法務の文章リライトをAIで行う方法
この記事の要点
硬すぎる契約書条文や社内規程をAIでわかりやすくリライトする手順を解説。平易化・トーン調整・社内向け説明文への変換など、法務担当者が使えるプロンプト例付き。
契約書や規程文書は正確さを優先するあまり読みにくくなりがちだ。社員向けの説明資料や取引先への要約メモを作るとき、AIを使えば元の法律文書の意味を保ちながら読みやすい文章に変換できる。
結論
法務のリライトでAIが最も役立つのは、「正確な情報を、別の読者向けに言い換える」作業だ。契約書条文を社員向けに平易化する、規程の要点を取締役会向けに整理する、英文契約書の概要を日本語で作成するといった場面で力を発揮する。元の文書の意味を変えるリライトは法的リスクを伴うため、人間による確認が必須だ。
リライトに使えるAIツール
| ツール | 向いている用途 |
|---|---|
| ChatGPT(GPT-4o) | 長文対応・トーン調整 |
| Claude 3.5 Sonnet | 論理的な言い換え・長文処理 |
| Microsoft Copilot | Word文書に直接統合してリライト |
いずれのツールも機密文書の入力前に、企業向けプランまたはAPIの利用を検討することを勧める。データ利用ポリシーの最新情報は各サービスの公式サイトで確認してほしい。
手順1:リライトの目的と読者を決める
「誰が」「何のために」読む文章に変換するかを決めることがリライトの出発点だ。目的が曖昧なままAIに依頼すると、意図しない方向に言い換えられるリスクが高まる。
法務で頻繁に発生するリライトの目的は以下のとおりだ。
- 社員向け平易化: 就業規則・情報セキュリティポリシーなどを全社員が理解できる言葉に変換する
- 経営層向け要約: 契約書の主要条件・リスク箇所を意思決定に必要な情報に絞って整理する
- 取引先への説明文: 自社の取引条件や規約を相手方にわかりやすく伝えるための案内文を作成する
- 英文契約書の日本語概要: 英語の契約書の主要条件を日本語でまとめる
目的が決まったら、「元の文書」「対象読者」「出力形式」の3点をプロンプトに含める。
手順2:プロンプトを作る
プロンプト例1:社員向け平易化
以下の就業規則の条文を、法律の知識がない一般社員向けにわかりやすく書き直してください。
条件:
・法的な意味が変わらないように注意してください
・専門用語は使わず、中学生が読んでわかる言葉に言い換えてください
・箇条書きを使ってよいです
・元の条文で定めている権利・義務・例外事項を省略しないでください
・書き直し後の文章を先に示し、その後に「元の条文から変えた主な点」を3点以内で説明してください
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(ここに条文を貼り付ける)
プロンプト例2:経営層向け要約
以下の業務委託契約書を読み、経営会議での承認に必要な情報を要約してください。
出力形式:
1. 契約の目的と取引の概要(3行以内)
2. 主要な金銭条件(金額・支払条件・変動要因)
3. 自社にとって重要なリスク条項(責任限定・損害賠償上限・契約解除条件)
4. 通常の雛形から外れている箇所(あれば)
専門用語を使う場合は括弧なしで直後に一言説明を加えてください。
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(ここに契約書を貼り付ける)
プロンプト例3:英文契約書の日本語概要
以下の英文契約書の主要条件を日本語で要約してください。
出力形式:
・契約当事者と各社の役割
・契約期間と自動更新の有無
・対価と支払条件
・秘密保持義務の範囲
・契約終了事由と解除後の義務
・準拠法と紛争解決方法
直訳ではなく、日本のビジネス慣行に照らして意味が伝わる表現を使ってください。不明点があれば「この箇所は解釈が分かれる可能性があります」と注記してください。
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(ここに英文契約書を貼り付ける)
具体例1:個人情報取扱規程の社員向け説明文作成
ある企業の法務部門が、個人情報取扱規程の改訂に合わせて全社員向けの説明文を作成した例を紹介する。
元の規程は「個人情報の適正な管理及び保護を目的として、個人情報の収集、利用、第三者提供、開示等の取扱いに関し必要な事項を定める」という書き出しから始まり、条文全体が法律用語で構成されていた。
プロンプト例1を使い、第1条〜第5条の定義・原則部分を社員向けにリライトした。AIが出力した内容は以下のようなものだった。
「この規程は、会社がお客様や従業員の個人情報(名前・住所・メールアドレスなどの情報)をどのように扱うかのルールです。情報は決められた目的以外に使わず、外部に渡すときは本人の同意が必要です。情報を扱う業務では、このルールに従って作業してください」
担当者は元の条文との比較で3点の修正を加えた。特に「業務上必要な範囲での共有」の条件が省略されていたため追記した。社員向け説明文の作成に要した時間は、以前は1日以上かかっていたが、AIを活用することで2〜3時間に短縮できた。
具体例2:M&A関連の基本合意書の経営会議向け要約
企業買収の検討段階で締結した基本合意書を、経営会議での説明資料に変換した例だ。
元の文書は英文で20ページあった。プロンプト例2を英文版にアレンジして使用し、契約の目的・金銭条件・重要なリスク条項を日本語で抽出した。AIは「排他交渉権の期間」と「Breakup Feeの条件」を経営上の重要事項として抽出し、通常の条件との差異も指摘した。
担当の法務部長はAIの出力を叩き台として確認し、不正確な部分を2カ所修正の上で経営会議に提出した。30分以内で経営層向けの資料を準備できた。
うまくいかない場合の対処
意味が変わってしまう場合
リライト後に「元の条文と比較して、意味が変わっている箇所はないか確認してください」と続けて質問すると、AIが自己点検する。ただしAI自身の誤りをAIが指摘できない場合もあるため、重要な文書は人間による最終確認が必要だ。
AIが過度に省略する場合
プロンプトに「元の文書に含まれるすべての条件・例外・除外事項を省略しないでください」と明示的に加える。特に「ただし書き」や「前項にかかわらず」のような例外条項は省略されやすいため注意する。
専門用語が残ってしまう場合
「以下の用語を言い換えてください」として用語リストを渡すか、「法律の専門知識がない人が読む文書です。専門用語が出た場合は、条文中でその意味を説明してから使ってください」とプロンプトに加える。
文体がばらつく場合
「全体を通じてですます調を統一してください」「箇条書きと地の文を混在させないでください」など、文体の統一条件を明示する。
AIに任せてよい作業と任せてはいけない作業
AIに任せてよいのは以下の作業だ。
- 難解な条文を読みやすい日本語に言い換える
- 長文書の要点を抽出する
- 文体・トーンを読者に合わせて調整する
- 英文契約書の内容を日本語で概説する
人間が必ず確認すべきなのは以下の点だ。
- リライト後の文章が元の法的意味と合致しているか
- 例外条項・条件が省略されていないか
- 相手方への開示前の最終確認
- リライトした文書を正式な契約書として使用する場合の法務・弁護士によるレビュー
他の法務業務への活用については法務のFAQをAIで作る方法や法務の文章校正をAIで行う方法も参照してほしい。
まとめ
法務のリライトでAIを使うポイントは3つだ。誰が読む文書かを明示すること、省略してはいけない情報を指定すること、出力後に必ず元の文書と比較すること。この3点を守れば、社員向け説明文・経営層向け要約・英文契約書の日本語概要など、法務担当者が時間をかけていた作業を大幅に効率化できる。
よくある質問
AIで契約書の条文をリライトした場合、法的効力に影響しますか?
リライトの目的と内容によります。法的効力を維持したまま読みやすくする場合でも、文言の変更が意図しない意味の変化を生むリスクがあります。リライト後は必ず法務担当者が元の条文と比較して確認し、重要な変更は弁護士に相談することを推奨します。
社内向けの規程説明文をAIで作る場合、どのような注意が必要ですか?
元の規程の意味が正確に伝わることを最優先にしてください。平易化の過程で重要な条件や例外事項が省略されると、社員が誤った理解をするリスクがあります。AIが生成した説明文は必ず元の規程と照合してください。
リライトに向いているAIツールはどれですか?
日本語の文章品質を重視する場合はClaude 3.5 SonnetやChatGPT(GPT-4o)が向いています。長い文書を一度に処理できる点でもこの2つが実用的です。企業での利用は各サービスの利用規約と社内規程を確認してください。