国産AI「Noetra」始動、経産省が3873億円支援
この記事の要点
ソフトバンクやソニー、NEC、ホンダなどが出資するNoetraが産業技術総合研究所と組み、国産のフィジカルAI基盤モデル開発に着手した。経産省は初年度に3873億円を投じる。
結論
ソフトバンクやソニーグループ、NEC、ホンダなど40社以上が出資するNoetraが、産業技術総合研究所と共同で国産のフィジカルAI基盤モデル開発に着手した。経済産業省は2026年度に3873億円を投じ、2030年度までに総額でおよそ1兆円規模の支援を計画している。海外の基盤モデルに依存せず、製造や物流など日本の産業現場に合わせたAIを自前で持とうとする国家プロジェクトであり、AI推進担当にとっても今後の調達先の選択肢として押さえておく価値がある。
何が起きたか
経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構は、国産のフィジカルAI基盤モデルを開発する事業をNoetraと産業技術総合研究所に委託した。Noetraは、旧称「日本AI基盤モデル開発」から2026年6月に社名を変更した会社で、ソフトバンク、ソニーグループ、NEC、ホンダを中核株主とし、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行を含む40社以上が出資に参加する見通しだ。役割分担としては、Noetraがモデルの開発と提供を担い、産総研が理論やアーキテクチャに関する研究を受け持つ。
開発するモデルは、文章や画像、音声に加えて映像や物理的な特性まで扱うマルチモーダルな基盤モデルで、高度な日本語理解と論理的な推論、指示への追従を重視する。経済産業省は2026年度から2030年度にかけて総額およそ1兆円規模の支援を計画しており、初年度分として3873億円を投じる。製造、物流、介護など18分野で、2040年までに1000万台規模のAIロボットを実際に稼働させることを目指しているという。事業の進捗や具体的な成果指標については、今後の公式発表で確認してほしい。
なぜ国産の基盤モデルが必要とされるのか
生成AIの主要な基盤モデルは米国と中国の企業が握っており、日本語の細かなニュアンスや国内の商習慣、現場の安全基準を反映しきれない場面がある。加えて、ロボットのような実世界で動く機械を制御するAIは、通信の遅延や情報の扱いに関する規制の面で、海外のクラウドに依存しにくい業種も多い。国内の主要企業と研究機関が共同で基盤モデルを持つことは、供給の安定性と国内産業への最適化という二つの狙いを兼ねている。生成AIと従来型AIの違いを整理したい場合は生成AIと従来のAI・機械学習の違いをビジネス視点で解説を参考にしてほしい。
出資企業の顔ぶれから見える狙い
Noetraに名を連ねる企業の組み合わせは、単なる資金拠出にとどまらない意味を持つ。ソフトバンクは通信とAIインフラ、ソニーグループはセンサーやエンターテインメント領域の技術、NECは公共分野のシステム開発、ホンダはロボットや自動車の制御技術を、それぞれ強みとして持ち込むとみられる。三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行といった金融機関の参加は、開発資金の継続的な供給だけでなく、将来的に金融分野でのAI活用を見据えた布石とも読める。40社を超える国内企業が一つのコンソーシアムに集まる規模の大きさは、個社ごとに基盤モデルを開発するよりも、国全体で技術基盤を共有したほうが効率的だという判断が働いた結果といえる。
海外の基盤モデルとの違い
OpenAIやGoogle、Anthropicが開発する基盤モデルは、汎用性の高さと開発スピードの速さで先行している。一方でNoetraが目指すフィジカルAI基盤モデルは、日本語の細かな表現や現場の安全基準、製造・物流・介護といった特定の産業領域への最適化を重視する点で、狙いが異なる。海外の大規模モデルを土台にしつつ自社データで追加学習する方法もあるが、機密性の高い産業データを海外のクラウドに預けることへの懸念は根強い。国内で完結する開発体制を持つことは、こうした懸念に応える選択肢を用意する意味合いもある。海外モデルと国産モデルのどちらを選ぶべきかは、扱うデータの性質や業種によって変わってくる。
現場の実務にどう効くか
製造業や物流業でAI導入を検討している推進担当にとって、Noetraの動きは中期的な選択肢の広がりを意味する。海外製の大規模モデルは汎用性が高い一方、現場の安全基準や特有の用語に合わせたチューニングが必要になることが多い。国産の基盤モデルが実用段階に入れば、社内文書や現場データを扱う際の調達先候補として比較検討の対象になる。今の段階では稟議や予算計画に直接反映する話ではないが、業界動向として社内共有しておくと、数年先の意思決定がしやすくなる。特に製造や物流の現場を持つ企業は、自社データを海外クラウドに預けることへの社内の懸念を整理しておくと、国産モデルが実用化された際の検討がスムーズになる。AI活用事例を社内で広げる仕組みはAI活用事例を社内で共有する仕組みの作り方、ツール選定の観点はAIツールを比較するときに見るべき7つの観点を参考にしてほしい。
出典
よくある質問
Noetraはどんな会社ですか?
ソフトバンク、ソニーグループ、NEC、ホンダを中心に40社以上の国内企業が出資して設立された会社です。名称は「日本AI基盤モデル開発」から変更されました。産業技術総合研究所と共同でマルチモーダルな基盤モデルを開発します。
フィジカルAIとは何ですか?
画像や音声だけでなく、物の位置や動きといった物理空間の情報を扱い、ロボットなど実世界で動く機械を制御するためのAIを指します。製造や物流、介護などの現場で使われることを想定しています。