職種別AI仕事術

取材対応の準備をAIで行う方法

取材対応の準備をAIで行う方法

この記事の要点

記者からの取材申し込みを受けてから当日対応まで、想定質問の洗い出しと回答の下書き作成をAIで行うと準備時間が大幅に短縮される。広報担当者が実際に使えるプロンプトと確認ポイントを解説する。

結論

記者から取材申し込みが来てから当日対応まで、AIを使えば想定質問の洗い出しと回答ドラフトの準備が2〜3時間から30分以内に縮まります。準備の質も上がります。「どんな角度から質問が来るか」の網羅が速くなるため、答えにくい質問を事前に把握しやすくなります。

取材準備でAIが効く3つの作業

取材対応の準備作業は大きく3つに分けられます。AIはそれぞれで使い方が違います。

1. 想定質問の洗い出し

記事の内容・媒体の傾向・取材の文脈から、記者が聞いてきそうな質問を列挙します。1人で考えると視点が偏りますが、AIに条件を渡せば批判的な角度・数字の詳細・競合比較など多様な視点から質問を出してきます。

2. 回答の下書き

会社として答えるべき内容が決まっているテーマ(業績・製品の仕様・戦略方針)については、AIで回答の下書きを作り、事業担当者や経営陣に確認してもらう流れが効率的です。

3. トーク構成の整理

取材の冒頭で会社・事業の概要を説明するコーポレートブリーフィングや、製品発表の説明順序など、話す内容の順序と量のバランスをAIに確認してもらえます。

使うAIツール

**ChatGPT(GPT-4o)またはClaude(claude-sonnet系)**が向いています。想定質問の出力は質問の多様性が重要なため、温度パラメータの高い設定が使えるツールが向いていますが、通常の設定でも十分な量が出ます。

取材内容がまだ公開前の新製品や事業計画に関するものである場合、詳細をAIに入力することの可否を社内ルールで確認してください。

手順:取材準備をAIで進める

ステップ1 取材の前提条件を整理する

AIに指示する前に、次の情報を確認します。

  • 媒体名と媒体の性質(業界誌か一般紙か、発行部数・読者層)
  • 記者名と過去の記事の傾向(可能であれば3〜5本確認する)
  • 取材テーマと申し込み理由
  • 取材対応者(誰が答えるか)
  • 話せること・話せないことの範囲

この前提がないと、AIが出す質問が汎用的になり、準備としての意味が薄れます。

ステップ2 想定質問を洗い出す

【役割】
あなたは経験豊富な経済記者です。

【依頼】
以下の取材条件に基づいて、記者が取材当日に聞くと考えられる質問を20問出してください。

【取材条件】
- 媒体:IT系専門誌「〇〇マガジン」(IT部門の管理職が読者層)
- 取材テーマ:弊社の新サービス「〇〇クラウド」発表に関する取材
- 取材対応者:代表取締役・事業責任者
- 発表済みの情報:サービス名・提供開始日・価格帯・主な特長3点

【質問の方向性】
- サービス内容の詳細確認(仕様・対応環境・サポート体制)
- 市場背景と競合他社との違い
- 開発の経緯と課題
- 価格設定の根拠
- 想定顧客と導入実績
- リスク・課題・失敗した場合の対応
- 経営全体への影響と今後の計画

各方向性から3問程度、バランスよく出してください。

20問出してもらい、そこから当日聞かれそうな質問10問程度に絞ります。

ステップ3 回答の下書きを作る

想定質問が揃ったら、回答の下書きをAIに作ってもらいます。

【役割】
あなたは広報担当者です。

【依頼】
以下の質問に対して、会社として答える回答の下書きを書いてください。

【前提情報】
- 会社:中小企業向けIT製品を提供する企業
- サービス:〇〇クラウド(月額9,800円〜、2026年8月1日提供開始)
- 特長:①リアルタイム在庫更新 ②スマートフォン対応 ③会計ソフト連携

【質問】
1. 競合の△△社との違いを教えてください
2. 月額9,800円という価格はどのように決めましたか
3. 初年度の目標導入社数はどのくらいですか

【条件】
- 各回答は100〜150字
- 公開情報の範囲で答える
- 具体的な数字がある場合は使う
- 不明・未公開の場合は「現時点ではお伝えできません」と入れる

ステップ4 想定される難しい質問を確認する

取材対応で答えに詰まりやすい質問も事前に洗い出します。

【依頼】
以下の取材テーマで、広報担当者が答えにくい可能性がある質問を10問出してください。
・競合他社との比較で不利になる点
・財務・価格根拠への突っ込んだ質問
・過去の失敗や問題への言及
・具体的な数字への踏み込み(目標未達のシナリオ等)

【取材テーマ】
(ここに書く)

この質問リストをもとに、法務・経営と「どこまで答えるか」の合意形成をします。AIはあくまで質問の候補を出す役割です。

ステップ5 コーポレートブリーフィングの整理

取材冒頭の会社説明を整理するプロンプト例です。

【依頼】
以下の情報から、取材の冒頭で3〜5分で説明するコーポレートブリーフィングの構成案を作ってください。

【含める情報】
- 会社概要(創業年・事業内容・従業員数)
- 今回の取材テーマとの関連(なぜ今この事業か)
- 話してよい今期の事業状況

【条件】
- 話す順序と各項目にかける時間の目安を明記する
- 1項目40〜60字で話す内容の要点をまとめる
- 最後に「この取材で伝えたいこと」を一文で

広報固有の2つの注意点

注意点1:媒体の論調の確認

記者の媒体や過去の記事によっては、批判的・懐疑的な角度から質問が集中することがあります。特に炎上やトラブルが業界で話題になっている時期の取材、または競合他社を取材した直後の記者からの取材は、通常より鋭い角度の質問が来る可能性があります。

AIに「批判的な記者が書きそうな質問を10問出して」と追加でプロンプトを送ることで、こうした視点の準備ができます。担当者が想定できていない視点を洗い出す用途では特に有効です。

注意点2:オフレコと発言の区別

取材の場での発言はすべて記事に使われる可能性があります。AIで回答の下書きを作る段階で、「これは記事に書かれてもよい内容か」を確認しながら進めてください。

特に「背景」「競合への言及」「社内の状況」については、本人が話す気でなかった内容が回答として出てくることがあります。AIの出力をそのまま対応者に渡すのではなく、広報担当者が確認してから渡してください。

うまくいかない場合のポイント

質問が浅い・表面的なものばかり出る

プロンプトに「担当記者は業界に詳しく、技術的な詳細も聞く」「読者層は同業の意思決定者」と書き加えると、深い角度の質問が出やすくなります。

回答が長すぎる

「100〜150字」と制約を入れても長くなる場合は、「話し言葉で1分以内に話せる長さ」と言い換えます。

難しい質問が出てこない

「批判的な観点のみで」「最悪のシナリオを想定した記者が書く質問を」と条件を変えると鋭い質問が出やすくなります。

他の広報業務との連携

取材の記録を残す場合、広報の文字起こしをAIで整形する方法で解説している発言録の整形手順が使えます。取材後にメディアへの御礼連絡や追加情報提供をメールで行う際は、広報のメール作成をAIで時短する方法のプロンプト構成が参考になります。

危機的な状況での取材対応は通常の取材準備とは性質が異なります。危機対応文をAIで作る方法で、トラブル発生時の対応文の作り方を解説しています。

取材準備の汎用テンプレート

【取材準備プロンプト:想定質問出し】

【役割】
あなたは〔業種〕業界に詳しいベテラン記者です。

【媒体・記者情報】
- 媒体名:
- 媒体の性質・読者層:
- 取材テーマ:
- 取材対応者:

【発表済み・公開済みの情報】
(ここに書く)

【質問の角度】
以下の方向性から3問ずつ、合計で15〜20問を出してください。
1. サービス・製品の詳細(仕様・価格・サポート)
2. 市場・競合
3. 会社の戦略・財務
4. リスク・課題
5. 将来計画

このテンプレートを取材案件に応じて修正し、準備の標準作業として組み込むと、担当者が変わっても同じ品質の準備ができます。取材前日に30分使えば、当日の対応精度が大きく変わります。

よくある質問

AIが出した想定質問は実際の取材で使えますか?

網羅的に質問を洗い出す用途には使えます。ただし媒体の担当者や取材の文脈によって実際の質問は変わるため、AIの出力はあくまで準備の出発点として使い、媒体の過去記事や記者の傾向も加味して絞り込んでください。

回答NGの質問への対応もAIで練習できますか?

「この質問は現時点でお答えできません」という受け答えのバリエーションをAIに出してもらうことはできます。ただし実際に何をNGとするかの判断は法務・経営と事前に合意しておく必要があり、その部分はAIに代替させられません。

動画取材の準備にも使えますか?

動画・テレビ取材向けには、想定質問の準備に加えて「話す順番の構成」や「短い言葉でのキーメッセージ」の整理にAIが使えます。原稿を読む形式ではなく話す形式のため、プロンプトにその旨を書いて出力を変えてください。

取材後の対応にもAIは使えますか?

取材後の御礼メールや、掲載前の確認依頼文、掲載後の社内共有文の作成にAIが使えます。こうしたフォローの文書は型が決まっているため、テンプレート化しておくと毎回の工数が減ります。