広報の業務チェックリストをAIで作る方法
この記事の要点
プレスリリース発信・プレスイベント・取材対応・SNS運用のチェックリストをAIで作ると、担当者が変わっても品質が維持され、当日の抜け漏れが減る。広報向けの手順とプロンプト例を解説する。
結論
プレスリリースの配信設定を忘れた、発表会でスポークスパーソンへの事前説明ができていなかった、取材当日に撮影NGの確認を怠った——広報のミスは「確認リストがあれば防げたもの」が多い。AIを使うとチェックリストの初稿が20〜30分で完成し、担当者が変わっても品質の維持ができる確認体制が作れる。
チェックリストは作ることより「実際に使われること」が目的だ。AIが作った汎用的なリストを、自社の業務フローに合わせて調整する工程が品質を決める。
広報業務でチェックリストが必要な場面
広報業務は発生頻度にばらつきがある。月に何度も繰り返すプレスリリース発信と、年数回しかないプレスツアーでは、チェックリストの詳細度が異なる。
| 業務 | チェックリストが特に重要な理由 |
|---|---|
| プレスリリース発信 | 承認・配信・各チャネル公開など工程が多く、順序のミスが発生しやすい |
| プレスイベント・発表会運営 | 当日は進行が速く、準備漏れがその場で発覚する |
| 取材対応(事前〜事後) | 撮影NG・NGワード・同席者など確認事項が担当者の頭に依存しやすい |
| SNS投稿 | 誤字・誤情報・承認未了のまま投稿するリスクがある |
| 危機対応の初動 | 時間的プレッシャーの中での漏れが被害を拡大させる |
使うAIツール
- ChatGPT(GPT-4o): 業務の手順を構造化されたチェックリストに変換するのが得意
- Claude: 複数の担当者が関わる業務のリストを、役割ごとに整理するのが得意
- NotionのAI機能: そのままNotionのチェックボックスページとして管理できる
チェックリスト作成に使う情報(承認者名・担当者名・外部の配信先など)の中に個人情報や取引先の詳細が含まれる場合は、社内承認済みのAIツールを使う。
ステップ別:チェックリストを作る手順
ステップ1 チェックリストの対象業務と使い手を決める
プロンプトを書く前に次の3点を決める。
- 対象業務: どの業務のリストか(例:プレスリリース発信・発表会運営)
- 使い手: 広報担当者本人か・他部門の担当者か・新人か
- 使うタイミング: 準備段階か・当日確認か・事後確認か
使い手のレベルによって項目の粒度が変わる。経験者には「承認取得」の1行でよいが、初めて発信を担当する担当者には「誰に・何を・いつまでに承認してもらうか」まで書く必要がある。
ステップ2 チェックリストの骨格を作らせる
以下の条件でプレスリリース発信チェックリストを作成してください。
【対象業務】プレスリリースの社内承認から配信・公開までの手順
【使い手】広報担当者(経験1〜2年)
【フェーズ別に作成】
1. 発信1週間前までにやること
2. 発信前日までにやること
3. 発信当日(配信直前)にやること
4. 配信後24時間以内にやること
【含める項目の範囲】
・社内関係者(法務・IR・経営陣)への事前共有と承認取得
・事実確認(数字・固有名詞・URLの動作確認)
・配信先リストの確認(配信サービス・主要媒体への個別送付)
・自社サイトへの掲載(公開タイミングとURL確認)
・SNS投稿の準備と予約設定
・配信後の掲載確認と報告
【注意】担当者名や使用ツール名は「担当者名を入力」などプレースホルダーにしてください。
チェックボックス形式で、担当部署も記載してください(広報・法務・IT・経営など)。
ステップ3 不足している項目を追加させる
初稿が出たら、自社固有の手順や過去のミスから学んだ確認項目を追加する。
先ほどのチェックリストに以下の項目を追加してください。
【追加する項目】
・配信前に代表者コメントの引用文を本人に確認してもらう
・グローバル向けに英語版プレスリリースを同時発信する場合の英語校正確認
・発信日がイベント・祝日・他社の大型発表と重なっていないか確認する
・配信後に広報部長・IR担当・CSR担当に配信完了の連絡を入れる
それぞれ「発信1週間前までに」「発信当日に」など、適切なフェーズに追加してください。
ステップ4 既存のチェックリストを改善させる
すでに使っているリストがある場合は、そのまま貼り付けて改善を依頼する。
以下は現在使っているプレス発表会の準備チェックリストです。
次の観点で改善してください。
1. 抜けている準備項目があれば追加する
2. 分かりにくい項目を具体的な表現に書き直す
3. 担当者が書かれていない項目に「広報・総務・IT・外部委託先」のいずれかを追記する
4. 当日の緊急連絡先(登壇者・会場・機材業者)の確認項目を追加する
【現在のチェックリスト】
(ここに既存のリストを貼り付ける)
広報固有の場面:2つの具体例
例1 年に1〜2回しかない記者発表会の運営チェックリスト
発表会は準備期間が長く、関わるスタッフが多い。どの担当者が何をいつまでに準備するかを一覧化するチェックリストが、当日の漏れを防ぐ。
以下の条件で記者発表会の運営チェックリストを作成してください。
【発表会の規模・形式】
・参加媒体:約30社(招待制)
・会場:ホテルの貸しバンケットルーム
・プログラム:代表あいさつ・製品デモ・質疑応答・懇親会(計2時間)
・スタッフ:広報4名・総務2名・外部業者(音響・映像)1社
【フェーズ別に作成】
1. 発表会1か月前までにやること
2. 発表会1週間前までにやること
3. 発表会前日にやること
4. 当日(受付開始前)にやること
5. 当日(イベント中・終了後)にやること
【含める内容】
・会場手配・音響映像の確認
・招待状の発送と出欠確認
・登壇者のブリーフィングと資料確認
・受付設置・記者証・名札の準備
・当日の進行台本の最終確認
・終了後の礼状送付と掲載モニタリング開始
【形式】担当者別(広報/総務/外部業者)と日程別のマトリクス表
例2 SNS投稿の事前確認チェックリスト
SNSの誤投稿は即座に拡散するため、投稿前の確認が最も重要だ。1回の投稿ごとに確認するためのコンパクトなリストが必要になる。
以下の条件でSNS投稿前確認チェックリストを作成してください。
【対象のSNSアカウント】企業公式アカウント(X・Instagram・LinkedIn)
【使い手】SNS担当の広報スタッフ(投稿前に必ず確認する手順)
【含める確認項目】
内容の確認:
・事実の誤りがないか(数字・固有名詞・リンク先の内容)
・未発表情報が含まれていないか
・画像・動画の使用権限が確認されているか
・プライバシーに関わる個人情報が含まれていないか
承認フロー:
・担当者が確認したか
・広報リーダーの承認が完了しているか(規程が必要な場合)
投稿設定:
・投稿日時が正しいか(予約投稿の場合)
・ハッシュタグ・メンションが意図した通りか
・各SNSの文字数・画像サイズ規定を満たしているか
【形式】投稿前に1枚で確認できるコンパクトなリスト(20項目以内)
【注意】法令・権利関係の項目には「最新は法務に確認」と注記してください。
うまくいかない場合のポイント
チェックリストが長すぎて使われない
「最重要の確認項目のみ15項目以内に絞ってほしい」と依頼する。全項目を網羅したマスターリストと、当日に手元で確認する簡易版の2種類を作り分ける方法が現実的だ。
項目が抽象的すぎて何をすればよいか分からない
「『承認取得』を具体化してほしい。誰に・何を使って・何日前までに承認を得るかの形で書き直してほしい」と依頼する。使い手の経験レベルを「初めて一人で発信する担当者でも分かるように」と指定しても粒度が変わる。
担当者が替わるたびに修正の手間がかかる
担当者名・役職名はプレースホルダーにしておき、Notionやスプレッドシートで管理する際に更新する運用にする。「担当者欄は都度更新できるよう、プレースホルダー形式で作成してほしい」と指定すると、その形式で出力される。
発生頻度が低い業務のリストが不完全
「3年前に担当した際に抜けた項目がある」「新任の担当者が初めてやる際に迷う項目を追加してほしい」のように、具体的な状況を伝えて不足点を補う依頼をする。「よくある失敗パターンとその対策を項目として追加してほしい」という依頼も有効だ。
チェックリストの管理と更新
作ったチェックリストを使い続けるには、実施のたびに気づいた点を反映する更新サイクルが必要だ。
| 更新のタイミング | 確認・追加すべき内容 |
|---|---|
| 発信・イベント直後 | 抜け漏れや「これは確認が不要だった」項目の整理 |
| 担当者交代時 | 口頭で引き継いでいた暗黙知の文書化 |
| ツール変更時 | 配信ツール・SNSの仕様変更への対応 |
| 年1回の定期見直し | 法令・社内規程の変更の反映 |
更新もAIに任せられる。「この項目が実際の業務と合わなくなった。修正版を作ってほしい」と変更内容を渡すだけで、差分更新が速くできる。
プレスイベント当日の会議準備の段取りは広報の会議準備をAIで段取りする方法が詳しい。業務マニュアル全体の作り方は広報の業務マニュアルをAIで作る手順にまとめている。危機対応時のチェックリストについては広報の危機対応・炎上対応をAIで備える方法を参照してほしい。
よくある質問
AIが作ったチェックリストをそのまま広報業務に使えますか?
骨格として使えますが、そのままでは使えません。自社の承認フロー・使用ツール・担当部署名・配信先リストの管理方法など、社内固有のフローを加筆して初めて実用的なリストになります。
プレスリリース発信と発表会の両方のチェックリストを一度に作れますか?
作れます。「プレスリリース発信チェックリスト」と「発表会運営チェックリスト」を別々に依頼するのが基本ですが、「両者を連動させた統合チェックリスト」として1つにまとめてもらうことも可能です。
過去のトラブルを踏まえてチェックリストを改善する方法はありますか?
あります。「過去に〇〇というミスが起きた。これを防ぐための確認項目を追加してほしい」と依頼すると、具体的な対策項目が追加されます。実際のインシデントの詳細は含めず、問題のパターンだけを伝えてください。
チェックリストをNotionやスプレッドシート形式に変換できますか?
できます。「このリストをNotionのチェックボックス形式に変換してほしい」または「スプレッドシートで使えるよう、項目・担当者・期限・完了チェックの4列構成にしてほしい」と依頼すると、貼り付けられる形式で出力されます。