職種別AI仕事術

法務の資料・スライドをAIで仕上げる方法

法務の資料・スライドをAIで仕上げる方法

この記事の要点

法務担当者がAIを使って社内研修・取締役会報告・コンプライアンス説明会のスライドや資料を効率化する方法を解説。構成設計からプロンプト例まで紹介します。

結論

法務担当者が作る資料・スライドは、社内コンプライアンス研修・取締役会への法的リスク報告・新入社員向けの法務説明会など、読み手のレベルに合わせた分かりやすい説明が求められます。AIを使えば、テーマを指定するだけで構成案から各スライドのテキスト初稿まで数十分で作ることができます。

ただし法令の解釈内容は必ず最新の条文と照合してください。AIは情報のカットオフ以降の改正に対応していない場合があります。


使うAIツール

法務資料・スライドの作成に向いているツールは以下のとおりです。

ツール特徴向いている場面
Claude(claude.ai)長文の構造維持・複数制約の遵守が安定スライド全体の構成設計と本文テキスト
ChatGPT(GPT-4o)テキストからPowerPoint草稿を作るプラグインがあるスライド形式での直接生成
Microsoft Copilot(PowerPoint統合)PowerPointに直接スライドを生成できるPowerPoint利用者向け
Gamma(gamma.app)プロンプトからスライドを直接デザイン込みで生成視覚的なプレゼン資料を素早く作る場合

法務資料は内容の正確性が最優先です。デザインより内容の整合性を先に確認してからスライドに落とすことをおすすめします。


手順:法務資料・スライドをAIで作成する

ステップ1 目的・対象者・ゴールを確認する

スライド作成を始める前に、次の3点を確認します。

  • このスライドの目的(研修・報告・説明・承認取得のどれか)
  • 対象者のレベル(法律の専門家か、一般社員か、経営層か)
  • このスライドを見た後に対象者に何をしてほしいか(行動変容・意思決定・認知獲得など)

対象者のレベルによって、使う用語・説明の深さ・構成が変わります。AIへの指示に必ず盛り込んでください。

ステップ2 構成案をAIに作らせる

まず全体の構成案から始めます。

以下の条件で、法務研修スライドの構成案を作成してください。

【研修テーマ】
社内のコンプライアンス研修:「業務上の秘密情報の取り扱いルール」

【対象者】
全社員(法律の専門知識はないことを前提とする)

【研修の目的】
- 秘密情報の範囲について全社員が理解する
- 社外への不適切な情報漏洩を防ぐための行動ルールを知ってもらう

【スライドの条件】
- 20〜25枚程度で完結する構成にすること
- 冒頭に「このスライドで学ぶこと」のスライドを入れること
- 末尾に「まとめ」と「Q&Aタイム」のスライドを入れること
- 各セクションは独立して理解できる構成にすること

ステップ3 各スライドのテキストを生成する

構成案を確認したら、セクションごとにテキストを生成します。

先ほどの構成案に基づいて、「秘密情報とは何か」セクション(スライド3〜6枚)のテキストを作成してください。

【要件】
- 各スライドにはタイトル・本文の箇条書き(3〜4項目)を入れる
- 法律用語を使う場合は括弧内に平易な言葉で補足する
- 具体例を1スライドにつき1つ入れる(日常業務に関連する例)
- テキストはそのままPowerPointの箇条書きとして使える形式にする

【注意】
- 秘密情報の定義は、一般的な企業における取り扱いとして説明する
- 特定の条文番号は入れず、法的な概念を平易に説明すること

ステップ4 内容の確認と図解の追加

AIが作成したテキストを確認したうえで、スライドに図や表を追加します。

  1. 法令の解説内容が現行の条文・ガイドラインと一致しているか確認する
  2. 具体例が自社の実情に合っているか確認する
  3. 必要に応じてフローチャートや図解をスライドに追加する
  4. デザインをPowerPointで整える

法務固有の活用例

活用例1:取締役会向けの法的リスク概況報告スライド

四半期ごとに法務部門から取締役会へ提出する法的リスク概況報告は、経営層が要点をすぐに把握できる構成が求められます。

以下の条件で、取締役会向けの法的リスク概況報告スライドの構成と各スライドのテキスト初稿を作成してください。

【報告内容の概要】
- 報告期間:2026年4月〜6月
- 主要なリスク事項(例として3件を想定)
  1. 進行中の契約交渉における未解決事項(NDAの条件面)
  2. 改正個人情報保護法への対応状況
  3. 新たな規制動向(経済安全保障分野)

【スライドの条件】
- 全体で10枚以内に収めること
- エグゼクティブサマリー(1枚)を冒頭に入れること
- リスクの重要度を高・中・低の3段階で表示すること(AIが判断するのではなく、欄として空欄にしておくこと)
- 次のアクション欄を各リスク項目に設けること

【文体】
- 簡潔・箇条書き中心
- 経営判断に必要な情報のみに絞る

取締役会向け資料は「判断に必要な情報が揃っているか」が重要です。リスクの重要度評価は法務担当者が行い、AIには欄だけ作らせる運用が適切です。

活用例2:新入社員向け法務オリエンテーション資料

毎年行う新入社員向けの法務説明会で使う資料は、内容が毎年大きく変わらないため一度テンプレートを作れば使い回せます。

以下の条件で、新入社員向け法務オリエンテーション資料の構成案と主要スライドのテキストを作成してください。

【説明内容】
1. 契約書を扱う際の基本ルール(法務確認が必要なケース)
2. 秘密情報の取り扱いルール
3. ハラスメント防止の基本的な考え方
4. 問題が起きたときの相談窓口

【対象者】
新入社員(法律の知識はほぼゼロを前提)

【スライドの条件】
- 全体で30枚以内
- 各トピックは独立した構成にする
- テキストは短く、視覚的に分かりやすい箇条書きにする
- 実際にありそうな場面を想定した具体例を各トピックに1つ入れる
- 「確認テスト(○×問題)」のスライドを各トピックの末尾に入れる

【注意】
- 特定の条文番号は入れない
- 法的な断定表現は避け「〜が求められます」「〜が一般的です」の表現を使う

確認テストのスライドを入れる指示をすることで、研修としての質を確保しながら内容をAIが組み立ててくれます。


うまくいかない場合の対処

問題1:法令の解説内容が古い・不正確

AIが改正前の内容で法令を解説することがあります。

対処:法令の内容に関する部分は「内容は担当者確認」として空欄にするよう指示します。あるいは「法令の具体的な内容は入れず、該当する法律名のみ記載してください」と指示して、内容は担当者が後から追記する運用にします。

問題2:専門用語が多く一般社員に伝わらない

対処:プロンプトに「法律の専門知識がない社員に向けて書いてください」と明示します。または「以下の用語を使わず、平易な言葉で書いてください」として使用禁止の専門用語を列挙します。

問題3:スライド枚数が多すぎる

AIは情報を詳細に展開する傾向があり、指定枚数を超えることがあります。

対処:「全体で〇枚以内」という制約を入れるだけでなく、「1つのスライドに箇条書き3項目以内」という細かい制約を追加します。または最初に構成案(スライドタイトルのリストのみ)を作らせてから、セクションごとにテキストを作る方法も有効です。

問題4:PowerPointに貼り付けると形式が崩れる

AIのテキストはMarkdown形式で出てくることがあり、PowerPointに直接貼り付けると記号が残ることがあります。

対処:プロンプトに「Markdown記号(#や*など)を使わず、プレーンテキストで出力してください」と指示します。または「PowerPointの箇条書きとしてそのまま使える形式で出力してください」と指示します。


関連記事

法務の他の業務でのAI活用については以下の記事も参考にしてください。

よくある質問

法務スライドのAI作成で、どの部分をAIに任せるのが効果的ですか?

スライドの構成案・各スライドの見出しと箇条書きの内容・説明テキストの初稿・表やリストの整形は、AIが得意な領域です。一方、法令の解釈の正確性・会社固有の事例への当てはめ・図表のデザインは人間が担当する部分です。

社内向けコンプライアンス研修の資料をAIで作る場合、注意することは何ですか?

AIが生成する法令の解説内容は、最新の条文・ガイドライン・行政の解釈指針と照合して確認してください。特に頻繁に改正される法令(個人情報保護法・景品表示法など)は、AIが古い情報を使う場合があります。

取締役会向けの法的リスク報告スライドをAIで作れますか?

構成案と各スライドのテキスト初稿はAIで作れます。ただし法的リスクの評価・重大性の判断・対処方針の妥当性は、法務担当者または外部弁護士が確認してから提出してください。