経営企画のアンケート設問をAIで作る方法
この記事の要点
経営企画担当が行う社内調査・従業員意識調査・部門ヒアリングのアンケート設問をAIで効率化する手順。プロンプト例付きで、設計から質問文の表現統一まで対応できる。
結論
経営企画が実施する社内調査・従業員満足度調査・部門ヒアリング用のアンケート設問は、AIを使うと設計から設問の下書きまで1時間以内に完了する。ゼロから設問を考えると2〜3時間かかり、表現の揺れや抜け漏れが起きやすい。AIに目的と対象者を渡すことで設問の候補が整い、チェックと仕上げに集中できる。
経営企画が作るアンケートの種類
経営企画が設問設計に関わるアンケートは主に4種類ある。
- 従業員意識調査・エンゲージメント調査:年1〜2回実施する全社調査。経営戦略の課題を把握するための基礎データになる。
- 中期計画・経営戦略の社内浸透度調査:戦略発表後に実施し、社員の認知・理解・共感度を測る。
- 部門ヒアリング用の定性調査:年度計画や組織再編の検討で各部門長から情報を集める。
- 外部調査・市場調査向けの設問設計支援:外部の調査会社に発注するときの設問案作成。
経営企画が担うのは「調査目的の定義と設問設計」で、実際の配信はHRや情報システム部門と連携することが多い。AIはこの「設問を考える」部分を効率化する。
使うAIツール
- ChatGPT(GPT-4o): 設問候補の生成と表現の整理が得意。
- Claude: 複数の調査目的をまとめて渡してから全体設計を作らせるときに扱いやすい。
- Microsoft Copilot: Excelで設問リストを管理する場合、Copilot for Microsoft 365を使うと直接シートに出力できる。
手順:ステップ別の作り方
ステップ1:調査設計の骨子をまとめる
設問を作る前に、以下の5点を整理する。この整理ができていないまま設問を作ると、後から「この質問で何を知りたかったのか」が分からなくなる。
- 調査の目的(何を決めるための情報収集か)
- 対象者(全社員、管理職のみ、特定部門など)
- 得たい情報の優先順位(最重要な問いは何か)
- 設問の形式の希望(選択式・記述式・5段階評価など)
- 回答に使える時間の目安(5分、10分、15分)
ステップ2:全体設計のプロンプトを入力する
まず設問の全体構成を設計してもらう。
以下の条件で、社内アンケートの全体構成を設計してください。
【調査の目的】
来期の中期計画策定に向けて、全社員が現在の経営課題をどう認識しているかを把握する。
特に「組織の強みと弱み」「変化対応力」「中期で最優先すべき課題」の3点を聞きたい。
【対象者】
全社員(役員・管理職・一般職、約400名)
【形式の希望】
・選択式と自由記述を組み合わせる
・所要時間10分以内
・匿名回答
以下を出力してください。
1. 調査の全体構成(セクションの流れ)
2. 各セクションで明らかにしたい問い
3. 設問数の配分案(選択式何問、記述式何問)
4. 調査設計上の注意点
ステップ3:設問文を生成する
全体構成が決まったら、各セクションの設問文を作ってもらう。
以下のセクションの設問文を作成してください。
【セクション名】
組織の強みと弱みの認識
【このセクションで明らかにしたいこと】
社員が「自社の競争優位性がどこにあるか」「現時点で最も課題と感じている領域はどこか」を把握する
【形式の指定】
・選択式(単一選択)3問
・5段階評価(リッカート尺度)2問
・自由記述1問
【注意事項】
・回答者(一般社員含む)が理解しやすい言葉を使う
・特定の回答を誘導するような表現を避ける
・選択肢に「分からない・どちらとも言えない」を入れる
ステップ4:表現の統一と確認をする
設問文が全セクション揃ったら、全体の表現の一貫性を確認させる。
以下のアンケート設問全体を確認し、次の点を改善してください。
1. 誘導的な表現(特定の回答を促す言い回し)がある場合は指摘して修正案を出す
2. 異なる設問で同じ言葉が違う意味で使われていないか確認する
3. 一般社員が理解しにくい専門用語があれば指摘する
4. 設問の順番が回答者に心理的なバイアスを与えていないか確認する
【アンケート設問全文】
(各セクションの設問を貼り付ける)
選択肢の設計を深める使い方
設問文が決まったら、選択肢の設計もAIに手伝ってもらえる。
以下の設問に対する選択肢を作成してください。
【設問】
「今後3年間で、当社が最も強化すべき領域はどれだと思いますか?(最も重要なものを1つ選択)」
【条件】
・選択肢は5〜7つ
・MECE(重複なく漏れなく)になるよう設計する
・業種は製造業、売上規模500億円程度の中堅メーカーを想定
・「その他(自由記述)」を最後に入れる
うまくいかない場合のポイント
設問が多すぎて絞り込めないとき
「この調査で1つだけ答えを得るとすれば、それは何ですか?」とAIに逆質問する形で優先順位を整理する。その問いに直接答える設問を軸に据え、他の設問は補助に位置づける。
設問の表現が硬くて回答者が敬遠しそうなとき
「回答者は現場の一般社員です。日常業務の言葉で設問を書き直してください」と指示する。経営企画の人間が書くと無意識に専門用語が入るため、回答者目線でのチェックをAIに頼むのは有効。
自由記述の設問が多すぎて集計できなくなるとき
「この目的であれば、自由記述より選択式で測る方が集計しやすい設問形式はないか提案してください」とAIに相談する。定性的に知りたい内容でも、選択肢の設計次第で定量化できることがある。
具体的な活用場面2例
場面1:中期計画浸透度調査の設問設計
3年中期計画を発表した翌月、「戦略が社内にどこまで浸透しているか」を測る社内調査を実施することになった。「浸透度」を何で測るかが定まっていなかったため、AIに「中期計画の浸透度を測るために有効な設問の切り口を5つ挙げてください」と依頼した。認知度(知っているか)・理解度(内容を説明できるか)・共感度(方向性に賛同できるか)・行動変容(自分の仕事に結びつけられているか)・課題認識(障壁に気づいているか)という5つの切り口が出てきて、それを軸に設問を組み立てた。経営企画のKPI策定をAIでサポートする方法で扱うKPI設計とも連動した調査になった。
場面2:部門長ヒアリング用の半構造化インタビューシート
組織再編の検討で各部門長10名にヒアリングを実施することになった。自由な会話形式だと情報の比較ができないため、共通の設問シートを作る必要があった。「部門長ヒアリング用のセミストラクチャード(半構造化)インタビューシートを作ってください。目的は組織再編の課題と各部門の期待・懸念を収集すること」とAIに依頼した。オープンエンドの設問(自由に語れる問い)とクローズドの確認設問(はい/いいえで確認できる問い)を組み合わせたシートが出てきて、ヒアリング前の準備が半日から2時間に短縮した。
アンケートの後工程も視野に入れる
設問の設計と同時に、回収後の集計・分析の手順を計画しておくと後工程がスムーズになる。特に自由記述設問は、AIを使って回答のカテゴリ分類・感情分析・よく出るキーワードの抽出ができる。「回収後の分析方法もあわせて設計してください」とプロンプトに加えると、分析の準備まで一緒に考えられる。
事業計画書の作成をAIで進める方法では調査データを計画書に組み込む流れも扱っている。
設問設計の品質を上げる追加プロンプト
以下は設問の精度を上げるときに有効な追加指示の例。
| 課題 | 追加指示の例 |
|---|---|
| 誘導質問になっていないか確認したい | 「この設問に誘導的な表現がないか評価し、改善案を出してください」 |
| 選択肢のバランスを確認したい | 「選択肢に偏りがないか評価し、バランスを取ってください」 |
| 回答時間を見積もりたい | 「この設問数で回答に何分かかるか試算してください」 |
| 英語版が必要になった | 「この設問を英語に翻訳してください。ビジネス向けの簡潔な表現で」 |
注意点
AIが作った設問は「一般的なアンケート設計の知識」に基づいており、自社の文化・業界特有の慣行・回答者層の特性は反映されていない。完成した設問は少人数に事前確認してから全社配信するのが望ましい。また、従業員の意識・評価・組織に関する情報は機密度が高い場合があり、外部AIサービスへの入力は会社のセキュリティポリシーに従って判断してほしい。
よくある質問
アンケートの設問をAIに作ってもらうとき、何を渡せばいいですか?
調査の目的・対象者・得たい情報の3点が揃えば、AIはアンケート設問の候補を出せます。目的が曖昧だと設問の方向性がずれるため、「何を決めるための調査か」を明確にしてから渡してください。
選択肢の設計もAIに頼めますか?
頼めます。「5段階評価のリッカート尺度」「複数選択・単一選択の区別」なども指定できます。ただし、自社特有の選択肢(部門名、プロダクト名など)は人間が追加する必要があります。
アンケートの設問数はどのくらいが適切ですか?
回答者の負担と回収率のバランスで決まります。所要時間5〜10分を目安にすると、設問数は10〜20問程度が一般的です。詳細は調査設計の専門文献で確認してください。
AIで作った設問をそのまま使っていいですか?
そのままでは不十分なことが多いです。AIは設問の候補を出しますが、自社固有の文脈・業界の専門用語・回答者が理解できる表現かどうかは人間が確認する必要があります。