職種別AI仕事術

経営企画の想定問答をAIで作る方法

経営企画の想定問答をAIで作る方法

この記事の要点

経営企画担当が役員会議・取締役会前に行う想定問答の準備をAIで効率化する手順を解説。プロンプト例付きで、30分の作業を10分以内に短縮できる。

結論

経営企画担当が月次の経営会議や四半期レビューの前に行う想定問答の準備は、AIを使うと30分かかっていた作業が10分以内に終わる。AIに議題と資料の要点を渡すだけで、役員が実際に投げかけやすい質問の候補を一覧化できる。完成度は人間の仕上げにかかるが、ゼロから考えるより質問の抜けが減り、想定外の指摘への対応力が上がる。


想定問答準備でAIを使う理由

経営企画の仕事の中でも、経営会議前の想定問答づくりは地味に時間を食う。事業計画の進捗報告、新規投資の稟議、組織再編の提案など、議題の種類によって役員が気にするポイントは変わる。それぞれの役員が過去に何を指摘したか、今期の経営課題は何かを踏まえながら、「この資料を見た役員はどんな質問をするか」を一人で考えなければならない。

AIはこの「想像する作業」を補助する道具として使える。議題と資料の要点を入力すれば、多角的な視点から質問の候補を出してくれる。財務・リスク・オペレーション・競合・タイムラインなど、視点ごとに質問を整理してもらうことで、自分では思いつかなかった観点が見えてくる。


使うAIツール

  • ChatGPT(GPT-4o): ビジネス用途の質問生成に慣れており、箇条書きや表形式での出力が得意。
  • Claude(claude.ai): 長い資料を一度に貼り付けて処理するときに安定している。コンテキスト量が多い場合に使いやすい。
  • Microsoft Copilot: Word・PowerPoint上で直接動かせるため、資料がOffice形式の場合に便利。

どのツールでも基本的な手順は同じなので、現在使っているものから始めてよい。最新の料金や機能は各公式サイトで確認してほしい。


手順:ステップ別の作り方

ステップ1:議題と資料の要点をまとめる

AIに渡す情報を整理する。以下の4点を用意する。

  1. 会議名と参加者(例:月次取締役会、社外取締役3名含む)
  2. 議題のタイトル(例:Q2業績レビューと下半期修正計画)
  3. 資料の要点(スライド5〜10枚分なら、箇条書きで10〜15行程度)
  4. 前回・前々回に出た主な指摘事項(あれば)

資料全体をそのままコピーするより、要点を自分で絞ってから渡す方が質問の精度が上がる。全文を貼り付けると、AIが「重要でない部分」にも注目してしまうことがある。

ステップ2:プロンプトを入力する

以下のプロンプトをそのままコピーして使える。【】内を自分の情報に差し替えてほしい。

あなたは経営会議の準備を支援するアシスタントです。以下の情報をもとに、役員から想定される質問を20問作成してください。

【会議名・参加者】
月次取締役会(社内役員4名、社外取締役2名)

【議題】
Q2業績レビューと下半期修正計画

【資料の要点】
・売上:計画比93%(前年同期比+5%)
・営業利益:計画比87%(コスト増が主因、主に物流費)
・Q3以降の修正計画:価格改定+3%、コスト削減施策として物流委託先の見直し
・リスク要因:為替変動、国内需要の鈍化傾向

【前回の主な指摘】
・価格改定のタイミングと競合他社の動向について詳細が不足
・コスト削減の達成根拠が弱い

質問は以下の視点で分類してください。
1. 財務・数値の根拠
2. 市場・競合・外部環境
3. 実行可能性・リスク
4. 前回指摘の進捗確認
5. その他(経営判断・優先順位など)

質問ごとに「なぜその質問が出やすいか」を一行で添えてください。

ステップ3:出力を評価・絞り込む

AIが出してきた質問の中から、実際に使えるものを選ぶ。全部使う必要はない。以下の基準で絞り込む。

  • 自分が明確に答えられる質問は「準備済み」とマーク
  • 答えが曖昧なものは「要確認」として別途調査
  • 自社特有の文脈がないと質問として成立しないものは削除

20問出てきたとして、実際の準備に使うのは8〜12問程度が適切。多すぎると想定問答の資料が重くなり、本番前の確認作業が増える。

ステップ4:回答を作り込む

質問が決まったら、各質問に対する回答案をAIで作ることもできる。ただし、この段階は「回答の型をAIに作ってもらい、数字と判断は人間が上書きする」というやり方が現実的。

以下の質問に対する回答案を作成してください。

【質問】
「コスト削減施策として物流委託先の見直しを挙げているが、具体的に何をどう変えるのか、削減額の根拠は何か」

【回答に含める情報】
・現在の物流委託先:A社(主)、B社(サブ)
・見直し内容:B社への集約と単価再交渉、年間削減目標2,000万円
・根拠:B社との既存契約条件の確認済み、A社との比較で15%のコスト差

回答は300字以内、役員会議での口頭説明を想定した文体にしてください。

うまくいかない場合のポイント

質問が的外れだと感じるとき

資料の要点が抽象的すぎる可能性がある。「売上が計画比を下回った」と書くより「計画比93%、主因は東日本エリアの新規顧客獲得の遅れ」と具体化してから渡すと、質問の精度が上がる。

同じような質問が繰り返し出るとき

プロンプトに「重複する視点の質問は1問に絞ってください」と追記する。または「財務・競合・リスクの3分野から各5問」のように数を指定すると分散しやすい。

役員の個性を反映した質問が出ないとき

AIは特定の個人の思考パターンを知らないため、「CFOは特に資本効率とキャッシュフローを重視する傾向があります」「社外取締役の○○氏は前職が製造業で、オペレーション寄りの質問をする傾向があります」のように人物像を補足すると多少改善する。ただし、個人情報の取り扱いには注意してほしい。


具体的な活用場面2例

場面1:四半期決算レビューの取締役会前準備

Q2が終わり、来週に四半期決算レビューの取締役会がある。資料は完成しているが、社外取締役3名が初めて見る数字がある。前回の会議で「海外市場の進捗が不明確」と指摘があったことを踏まえ、AIに「海外事業の視点からの質問を重点的に」と指示を出す。海外売上の構成比・現地パートナーとの契約状況・為替影響の試算など、自分では想定しづらかった切り口が出てきて、3問分の追加準備ができた。

場面2:新規事業投資の稟議審議前

M&A候補先の概要を役員会に諮る前に、反対論を想定しておく必要があった。「懐疑的な立場から見た場合の質問を10問」とAIに依頼し、バリュエーションの根拠・PMIコスト・既存事業との競合懸念など、審議で実際に出た質問の7割が事前準備の中にあった。準備した回答があったため、審議の場での立ち往生を避けられた。


想定問答と他の資料を組み合わせる

想定問答の準備は、事業計画書や経営会議資料の作成と連動させると効果が高い。会議資料を作りながら同時に想定問答を更新するサイクルを持つと、準備の抜けが減る。事業計画書の作成をAIで進める方法経営会議の資料作成をAIで効率化する方法も参考にしてほしい。

また、想定問答の準備は提案書の審査前にも使える。経営企画の提案書作成をAIでサポートする方法で紹介している手順と組み合わせると、承認率が上がりやすくなる。


想定問答をチームで共有する

経営企画チームが複数人いる場合、想定問答の準備を一人に集中させると知識が属人化する。AIで作った想定問答を社内のNotionやConfluenceに蓄積し、「この議題ではこういう質問が出た」という履歴を積み上げると、次の担当者が立ち上がる時間が短縮される。

会議終了後には実際に出た質問と想定問答を照合し、「想定外だった質問」を記録しておく。この記録が次回のプロンプトを精度高くする材料になる。


準備の時間配分

経営会議の1週間前から準備を始める場合、以下の時間配分が目安になる。

作業所要時間AIの活用
資料の要点整理15分補助(要約)
プロンプト入力・出力確認10分主体
質問の絞り込み・確認10分人間の作業
回答案の作成20分AIと人間の協働
数字・事実の確認15分人間の作業

合計70分。AIなしで同じ作業をすると2〜3時間かかることが多い。絶対的な時間ではなく、重要度に応じた配分が大事で、役員会議の前日に全部やろうとするのが最もリスクが高い。


注意点

AIが出した質問は、文脈を理解した上での質問ではない。自社の事業戦略・過去の意思決定・業界特有の慣行を知らない状態で生成しているため、的外れな質問も混在する。使う前に必ず人間が内容を確認してほしい。また、役員個人の情報や社外秘の数字を外部のAIサービスに入力する場合は、情報セキュリティのポリシーを事前に確認する必要がある。社内で利用が認められたツールの範囲で使うことが前提。

よくある質問

想定問答をAIで作るとき、何を入力すればいいですか?

議題・資料の要点・会議の参加者情報(役員の関心領域など)を入力します。背景情報が多いほど、実際の会議に近い質問が出てきます。

AIが出した想定問答はそのまま使えますか?

そのままでは使えないことが多いです。AIは文脈を完全に把握できないため、自社固有の課題や過去の議論を反映した補正が必要です。たたき台として使い、担当者が精度を上げてください。

ChatGPTとClaude、どちらが向いていますか?

どちらも使えますが、長い資料を貼り付けて一度に処理するならClaudeが有利なケースがあります。最新の仕様は各公式サイトで確認してください。

想定問答を作る頻度はどのくらいが適切ですか?

月次・四半期ごとの定例経営会議のたびに作るのが基本です。臨時の取締役会や株主総会など、重要度が高い会議ほど事前準備に時間をかけてください。