職種別AI仕事術

広報の業務マニュアルをAIで作る手順

広報の業務マニュアルをAIで作る手順

この記事の要点

メディア対応・プレスリリース発信・危機対応の広報業務マニュアルをAIで作ると、担当者交代時の引き継ぎ漏れと対応品質のばらつきが大幅に減る。広報向けの手順とプロンプト例を解説する。

結論

広報の業務マニュアルは、担当者が変わるたびに「口頭で教えた内容と実際の手順が食い違う」という問題が起きやすい業務だ。AIを使うと、担当者が知識として持っている業務フローを文書化する作業が数時間から1〜2時間に短縮できる。

AIが得意なのは「聞き出す」作業だ。箇条書きで業務の概要を渡すだけで、手順書の構成に落とし込んでくれる。完成したマニュアルを修正・承認する作業は人間が行うが、ゼロから書く負担がなくなる。


広報業務でマニュアルが必要な場面

広報業務は属人化しやすい。特にメディアとの関係性や危機対応の判断基準は、担当者の頭の中にある「暗黙知」になりがちだ。

業務マニュアル化が特に重要な理由
メディア問い合わせ対応対応の可否判断・回答範囲・エスカレーション基準が担当者依存になりやすい
プレスリリース発信承認フロー・配信タイミング・配信先リストの管理が複雑
取材対応(当日)撮影NG箇所・同席者・NGワードなどの事前準備が属人化しやすい
SNS運用投稿の承認フロー・炎上時の対応基準が明文化されていないことが多い
危機対応初動の遅れが被害を拡大させるため、判断基準と連絡系統の明文化が最重要

使うAIツール

  • ChatGPT(GPT-4o): 手順書・マニュアルの構成化が得意で、箇条書きを整理された文書に変換する
  • Claude: 複雑な条件分岐(「このケースはAに相談、あのケースはBに相談」など)を含む手順の整理が得意
  • NotionのAI機能: Notionをマニュアル管理に使っている場合、直接ページに生成・編集できる

未公開の戦略・取引先情報・インシデントの詳細はプロンプトに含めない。特に危機対応マニュアルの作成では、実際のインシデント情報を入力しないよう注意する。


ステップ別:業務マニュアルを作る手順

ステップ1 マニュアルの対象と使い手を決める

プロンプトを書く前に以下を決める。

  • 対象業務: どの業務のマニュアルか
  • 使い手: 広報担当者本人か、他部門の担当者か、新人か
  • 使い場面: 日常業務の手引きか、緊急時の参照用か
  • 形式: Notion・Word・PDF・印刷物など

新人向けなら背景説明が必要で、経験者向けなら手順と判断基準の簡潔な整理が中心になる。

ステップ2 業務の概要をAIに渡して構成を作らせる

まず構成(目次)を作らせてから本文を作る。構成を先に確認することで、漏れや順序の誤りを早い段階で修正できる。

以下の業務のマニュアルを作ってください。まず目次(構成)のみを出力してください。

【業務名】メディアからの問い合わせ対応
【使い手】広報担当者(経験1〜3年)
【使い場面】日常の業務参照用
【含めてほしい内容】
  ・問い合わせを受けた際の初動フロー(電話・メール別)
  ・回答できる内容と回答できない内容の判断基準
  ・社内のエスカレーション先と連絡方法
  ・取材依頼と一般問い合わせの区別の仕方
  ・記録の残し方(問い合わせ台帳への記載)
  ・よくある質問とその回答例

【形式】各章に「目的」「手順」「注意点」の3つのセクションを含める構成

ステップ3 各章の本文を作らせる

構成を確認・修正した後、章ごとに本文を作らせる。全体を一度に出力させると長くなりすぎて修正が難しくなるため、章単位で進める。

先ほどの目次の「2. 回答できる内容と回答できない内容の判断基準」の本文を作成してください。

【前提条件】
  ・弊社は上場企業(IR情報との整合性が必要)
  ・製品の価格・ロードマップ・人事情報は開示NG
  ・プレスリリース発表済みの内容は回答可能
  ・判断が迷うケースは広報部長に確認する

【書き方の指定】
  ・「OK」「NG」「要確認」の3分類で表形式にする
  ・表の後に「判断が難しいケース」として具体例を3〜5個リストアップする
  ・「最新の開示方針は法務・IR部門と確認してください」の注記を入れる

ステップ4 フロー図の代わりになる条件分岐を作らせる

広報のメディア対応には「このケースは誰に相談するか」という条件分岐が多い。テキスト形式の条件分岐でフロー図の代替として使える。

以下の条件でメディア問い合わせ対応の判断フローを作成してください。

【作成する内容】問い合わせを受けた後の担当者の判断ステップ

【条件分岐の基準】
  ・問い合わせの内容が「既発表のプレスリリースに関するもの」か「それ以外」か
  ・「それ以外」の場合、「製品・技術に関するもの」か「経営・財務に関するもの」か「人事に関するもの」か「その他」か
  ・各ケースで「誰が回答するか」「いつまでに回答するか」を明示する
  ・「当日中に判断できない場合は24時間以内に返答する旨を相手に伝える」ルールを含める

インデント付きの箇条書き形式で、使い手が読みながら判断できる構成にしてください。

広報固有の場面:2つの具体例

例1 新人広報担当者向けのメディア対応マニュアル

異動や採用で広報チームに加わった担当者が、最初の1〜2週間で読む手引きとして使うマニュアル。メディアとの関係性の基本的な考え方から、問い合わせ対応の初動まで網羅する。

以下の条件で新人広報担当者向けのメディア対応マニュアルを作成してください。

【対象読者】広報業務経験がない、または1年未満の担当者
【目的】独り立ちする前の参照マニュアルとして

【含める内容】
  1. 広報担当者がメディアと接する際の基本的な考え方(情報の取り扱い、約束の重要性)
  2. 記者・編集者・カメラマン・ライターの役割の違い
  3. 電話で問い合わせを受けた際の対応手順(名乗り方・内容メモの取り方・折り返し方法)
  4. メールで取材依頼を受けた際の対応手順
  5. 「社内確認して回答します」と伝えた際の社内連絡の手順
  6. 絶対にやってはいけないこと(オフレコの取り扱い・非公開情報の漏洩等)

【注意】社内の具体的なツール名や担当者名は「担当者名を入力」などプレースホルダーにしてください。
各セクションを読みやすく、200字以内で書いてください。

例2 SNS炎上時の初動対応マニュアル

SNSでの炎上は発生後の最初の2時間の対応が重要とされる。初動の遅れを防ぐため、判断基準と連絡系統を明文化しておく。

以下の条件でSNS炎上時の初動対応マニュアルを作成してください。

【対象】公式SNSアカウントを運営している広報担当者
【想定するリスクレベル】
  ・軽微(批判コメントが数件)
  ・中程度(拡散が始まり問い合わせが増加)
  ・重大(主要メディアが報道、または代表者への個人攻撃が発生)

【含める内容】
  ・各レベルの判断基準(何をもって「重大」と判断するか)
  ・各レベルで誰に何を連絡するか(連絡系統)
  ・投稿の削除・修正を行う判断基準
  ・「現在状況を確認しております」などの暫定コメントを出すタイミング
  ・記録として残すべき情報(発生時刻・拡散状況・対応内容)

【注意】具体的な担当者名・SNSアカウント情報はプレースホルダーにしてください。
危機対応の法的判断は「法務部門および顧問弁護士に確認してください」と注記してください。

うまくいかない場合のポイント

出力が汎用的すぎて自社の手順に合わない

「弊社では〇〇というツールを使っている」「承認は部長→役員→社長の順で行う」のように自社固有の情報をプロンプトに追加する。具体的な情報を与えるほど、実態に近い内容になる。ただし未公開情報・個人情報はプロンプトに含めない。

マニュアルが長くなりすぎる

全体を1度に生成すると読まれないマニュアルになりやすい。章を分けて生成し、「この章は3つの箇条書きと1つの表に収めてほしい」と分量を指定する方法が有効だ。

危機対応マニュアルの内容に不安がある

AIの出力は「参考構成」として使い、内容は法務・経営層が確認してから展開する。特に「削除の判断基準」「コメントを出すタイミング」については、最終的な判断基準は経営幹部と法務が定める。AIの出力をそのまま社内ルールにしない。

過去のインシデントから改善点を整理したい

実際のインシデント情報(社名・関係者名・被害内容など)はプロンプトに含めず、「過去に以下のような問題が発生した。この問題を繰り返さないためのマニュアル改訂案を出してほしい」と問題のパターンだけを抽象化して入力する。


マニュアルの管理と更新

作ったマニュアルは、使うたびに改訂するサイクルを作ることが重要だ。特に広報業務は、取引先のメディアの変化・新製品の発売・組織変更によってフローが変わりやすい。

更新のタイミング確認すべき内容
四半期ごと担当者名・連絡先・使用ツールの変更
新製品・新サービス発表前問い合わせ対応の回答可能範囲の更新
インシデント発生後初動フローの改善点を反映
担当者交代時暗黙知の書き出しと追記

更新作業もAIに任せられる。変更点だけを「この手順が変わった。マニュアルの該当箇所を書き直してほしい」と渡すと、修正差分を素早く出力してくれる。


危機対応時の具体的な対応フローについては広報の危機対応・炎上対応をAIで備える方法が詳しい。業務チェックリストの作り方は広報の業務チェックリストをAIで作る方法にまとめている。

よくある質問

AIが作ったマニュアルをそのまま社内に展開できますか?

そのままでは難しいです。AIの出力は汎用的な構成の骨格として使えますが、自社固有の手続き・承認フロー・使用ツール・担当者名を必ず加筆してください。特に危機対応マニュアルは法務・経営層の確認を経てから展開してください。

既存のマニュアルをAIで更新する方法はありますか?

あります。既存のマニュアルをプロンプトに貼り付けて「最新の業務フローに合わせて修正してほしい」「変更になった〇〇の手順を書き直してほしい」と依頼する方法が有効です。全体を作り直すより、差分更新のほうが速く正確です。

マニュアルの長さはどのくらいが適切ですか?

業務の種類によります。メディア対応の連絡手順なら1〜2ページ(A4換算)で十分です。危機対応マニュアルは判断基準・連絡系統・対外発表の手順を含めるため5〜10ページになることがあります。使い手が実際の業務中に参照できる分量を目安にしてください。