法務の報告書をAIで書く手順
この記事の要点
法務担当者がAIを使って月次報告・案件進捗報告・コンプライアンス報告書を効率化する方法を解説。構成設計からプロンプト例まで法務固有の活用方法を紹介します。
結論
法務担当者の報告書は、月次の活動報告・係争案件の進捗報告・コンプライアンス推進状況の報告など、数多くの案件情報を整理して読み手に正確に伝える必要があります。AIを使えば、手元の情報をプロンプトに整理して入力するだけで、報告書の骨格が数十分で完成します。
ただし法的リスクの評価・案件の判断方針は担当者が決定してから報告書に記載します。AIは文章の整形と構造化を支援するツールです。
使うAIツール
法務報告書の作成に向いているツールは以下のとおりです。
| ツール | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Claude(claude.ai) | 複数案件の情報を一貫した形式で整理するのが得意 | 月次報告書・案件一覧形式の報告書 |
| ChatGPT(GPT-4o) | 表形式の整理が得意。情報の構造化が速い | 進捗管理表・案件サマリーの作成 |
| Microsoft Copilot(Word統合) | Word文書に直接生成・編集できる | Word形式の報告書を直接作成する場合 |
| Notion AI | Notionページに統合されている | Notionで案件管理している場合のサマリー生成 |
機密性の高い案件情報を含む場合は、ビジネスプランで学習利用が除外されているツールを選んでください。
手順:法務報告書をAIで作成する
ステップ1 報告に必要な情報を事前に整理する
AIに報告書を作らせる前に、次の情報を箇条書きで書き出します。
- 報告対象期間
- 今期の主要案件(案件名・種別・現在のステータス)
- 解決した事項と進行中の事項
- 翌期に予定しているアクション
- 数値データ(契約審査件数・相談受付件数・訴訟件数など)
この「情報のメモ」がそのままプロンプトの材料になります。情報が揃っているほど、AIが作る報告書の精度が上がります。
ステップ2 プロンプトを書く
整理した情報をプロンプトに貼り付けて、報告書形式に整形させます。
以下の情報をもとに、法務部の月次活動報告書を作成してください。
【報告対象期間】
2026年5月1日〜5月31日
【報告先】
経営会議(取締役・事業部長)
【今月の主要対応事項】
1. 〇〇社との業務委託契約交渉(第3条の修正対応、まだ合意未達)
2. 新規パートナー向けNDA 3件の審査・締結完了
3. 社内からの法律相談 8件対応(うち労働問題関連 3件・契約解釈 3件・その他 2件)
4. 個人情報保護方針の改訂草案の作成(次月の取締役会に提出予定)
【未解決事項・翌月の優先事項】
- 〇〇社との契約交渉継続(6月第2週に先方との打ち合わせ予定)
- 個人情報保護方針改訂案の取締役会提出
【数値データ】
- 契約書審査件数:14件
- 社内法律相談対応件数:8件
- 訴訟・紛争案件:0件
【作成要件】
- A4で2ページ程度に収まる構成にすること
- エグゼクティブサマリーを冒頭に1段落入れること
- 各案件の詳細は箇条書きで簡潔に
- リスク評価の記載欄は「(担当者記入)」として空欄にすること
ステップ3 確認・修正して提出する
AIが作成した報告書を次の順で確認します。
- 入力した情報が正確に反映されているか確認する
- リスク評価・判断方針の欄に担当者の判断を記入する
- 数値が正確か照合する
- 報告先(経営会議・取締役会など)の慣習に合った表現になっているか確認する
確認が完了したら、会社の形式に整えて提出します。
法務固有の活用例
活用例1:係争・紛争案件の進捗報告書
訴訟や紛争を抱えている場合、経営層に定期的に進捗を報告する必要があります。複数の事実関係を時系列で整理しながら現在の状況と今後の見通しを伝える報告書は、情報量が多く文章化に時間がかかります。
以下の情報をもとに、係争案件の進捗報告書の草稿を作成してください。
【案件概要】
元取引先〇〇社からの損害賠償請求事案(2025年11月に訴状受領)
【これまでの経緯(時系列)】
- 2025年11月:訴状受領。請求金額は500万円
- 2025年12月:弁護士(〇〇法律事務所 田中弁護士)に依頼、答弁書の作成開始
- 2026年1月:第1回口頭弁論。当方の答弁書を提出
- 2026年3月:相手方より準備書面の提出
- 2026年5月:当方の準備書面を提出済み
【現在の状況】
第2回口頭弁論が2026年7月に予定。弁護士によると、当方の主張が認められる可能性は現時点では判断中。
【報告先】
取締役会(法律の専門家ではない)
【作成要件】
- 時系列表を含めること
- 今後の見通しは「弁護士と協議中」として断定表現を使わないこと
- 財務的な影響(最悪ケースの金額的リスク)の欄は「(弁護士確認中)」として空欄にしておくこと
- A4で1〜2ページ
訴訟案件の報告書で見通しの断定をAIにさせると、根拠のない表現が入るリスクがあります。「協議中」として空欄にする指示が重要です。
活用例2:コンプライアンス活動の定期報告書
半期ごとのコンプライアンス活動状況を経営層に報告する際、研修の実施状況・相談件数・違反事案の有無などをまとめた報告書が必要です。
以下の情報をもとに、コンプライアンス活動の上半期報告書(2026年1月〜6月)を作成してください。
【実施した主な活動】
1. コンプライアンス研修(全社員対象):2026年2月実施。受講率 94%
2. 内部通報受付件数:3件(うち2件は内容確認の結果、違反なし。1件は調査中)
3. 取引先向けの反社確認:新規取引先 15社の確認完了
4. 個人情報取り扱い訓練(情報漏洩想定):2026年4月実施
【課題・未達事項】
- コンプライアンス研修の未受講者 6名(所在地:海外拠点)に向けてeラーニング対応を検討中
- 1件の内部通報案件が調査中
【翌期の予定】
- 下半期コンプライアンス研修の計画
- 調査中案件の結論
【報告先】
取締役会
【作成要件】
- 実績をサマリー表にまとめること(項目・実績・前年比較欄を設ける。前年比較は担当者記入欄として空欄)
- 文章部分は簡潔に
- A4で1〜2ページ
前年比較欄のような、AIが補完できない数値の部分を「担当者記入欄」として空欄にする指示を使いこなすことで、完成度の高い報告書の枠組みが素早く作れます。
うまくいかない場合の対処
問題1:報告書の文章がざっくりしすぎる
入力した情報に対して、AIが簡潔すぎる文章を出すことがあります。
対処:「各案件について、背景・現状・今後の対応を各2〜3文で説明してください」のように、各項目の詳細さを指定します。または「報告対象のそれぞれの案件を独立した段落で説明してください」と構造を指示します。
問題2:入力していない情報をAIが補完している
プロンプトに書いていない数字・案件の詳細をAIが作り上げることがあります。
対処:プロンプトに「以下の情報のみを使って報告書を作成してください。情報が不足している場合は(未記入)として空欄にしてください」と明示します。報告書では誤情報は特に致命的なため、この指示は毎回入れることをおすすめします。
問題3:法的リスクの見通しを断定的に書いてしまう
対処:「リスクの見通し・評価は担当者判断として空欄または(担当者記入)として残してください」と指示します。または「現時点では判断中」「弁護士と協議中」といった表現のみを使うよう指示します。
問題4:報告書のフォーマットが社内標準と異なる
対処:既存の報告書のフォーマット(見出し・セクション構成・表の形式)をテキスト化してプロンプトに貼り付け、「このフォーマットに従って作成してください」と指示します。フォーマットの一例を示すことで、AIの出力が社内標準に近づきます。
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法務の他の業務でのAI活用については以下の記事も参考にしてください。
よくある質問
法務の月次報告書をAIで作る場合、どのような情報を用意すればよいですか?
当月の主要案件リスト・各案件の進捗状況・解決した事項と未解決事項・翌月の予定アクションを事前に整理しておくと、AIが報告書の形式に整形する精度が上がります。数値データ(相談件数・契約審査件数など)も具体的に用意してください。
法的リスクの評価を含む報告書はAIに作らせても問題ありませんか?
リスクの評価・重大性の判断・推奨する対処方針は、法務担当者が行うべき専門判断です。AIは報告書の構成・文章の整形・情報の整理には役立ちますが、リスク評価そのものの結論はAIの出力をそのまま使わず、担当者が判断した内容を記載してください。
法務報告書の作成にAIを使うと、どれくらいの時間短縮になりますか?
月次報告書の場合、情報の整理から文章化まで1〜2時間かかっていた作業が、30〜45分程度になるケースが多く見られます。特に複数の案件を一定のフォーマットで整理する部分の効率化が大きいです。