決算説明資料をAIで作る方法
この記事の要点
経理担当者が役員や株主向けに作成する決算説明資料をAIで効率化する手順。数値サマリーの文章化・スライド構成案・質疑応答準備をプロンプト例つきで解説する。
結論
決算説明資料の作成で経理担当者が最も時間をかけるのは、数値をもとにした「何がどう変わり、なぜそうなったか」という説明文の執筆と、役員・株主からの想定質問への準備だ。AIに財務数値と背景情報を渡すと、説明文の草稿・スライド構成案・想定Q&Aを数分で出力できる。担当者の作業は「数値の正確性確認」と「事実の補足・修正」に集中できる。
使うAIツール
| ツール | 向いている用途 |
|---|---|
| Claude(claude.ai) | 長い財務データを渡して構造化された説明文を作成 |
| ChatGPT(GPT-4o) | スライド構成・想定Q&A・英文対応 |
| Gamma | AIでスライドを直接生成(デザイン込み) |
Gammaは入力したテキストからスライドを自動生成するサービス。経理の決算資料に特化したテンプレートはないが、財務データとキーメッセージを渡すとスライドの雛形を短時間で作れる。見た目の調整は手作業が必要になる。
手順
ステップ1 決算データを整理する
説明資料に使う数値を事前に一覧化しておく。最終的な数値は監査・承認が完了したものを使う。
整理する主な項目:
- 売上高(当期・前期・増減率)
- 売上総利益・粗利率
- 営業利益・経常利益・当期純利益(当期・前期・増減率・予算対比)
- セグメント別の売上・利益(複数事業がある場合)
- 貸借対照表(総資産・自己資本・自己資本比率)
- キャッシュフロー概要
- 次期の見通し(開示が可能な場合)
ステップ2 変動要因の背景情報を箇条書きでまとめる
AIが説明文を作るには、数値の変動理由が必要。担当者が把握している情報を箇条書きで整理する。
例:
- 売上増の要因:主力製品Aの販売数量が前期比15%増、新規市場の開拓が奏功
- 原価率悪化の要因:原材料費の高騰(前期比7%上昇)が影響
- 営業利益が予算を下回った要因:採用費・研修費の増加(前期比+12%)
- 次期への影響:原材料費は高止まりが続く見通し。販売価格の見直しを検討中
ステップ3 決算サマリーの説明文を作成するプロンプト
以下の決算データと変動要因をもとに、役員向け決算説明資料のサマリー文を作成してください。
対象期:2026年3月期(第○期)
【損益概要(単位:百万円)】
売上高:4,820(前期比 +7.6%、予算比 -3.6%)
売上総利益:1,930(前期比 +14.2%)
粗利率:40.0%(前期比 +2.3pt)
販管費:1,420(前期比 +8.4%)
営業利益:510(前期比 +27.5%、予算比 -7.3%)
経常利益:490(前期比 +26.3%)
当期純利益:320(前期比 +19.4%)
【変動要因】
・売上増の主因:主力製品Aの数量増(前期比+15%)
・粗利率改善:製品ミックスの改善と原価低減活動の効果
・販管費増:採用費・研修費の増加(前期比+12%)
・営業利益が予算未達:採用費の上振れ
出力形式:
1. 冒頭サマリー(4〜5文。当期の経営成果を経営者向けに簡潔に総括する)
2. 売上高セクションの説明文(3〜4文)
3. 利益セクションの説明文(3〜4文)
4. 課題・翌期の取り組み(2〜3文)
注意事項:
・数値を正確に引用する(丸め処理をしない)
・推測は「〜と考えられる」「〜が想定される」と明示する
・「増収増益」など一般的な財務用語は使ってよい
・「大幅」「著しい」などの主観的な表現は避ける
ステップ4 スライド構成案を作成するプロンプト
以下の決算説明資料の内容をもとに、役員向けプレゼンのスライド構成案を作成してください。
資料の目的:取締役会での期末決算報告(説明時間30分、質疑15分)
読み手:取締役・監査役(財務の詳細より戦略判断に関心)
【資料の内容】
・当期の損益実績と前期比
・売上増減の要因分析
・費用増加の内訳と理由
・財務状況(BS・CF概要)
・次期の見通し
出力形式:
スライド番号 / スライドタイトル / 掲載する主な内容(箇条書き3〜5項目)
スライド枚数は15枚前後を目安にしてください。
ステップ5 想定Q&Aを準備するプロンプト
決算説明後の質疑応答は、事前に想定質問と回答案を準備しておくと対応しやすい。
以下の決算概要をもとに、役員・株主から出やすい質問とその回答案を作成してください。
【決算概要】
(前のステップで整理した内容を貼り付ける)
特に質問が出やすいポイント:
・売上が予算を下回った理由
・販管費が増加している理由と今後の見通し
・次期の利益見通しと根拠
出力形式:
Q:(質問)
A:(回答の方向性と主な根拠。2〜4文)
※ 「〜と見込んでいます」「〜を計画しています」は事実に基づく範囲で記載する
※ 開示できない情報には「現時点では開示の準備が整っていない」と記載する
具体的な活用例
例1 中小企業の年次決算説明資料の作成
従業員100名規模の製造業で、年1回の取締役会向け決算資料を経理担当者1人が担当している事例。数値の集計・スライド作成・説明文の執筆まで1人で行うため、毎期2〜3週間かかっていた。
説明文の執筆にAIを使い始めてから、各セクションの草稿を出力させて確認・修正する手順に変えた。スライド1枚あたりの説明文作成が30分から5分前後に短縮され、全体で1週間程度の削減につながった。経営者からは「数値の背景説明が具体的になった」というフィードバックがあった。
例2 株主総会向けの事業報告書の説明文作成
上場企業の経理部門が、株主総会の招集通知に添付する事業報告書の財務説明部分を作成する事例。決算数値をAIに渡して各セクションの説明文草稿を出力し、法務・IR担当者とのレビューに時間を集中させた。
特に英語併記が必要な一部資料では、日本語の草稿をAIで英訳することで翻訳コストと時間を削減した。翻訳後の財務用語のチェックは監査法人の確認を経る工程を維持している。
うまくいかない場合
説明文が抽象的でそのまま使えない
「堅調に推移」「大幅な改善」のような表現しか出ない場合、変動要因の背景情報が不足している。ステップ2の情報を詳細化し、「なぜ・どれだけ・誰の判断で」という具体性を加える。
数値を正確に引用していない
AIが数値を丸めたり単位を変えたりすることがある(「51億円」を「50億円超」など)。出力後に数値を1つずつ元データと照合する確認工程を必ず設ける。
スライド構成案が汎用的すぎる
「財務ハイライト」「課題と対策」といった一般的な構成になる場合、自社の業種・ステージ・説明会の目的をプロンプトに追記する。「当社はSaaS事業を展開するスタートアップで、今期はARRの成長率が重要指標」のように具体化するとより適した構成が出やすい。
想定Q&Aの回答が薄い
「詳細は別途ご説明します」などの逃げの表現が多い場合、「回答に使える具体的な数値・取り組み・スケジュール感を含めてください」と追加指示する。
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よくある質問
決算説明資料の数値をAIに渡しても大丈夫?
未公表の財務数値は重要な機密情報のため、社外のクラウドAIに渡す場合は社内のデータ利用ポリシーを確認する。ビジネスプランで機密保持が担保されているか、またはローカルで動作するAIを使うかを確認してから進める。
AIが作った説明文に誤りが含まれていたらどうする?
AIの出力は必ず財務数値と照合して確認する。説明文の事実確認は担当者・CFO・監査法人など複数の目を通す工程を維持する。AIは文章化の補助であり、最終確認は人が行う。
決算説明資料のスライド構成はAIに決めてもらえる?
スライドの大まかな構成案はAIに提案させることができる。ただし自社の業種・ステージ・株主構成によって最適な構成は異なるため、AIの提案を土台に担当者・経営陣が判断する。
英語の決算説明資料をAIで作ることはできる?
日本語で作成した内容をAIで英訳する用途には使いやすい。専門用語の翻訳精度は高いが、会計基準の差異(J-GAAPとIFRSなど)に関わる表現は専門家の確認が必要。