経営企画の提案書をAIでつくる進め方
この記事の要点
経営企画担当者がAIを活用して提案書を効率よくつくる方法を手順つきで解説。新規事業立案・コスト削減策・組織改編案など、役員稟議に耐えられる提案書の作り方を紹介します。
結論
経営企画担当者が役員向けの提案書を一人で書くと、構成を考える段階から最終稿まで2〜3日かかることがあります。AIを使うと「構成の骨格を出す」「各セクションの下書きを作る」「反論の洗い出しをする」という作業を大幅に短縮でき、同じ品質の提案書を半日〜1日で仕上げる目安になります。
ただし、AIが出すのはあくまで文章の骨格です。提案の根拠となる数値・事業環境の認識・意思決定者の関心事は担当者が持ち込む必要があります。
経営企画が作る提案書の2種類
意思決定を求める提案書(稟議型)
新規事業への投資、組織改編、コスト削減策の実施など、経営層に判断を求める提案書です。「現状の問題」「提案内容」「期待効果」「投資・コスト」「リスクと対策」の構成が基本になります。
方針・計画を示す提案書(説明型)
中期経営計画の各事業部向け説明資料、KPI設計の考え方の共有、予算配分の根拠説明など、「なぜこう決めたか」を説明することが目的の提案書です。意思決定は求めないが、納得と理解を求めます。
どちらのタイプかによって構成の強弱が変わります。AIへの指示でこの区別を明記しておくと、出力の的外れが減ります。
使うAIツール
提案書の作成には文章量が多く、複数回のやり取りが必要なため、文脈を長く保持できるClaude(200Kトークン対応版)やChatGPTが使いやすいです。最新のモデル仕様は各公式サイトで確認してください。Notionを使っている場合はNotion AIも段落単位での整形に向いています。
手順:稟議型の提案書を作る
ステップ1:提案の「5要素」を先に確定させる
プロンプトを書く前に、次の5要素を箇条書きで整理します。AIへの入力前に担当者が決めることであり、AIに決めさせる部分ではありません。
- 現状の問題(何が困っているか、数字で示せるか)
- 提案の内容(具体的に何をするか)
- 期待効果(どれだけ改善するか、いつまでに)
- コストと投資(人・金・時間)
- リスクと対策(想定される反論と答え)
この5要素が曖昧なままAIに丸投げすると、「一般的な提案書のサンプル」が出てきます。担当者の知識と数字が入ることで、初めて実用的な提案書になります。
ステップ2:構成をAIに出させる
まず構成だけを確認します。
経営企画部の担当者として、以下の内容をもとに役員向け稟議提案書の構成(目次)を作成してください。
本文は後で書くので、まずは章立てと各章の要点(1〜2行)だけ出してください。
【提案の種類】意思決定を求める稟議型提案書
【提案者】経営企画部
【提案先】取締役会(次の役員会議で審議予定)
【提案のテーマ】間接部門の業務効率化に向けたRPA導入
【5要素】
1. 現状の問題:間接部門の定型作業(経費精算、請求書処理、週次レポート集計)に月計約1,200時間を費やしている。FTE換算で7名分の工数。
2. 提案内容:RPAツール(UiPath)を経営企画・財務・総務の3部門に導入し、15プロセスを自動化する
3. 期待効果:初年度に月600時間削減、FTE3名分をコア業務に再配置。2年目以降は人件費換算で年間2,400万円のコスト削減
4. コスト:初期導入費用800万円(ライセンス・構築)、年間保守費用200万円
5. リスクと対策:プロセス変更への現場抵抗→変更前にトライアルと説明会を設ける。ツール障害→手動バックアッププロセスを整備
日本語で、A4用紙2〜3枚相当の提案書に収まる章立てにしてください。
ステップ3:各章の本文をAIに書かせる
構成が確定したら、章ごとにプロンプトで本文を作ります。一気に全部書かせるより、章ごとに確認しながら進めた方が修正が少なくなります。
上記の構成のうち「2. 現状分析と課題の定量化」の本文を書いてください。
以下の制約を守ってください:
- 主観的な表現ではなく数字で語る
- 「重要です」「必要があります」などの抽象的な強調を使わない
- A4半枚程度(250〜300字)
- 役員が読む文体(簡潔・直接的)
ステップ4:反論を洗い出してもらう
稟議が通るかどうかの事前チェックとして、AIに批判的な視点から提案書を読ませます。
上記の提案書(RPA導入稟議)を役員の立場から読んで、承認をためらう可能性がある箇所を指摘してください。
「コストが高い」「効果が不明確」「リスク対策が不十分」「前提となるデータが疑わしい」など、実際の稟議で出そうな反論を5〜8つ挙げ、各々に対して追記や修正で対応できる方向性を示してください。
このステップは提案書が完成する前に行うのが効果的です。AIが「投資回収の根拠が弱い」「FTEの再配置先が不明確」といった指摘をしてきたら、役員会議の前に補強できます。
ステップ5:エグゼクティブサマリーを最後に書く
本文が完成したら、最初のページに置くサマリーをAIで作ります。
以下の提案書の内容を、役員が1分で読める「エグゼクティブサマリー」に要約してください。
- 問題・提案・効果・コスト・次のアクションを5〜6行で
- 数字を必ず含める
- 「本提案は〜」のような水増しの書き出しを避ける
手順:説明型の提案書(方針説明資料)を作る
中期計画の各事業部向け説明資料のように、「決定した内容を説明する」提案書の場合は構成が変わります。
以下の内容をもとに、各事業部長向けの説明資料の文章(章ごとの本文)を作成してください。
【資料の目的】2027〜2029年度の中期経営計画における経営企画部の役割変更と評価KPIの説明
【説明する内容】
- 従来:予算管理・報告書作成が主業務
- 変更後:戦略立案と事業支援にシフト。月次レポートの自動化で報告業務の工数を40%削減する
- 各事業部への影響:四半期ごとの経営企画との共同レビュー会議を新設(1回90分)
- 変更の理由:外部環境の変化スピードに対応するため、先行指標の把握とアジャイルな意思決定が必要
【読者】各事業部長(経営企画の詳細には詳しくない)
【トーン】丁寧に説明するが、一方的な通達にならないよう
うまくいかない場合のポイント
出力が抽象的で数字がない
「数字のない文はすべて削るか数字に置き換えてください」という指示を入力するか、自分でデータを補ってからAIに整形させてください。AIは自分でデータを持っていないため、入力した情報以上のことは書けません。
提案書が長すぎて役員が読まない
役員に届ける資料の適切な長さは社内文化によりますが、「本文はA4で2枚以内に収める」と指定すると圧縮してくれます。詳細は補足資料に回す構成をAIに提案してもらうことも有効です。
競合比較や市場情報が古い・不正確
AIの出した市場データや競合情報は必ず最新の公式情報で確認してください。提案書に使う数値は出典を明記し、担当者が責任を持って確認した情報だけを記載してください。
提案書を通すための「前提確認」にAIを使う
提案が役員会議で却下される理由の多くは、提案内容の質より「前提の認識がズレていた」ことです。投資額を議論する前に「問題の深刻さ」について役員と認識が合っていないと、どれだけ優れた提案書でも通りません。
AIに以下のような問いを投げることで、提案前に前提を確認する材料が作れます。
以下の投資提案を承認者(取締役会)の視点から評価してください。
【提案】間接部門へのRPA導入(初期費用800万円、年間保守200万円)
以下の観点で評価し、承認者が「この提案に乗り気になる条件」と「懸念して承認を保留する条件」をそれぞれ3つずつ挙げてください。
1. 費用対効果の妥当性
2. 実施リスクの大きさ
3. タイミング(今期中に承認する緊急性)
4. 他の優先課題との競合
最後に「承認確率を上げるために最も重要な補足情報は何か」を1点だけ示してください。
このような問いへの回答は、提案書の修正ポイントとして使えます。「タイミングの緊急性が弱い」という指摘が出れば、「今期中に承認しないと来年度の効果が失われる」という理由を補強する必要があることが分かります。
提案書の「競合案」をAIで作る
役員会議では「この案だけでなく他の選択肢も見たい」という要求が出ます。AIを使って代替案を素早く作っておくと、会議での対応力が上がります。
以下の提案の「代替案」を2つ作成してください。
【メイン提案】RPAを3部門に一括導入(初期800万円)
【代替案の条件】
- 代替案1:「段階的に導入するミニマム版」(コストを抑えてリスクを減らす方向)
- 代替案2:「導入を見送って別のアプローチを取る案」
各代替案について「コスト」「期待効果」「リスク」「推奨しない理由(なぜメイン案の方が優れているか)」を表形式で比較してください。
代替案と比較表を提案書に含めることで、「なぜこの案か」という論理が強化されます。役員が「他の選択肢は検討したか」と聞いてきたときに即答できます。
提案書を書く際の情報収集にAIを使う
提案書の根拠となる外部情報(市場規模・競合他社の事例・業界動向)の収集にもAIは活用できます。ただし、AIが提示する情報は学習データに基づいており、最新性・正確性に限界があります。
特に以下の情報は必ず公式ソースで確認してください。
- 市場規模・成長率(出典:矢野経済研究所・IDCジャパンなど業界調査レポート)
- 競合他社の公開情報(出典:各社IR情報・プレスリリース)
- 法規制・制度変更(出典:所管省庁の公式発表)
AIを使って情報収集の方向性を絞り込み、その後に公式情報で確認する流れが現実的です。「RPA導入効果に関する信頼できる調査データはどこで入手できますか」という問いに対してAIは情報源の候補を示してくれます。
提案書の文字数・ページ数の調整
経営企画が作る提案書は、社内の意思決定文化によってページ数の期待値が異なります。「A4で5枚以内」という会社もあれば「1ページにサマリーして詳細は添付」という会社もあります。
AIに「この提案書をA4で2枚に収める」という指示を出すと、優先度の低い情報を削る判断をしてくれます。「削ってはいけない情報(根拠・数字・アクション)」と「削れる情報(背景説明・補足)」を指定すると、圧縮の精度が上がります。
提案書が完成したらスライド作成で視覚化するプロセスに続けて使うと、資料一式を効率的に仕上げられます。また提案後の経緯は報告書の作成で追跡できます。
提案書作成でAIを最も有効に使えるのは「骨格を作る段階」と「反論を洗い出す段階」です。担当者が持つ現場の数字・会社の文脈・意思決定者の関心事をAIに入力することで、汎用的な文章から組織固有の提案書に変わります。
よくある質問
提案書の作成にAIを使うと、オリジナリティが失われませんか?
AIは構成の枠組みや表現の整形を担い、数値・根拠・判断は担当者が提供します。「何を提案するか」という核心部分は人間が決める構造で使えば、オリジナリティは損なわれません。
役員稟議に通る提案書と通らない提案書の違いはAIで判断できますか?
社内の意思決定文化や役員の関心事はAIには分かりません。ただし「反論が来そうな箇所を指摘してください」「承認者が懸念しそうなリスクを挙げてください」という使い方は有効で、自分では気づかない弱点を事前に洗い出せます。
提案書に使う市場データや競合情報はAIが出してくれますか?
AIが提示する市場規模・競合情報は学習データに基づくものであり、最新性・正確性に欠ける場合があります。提案書に使う数値は公的統計・業界レポート・公式発表で必ず確認してください。