経理のFAQをAIで作る方法
この記事の要点
経理担当者が社内向けFAQ・経費精算Q&A・月次決算説明文書をAIで作成する手順を解説。質問の洗い出しから回答文の生成まで実践的なプロンプト例を紹介する。
結論
経理のFAQ作成にAIを使うと、質問の洗い出しから回答文の整形まで短時間で完了できる。社員からよく受ける問い合わせをリスト化してAIに渡せば、読みやすい回答文を一括で生成できる。ただしAIが生成した回答は自社ルールや最新の法令に照らして必ず担当者が確認することが前提になる。
経理でFAQ作成が必要になる場面
経理部門はほかの部門から問い合わせを受ける立場にある。「領収書を紛失した場合はどうすれば?」「交通費の申請期限はいつ?」「立替払いの上限額は?」こうした質問に毎回メールや口頭で答えていると時間を消耗する。FAQとして整備しておけば問い合わせ件数そのものを減らせる。
FAQが必要になる具体的な場面を挙げる。
- 経費精算システムを刷新したとき、操作方法や新ルールへの問い合わせが急増する
- 4月の新入社員入社時に経費申請の基本的な質問が集中する
- 月次決算の締め日前後に、仕訳の扱いや費目の分類について各部門から確認が入る
- 年末調整や確定申告の時期に、社員から個人の税務に関わる質問が来る
- 経理システムのアップデート後に操作方法の問い合わせが増える
これらの場面に備えてFAQをあらかじめ整備しておくことが、経理担当者の対応工数を減らす最短ルートだ。
使うAIツール
チャット型AIで質問・回答の両方を生成できる
Claude、ChatGPT、Geminiはいずれもテキスト生成を得意とするため、FAQ作成に活用できる。「質問の候補リストを出させる」「各質問への回答を生成させる」「回答を簡潔にリライトさせる」という3段階のいずれもチャット型AIで完結する。
NotionやConfluenceとの連携
作成したFAQをNotionやConfluenceで管理する場合、MarkdownやHTML形式で出力させると貼り付けが楽になる。AIにはじめから「Markdown形式で、見出し2(##)を質問、その下に回答を書いてください」と指定すると、そのまま貼り付けられる形式で出力される。
手順:AIで経理FAQを作る
ステップ1:質問の一覧を用意する
まず「何についてのFAQか」を決め、想定される質問をリスト化する。自分で思いつかない場合は「経費精算について社員がよく質問する内容を15個挙げてください」とAIに依頼する。AIが出した候補を見ながら、自社で実際に聞かれることと照らし合わせて取捨選択する。
ステップ2:回答の元になる情報を用意する
AIに正確な回答を作らせるには、回答の根拠となる情報を渡す必要がある。社内規程・就業規則・経費精算マニュアル・システムの操作手順書など、手元にある資料をテキスト形式でコピーしてAIに渡す。AIは渡した情報をもとに回答を生成するため、情報の品質が回答の品質に直結する。
ステップ3:質問と参照情報をセットでAIに渡す
以下は経費精算FAQを作るプロンプト例だ。
以下の経費精算規程をもとに、社員向けFAQを作成してください。
【FAQ作成条件】
- 形式:Markdown形式(質問は「##」見出し、回答はそのまま本文)
- 回答の長さ:各質問への回答は3〜5文以内
- 文体:敬体(「です・ます」調)
- 専門用語は使わず、一般社員が理解できる言葉で書く
- 不明な点は「詳しくは経理部までお問い合わせください」と案内する
【質問リスト】
1. 交通費の申請期限はいつですか?
2. 領収書を紛失した場合はどうすればいいですか?
3. 1回の経費申請の上限額はありますか?
4. 出張中の食事代は経費になりますか?
5. 経費申請の承認者は誰ですか?
【経費精算規程(要約)】
(ここに規程のテキストを貼り付ける)
ステップ4:出力を確認し、自社ルールと照合する
AIが生成した回答を、元の規程や社内ルールと一つずつ照合する。特に「上限金額」「申請期限の具体的な日付」「例外規定」などは、AIが正確に反映できていないことがある。最終的な内容確認は必ず経理担当者が行う。
ステップ5:定期的に更新する
法改正や社内規程の改訂があった場合は、FAQも更新する必要がある。更新時もAIを使えば短時間で対応できる。「以下の変更点を反映して、既存のFAQを修正してください」と差分情報と一緒に渡すと効率的だ。
具体的な使用例
例1:新入社員向け経費精算FAQの作成
4月の新入社員入社に向けて、「経費精算の基本」に関するFAQを作る場面がある。毎年同じ質問が繰り返されるため、入社前研修の資料として渡せるFAQを整備したい。
経費精算マニュアルと過去の問い合わせメール(個人情報を除いたもの)をAIに渡し、「入社1ヶ月以内の社員が抱えやすい疑問を想定したFAQを10問作成してください」と依頼する。AIが出した質問は実際の問い合わせ傾向とずれる場合があるため、過去の問い合わせ内容と比較して修正を加える。
完成したFAQを社内Wikiに掲載すると、毎年4〜5月に集中していた問い合わせが減少することが期待できる。実際に経費精算FAQを整備した後に問い合わせ件数が約4割減少したという事例もある。
例2:経費精算システム移行時のFAQ
経費精算システムを刷新するタイミングでは、操作方法への問い合わせが増える。新システムのマニュアルと想定される操作手順をAIに渡し、「操作に不慣れな社員がつまずきやすい点を想定した15問のFAQを作成してください」と依頼する。
AIは「ログインできない」「申請を途中で保存するには」「承認者を変更するには」などの操作系の質問を網羅した候補を出す。システム担当者と協力して内容を確認し、移行初日から公開できる状態に整える。
うまくいかない場合の対処法
回答が長くなりすぎる
「回答は3文以内にまとめてください」「150字以内で書いてください」と文字数・文数を指定すると改善する。
回答が曖昧で「経理部に問い合わせてください」ばかりになる
参照情報が不足していることが多い。AIに渡す情報を具体的にする(マニュアルの関連ページをテキスト化して渡すなど)と、具体的な回答が得られやすくなる。
自社のシステム名や用語に対応できない
「以下の用語は自社のシステム名です。そのまま使用してください:〔用語リスト〕」と冒頭に書き添える。
法令に関わる回答が不正確
税務・労務に関わる回答は特に慎重に確認が必要だ。AIは法令の解釈を誤ることや、古い情報をもとに回答することがある。税務に関わる内容は最新の国税庁の通達や顧問税理士に確認してから公開する。
FAQ作成の精度を上げるテクニック
問い合わせ記録から質問を拾う 過去に受けた問い合わせのメールやSlackのやりとりを整理し、よく来る質問をリストアップする。このリストをAIに渡すと「実際に聞かれた質問」に対応したFAQが作りやすくなる。
回答の一貫性を確認させる 複数の回答が作成できたら「これらの回答に矛盾や表現の不統一がないか確認してください」とAIに依頼すると、文体の統一や矛盾の検出を素早く行える。
想定外の質問も検討させる 「このFAQで答えられていない質問が来た場合、担当者が困りそうな質問を5個挙げてください」とAIに依頼すると、FAQの抜け漏れを事前に確認できる。
経理業務への応用
FAQ整備は一度作ると問い合わせ対応の削減という形で継続的に効果が出る業務改善だ。AIを使えばドラフト作成の時間が大幅に短縮できるため、「いつか作りたいが時間がない」というFAQも着手しやすくなる。
経理メールの作成については経理のメール作成をAIで行う方法を参照してほしい。月次報告書の作成は経理の月次報告書をAIで作る方法で詳しく取り上げている。経営層向け資料については経理の経営報告資料をAIで作る方法も役立つ。
まとめ
経理FAQのAI活用は「質問の洗い出し」と「回答文の生成」の両方で時間を節約できる。AIに正確な回答を出させるためには、社内規程や手順書などの情報を一緒に渡すことが前提だ。生成された回答は必ず担当者が自社ルールと照合し、特に法令に関わる内容は専門家への確認を経てから公開する。一度作ったFAQはプロンプトを保管しておけば、規程改訂のたびに短時間で更新できる。
よくある質問
AIが作ったFAQの回答をそのまま公開してもいいですか?
そのままの公開は推奨しません。AIの回答は自社のルールや最新の税務法令と一致しない可能性があります。担当者が内容を確認し、必要に応じて修正したうえで公開してください。
質問が思いつかない場合、AIに質問を考えさせることはできますか?
できます。「経費精算について社員が抱えやすい疑問を20個挙げてください」のように依頼すると、実際に使える質問の候補リストが得られます。その中から自社に合うものを選んで回答を作ります。
FAQの回答が長くなりすぎます。短くするにはどうすればいいですか?
「回答は3文以内にまとめてください」「150字以内で回答してください」と文字数や文の数を指定すると、AIは簡潔な回答を出力します。
経理のFAQは何項目くらい用意すればいいですか?
目的によって異なりますが、社内向けの経費精算FAQであれば10〜20項目が運用しやすい範囲です。多すぎると検索されにくくなるため、頻度の高い質問に絞るのが実用的です。