職種別AI仕事術

広報の文章リライトをAIで行う方法

広報の文章リライトをAIで行う方法

この記事の要点

硬くなりがちな広報文書をAIでリライトすると、読みやすさとブランドトーンを保ちながら時間を大幅に削減できる。手順とプロンプトを解説する。

結論:AIリライトで「硬い文章」を1分で読みやすくできる

社内で何度も手が入った文章は、主語が遠くなり、受身表現が重なり、読者が何を言いたいのかわからなくなる。AIによるリライトは、こうした文章を読みやすい形に整えるのに向いている。広報担当者が実際に使う場面は、主に3つだ。

  1. 法務や上位職が修正してトーンが硬くなったプレスリリースを、送付前に読みやすく戻す
  2. 社内報の下書きが長くなりすぎたとき、2割程度に圧縮する
  3. 旧製品のリリース文を新製品向けに書き直す

いずれも、AIが出した結果をそのまま使うのではなく、「たたき台を速く作る」目的で使う。

使うAIツール

ChatGPT(GPT-4o)またはClaudeが選択肢として実用的だ。どちらもプロンプトで「トーン」「文字数」「対象読者」を指定できる。

リライト作業はセキュリティリスクを特に意識すべき場面だ。未公開のM&A情報や新製品の機密情報を含む文書は、企業契約(ChatGPT EnterpriseやAnthropic API)でデータが学習に使われない設定を確認してから入力する。

手順:プレスリリースのリライト

ステップ1:リライトの目的を決める

リライトには複数の目的がある。同時にすべてを頼むとAIの出力がブレやすいため、1回のリライトに1つの目的を割り当てる。

  • 冗長な文章を短くする(圧縮)
  • 受身表現を能動表現に変える(能動化)
  • 難しい言葉を平易にする(平易化)
  • 文体を統一する(統一)

ステップ2:プロンプトを組み立てる

以下は「プレスリリースの冗長な箇所を圧縮する」リライトに使えるプロンプトだ。

以下のプレスリリース文をリライトしてください。

条件:
- 読者:業界メディアの記者
- 目的:同じ情報量を保ちながら、文字数を20〜30%削減する
- 禁止事項:事実・数値・固有名詞を変えない。トーンはビジネス向けの簡潔な敬体を維持する
- 修正箇所には【修正】とマークをつけ、原文と並べて出力してください

---
【原文をここに貼る】

「修正箇所を原文と並べて出力」と指定すると、変更点が一目で確認でき、意図しない改変に気づきやすくなる。

ステップ3:出力を確認する

AIのリライト結果を受け取ったら、以下の順で確認する。

まず数値と固有名詞を原文と照合する。AIは文脈から意味を補完するため、「約30%削減」を「3割削減」と書き換えたり、製品名を微妙に変えたりすることがある。

次に、削除された情報がないか確認する。圧縮リライトでは、AIが「重要でない」と判断した補足情報を省く場合がある。その情報が広報上必要かどうかは人間が判断する。

最後に、社内の承認フローで求められる表現(法務チェック済みの文言など)が残っているかを確認する。

ステップ4:2回目のリライト指示を出す

1回目の出力が目標に届いていない場合は、2回目の指示を出す。このとき「さらに短くしてください」とだけ言うより、「第2段落の3〜4文目をさらに1文にまとめてください」と具体的に指定すると精度が上がる。

広報固有の場面での使い方

場面1:法務修正後のトーン調整

プレスリリースは法務から戻ってきた段階で文章が硬くなっていることがある。「法的に問題のない範囲で」「読者に伝わりやすく」という制約を両立させながら直す作業は、AIが得意とする場面だ。

以下の文章は法務確認済みです。内容・事実・数値を一切変えずに、
メディアの記者が読みやすいよう文体だけを整えてください。

守ってほしいこと:
- 受身表現(〜される、〜された)をできるだけ能動表現に変える
- 1文が60字を超えている箇所は分割する
- 難解な法律用語はそのまま残してください(変えると法的リスクが生じます)

---
【法務確認済み原文をここに貼る】

場面2:社内報の年間行事レポートを圧縮する

社内報では、事業部から提出された原稿が長すぎることがよくある。担当者に「短くしてください」と返すより、AIで圧縮してから確認してもらうほうが早い。

以下の社内報原稿を400字以内にリライトしてください。

条件:
- 伝えたい主要ポイントは最大3つまで残す
- 話し言葉的な表現(〜でした、〜ができました)は維持する
- 固有名詞(人名・部署名・プロジェクト名)は削除しない

---
【社内報原稿をここに貼る】

うまくいかない場合のポイント

リライト後の文体がブランドと合わない 自社のプレスリリース1〜2本の文体を「参考文例」としてプロンプトに貼り付け、「このトーンを参考にリライトしてください」と伝える。

【参考文例(弊社の既存リリースから抜粋)】
〇〇株式会社は、▲▲の機能を△月△日より提供を開始します。本機能は、
〜〜〜〜(自社リリースから抜粋)

上記のトーン・文体を参考に、以下をリライトしてください。

AIが情報を追加してしまう AIは出力を「より良くしよう」として原文にない情報を足すことがある。「情報を追加しないでください」と明示する。または「変更箇所は本文から抜粋した言葉を使うだけにしてください」と指定する。

同じ文章を何度もリライトするうちに原文から離れる リライトを繰り返す場合は必ず原文を保持し、比較できる状態にしておく。「第3版」のリライトではなく、常に「原文 → 今回の指示」の2点間で作業する。

プロンプトを毎回書くのが負担 目的別のプロンプトをドキュメントに整理しておく。たとえば「プレスリリース圧縮用」「社内報トーン調整用」「SNS要約用」の3種類を用意するだけで、日常業務の大半に対応できる。

人間が判断すべきこと

AIのリライトは文の表層を整えることに集中している。以下は人間が判断し続けなければならない領域だ。

  • 削除してよい情報かどうか(事業上・法務上の判断)
  • 発信のタイミングとして適切かどうか
  • 社内の利害関係者への配慮が必要な表現があるかどうか
  • 競合他社や取引先への配慮が必要な表現があるかどうか

広報の仕事で最も時間がかかるのは「書く」より「調整する」プロセスだ。AIはそのプロセスを短縮する道具として使うと、最も効果が出やすい。

関連記事:

よくある質問

AIにリライトを頼むと自社のブランドトーンが消えませんか?

消えやすいです。対策として、プロンプトに「文体のサンプル」として過去の自社リリースを3〜5文貼り付け、『このトーンを維持してください』と指示する方法が有効です。また、リライト後は必ず広報担当者が通読して調整します。

社内報の文章と外部向けリリースで、リライトの指示は変えるべきですか?

変えるべきです。社内報は親しみやすさと読みやすさ、プレスリリースは正確さと簡潔さを優先します。プロンプトで読者層を明示すると、AIが出力のトーンを調整します。

リライトを繰り返すと原文の意味がずれていきませんか?

ずれる可能性があります。特に事実や数値を含む箇所はリライト後に必ず照合してください。AIは事実確認をしないため、文脈から類推して意味を変えてしまうことがあります。