経営企画の報告書をAIで書く手順
この記事の要点
経営企画担当者がAIを使って報告書を効率よく作成する方法を解説。月次経営報告・事業進捗報告・投資事後検証など、役員向け報告書のプロンプト例と手順を紹介します。
結論
経営企画担当者が月次経営報告書を書くとき、データ収集後の文章作成だけで2〜3時間かかります。AIを使うと「数値と事実を入力する→AIが文章の骨格を生成する→人間が確認・修正する」の流れで、文章作成の時間を30〜60分に短縮できます。
ポイントは「数字と事実の入力は人間が行い、文章の整形はAIに任せる」という役割分担です。AIは文章を速く作れますが、正確なデータを持っていないため、入力の質が出力の質を決めます。
経営企画が作る報告書の3種類
月次・四半期経営報告書
売上・利益・費用・KPI進捗を集約し、経営層へ報告する定期報告書です。フォーマットが決まっていることが多く、毎回数字と考察コメントを更新する業務です。AIはコメント部分の下書きに特に効きます。
事業進捗報告書
新規事業・プロジェクト・投資案件の進捗を定期的に報告する書類です。計画対比・マイルストーン達成状況・リスク状況を構造的に書く必要があります。
投資事後検証報告書
承認した投資や施策の効果検証を役員に報告する書類です。「何を約束して・実際はどうだったか・なぜ差が生じたか」という構造で書く必要があり、作成に時間がかかる種類の報告書です。
手順:月次経営報告書の考察コメントをAIで書く
月次報告書では数字の収集・集計は担当者が行い、各指標への考察コメントをAIに書かせる運用が最も効果的です。
ステップ1:数値と状況を整理する
AIへの入力として、次の情報を用意します。
- 当月の実績値と予算値(または前月比・前年比)
- 差異の原因として把握していること
- 今後の見通し(来月・来期)
ステップ2:プロンプトを入力する
経営企画部の担当者として、以下の数値データをもとに月次経営報告書の考察コメントを書いてください。
【対象月】2026年5月
【売上】
- 実績:94.2億円
- 予算:97.0億円
- 差異:-2.8億円(-2.9%)
- 主因:A事業の新製品リリースが1ヶ月遅れた影響
【営業利益】
- 実績:11.8億円
- 予算:11.5億円
- 差異:+0.3億円(+2.6%)
- 主因:採用停止による人件費削減が想定より効いた
【販管費】
- 実績:15.4億円
- 予算:15.0億円
- 差異:+0.4億円(+2.7%)
- 主因:物流費の単価上昇
【見通し】
- 6月にA事業の新製品リリース予定。Q2全体では予算達成を見込む
- 物流費は下期も高止まりの可能性あり
【出力形式】
各指標ごとに「実績・差異・要因・見通し」を2〜4文で書いてください。
断定できない将来予測は「見込み」「可能性がある」と明記すること。
役員向けの簡潔な文体で。
ステップ3:出力を確認して修正する
AIが出したコメントで確認するポイントは次のとおりです。
- 数字が正確か(入力した値と一致しているか)
- 「A事業の新製品リリース遅れ」などの事実が正確に反映されているか
- 「利益が増加しました」のような水増しの表現が混入していないか
- 見通しで断定すべきでないことを断定していないか
ステップ4:テンプレートとして保存する
月次報告書を毎月作る場合は、上記プロンプトの変数部分(数値・月・差異の原因)を書き換えて使い回します。プロンプトをNotionやGoogleドキュメントに保存し、翌月は数値を更新するだけで使える状態にしておきます。
手順:投資事後検証報告書をAIで書く
投資事後検証は「約束した効果が出たか・出なかったなら理由は何か」を正直に書く書類です。AIに以下の構造で書かせます。
経営企画部の担当者として、以下の投資案件の事後検証報告書を作成してください。
【案件名】CRM刷新プロジェクト
【投資承認日】2025年4月、投資額:3,200万円
【承認時の約束した効果】
- 営業活動の可視化により失注分析が可能になる
- 商談管理の工数を月40時間削減
- 成約率を現状の28%から35%に改善(1年以内)
【実績(2026年5月時点・稼働から13ヶ月)】
- 商談管理の工数:42時間削減(達成)
- 成約率:31%(目標35%に対し未達)
- 失注分析:機能は稼働しているが、活用が営業部門に浸透していない
【未達の背景(担当者の把握している情報)】
- 成約率は市場環境の悪化(競合他社の価格引き下げ)が主因
- CRM活用の定着には営業部門の教育が不足していた
【出力形式】
「概要」「計画対比評価」「達成項目」「未達項目と原因分析」「今後の対応策」の章立てで書いてください。
未達の原因について外部環境と内部要因を分けて記述してください。
数字は入力した値を正確に使い、推測は「〜と推測される」と明記すること。
報告書の「要旨ページ」をAIで作る
本文が長い報告書には、役員が最初に読む要旨ページが必要です。本文を書いた後に、AIで要旨を作ります。
以下の月次経営報告書の本文をもとに、役員が1〜2分で全体を把握できる「要旨ページ」を作成してください。
【制約】
- A4半枚(400字以内)
- 「今月の3大トピック」と「次月の注目ポイント」を含める
- 数字を必ず入れる
- 「本月は概ね順調でした」のような水増しの評価は書かない
(ここに本文を貼り付ける)
うまくいかない場合のポイント
出力が長すぎて役員向けに使えない
「全体を400字以内に収める」「1項目2文以内」など字数・文数の上限を明示してください。役員向けの報告書ほど短くシンプルにすることが求められます。
考察コメントが当たり前のことしか言っていない
「このコメントを読んだ役員が新たに知ることを何も得られない場合、書き直してください。差異の原因・構造的な問題・今後の対応を具体的に述べてください」という追加指示が有効です。
投資効果の評価が言い訳っぽくなる
「外部環境のせいにしながらも、内部で改善できる要因を正直に特定する」という姿勢をプロンプトに入れると、自己評価が甘くならない文章になります。
数値の異常値・傾向変化をAIに指摘させる
月次報告書を書く過程で「この数字、何かおかしくないか」という違和感を感じることがあります。AIに数値を渡して傾向分析や異常値の指摘をさせる使い方が有効です。
以下の月次売上データの傾向を分析し、異常な変化や注目すべきパターンを指摘してください。
【月次売上(億円)】
1月:98.2、2月:95.1、3月:102.4、4月:96.8、5月:94.2
【前提】
- 毎年3月は年度末需要で高くなる傾向あり
- 予算は各月約97億円で設定
以下の観点で分析してください:
1. トレンド(上昇・横ばい・下降)
2. 季節性の考慮後の実質的な動向
3. 予算との乖離が特に気になる月と理由の仮説
4. 報告書で強調すべきポイントと、説明が必要なポイント
この分析結果は報告書の考察コメントに直接使えます。ただし、AIが出した仮説は必ず実際のデータと付き合わせて確認してください。AI独自の推測が混入することがあります。
事業部ごとのデータを統合して報告書を作る
経営企画の月次報告書の作成で最も時間がかかるのは、複数事業部から収集したデータを統合して全社の絵を描く作業です。各事業部から送られてきたExcelデータをコピーアンドペーストでまとめ、コメントを加えるという工程に多くの時間が取られます。
AIを使ってこの統合作業を効率化する方法があります。各事業部のデータ(数値のみ)をAIに貼り付け、全社サマリーの形に整形させます。
以下は各事業部から提出された5月の実績データです。
これを全社の月次経営報告書用のサマリー形式に整形してください。
【A事業部】売上:28.4億円(予算比-5.2%)、営業利益:3.1億円(予算比+0.8億円)、主要課題:新製品リリース遅延
【B事業部】売上:35.2億円(予算比+2.1%)、営業利益:4.8億円(予算比+0.2億円)、主要課題:なし
【C事業部】売上:30.6億円(予算比-0.4%)、営業利益:3.9億円(予算比-0.1億円)、主要課題:物流費上昇
【出力形式】
- 全社合計と各事業部の比較表
- 全社の考察コメント(数字を使って100字以内)
- 今月の特記事項トップ3(箇条書き)
各事業部のデータを一つのプロンプトに入れるだけで、全社サマリーの骨格が完成します。
報告書の「過去との比較」をAIで整形する
経営報告書では「今月だけでなく、過去の傾向と比較して意味を示す」ことが求められます。前年同月比・前月比・予算比の3つを並べた表を作るだけでなく、「昨年の同時期と比べて何が変わったか」というコメントが必要です。
以下の2年分の月次データをもとに、「前年同月比較」と「傾向の変化」を報告書向けにまとめてください。
【2025年5月】売上:91.4億円、営業利益:10.2億円
【2026年5月】売上:94.2億円、営業利益:11.8億円
前年からの改善・悪化を定量的に示し、変化の要因として考えられる点を2〜3点挙げてください。
「〜が改善しました」ではなく、具体的な数字の差(+2.8億円、+3.1%など)で表現してください。
AIで書けないこと:経営企画の「判断」と「文脈」
AIは数字と文章の整形を速くしますが、報告書の核心にある次の部分は人間が持ち込む必要があります。
業績の意味の解釈
売上が予算比-2.9%だったとき、それが「許容範囲内」なのか「要対策」なのかは、会社の置かれている状況と経営者の感度次第です。AIは差異を計算できますが、「この差異が問題かどうか」の判断はできません。
外部環境との照合
「物流費の高騰」が業績悪化の要因として妥当かどうかは、実際の業界データや仕入先からの情報と照合する必要があります。AIが「物流費の高騰が原因」という文章を作っても、その根拠を持っているのは担当者です。
役員が本当に知りたいことの読み取り
月次報告書を読む役員が「利益の水準」を気にしているのか「来期の見通し」を気にしているのかは、その月の社内の状況と役員の関心次第です。毎月同じフォーマットの報告書でも、今月は何を前面に出すべきかは担当者が判断します。
報告書のレビュープロセスにAIを使う
経営企画が作る報告書は、担当者が書いた後に上長レビューを経て役員に届くことが多いです。このレビュープロセスにもAIを活用できます。
自分で書いた報告書をAIに評価させる方法が有効です。上長に回す前に「この報告書を役員目線で評価し、追加すべき情報と削除すべき情報を指摘してください」と聞くと、社内レビューの前に自分で改善できる箇所が浮き出てきます。
具体的なプロンプト例として、「この月次報告書を読んだCFOが追加情報を要求しそうな箇所を指摘してください」という問いが使えます。AIが「来月の見通しについての記述が薄い」「コスト超過の原因が説明不足」といった指摘をしてきたら、上長レビュー前に補強できます。
また、複数人が加筆した報告書の文体を統一するためにAIを使う方法もあります。「以下の文章は複数人が書いたため文体がバラバラです。全体を経営企画部の月次報告書の標準的な文体に統一してください」という指示で、一つのトーンに整えられます。
報告書の保管と再利用
月次報告書は毎月同じ構造で作成するため、過去のデータとの比較・蓄積が重要です。AIを使ってこの管理を効率化できます。
過去12ヶ月分の報告書コメントをAIに渡し、「傾向の変化・繰り返し出てくる課題・改善が見られた点をまとめてください」と聞くと、年度末の経営報告書や中期計画策定の資料として使える総括を素早く作れます。毎月の報告書をテキストとして保存しておく習慣を作ることで、このような振り返り分析がいつでもできるようになります。
経営報告書で使ったデータは議事録の決定事項と紐付けて管理すると、何を決めてどんな結果になったかのトレーサビリティが保てます。また報告書を作るたびに気づいた改善点は提案書の素材として活用できます。
報告書の品質は入力するデータの正確さと、担当者が「何を伝えたいか」を明確にしているかで決まります。AIは文章を速く作りますが、「何を・なぜ・どう評価するか」の判断は担当者が持ち込む部分です。その判断をAIへのプロンプトに丁寧に書くほど、使える報告書が出てきます。
よくある質問
AIで書いた報告書は役員に見抜かれますか?
文体の問題より数字と判断の正確さの方が問題になります。AIが作った骨格を担当者が数値・背景・判断を入れて仕上げれば、AI生成か否かより内容の質で評価されます。ただし社内のAI利用ポリシーは事前に確認してください。
月次報告書のテンプレートをAIで作ることはできますか?
できます。一度テンプレートを作れば翌月からは数字だけ更新する運用にできます。「来月以降も使えるテンプレートとして」と指示すると変数部分を明示した形で出力してくれます。
報告書に事業部から集めたデータを反映するのに時間がかかります。AIで効率化できますか?
データの収集自体はAIでは省略できませんが、各事業部から集めたデータを貼り付けて「これを月次報告書のフォーマットに整形してください」と指示する使い方は有効です。