職種別AI仕事術

マーケティングの報告書をAIで書く手順

マーケティングの報告書をAIで書く手順

この記事の要点

月次・四半期のマーケティング報告書をAIで作成する手順を解説。数値データをプロンプトで渡して分析文章を生成し、報告書作成を半日から2時間以下にする方法を紹介する。

結論

マーケティング報告書の作成でAIが最も効果を発揮するのは「数値を解釈した文章を書く」部分だ。KPIの推移グラフを見ながら「前月比でCPLが23%悪化した要因と対策を書いてください」とAIに指示すると、分析文のたたき台がすぐに出てくる。データの収集・整理は人間が担うが、そこからの文章化作業はAIに任せられる。

月次報告書を半日かけて書いていたケースで、AIを使うと2時間以下になる場合が多い。


使うAIツール

報告書の文章生成には、長文の論旨を一貫して維持できるツールが向いている。

ツール特徴
Claude複数のKPIの関係性を整理した分析文を書くのが得意
ChatGPTカスタム指示で「自社の報告書スタイル」を設定でき、繰り返し使いやすい
Notion AINotionで報告書を管理しているチームはページ内で直接修正できる

報告書をスライドで提出する場合は、テキスト版を作成後にスライド化する流れになる。スライド作成の詳細はマーケティングの資料・スライドをAIで仕上げる方法を参照してほしい。


手順:数値データからAIで報告書を作る

ステップ1:報告書に使う数値を整理する

AIに渡す前に、数値を整理する。整理するのはAIではなく人間の仕事だ。AIに生の数値を渡しただけで「分析してください」と言うと、解釈が定まらない文章が返ってくる。

まとめておくべき数値:

  • 今月の各KPI(リード数・CPL・CVR・商談数・売上貢献額など)
  • 前月・前年同月との比較値と増減率
  • 施策別の実績(コンテンツ・広告・ウェビナーなど)
  • 目標値との乖離

ステップ2:数値と解釈の前提をプロンプトで渡す

以下の数値をもとに、マーケティング月次報告書の「当月の実績サマリー」セクションを作成してください。

■ 対象期間:2026年5月
■ KPI実績:
  - リード獲得数:142件(先月比 -18%、目標比 -12%)
  - CPL:8,200円(先月比 +27%)
  - 商談化率:21%(先月比 -3pt)
  - 施策別内訳:コンテンツ経由 84件 / 広告 35件 / ウェビナー 23件

■ 先月からの変化の背景(人間の判断として入れてください):
  - 競合の広告出稿が増え、リスティング広告のCPLが上昇
  - ウェビナー参加者数は前月比+40%で増えているが、商談化まで時間がかかる

■ 出力形式:
  - エグゼクティブサマリー(200字以内)
  - KPI別の状況と要因(各50〜100字)
  - 主な課題(3点、箇条書き)

数値は渡した値をそのまま使い、推測で補わないでください。

「推測で補わないでください」という指示が重要だ。AIはデータの空白を埋めようとして、存在しない数値や推測の要因を書くことがある。

ステップ3:施策ごとの評価セクションを生成する

以下の情報をもとに、月次報告書の「コンテンツマーケティング施策」セクションを作成してください。

■ 今月の実績:
  - 新規公開記事:8本
  - オーガニック流入:12,400セッション(前月比 +9%)
  - 記事経由のリード:84件(先月 71件)
  - 上位流入記事3本:タイトルA(2,400PV)/ タイトルB(1,800PV)/ タイトルC(1,600PV)

■ 評価の視点:
  - 流入増の要因
  - 改善が必要な点
  - 来月に継続する施策と見直す施策

■ 文字数:400〜600字
■ 文体:報告書として適切な文語体

数値は渡したものだけを使ってください。

ステップ4:改善提案セクションを生成する

実績の記録だけでなく、次の行動につながる改善提案を含めるのが報告書の役割だ。

以下の当月の課題をもとに、来月の改善施策の提案文を作成してください。

■ 今月の主な課題:
  1. 広告CPLが上昇し、目標を27%上回った
  2. ウェビナー参加者の商談化が遅く、リードの温度感が低い
  3. 中旬以降のコンテンツ公開ペースが落ち、週1本未満になった

■ 改善の方向性(人間の判断):
  - 広告はキーワードを精査し、競合が強いキーワードの入札を下げる
  - ウェビナー後のフォローメールを自動化して接触頻度を上げる
  - コンテンツ公開スケジュールを月初に確定させる

■ 出力形式:課題ごとに「課題→対策→期待効果」の3点セットで。各課題300字以内

期待効果の数値は根拠がない場合は「具体的な改善を目指す」などにとどめ、断定しないでください。

ステップ5:報告書全体を結合してチェックする

セクションごとに生成した文章を結合し、以下を確認する。

  1. 数値が一貫しているか:途中で数値の表記が変わっていないか
  2. 前後の章で矛盾がないか:課題として書いた内容が改善提案に反映されているか
  3. 結論が最初にあるか:読者が最初の1段落でサマリーを把握できるか

マーケターが遭遇する具体的な場面

場面1:広告代理店へのフィードバックレポートを月1回作る

代理店への月次レポートは、実績の共有だけでなく次月の方針調整が目的だ。実績数値はダッシュボードから取得できるが、それを文章にして課題と次のアクションをまとめるのに毎回3〜4時間かかっている。

AIを使う場合、数値を整理したあと、「実績→要因分析→課題→来月の方針」という4部構成をプロンプトで指定して生成させる。代理店との認識をそろえるための「合意事項」セクションも最後に追加すると、認識のずれを減らせる。

以下の情報をもとに、広告代理店向け月次フィードバックレポートを作成してください。

■ 期間:2026年5月
■ 実績(数値は正確に転記してください):
  - 総広告費:150万円
  - 獲得リード数:35件
  - CPL:42,857円(目標:35,000円以下)
  - クリック単価:980円(先月比 +12%)
  - コンバージョン率:1.2%(先月 1.7%)

■ 課題の認識(こちら側の判断):
  - 競合の入札増加でクリック単価が上昇
  - LPのCVRが前月比で落ちており、LP側の要因も疑われる

■ 来月の方針(依頼事項):
  - クリック単価上昇のキーワードを洗い出して入札を調整する
  - LPのヒートマップを確認してCVR改善の提案を出してもらう

■ 出力形式:
  1. 実績サマリー(200字)
  2. 要因分析(各課題150字)
  3. 来月の依頼事項と期待する対応(箇条書き)
  4. 確認・合意事項(空欄のまま出力、記入は代理店)

場面2:半期の成果報告をCFO向けにまとめる

半期終了後、CFOへの予算執行報告を提出する必要がある。マーケティング活動の費用対効果を数値で示し、下半期の予算継続を正当化する内容だ。

財務部門向けの報告書は、マーケティング指標だけでなく売上貢献への接続が重要になる。AIに「財務的観点を意識した書き方で」と指示することで、マーケターが書きがちな施策の自己評価ではなく、事業インパクトを中心にした構成になる。

以下の情報をもとに、CFO向け半期マーケティング成果報告書を作成してください。

■ 対象期間:2026年1〜6月
■ 予算執行:2,800万円(承認額 3,000万円、執行率 93%)
■ 主な成果(数値は正確に転記):
  - 新規リード獲得:1,240件
  - 商談化:186件(商談化率15%)
  - 受注貢献:42件(金額 1.8億円)
  - CAC(顧客獲得コスト):66.7万円

■ 読者:CFO(マーケティング詳細には興味が薄い。費用対効果と下半期の見通しを知りたい)

■ 出力形式:
  - エグゼクティブサマリー(300字以内)
  - 投資対効果の整理(予算 vs 売上貢献額の比較を明確に)
  - 課題と下半期の改善方針(3点以内)

収益貢献につながるデータを前面に出し、施策の詳細は省いてください。

うまくいかない場合のポイント

AIが存在しない数値を補完してしまう

「渡した数値だけを使ってください」「数値がない場合は要確認と記載してください」という指示を必ず入れる。この指示がないとAIは「それらしい」数値を埋めてしまうことがある。

要因分析が表面的になる

「競合の増加でCPLが悪化した」という表面的な分析しか出ない場合は、自分の考える要因仮説をプロンプトに入れる。「以下の仮説を分析の前提としてください」と明示すると、踏み込んだ分析文になる。

報告書の文体が硬すぎる・柔らかすぎる

「社内向けの経営報告用の文体」「代理店向けのカジュアルなビジネス文体」のように、読者と文体を具体的に指定する。AIに任せると中間的な文体になりやすい。


提案書・議事録との連動

月次報告書の改善提案セクションが、次の提案書の出発点になる。報告書のアクションアイテムを議事録と連動させることで、月次サイクルの書類作成全体を効率化できる。

議事録の自動化についてはマーケティングの議事録をAIで自動作成する手順で、提案書の作成についてはマーケティングの提案書をAIでつくる進め方で詳しく解説している。


まとめ

マーケティング報告書をAIで作成する際の核心は「整理された数値とその解釈の前提をセットで渡す」ことだ。数値だけ渡してAIに解釈させると、意図と違う分析が返ってくる。「この数値はこういう意味で、この要因だと考えている」という人間の判断をプロンプトに入れ、AIがそれを文章化する形が最も品質が安定する。

生成した文章の数値確認と、前後セクションの整合性確認は人間が担う。この工程を定着させると、報告書作成の大部分をAIが担い、人間は確認と判断に集中できる体制が整う。

よくある質問

数値データをAIに渡すと、勝手に解釈して間違えることはありますか?

ある。AIは与えたデータを文脈から解釈するため、意図と違う読み方をすることがある。「この数値はリード獲得数です」「前月比で悪化しています」と解釈の前提を明記してから渡すと、誤読が減る。出力した分析文は必ず人間が確認する。

報告書に使う数値分析もAIにやらせることはできますか?

テキストとして渡した数値の傾向を文章にすることはAIが得意。ただしExcelの関数計算や統計分析はスプレッドシートツールが正確で早い。AIはデータを計算するより、計算済みの数値を解釈した文章を書くのが向いている。

毎月同じ形式で報告書を自動化できますか?

フォーマットを固定したプロンプトを用意し、毎月数値を差し替えて使う方法が現実的。数値の挿入とプロンプト実行を組み合わせると、月次レポートの作成が30分以下になることが多い。

報告書と提案書の違いをAIはどう判断しますか?

AIはプロンプトで指定した目的に従って書く。「実績を伝える報告書」と「次の施策を承認してもらう提案書」では、強調するポイントと構成が変わる。目的を最初に明記することが重要。