人事の業務マニュアルをAIで作る手順
この記事の要点
採用・研修・労務管理のマニュアルをAIで作ると、ゼロから書く時間が半分以下になる。構成設計からプロンプト例・注意点まで人事向けに解説する。
結論
入社手続きマニュアル、面接官トレーニング資料、労務管理手順書など、人事が管理するマニュアルは数が多く更新も頻繁に必要になる。AIを使うと、構成の設計から初稿の作成まで1時間以内に終わる。これまで1週間かけていた作業が、AIとのやりとりを数回繰り返すだけで完成に近い形になる。
ただし、AIはあくまでも初稿を作る道具だ。自社の規程・最新の法令・実際の業務フローはAIが知らないため、人間による確認と修正は欠かせない。
AIがマニュアル作成で担う役割
マニュアル作成の工程を分解すると、AIが担える部分と担えない部分がはっきりする。
| 工程 | AIが担える部分 | 人間が担う部分 |
|---|---|---|
| 構成設計 | 目次・章立ての候補を複数案出す | 自社の業務実態に合わせて選ぶ |
| 初稿作成 | 各セクションの文章を生成 | 社内ルール・規程を反映して修正 |
| 手順の洗い出し | 一般的なステップを列挙 | 自社システム・ツール固有の手順を追加 |
| リライト | 読みにくい文章を整理 | 正確性の最終確認 |
| 更新差分の反映 | 変更箇所の文章を書き直す | 変更内容が正確かを確認 |
この分担を意識してAIを使うと、修正作業が最小化できる。
使うAIツール
- ChatGPT(GPT-4o): 長文の生成と構成設計に安定した品質が出る
- Claude: 文書の整理・要約・前後の文脈を保ちながら追記するのが得意
- NotionやConfluenceのAI機能: 直接マニュアルツールに出力を置けるため、コピペの手間がない
社内のAI利用ガイドラインに従い、承認済みのツールを使う。
ステップ別:マニュアルを作る手順
ステップ1 マニュアルの種類と対象読者を決める
AIに渡す前に、以下を明確にする。
- マニュアルの種類: 入社手続き・採用面接・研修実施・労務申請・退職手続きなど
- 対象読者: 新任人事担当者・部門マネージャー・面接官・社員全員など
- 長さの目安: A4で5枚程度か、詳細な手順書か
- 更新頻度: 年1回の全面見直しか、随時更新か
これを決めずにプロンプトを渡すと、汎用的すぎる内容が返ってくる。
ステップ2 構成案をAIに出してもらう
まず目次だけ作らせる。このステップをとばして一気に本文を書かせると、自社に合わない構成になりやすい。
あなたは人事部のマニュアル作成担当です。
以下の条件で業務マニュアルの目次を3パターン提案してください。
【マニュアルの種類】中途採用の選考プロセスマニュアル
【対象読者】採用に初めて関わる部門マネージャー
【含めたい内容】
・書類選考の基準
・面接の流れと評価方法
・合否連絡のルール
・オファー提示の手順
・禁止事項(ハラスメント防止・採用差別の回避)
【想定ページ数】A4で10枚前後
各パターンで重視している観点(読みやすさ優先 / 手順順序優先 / 法的リスク優先など)も教えてください。
3パターンを比較し、自社の業務フローに最も近い構成を選ぶ。
ステップ3 セクションごとに本文を書かせる
目次が固まったら、章ごとに本文を依頼する。一度にすべてを書かせると分量が多くなりすぎて品質が下がる。
先ほどの目次の中から「面接の流れと評価方法」セクションを書いてください。
【追加情報】
・面接は原則2回(1次:人事、2次:部門責任者)
・使用する評価シートは別途添付する旨を注記
・面接時間は60分を想定
・オンライン面接の場合はZoomを使用
【禁止事項として明記してほしい内容】
・出身地・家族構成・宗教・国籍を聞かない
・録画は候補者の同意なしに行わない
【文体】箇条書きと手順形式を組み合わせ、読み飛ばしても要点が分かるようにする
ステップ4 既存のマニュアルをリライトする
すでにマニュアルが存在するが読みにくい・情報が古い場合は、既存文書をそのまま貼り付けてリライトを依頼する。
以下は現在の入社手続きマニュアルの一部です。
次の観点で改善してください。
1. 手順の抜けがあれば追加する
2. 読みにくい箇所を短い文体に書き直す
3. 変更になった可能性がある法令・制度の記述に「最新の規定を確認してください」の注記を入れる
【既存のマニュアル】
(ここに既存のテキストを貼り付ける)
出力後、変更前との差分を確認し、必要な加筆修正を行う。
人事固有の場面:2つの具体例
例1 新任面接官向けトレーニングマニュアル
新しく採用面接を担当する部門マネージャーに渡すためのマニュアルは、採用差別の禁止・評価基準の統一・フィードバックの書き方と複数の要素を含む。
新任面接官向けのトレーニングマニュアルを作成してください。
【対象】採用面接に初めて参加するマネージャー職
【含める内容】
・面接の目的(何を見るか)
・行動評価面接の基本(STAR法の説明を含む)
・聞いてはいけない質問のリスト(雇用機会均等法・厚生労働省のガイドラインに基づく)
・評価シートの記入方法
・フィードバックのまとめ方(合否に関わらず具体的に)
【長さ】A4で8枚程度
【文体】実務的で、初めて読む人でも迷わない説明
※ 法令に関する記述は「最新は厚生労働省の公式情報で確認してください」と注記してください。
法令の具体的な条文や最新の指針は、出力後に厚生労働省のサイトで確認して追記する。
例2 育児休業申請の社内手順書
育児休業に関する手順書は、法改正が頻繁にあるため既存のものが古くなりやすい。AIで骨格を作り、最新の法令を人間が確認して上書きするフローが実用的だ。
育児休業の申請から職場復帰までの社内手順書を作成してください。
【対象読者】育休を取得する予定の社員
【含める内容】
・申請のタイミングと必要書類
・給付金の概要(詳細は「最新はハローワークまたは公式サイトで確認」と注記)
・休業中の社会保険料の取り扱いの概要
・復帰前の手続き(復帰時期の連絡・業務調整の相談窓口)
・復帰後の短時間勤務制度の概要
【注意】法令や給付額は変更されることがあるため、仮数値は入れず「各自で最新情報を確認」と一貫して記載
出力後に人事担当者が自社の規程と照合して修正することを前提としたドラフトとして作成してください。
うまくいかない場合のポイント
出力が汎用的すぎて自社に使えない
プロンプトに自社固有の情報(使用しているシステム名・組織構造・独自ルール)を追加すると、自社向けの記述が増える。情報を追加するたびに精度が上がる。
法令に関する記述が古いまたは不正確
AIは学習データの時点より後の法改正を知らない。労働基準法・育児介護休業法・社会保険に関する記述は必ず人間が最新の厚生労働省の情報と照合する。AIの出力に「最新は公式で確認してください」と注記させる指示をプロンプトに入れておくと見落としが減る。
出力が長すぎて修正が大変
一度に全体を書かせず、章ごとに分けて依頼する。1回の出力で確認できる量は1,500字程度が目安だ。これを超えると修正箇所の特定が難しくなる。
更新の手間が多い
マニュアルを更新するたびにゼロから書き直すのではなく、変更箇所の文章だけをAIに渡して「この部分を〇〇に変更した場合の文章に書き直してほしい」と依頼する方が速い。
マニュアル完成後の確認項目
| 確認項目 | 担当 |
|---|---|
| 自社の規程・規則と矛盾がないか | 人事担当者 |
| 法令に関する記述が最新か | 人事担当者(公式情報で確認) |
| 手順に抜け・飛びがないか | 実務担当者(ユーザーレビュー) |
| 専門用語の説明が対象読者に合っているか | 確認テスト読み |
| 更新日と版番号が記載されているか | 管理担当者 |
人事のマニュアル作成は、AIで初稿を出す作業と人間が精度を高める作業に明確に分けることで、全体の工数を大きく削減できる。とくに構成設計の段階でAIに複数案を出させ、人間が選ぶという分担が効率的だ。
研修資料の作成は人事の研修資料・プログラム設計をAIでやる方法に手順をまとめている。評価コメントの書き方については人事の評価コメント・フィードバックをAIで作る方法を参照してほしい。
よくある質問
AIが作ったマニュアルをそのまま使っても問題ありませんか?
そのまま使うのは避けてください。AIは自社のルール・法令の最新情報・社内システムの仕様を知りません。出力を土台に、人事担当者が加筆・修正・事実確認を行った上で使用します。
既存のマニュアルをAIでリライトしてもらうことはできますか?
できます。既存のマニュアルをプロンプトに貼り付けて「読みやすく書き直してほしい」「手順の抜けがないか確認して追加してほしい」と依頼する方法が有効です。
マニュアル作成に使えるAIツールはどれですか?
ChatGPTとClaudeが長文処理と構成設計に向いています。NotionやConfluenceにAI機能が組み込まれている場合は、直接そちらを使うと出力をそのまま管理ツールに置けます。
法令に関する記述はAIに任せても大丈夫ですか?
大丈夫ではありません。労働基準法・育児介護休業法・社会保険に関する記述は、最新の法令や通達を人間が確認して加筆・修正してください。AIは古い情報を正しいように書くことがあります。