総務がPDF資料をAIで要約する方法
この記事の要点
官公庁の通達・業者の提案書・保険約款など総務に届くPDFをAIで要約する具体的な手順を解説。ツールの選び方、アップロードの注意点、精度を上げるプロンプトの型をコピペ可能な形で紹介する。
結論:ツールの選択と情報の機密レベルを先に決めると、作業が安全かつ速くなる
総務に届くPDFは量が多く、種類もばらばらだ。週に数本届く官公庁からの通達、業者から送られてくる10〜30ページの提案書、保険会社からの約款改定通知、そして社内で作られた規程の改定版など。これらを全部精読してから判断するのは時間的に難しい。
AIを使えばPDFの内容を数分で把握できる。ただし、PDFをどのAIに渡すかは「そのPDFに何が書かれているか」で変わる。社外秘情報を社外のAIに送ると情報漏洩のリスクがある。ツールの選択と機密レベルの判断を先に済ませることが、PDF要約作業を安全に進める出発点になる。
使うAIツールと機密レベルによる使い分け
社外のAIサービスを使う場合(公開情報・一般的な資料)
官公庁が公開している通達文書・業者が提出してきた見積もりや提案書(秘密保持義務がないもの)・法律や規制の解説資料など、一般に入手できる情報が含まれる文書であれば社外のAIサービスが使える。
Claude(claude.ai) PDFを直接アップロードして要約を依頼できる。長文の文脈を保持する精度が高く、法令文書や契約文書の要約に向いている。無料版は月ごとの利用上限があり、Proプランで上限が緩和される。
ChatGPT(Plus以上) PDF・Word・Excelのアップロードに対応している。要約後に「この箇条書きの第3項についてもっと詳しく説明して」のような質問を続けられる。
社内環境のAIを使う場合(社外秘・機密を含む文書)
就業規則・賃金規程・個人情報を含む契約書・社内の財務資料など、社外に出してはいけない情報が含まれるPDFには社内環境のAIを使う。
Microsoft Copilot(Microsoft 365統合版) Word・Outlook・TeamsなどOfficeアプリの中から使え、処理したデータが社外に送出されない。Microsoft 365 Business PremiumまたはCopilot for Microsoft 365のライセンスが必要だ。
自社環境に構築したAI 情報システム部門がAzure OpenAIなどで社内AIを構築している場合は、そちらを使う。
手順:PDFをAIで要約する流れ
ステップ1:機密レベルを確認する
PDFを渡す前に以下を確認する。
- 社外秘・部外秘の表記があるか
- 個人名・社員番号・給与情報が含まれるか
- 秘密保持契約を締結した相手から受け取った文書か
これらに該当する場合は社内環境のAIを使う。該当しない場合は社外のAIサービスが使える。判断が難しい文書は情報システム部門または上長に確認してから処理する。
ステップ2:PDFをAIに渡す
方法1:ファイルをアップロードする(推奨) Claude・ChatGPTどちらも、チャット画面の添付ファイルボタンからPDFを直接アップロードできる。ファイルサイズの上限はサービスによって異なるが、通常の業務文書(10MB以下)であれば問題なく処理できる。
方法2:テキストをコピーして貼り付ける PDFのテキストをコピー(Ctrl+A→Ctrl+C)してチャットに貼り付ける方法も使える。スキャンPDFや、コピーが許可されていないPDFには使えないが、テキストが正確に渡せる点が強みだ。
スキャンPDFの場合 テキストが埋め込まれていないスキャンPDFは、AIが読み取れないかまたは精度が落ちる。Adobe AcrobatのOCR機能(「スキャンとOCR」→「テキストを認識」)で処理してからアップロードする。
ステップ3:要約プロンプトを送る
以下はそのままコピペして使えるプロンプト例だ。
官公庁の通達を対応事項別に整理する
アップロードしたPDFを整理してください。
資料の種類:官公庁から届いた法令・制度の通達
使う目的:社内での対応要否の判断と、対応が必要な場合の手続き確認
以下の形式で出力してください。
【概要】
この通達で変わること・知らせていること(3文以内)
【施行日・適用開始日】
記載の日付を正確に転記する
【自社が対応を検討すべき事項】
箇条書きで列挙する
【対応しない場合のリスク】
罰則・ペナルティの記載があれば転記する(記載なし、の場合は「記載なし」と書く)
【確認が必要な点】
判断が難しいまたは専門家への確認が必要と思われる箇所
数値(金額・人数・日数)は正確に転記してください。
業者から届いた提案書の概要を掴む
アップロードした提案書のPDFを読んで、以下の情報を整理してください。
【提案の概要】
何を提供するか(3文以内)
【費用】
・初期費用:
・月額または年額費用:
・費用に含まれる内容:
・別途発生する費用:
【自社側の対応が必要な作業】
導入・運用で自社が行う必要があるもの
【契約条件】
・契約期間:
・解約条件・違約金:
【この提案書に書かれていないと思われる情報】
判断に必要だが記載が見当たらないもの
記載がない項目は「記載なし」と明示してください。推測は「(推測)」と記載してください。
保険約款の改定通知から変更点だけを抽出する
アップロードした保険約款の改定通知を読んで、変更点だけを抽出してください。
知りたいこと:
1. 以前と変わった補償内容(補償が増えた・減った・条件が変わった点)
2. 保険料の変更(記載がある場合)
3. 手続きが必要な事項(署名・提出が必要なもの)
4. 適用開始日
変更前と変更後を対比する形式で出力してください。
変更がない部分の説明は省いてください。
ステップ4:出力を確認する
AIの要約が出たら、以下の点を元のPDFと照合する。
- 日付・金額・人数などの数値が正確か
- 「以上」「以下」「未満」「超える」などの条件表現が正しく転記されているか
- 「ただし」以下の例外・除外条件が省略されていないか
特に法的な効力を持つ文書(規程・契約書・法令通達)は、要約を社内で使う前に必ず確認する。
総務業務での具体的な使い場面
場面1:年次更新の業者契約書を複数まとめて処理する
総務が管理する保守・清掃・警備などの業者契約は、年度末になると更新書類が一斉に届く。各社のフォーマットが異なり、変更点がどこかを探しながら読むのが手間だ。
各契約書のPDFをAIに渡し、「前年から変わった内容を抽出してください」と指示する。変更がない書類は「主要条件に変更なし」と出るため、確認が必要な箇所に集中できる。
アップロードした契約書のPDFを確認してください。
目的:前年と同条件での更新可否を判断するための変更点確認
以下の項目について「変更あり」または「変更なし(前年同様)」の形式で整理してください。
- 契約期間と自動更新条件
- 費用(前年比の変化があれば金額を転記)
- サービス内容・作業範囲
- 免責事項・損害賠償の条件
「変更あり」の項目は変更内容を具体的に転記してください。
場面2:社員総会・管理職研修の外部講師提案書を確認する
外部研修や講演の依頼先から届いた提案書は、プログラム内容・費用・実施条件が混在している。人事部や経営企画部への説明材料として整理する際にAIを使う。
アップロードした研修提案書を読んで、稟議検討用の概要メモを作成してください。
含めてほしい内容:
- 研修の目的と対象者
- プログラムの概要(当日の流れ・所要時間)
- 費用(交通費・資料費など追加費用含む)
- 実施可能な時期・場所の条件
- 講師の経歴・実績(提案書に記載がある場合)
- 意思決定に必要だが記載がないと思われる情報
A4半ページ程度の箇条書きでまとめてください。
イベント実施に向けた企画の進め方については総務のイベント企画をAIで効率化する方法も参照してほしい。
うまくいかない場合のポイント
AIが「このファイルは読み取れません」と返す
スキャンPDF(テキストが画像化されているもの)の可能性がある。AdobeのOCR処理後に再度試す。または本文テキストをコピーして貼り付ける方法に切り替える。
要約が長すぎる・短すぎる
文字数や箇条書きの数を明示する。「200字以内」「5点以内で箇条書き」のように制約を加えると出力が安定する。
重要な情報が抜けている
要約後に「このPDFに書かれている全ての数値と期日を列挙してください」と追加で聞く。または「第3章の内容だけ詳しく教えてください」のように特定のセクションを指定する。
複数のPDFをまとめて処理したい
複数ファイルを一度にアップロードしてまとめて要約を依頼できるが、精度は1ファイルずつ処理する方が高い。重要な文書は1件ずつ処理することを勧める。
要約した内容を社員向け通知に展開する方法については総務の社内通知メールをAIで作成する方法を確認してほしい。規程の改定内容を整理する流れでAIを活用する方法については総務の規程整備・改定をAIで効率化する方法も参照してほしい。
PDF要約の作業別プロンプトの型
| PDF の種類 | プロンプトに含めるべき指示 |
|---|---|
| 法令・通達 | 対応事項・施行日・罰則を省かない |
| 業者提案書 | 費用の内訳・契約条件を対比形式で |
| 保険約款の更新 | 前回との変更点のみを抽出 |
| 外部研修の企画書 | 稟議に必要な要素を項目別に |
| 会議資料 | 決定事項と継続検討事項を分けて |
PDF要約の習慣化にあたっては、資料の種類ごとにプロンプトのひな形を作って保存しておくと、次回から作業が速くなる。チームの共有フォルダにプロンプト集として置いておくと、担当者の引継ぎにも使える。
よくある質問
社外秘の文書をAIにアップロードしてよいですか?
社外のAIサービスにアップロードしたデータは、利用規約によってはサービス改善に使われる可能性がある。社外秘・機密情報を含む文書は、Microsoft CopilotなどOffice統合型のAIか、社内に構築したAI環境を使う。不明な場合は情報システム部門に確認する。
スキャンしたPDFはAIで読み取れますか?
テキストが画像として埋め込まれているスキャンPDFは、AIがそのまま読み取れないことがある。Adobe AcrobatのOCR機能またはMicrosoft 365のOCR機能でテキスト化してからAIに渡すと読み取れる。
PDFが大きすぎてアップロードできない場合はどうすればよいですか?
PDFを章ごとに分割してから渡す方法が有効だ。Adobe AcrobatまたはPDFsam(無料ツール)で必要なページだけを抽出してアップロードする。または本文テキストをコピーしてチャットに貼り付ける方法も使える。
AIが要約した内容は正確ですか?
AIは重要な数値・期日・例外条件を省略することがある。特に法改正通達や契約書の要約は、元のPDFと照合して確認する。確認が必要な項目をAIに「このPDFに含まれる数値と期日を全て列挙してください」と追加で聞く方法も有効だ。