職種別AI仕事術

人事のデータ集計・分析をAIで行う手順

人事のデータ集計・分析をAIで行う手順

この記事の要点

採用数・離職率・研修受講率・残業時間など人事データの集計と分析をAIで行う手順を解説。ExcelデータをAIに渡す方法から、経営報告に使えるインサイト抽出まで具体的に説明する。

結論:集計・グラフ化の作業をなくし、分析と判断に集中できる

人事部門が四半期ごとに行う採用進捗レポートや、年次の離職率分析は、Excelで部署別・職種別・雇用形態別にデータを並べ替えて集計するだけで1〜2時間かかることがある。グラフを作り直す作業も含めると半日かかることもある。

ChatGPTのデータ分析機能やClaudeにExcelデータを渡すと、「部署別の離職率を高い順に並べて、全社平均との差分も出して」という指示を自然言語で出せる。集計・計算・グラフ化の作業をAIに任せ、人事担当者は「なぜその部署の離職率が高いのか」という分析と対策の検討に時間を使える。

使うAIツール

人事データの集計・分析には、以下の2つが実用的だ。

ChatGPT(データ分析機能) ExcelやCSVファイルをアップロードすると、集計・グラフ作成・統計分析を自然言語で指示できる。コードを書かずに操作できる点が特徴で、ファイルを渡した後は「部署別の平均残業時間を棒グラフで見せて」のような指示で動く。

Claude(ファイルアップロード機能) 同様にExcel・CSVを読み込み、集計や分析ができる。複雑な条件の集計や、データから洞察を引き出す質問に向いている。

Microsoft Copilot Microsoft 365に統合されており、Excelを開いたまま使えるため、社内データを社外に出さずに処理できる。個人情報を含むデータには特にこちらが適している。Microsoft 365の契約が必要だ。

手順:人事データをAIで分析する流れ

ステップ1:データの準備と個人情報の処理

分析に使うデータを準備する前に、個人情報が含まれているかを確認する。

社外AIに渡せるデータ(集計値・匿名化済みのデータ)

  • 部署別・職種別の集計値(平均残業時間、離職率など)
  • 採用数の月別推移
  • 研修受講率・テスト平均点(部署単位)

社外AIに渡す前に処理が必要なデータ

  • 氏名・社員番号が含まれる個人レベルのデータ → 削除または仮IDに置き換える
  • 給与・評価の個人データ → 集計値に加工してから渡す

個人情報を含む場合は、Microsoft CopilotやAzure OpenAIなど自社環境内のAIを使うか、データを集計値に変換してから社外AIに渡す。

ステップ2:データをAIに渡す

匿名化・集計済みのデータはCSVまたはExcel形式でアップロードする。テーブルが小さい場合はコピーして直接貼り付けてもよい。

貼り付けの例:

以下の人事データを分析してください。

部署, 2025年度離職者数, 2025年度在籍者数, 離職率(%)
営業部, 8, 45, 17.8
開発部, 3, 38, 7.9
管理部, 1, 22, 4.5
製造部, 12, 80, 15.0
全社計, 24, 185, 13.0

ステップ3:目的別の分析指示を出す

データを渡したら、分析の目的を明示してプロンプトを送る。以下はそのままコピペして使えるプロンプト例だ。

採用進捗の定例レポート用プロンプト

アップロードしたExcelデータを使って、以下の集計を行ってください。

1. 月別の応募数・面接通過数・内定承諾数の推移(表形式)
2. 職種別の選考通過率(応募→内定承諾の歩留まり)
3. 採用チャネル別(媒体名別)の内定承諾率と採用単価の比較
4. 前年同期との比較(増減と変化率)

グラフは月別推移の折れ線グラフを1枚作成してください。
数値が存在しない場合は「データなし」と表示し、推測値は入れないでください。

離職分析プロンプト

以下の観点で離職データを分析してください。

1. 部署別・職種別の離職率(高い順に並べる)
2. 勤続年数別の離職分布(1年未満/1〜3年/3〜5年/5年以上)
3. 離職者と在籍者の比較で、特徴的な差異があるデータ項目
4. 離職率が特に高い部署・属性の特定と、データから読み取れる傾向

注意:因果関係は断定せず、データから読み取れる相関として記述してください。
「〜が原因で離職した」という表現は使わないでください。

ステップ4:出力の確認と解釈

AIが出した集計値は、元データと照合して数値の整合性を確認する。特に合計値・平均値・パーセンテージは計算ミスがないか確認する。

分析の解釈はAIの出力をそのまま使わず、自分で判断する。AIは「営業部の離職率が17.8%で全社平均より高い」という事実は示せるが、「なぜ高いか」はデータ外の文脈(組織の状況・マネージャーの変更・業務量の変化)を知らなければ判断できない。

人事業務での具体的な使い場面

場面1:四半期の採用報告資料作成

採用管理システムからエクスポートしたCSVを使って、「今期の採用チャネル別コスト効率レポート」を作る場面がある。各媒体の広告費・応募数・内定承諾数をまとめたCSVをChatGPTにアップロードして以下を指示する。

「媒体別の採用単価(費用÷内定承諾数)を計算し、採用単価が低い順に並べてください。次に、採用単価と内定承諾率の散布図を作成してください。」

この作業はExcelでピボットテーブルを作り、グラフを整えると30〜60分かかる。AIを使うと指示から5分以内で下書きが出る。最終的な数値確認と資料整形は人間が行う。

場面2:残業時間の傾向分析と報告

労務担当者が月次で行う残業時間レポートでは、部署別の平均残業時間・上位5名の特定・36協定の限度時間超過者のリストアップなどを行う。

個人情報を含む勤怠データは社外AIに渡せないため、Microsoft CopilotなどOffice統合型のAIを使うか、社員番号を仮IDに置き換えた匿名データで処理する。

以下の条件でデータを集計してください。

1. 部署別の月間平均残業時間(降順)
2. 残業時間が45時間を超えたID数と、各部署における割合
3. 過去3ヶ月の残業時間推移が増加傾向にあるID
4. 集計結果から見える傾向を3点でまとめてください(相関の指摘のみ、因果断定なし)

残業データの分析結果は、労務管理の見直しや管理職向け研修の設計に直結する。分析の設計から活用まで一連の流れとして取り組む場合は人事の研修準備をAIで効率化する方法も参照してほしい。

うまくいかない場合のポイント

集計値がおかしい

AIはデータの欠損や形式の不整合(全角数字・スペースの混在など)があると、計算結果が正しくならないことがある。元データの形式を整えてから渡す。CSVのヘッダー行が日本語の場合も、英語かアルファベットに変更すると処理が安定しやすい。

グラフが見づらい・目的に合わない

「折れ線グラフで月別推移を見たい」「棒グラフで部署比較をしたい」のように、グラフの種類と見たい比較軸を明示する。出力されたグラフに修正が必要なら「x軸の間隔を月単位にして、凡例を右に移動してください」と追加指示を送れる。

分析の粒度が粗い

「傾向を分析して」だけだと概括的な回答になる。「離職率が15%を超えている部署に絞り、勤続3年未満の離職者の割合を全社と比較してください」のように、比較軸・絞り込み条件・比較対象を具体的に指定する。

データ量が多すぎてAIが処理できない

数千行以上のデータは、まずExcel側でフィルタリング・集計してからAIに渡す。分析の目的に必要な列だけを残し、不要な列を削除してからアップロードする。

採用データの活用から求人票作成への流れについては人事の求人票作成をAIで効率化する方法を確認してほしい。

人事データ分析の主な用途と指示の型

用途データの種類AIへの指示の型
採用進捗レポート応募〜内定データ月別推移・媒体別比較・歩留まり計算
離職分析離職者属性・部署・勤続年数率の算出・属性別集計・傾向の抽出
残業時間管理月次勤怠データ上限超過者の特定・部署比較・推移
研修受講率受講記録・部署・雇用形態受講率の算出・未受講者の抽出
評価分布分析評価結果・部署・評価者分布の確認・偏りの検出

データ分析を継続的に使いこなすために

AIによるデータ分析を継続的に活用するには、使うプロンプトのひな形を保存しておくことが重要だ。毎月同じレポートを作る場合は、最初に動いたプロンプトをそのままドキュメントに記録し、次回はデータだけ差し替えて使う。

プロンプトのひな形化によって、担当者が変わっても同じ品質の集計・分析ができる。レポート作成の手順書にプロンプトを組み込むと、引継ぎコストも下がる。

評価コメントの作成など定性的な人事業務でのAI活用については人事の評価コメント作成をAIで効率化する方法も参照してほしい。

分析結果を報告書に変える

集計・分析が終わったら、経営層や現場向けの報告書に変換する作業がある。AIはデータ分析だけでなく、分析結果の文章化も得意だ。

以下の人事データ分析結果をもとに、経営会議向けの人事報告書(概要セクション)を作成してください。

分析結果:
[AIが出力した分析内容をそのまま貼り付ける]

報告書の要件:
- A4 1枚以内
- 経営者が意思決定できる粒度で
- 現状の数値、前年比較、注目すべき変化の3点を含める
- 「〜と考えられる」「〜の可能性がある」などの断定でない表現を使う
- 推奨アクションを1〜2点で締める

データ分析→報告書下書きまでをAIで処理すると、集計から報告書完成までの時間が大幅に短縮できる。

定期レポートの半自動化

四半期ごと・月次で繰り返すレポートは、プロンプトを固定して半自動化できる。

手順は以下の通りだ。

  1. 初回のレポートをAIで作成するとき、使ったプロンプトを保存する
  2. 次回から「前回と同じフォーマットで、今期のデータに差し替えて作成してください」と指示する
  3. 数値の変化に対する解釈コメントだけを人間が加える

この仕組みを作ると、毎月の採用進捗レポートや離職率モニタリングの資料作成が30〜60分から10〜15分に短縮できる。特に定例の管理会議に提出する資料は、フォーマットが固定されているため半自動化の効果が大きい。

データ分析における注意点と限界

AIを使ったデータ分析は便利だが、以下の限界を理解して使う必要がある。

相関と因果の混同に注意する

「残業が多い部署の離職率が高い」という相関関係はデータから示せる。しかし「残業が原因で離職した」という因果関係は、データだけからは言えない。他の要因(マネージャーの変更、業務内容の変化、競合他社の採用活動)が影響している可能性がある。AIはこの区別を曖昧にして断言することがあるため、プロンプトに「因果関係は断定しないで、相関として記述してください」と明示する。

サンプルサイズの小さいデータに注意する

部署の人数が5〜10名の場合、離職者が1〜2名でも離職率が10〜20%になる。AIはこのデータを他の部署と並べて「この部署の離職率が特に高い」と分析するが、統計的に意味のある差かどうかは別の問題だ。人数が少ないデータの解釈は慎重に行う。

データの定義を統一する

「離職者」の定義が自己都合退職のみか定年・契約満了を含むかで、数値の意味が変わる。データをAIに渡す前に、各列の定義を整理しておく。

Excelを使ったデータ整形の自動化については人事のExcel作業をAIで自動化する方法も参照してほしい。

よくある質問

個人情報を含む人事データをAIに渡してよいですか?

氏名・社員番号・給与などの個人情報を含むデータは、社外のAIサービスに直接入力することは原則避けるべきだ。匿名化・集計値に加工してから渡すか、Microsoft CopilotなどOffice統合型のAIを使う。

AIによる人事データ分析で気をつけることは何ですか?

AIは相関関係と因果関係を混同した分析を出力することがある。「残業が多い部署の離職率が高い」という相関はAIが示せるが、「残業が原因で離職している」という因果はデータだけでは言えない。解釈は人間が判断する。

Excelの人事データをAIで分析するにはどうすればよいですか?

ChatGPTのデータ分析機能またはClaudeにExcelファイルをアップロードするか、Excelデータをコピーして貼り付ける。集計・グラフ化・統計量の算出が自然言語で指示できる。

AIで人事データを分析するメリットは何ですか?

ピボットテーブルやVLOOKUPを使いこなさなくても、「部署別の平均残業時間を高い順に並べて」のように自然言語で指示できる。集計方法を考える時間が減り、気づきの確認や仮説検証に時間を使いやすくなる。