広報のデータ集計・分析をAIで行う手順
この記事の要点
広報担当がメディア掲載件数・SNSエンゲージメント・アンケート結果などのデータ集計・分析をAIで行う具体的な手順を解説。プロンプト例と注意点も紹介。
結論
広報担当がメディア掲載件数の集計、アンケート自由回答の傾向分析、SNS反応の要約といったデータ集計・分析作業をAIに渡すと、分類・整理・言語化の作業が大幅に速くなります。月次の広報レポート作成に3時間かかっていた作業が1時間前後に変わるケースがあります。ただしAIは数値計算で誤りを出すことがあるため、集計はExcelで行い、AIは分類・要約・文章化に特化させる役割分担が安定します。
広報のデータ作業がどう変わるか
広報部門には定期的にデータを集計・報告する業務があります。月次のメディア掲載レポート、イベント後のアンケート集計、SNSのエンゲージメント報告、プレスリリース反応の集計などです。
これらの作業で時間がかかるのは、数値の計算よりも「分類・整理・文章化」の部分です。100件の掲載記事を媒体種別に分けてトーンを評価する、アンケートの自由回答200件から傾向を読み取る、数字の羅列をレポートの文章として書き直す。この作業こそAIが得意とするところです。
AIには「分類・要約・言語化」を任せ、「数値の計算・検証」は人間またはExcelで行う、という組み合わせが実務上もっとも安定します。
使うツール
| ツール | 主な用途 |
|---|---|
| Excel / Googleスプレッドシート | 数値計算・集計・グラフ作成 |
| Claude / ChatGPT | 分類・要約・文章化・傾向読み取り |
| Googleフォーム / アンケートツール | 回答データのエクスポート |
AIへのデータ渡し方は「CSV貼り付け」か「ファイルアップロード」が基本です。社内の情報管理ポリシーを確認してから使ってください。個人情報を含むデータは特に注意が必要です。
手順:メディア掲載件数レポートを作る
広報が月次で作成するメディア掲載レポートを例に、AIを組み込んだ手順を説明します。
ステップ1:データをCSV形式にまとめる
掲載実績を以下のような形式にまとめます。
掲載日,媒体名,媒体種別,記事タイトル,トーン,扱い
2026-05-12,○○新聞,全国紙,「△△社が新サービス発表」,ポジティブ,大
2026-05-14,□□ウェブメディア,Web媒体,「△△社のサービス比較」,中立,中
2026-05-18,地域△△紙,地方紙,「地元企業△△社が〜」,ポジティブ,小
件数が多い場合は、トーン・扱いの評価だけAIに任せる方法があります(後述)。
ステップ2:AIで分類・傾向を分析する
以下は今月のメディア掲載実績のデータです。
このデータを分析して、月次広報レポート用の「メディア動向サマリー」を作成してください。
【出力してほしい内容】
1. 掲載件数の内訳(媒体種別別)
2. トーン別の傾向(ポジティブ・中立・ネガティブの比率と特徴)
3. 特に注目すべき掲載(理由付きで2〜3件)
4. 前月と比較したコメント(前月データは別途記載します)
5. 来月に向けた示唆(1〜2文)
【注意】
- 掲載件数の合計はデータから正確にカウントしてください
- 「好調」「好調推移」などの評価語は使わず、事実と数値で書く
- 不確かな部分は「要確認」と書く
---データ---
(CSVテキストを貼る)
ステップ3:数値を必ず手動で確認する
AIが出した掲載件数・比率の数値は、必ずExcelのカウント関数で照合します。AIは集計作業で桁数や計算を誤ることがあります。文章の表現は参考にしつつ、数値は自分で確認したものを使います。
ステップ4:レポート文章を完成させる
数値を確認・修正した後、文章部分を整えます。AIが生成した文章に定型句(「〜となっています」「〜が見受けられます」)が多い場合は、具体的な数値と事実に置き換えます。
手順:アンケートの自由回答を整理する
イベント後や社内向け施策後のアンケートで、自由回答欄をまとめる作業もAIが有効です。200件の自由回答を読んで傾向をまとめる作業は、人間がやると2時間かかることがあります。
プロンプト例
以下はイベント参加者へのアンケート自由回答(200件)です。
これを分析して報告書用のサマリーを作成してください。
【分析してほしい観点】
1. 肯定的な意見の主な内容(上位3〜5テーマ)
2. 改善要望・課題として挙がった内容(上位3〜5テーマ)
3. 特に複数の回答者が同じことを書いていた内容
4. 今後の施策の参考になる意見(2〜3件、引用付き)
【出力形式】
- 各テーマは「テーマ名:回答数件」の形式で書く
- 代表的な回答を1〜2件引用する(改変せず原文のまま)
- 数値はデータから正確にカウントする(不確かな場合は「約〜件」と書く)
【注意】個人を特定できる情報は出力に含めないこと
---自由回答データ---
(回答テキストを貼る)
件数のカウントはAIが誤ることがあるため、「約〜件」の形で書かせておき、後で確認する方法が現実的です。
手順:SNS反応のサマリーを作る
プレスリリースやキャンペーン後のSNS反応を月次レポートに含める場面があります。反応の件数や投稿内容の傾向を整理する作業です。
以下は今月のSNS反応データです。
広報月次レポート用に「SNS反応サマリー」を作成してください。
【データの内容】
- プラットフォーム:X(旧Twitter)
- 対象期間:2026年5月1日〜31日
- 収集対象:自社公式アカウントへの言及・リポスト
【出力してほしい内容】
1. 反応件数の概要(リポスト・返信・いいね)
2. ポジティブ・ネガティブ・中立の大まかな内訳
3. 目立ったテーマや話題(3〜5点)
4. 特に反応が多かった投稿(1〜2件)
【注意】数値は入力データをもとにカウントする。推測が入る部分は「〜と推定される」と書く
---SNSデータ---
(データを貼る)
SNS分析ツールが別にある場合は、そちらで数値を出してからAIに「この数値の意味と傾向を説明してください」と渡す方法もあります。
月次広報レポートの文章を一括で生成する
数値・データが揃ったあと、レポートの文章を書く作業をAIに任せることもできます。
以下の広報データをもとに、経営会議向けの月次広報レポートの本文を作成してください。
【読者】経営層(詳細な数値より全体像と示唆を重視)
【分量】A4で1ページ相当(600〜800字)
【構成】1)今月の主な広報活動、2)メディア掲載状況、3)SNS反応、4)来月の重点事項
【文体】です・ます体。事実と数値で語り、評価語は使わない
---今月のデータ---
メディア掲載件数:XX件(うち全国紙XX件、Web媒体XX件、地方紙XX件)
トーン別:ポジティブXX件、中立XX件、ネガティブX件
主なトピック:(箇条書きで記入)
SNS反応:(数値を記入)
来月の予定:(箇条書きで記入)
このプロンプトのポイントは、数値と事実を先に確認してから渡すことです。AIに数値の計算と文章化の両方を任せると、数値が誤ったまま文章ができてしまいます。
うまくいかない場合のポイント
AIが数値を間違える
集計作業でAIは思ったより頼りにならないことがあります。「20件中15件がポジティブ」と出力したものが実際には12件だった、というようなミスが起きます。数値の計算はExcelで独立して行い、AIには文章化と傾向読み取りだけを任せる分担が安全です。
自由回答の件数カウントが不正確
テキスト形式で貼り付けた自由回答を件数としてカウントする作業はAIが苦手です。「○○というテーマが複数人から挙がっていた」という定性的な判断には使えますが、「8件がこれを挙げた」という件数は誤る可能性があります。件数は実際に確認する前提で使います。
レポートの文章が評価語だらけになる
「好調でした」「高い反応が得られました」のような評価語が多い文章になりがちです。「評価語を使わず、数値と事実で書く」を指示に入れることと、生成後に評価語を事実に置き換える編集を行います。
社内報の文章生成については広報がAIで社内報を作る方法で関連する手順を解説しています。
データ分析結果の活用
分析が完成したデータは、次の広報活動の改善に使えます。
- どの媒体が最も反応が大きかったか
- どの発信テーマが記者に届きやすいか
- アンケートで繰り返し出てくる改善要望
これらを次のプレスリリースや発表準備に反映する具体的な手順については広報がAIでプレスリリースを作る手順を参照してください。
まとめにかえて
広報のデータ集計・分析でAIを使うときは、「数値の計算はExcel、分類・要約・文章化はAI」という役割分担が実務上安定します。AIの出力は必ず元データで確認し、数値は特に慎重に照合する習慣をつけると、レポートの品質が保てます。
よくある質問
広報のデータ分析でAIは何に使えますか?
メディア掲載件数の集計・分類、アンケートの自由回答の傾向整理、SNS反応の要約、月次レポートの文章生成に使えます。数値計算よりも「分類・要約・言語化」が得意です。
ExcelやスプレッドシートのデータをAIに渡せますか?
CSV形式に変換してテキストとして貼り付けるか、有料プランのファイルアップロード機能を使えば渡せます。個人情報や機密情報を含む場合は社内のデータ利用ポリシーを確認してください。
AIの集計結果は信頼できますか?
分類や傾向把握には使えますが、数値計算は誤りが出ることがあります。AIが出した数値は必ず元データと照合してください。計算そのものはExcelや専用ツールに任せるのが確実です。
社内のデータをAIに入力してよいですか?
個人情報・取引先情報・機密性の高い情報は、社内のAI利用ポリシーを確認してから入力してください。分析の目的・対象・ツールの選定について、情報管理担当部署に事前確認するのが望ましいです。