AI使わぬ社員、レイオフ危険度3倍とGallup調査
この記事の要点
米Gallupの調査で、AIを月1回未満しか使わない社員のレイオフ経験者率は18%、定期利用者の6%の3倍に達した。AIが直接の解雇理由になった例はまだ少ない。
結論
米調査会社Gallupが2026年6月中旬に公表したデータによると、AIを月1回未満しか使わない技術系の社員がレイオフを経験した割合は18%で、定期的にAIを使う社員の6%のおよそ3倍に達した。一方で、解雇された人のうちAIや自動化を主な理由として挙げたのはわずか1%で、AIが直接の解雇理由になっている証拠は今のところ乏しい。AIを使う習慣そのものが、個人の雇用の安定性を左右する要因になりつつあることを示すデータだ。
何が起きたか
Gallupは2026年2月に、解雇経験者660人を含む米国の労働者2万3000人以上を対象とした調査を実施し、6月中旬にその分析結果を公表した。調査によれば、AIを月1回以下しか使わない技術系社員のレイオフ経験率は18%で、定期的にAIを利用する社員の6%と比べて3倍の水準だった。解雇された人全体でみても、直近で解雇された人の62%はAIを年1回以下しか使わない非利用者だったという。
一方で、解雇の主な理由として「AIや自動化」を挙げた人は解雇経験者のわずか1%にとどまった。2026年第1四半期時点で、企業が人員を削減していると回答した従業員の割合は約21%で高止まりしているものの、AIが直接の解雇理由として名指しされる例は限られている。つまり、AI自体が仕事を奪っているというよりも、AIを使いこなせない人材から先に整理されやすいという構図が浮かび上がる。業種や国によって傾向は異なる可能性があるため、最新のデータは各種調査機関の公式発表で確認してほしい。
なぜAI利用の有無で差が生まれるのか
企業が人員を絞り込む局面では、限られた人数で成果を出せる人材を残そうとする力が働く。AIを日常的に使いこなす社員は、資料作成やデータ整理といった定型業務を短時間で終わらせられるため、相対的に評価が下がりにくい。逆にAIを使わない社員は、同じ業務量をこなすのに時間がかかり、削減対象として選ばれやすくなる。これは能力そのものの差というより、ツールを使う習慣の差が数字として表れている可能性が高い。AIリテラシーの基礎を整理したい場合はAIリテラシーとは?ビジネスパーソンが身につける基礎を参考にしてほしい。
数字が示す相関関係の読み方
このデータを読むうえで注意したいのは、AIを使わないことが直接の解雇原因になっているわけではないという点だ。Gallupの調査では解雇理由として「AIや自動化」を挙げた人は1%にとどまっており、実際の解雇理由は業績不振や組織再編など従来型の理由が大半を占める。それでも非利用者の解雇経験率が高いのは、AIを使いこなす社員のほうが同じ業務量をより短時間でこなせるため、人員整理の対象になりにくいという間接的な影響が働いているためだと考えられる。因果関係と相関関係を混同せず、AIの利用が評価に直結しているわけではないことを前提に社内へ伝える必要がある。
米国と日本の労働市場の違い
このデータは米国の労働者を対象にした調査であり、解雇のしやすさが異なる日本にそのまま当てはめることはできない。日本では労働契約法の制約もあり、企業側から従業員を解雇するハードルは米国よりも高い。そのため、同じ傾向が日本の労働市場でそのまま再現されるとは限らない。ただし、限られた人員で成果を出す必要があるという構造自体は共通しており、AIを使いこなせる人材が社内で評価されやすくなる流れは、解雇の有無にかかわらず日本企業でも起こりうる。人事評価や昇進の判断にAI活用度を組み込む企業も出てきており、雇用形態の違いを超えて注視しておく価値がある調査結果だ。
企業側が押さえておきたい視点
このデータは個人の視点だけでなく、企業側の人材戦略にも示唆を与える。もしAI利用の有無が実質的な評価差につながっているのであれば、企業は研修機会を全社員に公平に提供できているかを見直す必要がある。特定の部署や役職だけがAI研修を受けられる状況では、結果的に特定の層が不利になり、人材の偏りを生みかねない。AI推進担当は、研修の受講状況を定期的に確認し、参加率が低い部署には個別に働きかけるなど、公平な機会提供を意識した運用が求められる。
現場の実務にどう効くか
AI推進担当にとって、このデータは社内へのAI浸透を進める説得材料になる。個人の雇用の安定という切り口は、業務効率化という抽象的な目標よりも現場の社員に響きやすい。研修を設計する際は、単にツールの使い方を教えるだけでなく、日常業務に組み込む習慣づけまで踏み込むと定着率が上がる。特に、AIに苦手意識を持つ社員には、解雇のリスクを煽るのではなく、日々の業務が楽になるという具体的なメリットを伝えるほうが効果的だ。ITが苦手な社員への浸透方法はITが苦手な社員へのAI浸透 段階的に慣れさせる方法、社内研修の設計は生成AIの社内研修プログラムの作り方を参考にしてほしい。
出典
よくある質問
AIが直接の理由で解雇される人は多いのですか?
Gallupの調査では、解雇された人のうちAIや自動化を主な理由として挙げたのは1%にとどまっています。目立つのはAIを使っていない人ほど解雇される割合が高いという相関関係です。
この調査はどんな人を対象にしていますか?
2026年2月に実施された、解雇経験者660人を含む米国の労働者2万3000人以上を対象にした調査です。国や業種が異なれば数値は変わる可能性があるため、最新の調査は公式情報で確認してほしい。