中国製AIモデル、米企業利用で最大46%に
この記事の要点
中国製オープンモデルの米企業利用がAPI仲介サービス経由で最大46%に到達。価格差は最大90%に及び、モデル選定基準の見直しを迫る動きを解説する。
結論
複数のAIモデルを取り次ぐ仲介サービスを通じて米企業が消費するトークンのうち、中国製のオープンモデルが占める割合が最大46%に達したことが分かった。前年の平均11%から大きく上昇しており、コストの安さが企業のモデル選定を左右する主要因になっている実態を示す。日本企業にとっても、AIツールの選定基準が性能だけでなく価格競争によって動く段階に入ったことを示す動きだ。
いつ、誰が、何を発表したか
米企業がAI開発で使う複数モデル仲介サービスの利用動向を分析した調査によると、中国製のオープンモデルが占める割合は、2026年2月以降少なくとも30%を維持し、6月には週単位で最大46%まで上昇した。個別のモデルで見ると、DeepSeekが週間580億トークンを処理し、仲介サービス全体でルーティングされるトークンのうち17.6%を占める最大手のベンダーになっている。アリババの「Qwen」も13.9%のシェアを持ち、これに続く。
価格面での差は際立っている。2026年6月時点で、DeepSeekの軽量モデル「V4 Flash」は100万入力トークンあたり0.14ドルであるのに対し、OpenAIの「GPT-5.5」は5.00ドルとなっており、中国製のオープンソースモデルはAnthropicやOpenAIの主力モデルと比べて60%から90%安い水準で提供されている。日本経済新聞は、米企業がコストの安い中国製AIに乗り換える動きを「開発者向けでは利用5割に迫る」と伝えている。生成AIのコスト構造については生成AIの料金の基礎 無料と有料プランの違いと費用感でも解説しており、価格差がここまで開くと、開発者やエンジニアが個人の判断でモデルを切り替える動きが広がりやすくなる。
こうしたシェアの拡大は、モデルの性能そのものが実用水準に達してきたことも背景にある。以前は無料で公開されているオープンソースモデルというと、有料の主要モデルに比べて精度が見劣りするという評価が一般的だった。しかし価格差が数十倍にも及ぶ現状では、多少の精度差があっても総合的なコストパフォーマンスで中国製モデルを選ぶ開発者が増えている。単純な文章生成や定型的なコーディング作業では、体感できる差が小さくなってきているという指摘も出ている。
現場の実務にどう効くか
AIツールの選定を担当する立場では、価格差だけでモデルを選ぶ判断が現場レベルで進んでいる可能性を前提に、自社の利用実態を確認しておく必要がある。開発チームが独自の判断で安価な中国製モデルを業務に組み込んでいるケースがあれば、性能面での妥当性に加えて、データの取り扱いポリシーやセキュリティ体制が自社の基準を満たしているかを個別に点検したほうがよい。モデル選びの基準を整理する際は生成AIモデルの選び方 ビジネス用途別の基準、セキュリティ面の比較観点は生成AIツールのセキュリティ評価の見方と比較基準を参考にしてほしい。
コストを重視した用途とセキュリティを重視した用途を切り分ける発想も有効だ。社外に出しても問題のない定型作業の下書き生成には価格の安いモデルを使い、顧客情報や社外秘の内容を扱う業務では従来どおり信頼できるベンダーのモデルを使うといった使い分けを検討する企業が増えている。導入判断にあたっては、費用対効果の測定方法を整理した生成AI導入の費用対効果の考え方も参考になる。複数のAIサービスを併用する体制そのものが一般化しつつあり、価格と安全性のバランスをどう取るかが、今後のAIツール管理における実務上の論点になる。
情報システム部門としては、社内で利用が許可されているAIモデルの一覧を定期的に更新し、現場が独自に契約したサービスがその一覧から漏れていないかを確認する運用も欠かせない。開発者が個人の判断で安価なAPIを契約し、気づかないうちに社外にコードやデータを送信してしまうケースは、価格差が大きいほど起こりやすくなる。利用申請の手続きを簡素にしつつ、承認済みのモデル一覧を分かりやすく周知しておくことが、無秩序な利用の広がりを防ぐ現実的な対策になる。
想定される影響
中国製モデルの利用拡大は、AI業界全体の価格競争を一段と激しくする要因になる。主要ベンダー各社が対抗して値下げに動けば、企業側の導入コストが下がる可能性がある一方、安価なモデルの急速な普及がデータガバナンス上のリスクを見過ごす形で進む懸念も指摘されている。自社のAI利用実態を定期的に棚卸しし、価格だけでなく提供元の信頼性を継続的に確認する体制を整えておくことが、今後より重要になる。
出典
- 米企業、コスト安い中国AIに乗り換え 開発者向けでは利用5割に迫る — 日本経済新聞
- Chinese AI Models Now Capture Up to 46% of US Enterprise Token Usage — Yahoo Finance
よくある質問
中国製AIモデルの利用が増えているのはなぜですか。
OpenAIやAnthropicの主要モデルと比べて、入力トークン当たりの価格が最大90%近く安いためです。2026年6月時点でDeepSeekの軽量モデルは100万入力トークンあたり0.14ドルで、GPT-5.5の5.00ドルを大きく下回っています。
日本企業が中国製モデルを使う際に注意すべき点は何ですか。
データの保管場所や取り扱いに関するポリシーが提供元によって異なるため、機密情報を扱う業務での利用は慎重に検討する必要があります。契約前にデータ保護の条件を必ず確認してほしい。