社内報をAIで作る方法
この記事の要点
社内報の企画から原稿作成まで、AIを使えば1記事あたりの制作時間が2〜3時間から45分程度に短縮される。インタビュー記事・制度紹介・事業報告など形式別のプロンプトと確認ポイントを解説する。
結論
社内報の制作でAIを使うと、インタビュー記事・制度紹介・事業報告の原稿作成が1記事あたり45分程度で完成します。従来は取材後のテキスト整理だけで1時間、原稿執筆に1〜2時間かかっていた作業が、AIで初稿を出して人間が手を加える流れに変わります。
社内報でAIが効く3種類の記事
社内報に載る記事は大きく3種類です。それぞれAIの使い方が違います。
1. インタビュー記事
社員・管理職・役員への取材内容をもとにした記事です。文字起こしまたはメモから読める原稿に変換する工程にAIが最も効きます。インタビュー後のテキスト整形と原稿化の2工程を合わせて処理できます。
2. 制度紹介・お知らせ記事
新しい福利厚生・人事制度・社内ルール変更を社員に伝える記事です。人事・総務から受け取った制度概要の文書を「社員が読んで使える形」に変換する作業にAIが向いています。
3. 事業報告・成果共有記事
四半期の業績報告や新規事業の進捗を社員に共有する記事です。事業担当から受け取った数字・実績をもとに読みやすい記事にする変換がAIで素早くできます。
使うAIツール
**ChatGPT(GPT-4o)またはClaude(claude-sonnet系)**が向いています。どちらも文体の変換と構成指定に対応しています。
注意点として、社内報に載る人物の氏名・部署・役職・発言内容はその社員の個人情報です。AIサービスへの入力前に、社内の個人情報管理ルールと、使用するAIサービスの利用規約を確認してください。
入力を最小限にする方法として、固有名詞を仮名に置き換えてAIで原稿の構成と文体だけを作り、出力後に本名・実際の発言内容を手作業で書き戻す方法が実務では使われています。
手順:インタビュー記事をAIで作る
ステップ1 インタビューメモを整理する
録音・ノート・文字起こしから、記事に使う情報を箇条書きにします。この段階で「記事のメインメッセージは何か」を決めておきます。
- この人物の役割・経歴の概要
- 記事で伝えたいメインメッセージ(1〜2点)
- 裏付けになる具体的なエピソード(仕事での経験・転機・数字)
- この人らしい言い回し・口癖(あれば)
メインメッセージを事前に決めないと、AIが汎用的なまとめになりやすくなります。
ステップ2 プロンプトを書いてAIに渡す
以下は営業部門の中途入社3年目社員へのインタビュー記事を作るプロンプト例です。
【役割】
あなたは社内報の編集者です。
【依頼】
以下の情報をもとに、社内報のインタビュー記事の原稿を作成してください。
【記事の概要】
- 登場人物:営業部・田中さん(中途入社3年目、前職は小売業)
- メインメッセージ:前職との違いを乗り越えて、チームで目標を達成した経験
- 読者:全社員(特に入社1〜3年目の社員にも届けたい)
【インタビューで出たエピソード・発言メモ】
- 入社直後は業界用語がわからず、会議で発言できなかった
- 先輩の佐藤さんに毎週1時間質問する時間をもらった(3か月続けた)
- 前期Q4で担当チームが四半期目標を初めて達成した
- 「数字より先に、お客様の状況を聞く習慣が身についた」という言葉があった
- 今は後輩の指導役も任されている
【構成条件】
- リード文(100字以内)
- 「入社直後の壁」「転機になったこと」「今の仕事観」の3見出し
- 各見出しに300〜400字
- 発言の引用を最低2箇所入れる
- 全体で1,000〜1,200字
【文体】
- 敬体(です・ます)
- 社内報らしい親しみやすい文体
- 「田中さんは語る。」のような地の文を入れる
ステップ3 出力を確認・修正する
出力したテキストを次の観点で確認します。
- エピソードが具体的に書かれているか(「大変でした」より「3か月毎週1時間」のような具体が入っているか)
- 発言の引用が元のメモと一致しているか
- その人らしさが出ているか
- 読んだ社員が共感または参考にできる内容か
確認後、取材対象者(本人)に原稿を送り、事実確認と発言内容の確認を取ります。社内報でも、掲載前に本人確認を取る運用が一般的です。
手順:制度紹介記事をAIで作る
ステップ1 人事・総務からの制度概要を受け取る
人事や総務が作った制度説明の文書(規程・FAQシート・PowerPointなど)を受け取ります。これをAIへの素材として使います。
ステップ2 プロンプトを書く
【役割】
あなたは社内広報担当者です。
【依頼】
以下の制度概要を、社内報の「新制度のご案内」記事として書き直してください。
【元の制度概要】
(ここに人事・総務から受け取った制度説明を貼り付ける)
【条件】
- 読者は制度の詳細を知らない一般社員
- 「何が変わるか」「自分にどう関係するか」「いつから」を最初の段落で答える
- 専門用語は普通の言葉で説明する(括弧での補足は使わない)
- Q&A形式で3〜4問の質問コーナーを末尾に入れる
- 全体で600〜800字
制度紹介記事は「使える情報」が最重要です。社員が読んだ後に「自分には何が変わるのか」が分かる構成になっているか確認します。
手順:事業報告記事をAIで作る
ステップ1 事業担当からデータを受け取る
売上・達成率・KPIなどの数字と、事業担当者から受け取ったコメントを整理します。
ステップ2 プロンプトを書く
【役割】
あなたは社内報の編集者です。
【依頼】
以下の業績データと担当者コメントを、社内向けの事業報告記事にまとめてください。
【データ】
- 対象期間:2026年4月〜6月(Q1)
- 新規顧客獲得数:34社(前期比+12社)
- 売上:4億2,000万円(期初計画比 102%)
- 特記事項:医療業界からの新規獲得が初めて10社を超えた
【担当者コメント(事業部長)】
「医療業界への参入は2年前から準備してきた。今期ようやく形になった。来期はサポート体制を強化して契約継続率を上げることが課題。」
【条件】
- 見出しは「〇〇部門 Q1業績報告」
- 数字の背景と意味を平易に解説する
- 課題も含めて正直に書く
- 800字以内
事業報告記事では数字の正確さが命です。出力後に元のデータと全ての数字を照合します。
広報固有の2つの注意点
注意点1:個人のエピソードと個人情報の扱い
インタビュー記事には、社員の職歴・業務経験・家族構成などのエピソードが含まれることがあります。これらはその社員の個人情報です。AIに入力する場合は最小限の情報に絞り、社内のプライバシーポリシーに沿った運用をしてください。
また、掲載前に本人の確認を取ることが重要です。AIの整形で意味が変わることがあるため、発言の引用部分は特に本人が確認した版を使います。
注意点2:全社員が読むというプレッシャーへの対応
社内報は社員全員が目にするため、担当者が過度に慎重になり、当たり障りのない文章になりがちです。AIを使うと、担当者の感情的な「遠慮」が入りにくく、情報が率直に書かれる傾向があります。これは良い効果です。
一方で、AIが出した文章が「事実として正しいが、文脈的に不適切」な場合があります。たとえば、業績が厳しかった時期の事業報告でAIが「大幅な成長が期待される」のような前向き表現を無理に入れることがあります。文脈に合わない楽観的表現は、社員の信頼を損ないます。出力後にこうした表現を確認して取り除きます。
うまくいかない場合のポイント
インタビュー記事が平板になる
エピソードが少ないか、AIが汎用的なまとめにしている場合です。「〇〇という具体的なエピソードを中心に書く」と指示を絞ります。また「この発言を必ず引用として入れる」と発言を指定すると、固有感が出やすくなります。
制度紹介が読みにくい
制度説明の原文がそのまま出ている場合です。プロンプトに「元の文書の言葉をそのまま使わず、自分の言葉で書き直す」と加えます。
数字の解釈が出てしまう
事業報告で「このデータは〇〇を意味している」という解釈が出ることがあります。解釈が誤っている場合もあるため、「数字はそのまま書き、解釈は担当者コメントの範囲内にとどめる」と指示します。
他の広報業務との連携
インタビュー前の準備には取材対応の準備をAIで行う方法で解説しているプロンプト構成が参考になります。取材後の文字起こし整形は広報の文字起こしをAIで整形する方法で詳しく解説しています。
危機発生後に社内報で経緯を共有する場合は、危機対応文をAIで作る方法の手順も参考にしてください。
社内報作成の汎用テンプレート
【役割】
あなたは社内報の編集者です。
【依頼】
以下の情報をもとに、社内報の〔インタビュー記事/制度紹介記事/事業報告記事〕を作成してください。
【記事の種類】
〔インタビュー記事の場合〕
- 登場人物と役割:
- メインメッセージ:
- 使うエピソード:
- この人らしい言い回し(あれば):
〔制度紹介の場合〕
- 制度概要:(ここに貼り付ける)
- 読者に伝えたい最重要ポイント:
〔事業報告の場合〕
- 数字・データ:
- 担当者コメント:
- 特記すべき背景:
【共通条件】
- 読者:全社員(特に〔ターゲット層〕)
- 文体:敬体(です・ます)、親しみやすい社内向けの文体
- 文字数:〔字数〕以内
- 構成:〔見出し・構成案〕
このテンプレートを社内報の号ごとにカスタマイズし、チームで共有しておくと毎号の立ち上がりが速くなります。特集テーマが変わっても、変わる部分だけを書き換えれば使い回せます。
社内報は「どう書くか」より「何を伝えるか」の判断が難しい媒体です。AIで書く工数を減らした分を、「誰のどのエピソードが社員に刺さるか」の企画と編集判断に使うのが、AIを活用した社内報制作の実質的な変化です。
よくある質問
社内報の原稿作成にAIを使っても、読者(社員)に分かりますか?
プロンプトに登場人物の口調・具体的なエピソード・部署固有の言葉を入れると、汎用的な文体になりにくいです。AIの出力をそのまま使うのではなく、人間が読んで「その人らしさ」を加える工程を残すと品質が保てます。
社内の人事情報や個人の発言をAIに入力してもいいですか?
社内規定で禁止されている場合は入力できません。入力する場合も、個人の氏名・部署・年収・病歴などの個人情報は最小限にし、社外には出ない情報を扱うAIサービスの契約内容を確認してください。
毎月発行しているのですが、継続して使えますか?
毎号共通のプロンプトのひな型を作っておけば、情報を差し替えるだけで翌月も使えます。特集テーマ・インタビュー対象者・制度変更の内容など、変わる部分だけを書き換える形で効率的に継続できます。
社内報の企画出しにもAIは使えますか?
特集テーマのアイデア出しにも使えます。「今期の全社方針・時節・社員が関心を持ちそなテーマ」をプロンプトに書いて候補を出してもらい、編集会議の素材にする使い方が向いています。