点だ。

  1. 費用・工数・削減効果の数字が社内データに基づいているか
  2. ベンダー名・製品名・スペックが正確か
  3. スケジュールが実現可能な内容か
  4. リスク項目に抜け漏れがないか

特に費用対効果の計算は担当者が責任を持って算出する。AIは典型的な算出アプローチを提示できるが、自社の実態に合った数値は社内データから取る必要がある。

情報システム固有の活用シーン

シーン1:セキュリティ対策の予算申請提案書

インシデントが発生した後、または外部脅威の増加を受けてセキュリティ対策への投資を経営層に申請する場面がある。

以下の骨子をもとに、セキュリティ対策の予算申請提案書の構成と第1章(エグゼクティブサマリー)を作成してください。

条件:
- 読み手:経営層(技術的な知識は最小限と想定)
- エグゼクティブサマリーは300字以内で3点に絞る(現状のリスク・対策の方向性・投資規模)
- 技術用語はなるべく平易な表現に言い換える
- 費用・被害想定額は[XX万円]のプレースホルダで示す

骨子:
- 現状リスク:EDRが未導入で、ランサムウェア被害発生時の被害範囲を抑制する仕組みがない
- 想定被害:業務停止[XX日]、データ復旧費用[XX万円]
- 対策:EDR製品の全端末導入([XX台])
- 費用:初期[XX万円]+年間保守[XX万円]
- 導入後:インシデント検知・対応時間が現状の平均[XX時間]から[XX分]に短縮される見込み

経営層へのセキュリティ提案では、技術的な正確さより「どんなリスクがあり、投資しないとどうなるか」を平易に伝えることが重要だ。

シーン2:IT資産管理システム導入提案書

老朽化した台帳管理からIT資産管理ツールへの移行を提案する場面での構成生成例だ。

以下の骨子をもとに、IT資産管理システム導入の提案書を作成してください。

条件:
- 全体構成と各章の概要(1章につき200字程度の要約)を出力する
- 現状の課題は「管理工数」「ライセンスの過不足リスク」「監査対応」の3つの観点で整理する
- 費用対効果は「工数削減」と「ライセンスコスト最適化」の2軸で示す
- 導入後の運用フローの変化も含める

骨子:
- 現状:Excelで[XX]台分の資産を管理しており、月次更新に[XX]時間かかっている
- 課題:棚卸し精度が低く、ライセンスの重複取得が発生している可能性がある
- 解決策:IT資産管理ツールの導入と棚卸し自動化
- 効果:月次管理工数を[XX]時間から[XX]時間に削減、ライセンスコストの適正化

うまくいかない場合の対処

内容が表面的で薄くなる:各章を生成するときに「具体的な数値や事例を含めること」と指示し、プレースホルダで示された部分を自社データで補完する。AIへのインプット骨子が薄いと出力も薄くなるため、インプット品質を上げることが先決だ。

経営層向けの表現にならない:「読み手は技術者ではなく経営層。IT用語は使わずに業務影響と金額で説明すること」という制約をプロンプトに明示する。

構成が一般的すぎて自社の状況に合わない:最初の構成生成の時点で「自社の固有事情:〇〇〇」という制約を加える。たとえば「基幹システムがオンプレで、クラウド移行はセキュリティポリシー上5年以内は難しい」などの制約を明示すると自社向けの構成になる。

費用対効果の計算方法がわからない:「ファイルサーバのクラウド移行における費用対効果の算出方法と、計算に必要なデータ項目を列挙してください」のように算出方法をAIに聞いてから計算する順序にする。

提案書作成の時間目安

作業フェーズ従来所要時間AI活用後の所要時間
構成設計2〜4時間30〜60分
各章の初稿作成1〜2日2〜4時間
数値補完・事実確認2〜4時間2〜4時間(同等)
体裁整形・仕上げ2〜3時間1〜2時間

数値補完・事実確認のフェーズはAIを使っても時間が変わらない。そこに必要な実データを準備することが提案書の質を決める。

他の業務への応用

情報システムの議事録をAIで自動作成する手順で整備した会議記録は、提案書の「現状課題」セクションの素材になる。議事録に記録された障害件数・対応工数のデータをそのまま活用できる。

情報システムの報告書をAIで書く手順では、月次運用報告書から提案書へのデータ転用方法についても触れている。

情報システムの資料・スライドをAIで仕上げる方法では、作成した提案書をプレゼン資料に変換する手順を解説している。

導入の第一歩

直近で経営層への提案が必要なテーマを1つ選び、骨子の箇条書きを30分で作る。その骨子をプロンプトに渡して構成だけ生成してみる。構成に対して「この章が足りない」「この順序が違う」という修正を加えながら完成形に近づけていくと、自社向けのプロンプトが自然と出来上がる。

よくある質問

AIで提案書を作ると通りやすくなりますか?

AIは構成と文章の整形を速くしますが、提案が通るかどうかは課題の深さ・費用対効果の数字・意思決定者への訴求点で決まります。AIを使っても、それらの中身は担当者が考える必要があります。

情報システムのIT投資提案書にはどんな構成が一般的ですか?

一般的には「課題・現状の問題点」「解決策とその根拠」「導入効果・費用対効果」「スケジュール」「リスクと対応策」の5章構成が多いです。意思決定者が予算承認をするための情報を網羅することが重要です。

提案書の数値(コスト削減額・工数削減時間など)はどう算出すればいいですか?

現状の作業時間を実測・ヒアリングして現状コストを算出し、導入後の効果を控えめに見積もるのが基本です。AIは計算式の雛形や典型的な算出アプローチを提示できますが、実際の数値は社内データに基づいて担当者が算出してください。