経営企画のデータ集計・分析をAIで行う手順
この記事の要点
経営企画担当者が売上・KPI・予算実績データをAIで集計・分析する具体的な手順を解説。Excelデータの分析依頼から経営会議向けの示唆抽出まで、プロンプト例付き。
結論
経営企画のデータ分析業務でAIを活用するとき、計算・集計はExcelに任せてAIには「数値が示す意味の解釈」と「経営への示唆の言語化」を担当させる分担が最も安定して動きます。AIをデータ集計ツールとして使うと計算誤りが混入するリスクがあります。Excelで整えた集計表をAIに見せて、そこから読み取れる傾向・異常値・経営への含意を引き出す使い方が実務にフィットします。
経営企画のデータ分析でAIが役立つ場面
経営企画が扱うデータは多岐にわたります。月次の売上・利益の実績、予算比・前年比の差異、部門別のKPI達成状況、そして四半期ごとの経営会議向けの業績サマリーが代表的です。
月次レビューで「先月の営業利益が計画対比-15%だった原因を整理して役員に報告する」ような場面では、数値はすでにExcelで出ているものの、それを「どう解釈して何を言うか」の部分に時間がかかります。AIはこの言語化・示唆抽出を高速化できます。
年度末の予算策定では、過去3〜5年の実績データを見て「来年度の予算の前提として何を置くべきか」を議論します。このとき、過去データのパターンを整理してもらい、前提条件の仮説を並べてもらう作業にAIが有効です。
使うAIツール
| ツール | 用途 | データ形式 |
|---|---|---|
| ChatGPT(GPT-4o) | Excelデータの直接分析 | Excel・CSV・テキスト |
| Claude.ai | 集計結果の解釈・示唆言語化 | CSV・テキスト(表形式) |
| ChatGPT Code Interpreter | グラフ生成・データ可視化 | Excel・CSV |
| Excel Copilot(Microsoft 365) | Excel上で直接分析・数式生成 | Excelネイティブ |
集計・計算が未完了のデータを扱う場合はChatGPTのCode Interpreter(データ分析機能)が実用的です。整理済みのデータから示唆を引き出す用途はClaudeが得意です。
手順:データを渡して分析させる
ステップ1:データをAIが読める形に準備する
AIにデータを渡す際は、データの前処理が重要です。
テキスト貼り付けの場合: Excelの集計表をコピーし、テキスト形式で貼り付けます。列ヘッダーと単位(円・万円・%など)を必ず含めてください。
ファイルアップロードの場合: ChatGPTにExcelをそのまま添付できます。シートが複数ある場合は「第1シートの集計表を使ってください」のように指定します。
注意: 社内の機密情報や個人データを含む生データをAIサービスに貼り付ける前に、自社のセキュリティポリシーを確認してください。部署名・氏名・取引先名など特定できる情報は匿名化または削除する運用が安全です。
ステップ2:分析の目的と観点を指定したプロンプトを使う
以下は月次業績レビューで使えるプロンプト例です。
以下は当社の今月の部門別業績データです(単位:百万円)。
このデータを分析して、次の内容を教えてください。
【分析してほしいこと】
1. 全社の売上・営業利益の前月比・前年比での変化(増減の傾向)
2. 計画対比で特に乖離が大きい部門とその乖離額
3. このデータから読み取れる懸念点と、注目すべきポジティブな変化
4. 役員会議で報告すべき「今月の業績のポイント」を3点(箇条書き)
数値は計算せず、私が貼り付けた数値をそのまま参照して解釈してください。
推測を含む場合は「〜と考えられる」と明記してください。
【データ】
(Excelのテーブルをここに貼り付け)
「数値は計算せず」という指示を入れることで、AIが計算ミスをして誤った数値を出力するリスクを回避できます。
ステップ3:差異の要因仮説を引き出す
業績の差異分析で、数値は出ているものの「なぜか」の説明に困る場面があります。
先月の営業利益が計画対比-23百万円(-8%)でした。
当社の事業構造(○○事業中心、固定費比率が高い)を踏まえて、
この乖離の要因として考えられる仮説を3〜5個挙げてください。
各仮説について:
- 仮説の内容(1〜2文)
- この仮説が正しいか確認するために見るべき数値・指標
- もし仮説が正しい場合の対策の方向性
あくまで仮説であることを明示したうえで記載してください。
このプロンプトは、役員から「原因は何か?」と聞かれたときの論点整理として機能します。出てきた仮説を実際のデータで検証する作業は人間が行います。
予算策定でのデータ分析活用
過去実績からのトレンド抽出
来年度予算の前提を作る際、過去3〜5年の実績データを整理してパターンを読み取る作業があります。
以下は過去5年間の四半期別売上データです。
このデータから次を分析してください。
1. 年間成長率のトレンド(単純平均と直近2年の傾向の違い)
2. 季節性パターン(Q1〜Q4のどの四半期が高い・低いか、その傾向の強さ)
3. 上記のトレンドを来年度予算策定の前提として使う場合、どのような仮定が妥当か(3〜4案)
各案について「保守的」「中立」「積極的」のどれかに分類し、前提条件を明示してください。
【データ】
(5年分の四半期データを貼り付け)
予算前提の仮定を複数案並べてもらうことで、役員会議での議論の叩き台を素早く作れます。
予算実績管理の月次フォーマット化
毎月同じ形式で分析する場合は、テンプレートプロンプトをドキュメントに保存しておき、データだけ差し替えて使います。ChatGPTのカスタム指示やClaudeのプロジェクト機能を活用するとさらに効率化できます。
KPIデータの異常値検知と要因仮説
KPI管理では「数値が突然動いた」場面で素早く仮説を立てる必要があります。
以下はKPIのデータです。
先月から今月にかけて大きな変化が見られる指標を特定し、
その変化が「一時的なノイズ」か「継続的なトレンドの変化」かを
データから判断してください(判断の根拠も示してください)。
また、変化が見られた指標について、考えられる原因の仮説を
「内部要因(自社の活動・施策)」と「外部要因(市場・競合・季節)」に分けて整理してください。
【KPIデータ(直近6ヶ月)】
(データを貼り付け)
KPIの設計段階からAIを活用する方法については経営企画のKPI策定にAIを使う方法を参考にしてください。
うまくいかない場合のポイント
AIが計算した数値が元データと合わない: 「計算はしないで、貼り付けたデータの数値をそのまま使ってください」と明示します。AIは集計・計算を行うと誤りが出やすいため、数値処理はExcelに任せることが原則です。
分析が表面的で示唆が薄い: 「この分析を受けて経営として何をすべきか、具体的なアクション候補を挙げてください」と続けて聞きます。また、会社の事業構造や業界の特性をプロンプトに書き添えると、より的確な示唆が得られます。
データが大きすぎてうまく処理されない: 月次の詳細データではなく、集計済みの小計・合計行だけを貼り付けて分析させます。AIへの入力は「経営判断に直結する集計レベル」に絞るのが実用的です。
毎月同じ分析を繰り返している: プロンプトをMarkdownドキュメントとして保存し、データ部分だけ差し替えて使う習慣をつけると月次作業が定型化できます。
データ分析の結果を経営会議の資料に落とし込む手順は経営会議資料をAIで作成する方法で詳しく扱っています。また、Excelでの集計作業自体をAIで効率化する方法については経営企画のExcel作業をAIで自動化する方法を参照してください。
よくある質問
ExcelのデータをAIに読み込ませるにはどうすればよいか?
ChatGPT(GPT-4o)はExcelファイルを直接アップロードできます。Claude.aiはCSV形式に変換してからテキスト貼り付けが確実です。大量データはサマリー行や集計済みの表だけを貼る方法が実用的です。
AIにデータ分析させると数値が間違うことがある。なぜか?
AIはExcelの数式エンジンではないため、複雑な集計を依頼すると計算誤りが発生することがあります。集計・計算はExcel側で済ませ、AIには「この数値が持つ意味の解釈」と「経営への示唆」を求める分担が安全です。
予算と実績の差異分析をAIで行えるか?
差異の数値計算はExcelで行い、その結果をAIに渡して「差異の要因仮説と対応策」を考えさせる方法が効果的です。数値自体の正誤よりも、意味の解釈と示唆の言語化がAIの得意な役割です。